ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K3 |
---|---|
管理番号 | 1239779 |
審判番号 | 不服2010-28167 |
総通号数 | 140 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2011-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-12-13 |
確定日 | 2011-06-23 |
意匠に係る物品 | 足踏み式脱穀機 |
事件の表示 | 意願2009- 12179「足踏み式脱穀機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1 本願意匠 本願は,2009年(平成21年)5月29日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「足踏み式脱穀機」とし,その形態を願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当する(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)としたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:1995年(平成7年)3月27日)に記載された意匠登録第922172号(意匠に係る物品,足踏脱穀機)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 3 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「足踏み式脱穀機」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「足踏脱穀機」であって,両意匠の意匠に係る物品は一致する。 (2)本願意匠と引用意匠の形態 本願意匠と引用意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 (なお,対比のため,稲穂等を差し込む方を正面とする。) (i)共通点 基本的構成態様について (A)全体は,奥行きの長い略縦長直方体の機体であり,機体内部に回転ドラム,機体下部に足踏みペダル,機体上面に飛散防止カバー,機体側面に歯車カバーを設けた態様である点 具体的構成態様について (B)機体は,正面略上半部を機体枠に沿った垂直面,略下半部を手前から奥のドラム下底面に向かって低くなる傾斜面とした点 (C)回転ドラムは,表面に規則的に散点形成された略逆V字状線材がある点 (D)足踏みペダルは,全体が平面視回転コ字状で,機体下方両側枠の後方やや手前にその両端が枢着され,側部前方から略五分の二程度の位置に歯車との連結桿を有する点 (E)飛散防止カバーは,機体上面の,前方を除く上面の略四分の三の部位とこれに続き機体後方に張り出した領域にまたがる,機体本体の両側枠の内側部分に張設されたフード状のもので,前方は開口部,両側は垂直面,上方は後方に向かって低くなる傾斜面,後方背面は垂直面,後方下面は開放された形態である点,そして,カバーの天井の高さが最も高いのは,機体奥行きの中程をやや過ぎた付近であり,その位置より前方は,全面開口されており,両側の垂直壁は,この位置より手前に向かって直線状に次第に低くなる点 (F)歯車カバーは,機体右側面上方に位置し,板状部材を縦断面視略倒L字状に付設したものである点 (ii)相違点 具体的構成態様について (ア)機体上面手前角部の態様 本願意匠は,面取りした傾斜面であるのに対して,引用意匠は,断面円弧状面とした点 (イ)載置台の有無 本願意匠は,前方に機体上面と面一の載置台があり,この載置台は,奥行きが機体本体の奥行の略四分の一程度で,正面視で扁平な回転コ状,側面視では略直角三角形状を呈し,直角三角形の直角部が機体上面前端に接しているのに対して,引用意匠には,載置台が無い点 (ウ)飛散防止カバーの態様 本願意匠は,上方から後方にかけての天井面が横方向に三等分の面取り状として形成され,後方背面を連続して垂直面にして,左右両側面の下端を水平としているのに対して,引用意匠は,上方は大きな一つの傾斜面で,後方に至って垂直面を形成したのち階段状の細幅水平面を形成し,機体後方背面で再び垂直面となり,下端を傾斜面としている点 (エ)歯車カバーの態様 本願意匠は,機体側面の奥行きの前後に僅かな余白を残してほぼ全長にわたって付設されており,側面視で略横長長方形の両下端を角切りしたものであり,内部の歯車を完全に被覆しているのに対して,引用意匠は,機体側面の前方に寄せた略半分強の長さにわたって付設されており,側面視で略正方形の前方下角を大きく角切りしており,内部の歯車の一部が見える点 4.本願意匠と引用意匠の類否判断 以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 基本的構成態様としてあげた共通点(A)及び具体的構成態様としてあげた(C)回転ドラム(D)足踏みペダルについての共通点は,この種足踏み脱穀機,すなわち足でペダルを踏んで回転ドラムを回し,ドラム表面の線材に稲などの穂を引っ掛けて脱穀する物品の構造に基づいたごく一般的な形態の共通点に過ぎないものであり,(B)機体形状の共通点は,回転ドラムに巻き込まれず,また足踏みペダルを踏みやすくするためのごく一般的なカバー処理にすぎず,(E)飛散防止カバーがフード状である点,(F)歯車カバーの位置,縦断面視略倒L字形状の板体である点もこの種物品において,脱穀作業の効率や安全性から要求される例示するまでもなくありふれた態様であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であり,共通点全体としても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 これに対して,相違点(ア)機体上面手前角部の態様(イ)載置台の有無(ウ)飛散防止カバーの天井面及び背面の形態については,いずれも非常に目に付き易い部位に係るものであり(エ)歯車カバーの奥行等についても,ある程度目に付く部位であるところ,これらの部位について,本願意匠は,機体上面手前角部と飛散防止カバーの上方から後方にかけての天井面とを,共に面取り状に形成し,載置台についても上面は平坦面とし側面は略直角三角形状を呈する形状とした点,歯車カバーの略横長長方形の両下端を角切りした点と相まって,全体に角張った造形処理で統一されている。他方,引用意匠は,これらの部位において,機体上面手前角部が断面円弧状に処理されており,しかも載置台が無いためこのアール処理は非常に目に付く一方,飛散防止カバー及び歯車カバーは,これとは異なり平坦面の組み合わせで処理されており,なかんずく,飛散防止カバーの上面が大きな一つの傾斜面であり,その後方に階段状の部分が存在することは,前記のアール処理とは異なる,大きく角張った処理として強い印象を与えるものであり,引用意匠は,目に付き易い部位について,アール処理の箇所と平坦面処理の箇所をそれぞれ持つ,全体としての統一感がやや希薄な印象を与えるものである。したがって,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。 両意匠は,意匠に係る物品は,一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2011-06-09 |
出願番号 | 意願2009-12179(D2009-12179) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(K3)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中田 博康、中村 遥子、並木 文子 |
特許庁審判長 |
遠藤 行久 |
特許庁審判官 |
杉山 太一 早川 治子 |
登録日 | 2011-07-29 |
登録番号 | 意匠登録第1421794号(D1421794) |
代理人 | 吉井 雅栄 |
代理人 | 吉井 剛 |