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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1226480 
審判番号 不服2010-10276
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-14 
確定日 2010-10-29 
意匠に係る物品 包装用容器の注出口 
事件の表示 意願2008- 28174「包装用容器の注出口」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は、物品の部分意匠として意匠登録を受けようとする、平成20年10月31日の意匠登録出願であって、その意匠は、意匠に係る物品を「包装用容器の注出口」とし、その形状は、願書及び願書添付の図面の記載のとおりであり、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(以下、この部分を「本願意匠」という。)(別紙第1参照)。
2.引用意匠
原査定において、意匠法第3条第1項第3号に該当するとして拒絶の理由に引用した意匠は、本願の出願前に特許庁が発行した意匠公報記載、意匠登録第1294753号(意匠に係る物品、液体石鹸用ディスペンサー)の意匠のノズル部の首部分及びノズル本体部分である(以下、この部分を「引用意匠」という。)(別紙第2参照)。

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると、意匠に係る物品については、共に包装用容器の注出口であるから一致し、両意匠の用途及び機能、そして、全体意匠に対する位置、大きさ、範囲が一致し、形状については、主として以下の一致点及び相違点が認められる。
(1)一致点
円筒状軸部上端に吐出口を有するノズル本体部を配したもので、ノズル本体は、平面視、軸部と同軸状に形成した円形押圧部の途中を、略水平方向に向けて引き延ばしたように、凹曲線を描いて吐出口が延設されており、円形押圧部の上面は、弧状に薄く膨出し、その膨出した上面部の高さが、吐出口上面部まで維持され、吐出口部は、平面視、先端部が突出方向と垂直方向に切り取られた形状で、吐出孔は、横長に形成され、円形押圧部と吐出口への延設部下辺は、側面視、一直線に形成され、ノズル本体下部に形成された太円筒部を介して、細円筒状軸部へとつながる態様である。
(2)相違点
ノズル本体部について、
(ア)吐出口先端までの全長の、円形押圧部の直径に対する倍率が、本願意匠は約1.8倍であるのに対して、引用意匠は約1.3倍である点、
(イ)円形押圧部の厚み(高さ)の、円形押圧部の直径に対する割合が、本願意匠は約0.15であるのに対して、引用意匠は約0.2である点、
(ウ)吐出口先端部幅の、円形押圧部の直径に対する割合が、本願意匠は約1/2であるのに対して、引用意匠は約1/3である点、
(エ)吐出口部について、本願意匠は、孔形状が扁平な略トラック形状であり、側面視で鉛直に、平面視で直線状に形成されているのに対して、引用意匠は、孔形状が上面が凸弧状の略かまぼこ型形状であり、側面視でやや斜めに、平面視で僅かに凸曲線状に形成されている点、
(オ)延設部の略水平方向角度について、本願意匠はごく僅かに上向きに傾斜し、背面視すると、吐出口の先端部の扁平略トラック形状上面部が表れているのに対して、引用意匠は、おおむね水平である点、
(カ)円形押圧部と吐出口に至る延設部の上面部周縁について、本願意匠は、上面部と周壁部が滑らかに続いているのに対し、引用意匠は、上面部と周壁部の境界に二重線が表され、上面部周縁がこれにより縁取られている点、
ノズル本体下部の太円筒部と軸部について、
(キ)太円筒部について、本願意匠は、ごく短く、その下端が、側面視と正面視においてのみ、僅かに視認されるだけであるのに対し、引用意匠は、おおむね円形押圧部の厚みの3倍以上ある、長いものである点、
(ク)太円筒部と軸部を合わせた長さについて、背面視、本願意匠は、円形押圧部直径の約0.3と短いのに対し、引用意匠は、同約1.1倍と長い点、がある。

4.類否判断
両意匠の一致点と相違点について検討し、両意匠を意匠全体として観察すると、一致点は、概略的な形状に係り、その範囲において看者に一定の共通感を印象付けている。しかしながら、平面視形状において、円形押圧部の途中を略水平方向に向けて引き延ばしたように凹曲線を描いて吐出口を延設した基本的な態様のノズル本体は、数限りなくあり、需要者の注意は、具体的な構成態様に向けられるものである。
そうすると、各部個々の形状や構成比率など、具体的な構成態様が異なるため、結局、意匠全体としては、それら相違点による形状が相まって表出される視覚的効果が、一致点による同効果を上回り、類否判断を支配するといえる。
すなわち、ノズル本体部について検討すると、本願意匠に表された各部の態様については、本願意匠程度の突出や、やや上向き傾斜の吐出口や、横に広い吐出口など、既に公然知られていて、格別の特徴があるわけではない。しかしながら、各部を総合してみれば、吐出口先端までの全長や、厚み(高さ)や、吐出口先端部幅などの相違点(ア)ないし(ウ)による形状は、吐出口部の相違点(エ)、延設部の角度の相違点(オ)、上面部の周縁部の相違点(カ)による形状と相まって、本願意匠のノズル本体は、吐出口が相当長く、縁取りもなく滑らかに平べったく形成されたものであって、またその長さ故に、扁平略トラック形状の孔形状も、やや上向き傾斜状も、一層目立つところとなり、引用意匠とは別異の、本願意匠独特の特徴を表しているといえる。
さらに、太円筒部と軸部についての相違点(キ)及び(ク)は、その部位だけを見れば、両意匠の態様ともありふれているものではあるが、上記の相違点による形状と総合されて、本願意匠は、短い軸部の上部に長く突出する扁平なノズル本体がそのまま、かぶさるように取り付けられている様相といえるのに対し、引用意匠は、長い太円筒部によって首長に見える軸部に、突出が短いので円形で曲面的な印象が強いノズル本体が乗っているような様相といえるので、別異の意匠的効果を発揮するところとなっている。
以上のとおり、両意匠の相違点は、それぞれ異なる意匠的効果を表しているというほかなく、意匠全体として起こさせる美感が相違し、両意匠は、類似しないものである。

5.むすび
したがって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものではなく、原査定の拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2010-10-13 
出願番号 意願2008-28174(D2008-28174) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 樫本 光司 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 橘 崇生
樋田 敏恵
登録日 2010-11-19 
登録番号 意匠登録第1403717号(D1403717) 
代理人 三好 秀和 

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