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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1253440 |
審判番号 | 不服2011-21329 |
総通号数 | 148 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2012-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-03 |
確定日 | 2012-02-28 |
意匠に係る物品 | 高輝度放電ランプ |
事件の表示 | 意願2010- 22296「高輝度放電ランプ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする2010年(平成22年) 9月16日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「高輝度放電ランプ」とし,その「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)」を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下,「引用意匠」という。)に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するというものであって,その形態は,同公報の図版に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 記 特許庁発行の登録実用新案公報記載 実用新案登録第3021094号 【図1】にあらわれた放電ランプの意匠 なお,原審においては,拒絶査定の際に,高輝度放電ランプにおいて,「三重構造」がありふれた態様であるとして,以下の参考意匠の1及び同2が示されている。 (参考意匠) 1.独立行政法人工業所有権情報・研修館が2007年 4月13日に受け入れた IWASAKI LIBRARY 第33頁所載 セラミックメタルハライドランプの意匠(別紙第3上段参照) (特許庁意匠課公知資料番号第HC19003034号) 2.電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2007年 3月27日 受入日 特許庁意匠課受入2007年 4月13日 掲載者 株式会社東芝 表題 東芝ライテック(株)|プレスリリース|2007年3月2日 掲載ページのアドレス http://www.tlt.co.jp/tlt/topix/press/p070302/p070302.htm に掲載された「電球」の意匠(別紙第3下段参照) (特許庁意匠課公知資料番号第HJ18042758号) 第3 請求人の主張の要点 審判請求人は,請求の理由において,概要以下のとおり主張した。 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)本願意匠と引用意匠とは,前者が発光管,内管及び外球から成る三重構造であるのに対して,後者が発光管と外球から成る二重構造であり,基本的構造が異なるものである。例え,三重構造の参考意匠が存在していても,引用意匠の基本的形態が変更される訳ではない。 (2)(iii)の差異点(引用意匠には存在しない,本願意匠の特異な形態の内管) 出願書類の「意匠の説明」で記載し,且つ添付の「A-A断面参考図」に示すように,内管5-1,5-2は,各々,口径の多少異なる2個の試験官形状の透明石英管を組み合わせて形成された密封型内管である。上下の両端部は半球形状の透明体から成り,中間部は円筒形状が二重に形成された透明体から成る。この内管は,新規開発の本願の高輝度放電ランプ用として,新たに開発されたものである。 引用意匠には,内管自体が存在しない。 更に,参考意匠の1及び同2に表された内管は,いずれも単なる円筒形状であり,その周囲にワイヤをらせん状に巻き付けて強度を増した内管である。即ち,上下の両端部が開放された開放型内管であり,2個の部材を組み合わせて形成された構造でもない。従って,高輝度放電ランプにおいて,本願意匠の特異な形態の内管は,ありふれて形成されている態様ではない。 (3)(iv)の差異点(内管同士を結束する固定金具の有無) 本願意匠の2個の内管は,長手方向の上部の1箇所で,固定金具により相互に拘束され支柱に取り付けられている。 引用意匠の固定金具は,各発光管の両端部に夫々あり(即ち,2箇所にあり),発光管を相互に拘束していない。従って,2個の並置された内管が固定金具によって吊り下げられているような印象は生じない。 2.本願意匠と引用意匠との類否 上述したように,差異点を個別評価すると,(iii)の差異点(本願意匠の特異な形態の内管)は,ランプのサイズが一般に非常に大きいので内管自体も大きく,新規開発された特異な形態の内管は,参考意匠を考慮してもありふれたものでないことから需要者の注意を強く引くものである。(iv)の差異点(内管同士を結束する固定金具)は,ランプサイズが一般に非常に大きいので固定金具自体も大きく,且つ透明部材中に存在する金属体の存在は非常に目立つことから需要者の注意を強く引くものである。 本願意匠に係る高輝度放電ランプは,意匠全体として観ると,二重の円筒状で両端部が半球状に形成された内管が,ランプ軸線に沿って2本並置され,ランプの球体内で大きな空間を占めている。2個の内管は,正面図で見て上部で,金属色の固定金具に相互に拘束され支柱に取り付けられている。この特異な形態の内管及び取り付け態様は,本願意匠の要部であり,意匠創作の中心をなすものである。 引用意匠は,扁平な発光管を上下両端で枠形金具に個別に固定したものであり,内管は存在しない,基本的構造は発光管と外球から成る二重構造である。従って,内管の存在しない引用意匠には,本願意匠の要部であり,意匠創作の中心をなすものは存在しない。 更に,引用意匠に,内管1個の参考意匠の1及び同2のデザイン要素を加味したとしても,1個の内管内に発光管を納めるものである。引用意匠や参考意匠に,本願意匠の2個の内管を並置する創作意図は見出せない。 参考意匠1及び同2の存在を考慮しても,引用意匠と本願意匠を全体的に対比観察すれば,引用意匠は二重構造であり,本願意匠は三重構造であり,本願意匠の特異な形態の内管が2個並置された態様の意匠全体に与える影響は大きく,内管を拘束する金属製固定金具の意匠全体に与える影響も大きく,本願意匠と引用意匠とは全く別個に創作されたものである。 本願意匠は,引用意匠と非類似の関係にある。 第4 当審の判断 本願意匠と引用意匠を対比すると,本願意匠の意匠に係る物品は,「高輝度放電ランプ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「高圧放電ランプ」であって,両意匠の意匠に係る物品は,共通し,本願意匠と引用意匠の形態については,(A)全体は,外球が,JIS(日本工業規格)において「BT形ガラス球」と呼ばれる,長楕円体の長手方向に細長い円柱を貫通させた相貫体状の透明なガラス体であって,その下端に口金を形成したものであり,(B)外球内部に長手方向に並列配置した2連の発光管と,外球内部の頂面に接する環状保持部材と側面視縦長な略倒「コ」状の支柱等を主とした支持部材,リード線等が配設されたものである点が主として共通するものの,相違点としては,外球内部の具体的構成態様について,(ア)本願意匠は,2本の試験管形状の透明管を組み合わせて形成した内管を長手方向に並列配置し,内管の上部に巻き付けた環状の固定金具を介して支柱に固定し,その内管の内部に発光管を配置し,その上下の電極が内管を貫通しているものであるのに対して,引用意匠に内管はなく,発光管は,略長楕円体の上下両端部を板状に成形して電極とした態様で,側面視略縦長矩形状をなし,その上下の板状端部に支持板を形成したものである点が主としてある。 そこで,以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断すると,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,形態については,共通点(A)は,両意匠の形態全体に係るものではあるが,汎用性,規格準拠等という物品の性格から不可避な形状等の構成態様であるし,共通点(B)も両意匠の外球内部の態様を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであるから,これらの共通点が両意匠の類否判断を直ちに決定付ける程に大きいとはいえないのに対して,相違点(ア)は,本願意匠が「外球,内管,発光管」という三重構成であるのに対して,引用意匠は,「外球,発光管」という二重構成であり,また,原審が拒絶査定において掲げた参考意匠の1及び同2において,「外球,内管,発光管」という三重構成が本願出願前において見られたものであるとしても,内管の形状が全く異なるし,また,「内管,発光管」が2連に並列配置した構成態様を示すものでもないところ,本願意匠が2本の試験管形状の透明管を組み合わせて形成した内管を長手方向に並列配置し,内管の上部に巻き付けた環状の固定金具を介して支柱に固定し,その内管の内部に発光管を配置し,その上下の電極が内管を貫通しているものである点は,これらの先行公知意匠に照らし合わせても,本願意匠のみに特徴的なものであり,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,極めて大きく,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕しており,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,共通するが,形態においては,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するものではない。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2012-02-16 |
出願番号 | 意願2010-22296(D2010-22296) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 恭子 |
特許庁審判長 |
瓜本 忠夫 |
特許庁審判官 |
樫本 光司 杉山 太一 |
登録日 | 2012-03-09 |
登録番号 | 意匠登録第1437770号(D1437770) |
代理人 | 大平 拓治 |
代理人 | 高橋 要泰 |