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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D6 |
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管理番号 | 1259675 |
審判番号 | 不服2012-1077 |
総通号数 | 152 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2012-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-01-19 |
確定日 | 2012-06-26 |
意匠に係る物品 | 脇机 |
事件の表示 | 意願2010- 1275「脇机」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,平成22(2010)年1月21日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品が「脇机」であり,その形態は,願書及び願書添付の図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。 2.引用意匠 原審において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由として引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報掲載の意匠登録第1302147号「事務用品キャビネット」の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 3.当審の判断 両意匠を対比すると,いずれも底部にキャスターを備えた,収納部を有する「脇机」に係るものであるから,意匠に係る物品が共通し,その形態については,主として以下の共通点及び差異点が認められる。 (1)共通点 (A)両意匠は共に,上下に3段の引き出しを有する脇机で,全体は,縦長直方体状の収納本体部(以下,「本体部」という。)と底部のキャスター部(以下,「キャスター部」という。)から構成され,各引き出しは,前面板の中央付近が窪んで手掛部(以下,「手掛部」という。)となっているものである点,(B)各引き出しは,上段及び中段の2段が高さの低い引き出しで,引き出しの前面板の下辺に断面逆J字状に窪んだ手掛部があり,下段が高さの高い引き出しで,引き出しの前面板の上辺に窪んだ手掛部がある点,(C)キャスター部は,側面視半円弧状のカバー部(以下,「カバー部」という。)と垂直棒状軸部を有した2輪のキャスターが,四隅と前面側中央に合計5個設けられている点,において共通する。 (2)差異点 (a)本体部について,本願意匠は,引き出しの前面板の幅より本体部の幅が広く,天板が僅かに正面から視認でき,本体部の横と縦及び奥行きの比が,約1:1.5:1.2であるのに対して,引用意匠は,引き出しの前面板の幅が本体部の幅と同じで,天板が正面から視認できず,本体部の横と縦及び奥行きの比が,約1:1.2:1である点,(b)正面視における各引き出しの高さの比が,本願意匠は,約1:2:4.3で,上段が中段より低く,下段の高さの割合が大きいのに対して,引用意匠は,約1:0.7:2.5で,上段の方が中段より高く,下段の高さの割合がさほど大きくない点,(c)引き出しの前面板の態様について,本願意匠は,上段と中段の前面板の下方に側面視でアール状の段差部を設け,アール状の手前の前端に面取りを設け,それが二重線となって正面に表れ,さらに前面板の境界線が細い二重線となって表れるのに対して,引用意匠は,上段と中段の引き出しの下方及び下段の引き出しの上方に側面が直角状の段差部を設け,段差部の上端の線と前面板の境界線が二重線となって正面に表れ,さらに中段と下段は段差部の上端と下端の線の間に前面板の境界線が表れている点,(d)引用意匠は,上段のみの引き出しを収納している上段筐体部(以下,「上段筐体部」という。)と,中段及び下段の引き出しを収納している下段筐体部(以下,「下段筐体部」という。)の2つの筐体を有し,上段筐体部が筐体ごと取り外し可能で,その側面部に取り付け用の円形状ビス部を前後に2箇所ずつ設け,下段筐体部の上部にも天板を設けているのに対して,本願意匠は,3段の引き出しが一体の本体部に収納されていて,側面部の円形状ビス部や中段の引き出しの上部に天板を設けていない点,(e)キャスター部について,本願意匠は,キャスター部が下段の引き出しの前面板及び本体部の側面板に隠されて外側から車輪の上半部やカバー部及び垂直棒状軸部が見えない状態であるのに対して,引用意匠は,車輪全体とカバー部及び垂直棒状軸部が外側から視認できる点,(f)本願意匠は,上段の引き出しの前面板の左寄りに外形状が円形の鍵穴があるのに対して,引用意匠には鍵穴がない点,に差異が認められる。 (3)類否判断 そこで検討するに,共通点の態様のうち,共通点(A)の態様は,この種の物品の分野においては,他にも見られるものであり,両意匠を概括的に捉えたものに過ぎず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいというほかない。共通点(B)の態様も,普通に見受けられる態様であって,両意匠のみの特徴ではないから,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼす共通点ということはできない。共通点(C)の態様も,他にも見受けられる態様であって,その点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。そして,共通点全体としても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 これに対して,下記考察のとおり,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,看者の注意を強く惹くものであるから,両意匠の類否判断を左右するものというべきである。 すなわち,差異点(a)及び同(b)に係る態様は,本体部及び引き出し部における差異で,その差異は,両意匠の基本的な構成態様における差異点で,各種のサイズがある中での両意匠の態様差ではあるが,全体として両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。次に,差異点(c)に係る態様は,引き出しの前面板における具体的な形状における差異であって,使用時に注意を惹く部分であり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。また,差異点(d)に係る態様は,使用時の態様に係る差異であって,取り外し可能な上段筐体部かどうかは使用者の注意を惹く部分といえ,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。さらに,差異点(e)及び同(f)に係る態様については,それぞれの部位に係る差異が部分的なもので,それらのみでは両意匠の類否判断に与える影響は大きいとはいえないが,差異点(a)ないし(c)に係る態様と相俟って,両意匠が別異であるとの印象を与えるものである。 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,意匠全体として看者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似するということはできない。 4.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原審の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2012-06-13 |
出願番号 | 意願2010-1275(D2010-1275) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 植山 陽子、川崎 芳孝 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 下村 圭子 |
登録日 | 2012-07-06 |
登録番号 | 意匠登録第1448126号(D1448126) |