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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1243096 
審判番号 不服2010-25972
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-17 
確定日 2011-07-28 
意匠に係る物品 火災警報器 
事件の表示 意願2010- 5576「火災警報器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする2010年(平成22年)3月8日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は,「火災警報器」であり,その「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)」は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界を示す線である」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願意匠」という。)。(別紙第1参照)

すなわち,本願意匠は,(1)室内の壁面などに取付けて用いられる火災警報器に係る部分意匠であり,(2)煙検知部を内装したケース本体の前面パネルの外周部の一定幅の形状について意匠登録を受けようとするものであって,具体的には,(3)正面視隅丸正方形状のケース本体の前方に形成された前面パネルの,(3-1)扁平な略隅丸四角錐台状部の平坦な頂面の一部分である縁部周縁及び外周部の傾斜面全体,並びに,(3-2)扁平な略隅丸矩形盤状の外周縁部の一部分を部分意匠としたもので,(4)該傾斜面は,円弧中心とする凹弧面状に形成したものであり,(5)頂面と傾斜面の境界は角張っており,(6)凹弧面状の傾斜面と丸縁状に面取りされた外周縁部の境界は,なだらかに形成されており,(7)扁平な略隅丸矩形盤状の外周縁部を丸縁状に面取りしたものである。

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。


「この種の物品分野において,略縁部の形状を外側に向かって低くなる斜面とし,さらにその斜面部をインバース面(凹面)とする手法(引用意匠1,引用意匠2),外周角部を面取りする手法(引用意匠2)は本願出願前より極一般的に見られるところ,この意匠登録出願の意匠は,本願出願前より極一般的に見られる角丸中抜き四角形の略縁部(引用意匠3)の斜面部を,単にインバース面(凹面)とし,外周角部を面取りする程度で創作できるものであり,容易に創作できたものと認められます。」

(引用意匠1)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1276156号の意匠
感震ライト付き火災報知器の意匠の略縁部
(別紙第2参照)

(引用意匠2)
特許庁総合情報館が1995年 2月10日に受け入れた
INTERNI 1994年11月30日
第170頁所載
非常表示灯の意匠の略縁部
(特許庁意匠課公知資料番号第HB07005397号)
(別紙第3参照)

(引用意匠3)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第0702095号の意匠
防災用信号中継器の略縁部
(別紙第4参照)


第3 請求人の主張の要点
これに対し,請求人は,本件審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。

本願意匠は,『インバース面(凹面)の逆アールの円弧中心Pを,ケース本体の外周面よりも少し外方側に偏倚した部位を通る垂直線X上で,かつ,ケース本体の表面から前方側に大きく偏倚した位置に設定して,緩傾斜で長い円弧状のインバース面の中でも立ち上がり角度が最も大きくなる内周縁とケース本体の表面の外周縁とで形成される内周角部を先鋭な境界ラインとして表し,スピーカ用孔やスイッチ等が配設される中央表示面の存在感を際立たせる形態に構成した』ことを一つの特徴にあげているが,引用意匠3は,それの当該部分を外側から内側へ観察すると,垂直面及びエッジ部,単純形状の平滑な斜面部,エッジ部及び平坦部へ繋がる直線基調の角張った形態が特徴である。
それゆえに,本願意匠と特徴的形態が大きく相違する引用意匠3の斜面部をインバース面(凹面)に置き換えるという発想が生じず,しかも,インバース面の逆アールの円弧中心Pを,ケース本体の外周面よりも少し外方側に偏倚した部位を通る垂直線X上で,かつ,ケース本体の表面から前方側に大きく偏倚した位置に設定するという創作思想がなければ,仮に,引用意匠3の斜面部をインバース面に置き換えても,本願意匠のような特徴のある独創的なインバース面を得ることができない。
引用意匠1の場合には,正面図視において傾斜面同士が直交する角部を有さない長円形状であり,しかも,環状斜面に表される円弧状のインバース面の造形手法が本願意匠とは全く相違し,さらに,環状斜面の内周角部及び外側角部の処理形態も本願意匠とは全く逆の関係にあるため,引用意匠1の周知形態を引用意匠3の形態にただ単に置換しても,本願意匠の特徴的な形態を得ることができず,本願意匠の特徴的な形態を得るためには複数段階での創作活動が要求される。
したがって,例示意匠1?3の周知形状が存在していても,上述した本願意匠のような創作思想が存在しないため,これら周知形状から本願意匠を容易に創作することができるものではない。


第4 当審の判断
請求人の主張を踏まえ,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,意匠の創作容易性について検討し,判断する。

本願意匠は,火災警報器の煙検知部を内装したケース本体の前面パネルの外周部の一定幅の形状について意匠登録を受けようとするものであって,その形態に関する構成態様は,第1の項で述べたとおりであるが,「(4)該傾斜面は,円弧中心とする凹弧面状に形成」した点は,引用意匠1及び同2に表された凹弧面と形状が異なり,また,「インバース面」として周知な形状ということもできないものである。さらに,「(3-1)」の「扁平な略隅丸四角錐台状部」そのものも,引用意匠3とは異なるものであるから,引用意匠3の傾斜面を,引用意匠1及び同2に表された凹弧面とすれば,本願意匠の形状になるということはできない。
これに加えて,「(6)凹弧面状の傾斜面と丸縁状に面取りされた外周縁部の境界は,なだらかに形成されて」いる点,「(7)扁平な略隅丸矩形盤状の外周縁部を丸縁状に面取りした」点が,それぞれ引用意匠2にも見られる他,極普通に見られる態様であるとしても,前記に加えて,それらをすべて組み合わせなければ,本願意匠の構成態様とすることができないとすれば,これを当業者が容易に創作することができたものということはできない。

そうであるとすれば,上記のとおりであって,引用意匠1ないし3の存在を前提としたとしても,本願意匠の構成態様は,到底容易に導き出せるものではない。
したがって,本願意匠は,当業者であれば,容易に創作することができたということはできない。


第5.むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状の結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときに該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2011-07-13 
出願番号 意願2010-5576(D2010-5576) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松田 光太郎 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 太田 茂雄
杉山 太一
登録日 2011-09-02 
登録番号 意匠登録第1424403号(D1424403) 
復代理人 宮地 正浩 
代理人 北村 修一郎 
代理人 北村 修一郎 
復代理人 宮地 正浩 
復代理人 東 邦彦 
復代理人 東 邦彦 

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