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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 E3
管理番号 1238192 
審判番号 不服2010-17637
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-06 
確定日 2011-05-23 
意匠に係る物品 ゴルフボール 
事件の表示 意願2008- 15467「ゴルフボール」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠

本願意匠は,2008年(平成20年) 6月18日の意匠登録出願に係り,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「ゴルフボール」とし,その「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)」を願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)


2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第9条第1項の規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとするものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,意匠登録第1332761号の意匠(出願番号:意願2007-026671,出願日:2007年(平成19年)10月 1日,意匠に係る物品「ゴルフボール」)であって,その形態は,願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)


3.本願意匠と引用意匠の対比

両意匠は,意匠に係る物品がともに「ゴルフボール」であって一致し,形態については,主として,以下に示す共通点及び相違点がある。

(共通点)
(A)球体の表面の全面にわたって,円形ディンプルと非円形ディンプルを組み合わせて配置した基本的構成を有するものである点,
具体的構成態様として,
(B)円形ディンプルは,浅く平らな窪み面である大円形状ディンプルの中に同心円状に配置された半球状凹部の小円形状ディンプルを形成した「二重円形状ディンプル」であり,その総数は,108個である点,
(C)非円形ディンプルは,それぞれは不定形であるが,三角形の各頂点を切り取った切頭三角形を基本とした「略切頭三角形状ディンプル」である点,
(D)二重円形状ディンプルと略切頭三角形状ディンプルの配列構成は,1つの二重円形状ディンプルを中心として,その周りに複数個,花弁状に配置された略切頭三角形状ディンプルによる組合せが球体の表面の全面に配列されてなるものであって,その組合せは,1つの二重円形状ディンプルの周りに5つの略切頭三角形状ディンプルを花弁状に配した組合せ(以下,「五角形配列」という。)と,1つの二重円形状ディンプルの周りに6つの略切頭三角形状ディンプルを花弁状に配した組合せ(以下,「六角形配列」という。)の2種類が基本となっており,二重円形状ディンプルは,各配列において,一部重複している部分がある点,
(E)前記の組合せのうち,五角形配列は,球体の表面において,全部で12個配置されており,そのうちの6つは,平面と底面において,その中心部分に表れる六角形配列の6辺の一つ置きの辺に3つずつ近接して配置されており,残りの6つは,前記の6つの五角形配列と一定の距離を置いて,球体の表面の正面・右側面・背面・左側面の帯状の部位にジグザグ状に配置されている点。

(相違点)
(ア)略切頭三角形状ディンプルの具体的構成態様について,本願意匠は,各ディンプルの窪み面が,浅く,深さが一定であって,該窪み面が平滑な平面状をなしているのに対して,引用意匠は,縁部から中心部に向かって傾斜面状に窪み面が深くなっており,又,該窪み面には,略切頭三角形状ディンプルの平面視した各頂点から中心に向かう態様の放射線状の稜線が表れている点,
(イ)同じく,略切頭三角形状ディンプルの具体的構成態様について,該ディンプルの周辺の縁部の態様が,本願意匠は,縁部と窪み面の段差が大きく,縁部がリブ状をなしているのに対して,引用意匠は,縁部から窪み面にはなだらかに傾斜しており,縁部は稜線を呈しているのみである点。


4.本願意匠と引用意匠の類否判断

以上の一致点,共通点及び相違点を総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

両意匠は,物品が一致し,形態においても,共通点を多く有するものであって,とりわけ,共通点(B),同(D)及び同(E)は,両意匠と引用意匠(登録意匠第1332761号)の本意匠である登録意匠第1314379号の3つにのみ見られる態様であり,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度あると言わざるを得ない。

他方,相違点(ア)は,球体の表面の全体,すなわち,形態のほぼ全体に及ぶものであり,本願意匠では,略切頭三角形状ディンプルの平滑な平面状の窪み面と二重円形状ディンプルの,小円形状ディンプルを除いた部分の,大円形状ディンプルの浅く平らな窪み面が,全体として,本願意匠の球体の表面の平滑感を見る者に印象付けているのに対して,引用意匠は,略切頭三角形状ディンプルの窪み面には稜線が表されており,複雑な態様を見る者に示しているというべきであるが,本願意匠の態様は,この種物品分野の先行意匠に照らして,特徴的であるということができるので,この相違点のみでも前記の共通点の及ぼす影響を相当程度覆しているといい得る。
また,相違点(イ)は,それのみを見れば,部分的な相違ともいい得るが,相違点(ア)と関連して生じさせている視覚的効果,すなわち,引用意匠は,球体の表面に数多くの窪みが形成されているという印象を与えるものであるのに対して,本願意匠は,あたかも,平滑な球体の表面上に細筋状の網状部が覆い被さっているかのような印象を与えているといい得るものであって,それぞれの意匠において,相違する印象を一層大きくしており,結果として,見る者に,両意匠が別異であるとの感を強く与えているというべきである。

したがって,両意匠は,物品は一致するが,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響も一定程度あるとはいえ,両意匠の類否判断を決定付けているとまではいえないものであるのに対して,相違点が関連して生じさせている印象は,共通点の生じさせている印象を上回って,見る者に別異の感を与えており,両意匠は類似するということはできない。


5. むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第9条第1項の最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとすることはできないものであり,同条同項の規定により本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2011-05-06 
出願番号 意願2008-15467(D2008-15467) 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (E3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 杉山 太一
太田 茂雄
登録日 2011-06-10 
登録番号 意匠登録第1418208号(D1418208) 
代理人 福迫 眞一 

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