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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 H7
管理番号 1243093 
審判番号 不服2010-26699
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-26 
確定日 2011-06-06 
意匠に係る物品 有線放送用受信機 
事件の表示 意願2009- 7744「有線放送用受信機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1 本願意匠
本願は,2009年(平成21年)4月3日の意匠登録出願(意願2009-007744号)であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「有線放送用受信機」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第9条第1項の規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとしたものであって,原審が拒絶の理由に引用した意匠は,意匠登録第1359883号(出願番号:意願2008-014299,出願日:2008年(平成20年)6月5日,意匠に係る物品「有線放送用受信機」)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「有線放送用受信機」であり,引用意匠の意匠に係る物品も,「有線放送用受信機」であって,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

(2)本願意匠と引用意匠の形態における主な共通点と相違点
両意匠は,全体は,略縦長長方形盤であり,(あ)正面の右側に操作・表示部を設け,左側上部にスピーカ部を設けた点,(い)左側面上部にアンテナを配置した点,(う)正面右半分の上部約四分の三の領域を操作・表示部として,その全体を隅丸縦長長方形の枠で囲い,枠内の上半分を表示部,下半分を操作部とした点,操作部についてさらに上に矩形状の平らなボタンを左右振り分け状に配し,右下に円形つまみを配した点が,主として共通する。
他方,両意匠間には(ア)正面左半分の態様について,本願意匠は上部約四分の三の領域を略かまぼこ形の縦長突出部とし,その下方約四分の一の領域に前記かまぼこ形突出部と同幅の,同様に略かまぼこ形に突出形成した開閉扉としたのに対し,引用意匠は,略平坦面状である点,(イ)背面の態様について,本願意匠は左右両端付近に細い縦溝を形成し,背面視右上にこの縦溝に連続させた略変形四角錐台形状凹部を設けたのに対して,引用意匠は全面平坦である点,(ウ)スピーカ用孔について,本願意匠は,横方向スリット状に多数段設けたのに対して,引用意匠は,極小矩形孔を多数上下左右に規則的に散点配置させた点において構成態様上の主な相違点がある。

4 本願意匠と引用意匠の類否判断
両意匠に係る物品は,住宅の各戸内にCATVシステムを利用して設置される,各住宅区域内での緊急避難命令等の各種緊急放送を受信するための機器であり,この種物品の需要者は主として一般の生活者で,使用にあたっての設置場所としては,住宅屋内の目に付きやすい壁面に掛けたり,手近な棚に載置したりすることが多く,需要者は,正面の態様を中心としながら,意匠全体を観察するものと認められる。
そこで,前記共通点及び相違点を総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討すると,共通点については,全体が略縦長長方形盤である点は,機器の形状としては例を挙げるまでもなくごく一般的な形状であり,(あ)正面のスピーカ部と操作・表示部の配置は,この種物品におけるごく一般的な配置であり(意匠登録第983202号意匠参照),(い)アンテナについても,例示するまでもなく受信機としてごくありふれた配置のありふれた態様にすぎないから,これらの共通点が類否判断に及ぼす影響は小さい。(う)の操作・表示部については,最も目に付きやすい正面の,右半分上部約四分の三の領域を占めていて,表示部と操作部の分割構成,操作部の具体的態様も共通しているため,類否判断上一定の影響を与えると認められる。
これに対して,相違点については,(ア)正面左半分の態様についての相違は,最も目に付きやすい正面の,左半分という大きな領域における差異であり,また両物品の使用目的が緊急放送の受信であることを勘案すると,本願意匠の該部の態様が,緊急時以外の日常にあっては,ゆるやかな略かまぼこ形の突出が安心感を与え,また緊急放送の受信に際しては,需要者の大多数を占める右利きの需要者は,右手で操作部のボタンを押したり,つまみを回したりする時に,左半分の略かまぼこ形の突出部に左手を添えること等が想定され,また下方約四分の一の領域にある開閉扉の形態を,その上部のかまぼこ形突出部とそろえた態様である点は,引用意匠の該部が平坦面であって,単純ですっきりした形態であるのとは,視覚的効果を異にするものであり,この相違点が類否判断に与える影響は大きいと認められる。次に(イ)背面の態様についての相違は,この物品を設置してしまえば通常目に付きにくい箇所の相違であるものの,本願意匠が左右両端付近に細い縦溝を形成し,背面視右上にこの縦溝に連続させた略変形四角錐台形状凹部を設けた点は,配線の便のみならず,正面の丸みをおびた柔らかな形態とは異なる力強い印象を付加するものであって,引用意匠の平坦面とは異なる造形的効果を表出しており,この相違点は,類否判断に一定の影響を与えると認められる。(ウ)スピーカ用孔についての相違は,限られた範囲の,どちらもスピーカ用孔としては例示するまでもないくらいありふれた態様にすぎないものであるが,(ア)と組み合わさったときに,それぞれの造形処理の相違を引き立てる,僅かなりとは言え一定の効果を与えているため,類否判断に与える影響も全く無いとは言えない。
共通点と相違点を意匠全体として比較すると,共通点が類否判断に与える影響は,小さいか一定程度であるのに対して,相違点が類否判断に与える影響は,(ア)が大きく,(イ)が一定程度あり,(ウ)が無いとは言えないものであり,また,これらが組み合わさった効果を総合すれば,もはや相違点が共通点を凌駕して類否判断を支配していると言える。
したがって,本願意匠は,引用意匠と類似しない。

5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第9条第1項の最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとすることはできないものであり,同条同項の規定により本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2011-05-19 
出願番号 意願2009-7744(D2009-7744) 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 裕和本多 誠一 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 杉山 太一
早川 治子
登録日 2011-09-02 
登録番号 意匠登録第1424402号(D1424402) 
代理人 広川 浩司 

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