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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1261391 
審判番号 不服2011-27402
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-20 
確定日 2012-07-17 
意匠に係る物品 医療用コネクタ 
事件の表示 意願2011-897「医療用コネクタ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由
第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする2011年(平成23年)1月18日の意匠登録出願であって,その意匠は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「医療用コネクタ」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である」としたものである(以下,本願について部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願意匠」という。)(別紙第1参照)。


第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前に日本国特許庁が発行した意匠公報(意匠公報発行日:2008年(平成20年)5月19日)に記載された意匠登録第1329997号(意匠に係る物品,医療用コネクタ)の意匠であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである(以下,本願意匠に相当する部分の意匠を「引用意匠」という。)(別紙第2参照)。


第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比

(1)本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品と,引用意匠の意匠に係る物品は,いずれも「医療用コネクタ」であり,一致する。

(2)本願意匠と引用意匠の用途と機能,及び位置,大きさと範囲
本願意匠と引用意匠は,ともに医療用コネクタの一つである三方活栓の,略円筒形状の本体の略中央から,垂直方向に連結した混注ポートの先端に,段差を設けて延設したやや小径のねじ部と,その内方の弁体部からなる部分に関するものであるから,両意匠の用途と機能,及び位置,大きさと範囲は,一致する。

(3)本願意匠と引用意匠の形態
本願意匠と引用意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。

(i)共通点
両意匠は,主に以下の点において共通する。

(A)全体が略円筒形状のもので,外周をねじ部とし,その内方を弁体部としたものである点,
(B)ねじ部の態様について,外周に断面略台形状のねじ山を設けて,雄ねじ状のものとした点,
(C)弁体部の態様について,上端面に,一の字状の接続口を設けたものである点。

(ii)相違点
一方,両意匠は,主に以下の点において相違する。

(ア)ねじ山を除いたねじ部(雄ねじの各谷底に接する仮想的な筒体外周部,以下,「外周部」という。)の態様について,(ア-1)本願意匠は,その中心軸の大方が,混注ポートの垂直な中心軸に対して,正面視で左へ約10度傾き,上端近傍のみが垂直となる,ゆがんだ略円筒形状のものであるのに対し,引用意匠は,外周部の中心軸が,混注ポートの垂直な中心軸と同軸で,上下二段に分かれた態様であって,上方は略円筒形状,下方は略円錐台形状のものであり,また,(ア-2)本願意匠は,外周部上端が角ばったものであるのに対し,引用意匠は,外周部上端を隅丸状にしたものである点,
(イ)ねじ山について,本願意匠は,ねじ部下端に,ねじ外径と同径で隅丸の細幅縁部を周設し,ねじ山下端を当該縁部から連なるようにして,ねじ部上端まで,ねじ山を設けたものであるのに対し,引用意匠は,ねじ部下端に,かかる細幅縁部を設けず,ねじ部下端から,ねじ部上端やや下方までの部位に,ねじ山を設けたものである点,
(ウ)弁体について,本願意匠は,弁体の上面を,ねじ部上端小口面よりやや窪ませたものであるのに対し,引用意匠は,弁体の上面を,ねじ部上端小口面と略同じ高さとしたものである点。

2.本願意匠と引用意匠の類否判断

以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,当該評価を総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

両意匠は,意匠に係る物品が一致するところであるが,形態については,以下のとおりである。

(1)共通点の評価
共通点(A)ないし(C)については,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり,また,この種物品の態様としては,本願出願前から極めて一般的に見受けられる態様であることから,かかる点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいと言わざるを得ない。

(2)相違点の評価
これに対して,相違点(ア-1)については,両意匠の基本構成に関わるものであって,形態全体の美感に及ぼす影響は大きく,また,本願意匠の外周部中心軸が,混注ポートの垂直な中心軸に対して,正面視で左へ約10度傾き,上端近傍のみが垂直となる態様は,この種物品の先行意匠に照らして本願意匠のみの特徴であり,さらに,当該部位は,医療用管の連結作業における完全性が求められるこの種物品分野においては,需要者の注意をひくところであることから,かかる相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。
そして,相違点(ア-2),同(イ)及び同(ウ)については,部分的な相違ではあるものの,両意匠の類否判断に一定の影響を及ぼしており,これら相違点が相まった視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として需要者に別異の美感を起こさせるものであるというべきである。

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,共通点のそれを凌駕していることから,両意匠は意匠全体として見た場合,需要者に別異の美感を起こさせるに至っているというべきであり,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。


第4 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものであるということはできないから,同条同項柱書によって,本願意匠を拒絶することはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2012-06-29 
出願番号 意願2011-897(D2011-897) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川崎 芳孝 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 下村 圭子
橘 崇生
登録日 2012-08-03 
登録番号 意匠登録第1450162号(D1450162) 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 

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