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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K5
管理番号 1262902 
審判番号 不服2012-1250
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-23 
確定日 2012-08-28 
意匠に係る物品 ミシン 
事件の表示 意願2011-1698「ミシン」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2011年(平成23年)1月27日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「ミシン」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。


第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたもので,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前に日本国特許庁が発行した意匠公報(意匠公報発行日:2005年(平成17年)11月21日)に記載された意匠登録第1256424号(意匠に係る物品,ミシン)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。


第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品と,引用意匠の意匠に係る物品は,いずれも「ミシン」であって,一致する。

(2)本願意匠と引用意匠の形態
本願意匠と引用意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。

(i)共通点

(A)全体について,(A-1)下部を,平面視略横長長方形状の扁平な略直方体形状のベッド部とし,(A-2)該ベッド部右端の上面に,前面側を上向き傾斜面とし,背面側を略垂直な面とした右側面視略縦長台形状の立胴部を立設し,(A-3)該立胴部上端から,ベッド部左端やや内方位置の上方まで,太いアーム部を水平に延設し,(A-4)その先端部を下方へやや垂下させてアーム部の頭部を形成したものである点,

(B)ベッド部は,その左前方部を,補助床としている点,

(C)立胴部の態様は,(C-1)正面視における横幅を,ベッド部の横幅の約3分の1とし,(C-2)前面を,上向き傾斜面とするとともに右端から左端にかけて漸次背面側へ後退させ,(C-3)前面の上寄りに横長長方形状のパネル部を設けたものであって,(C-4)右側面上部に,略円盤状のプーリーを設けている点,

(D)アーム部の態様は,(D-1)上部後側に可動ハンドル部を設け,(D-2)左側面視で横幅が最大となる部分(以下,「最突出部」という。)の前後長は,ベッド部の前後長の約半分強とし,(D-3)頭部は下方を先細りにし,その頭部の前面右端に小区画部,底面に針運び部をそれぞれ設けた点。

(ii)相違点

(ア)ベッド部の態様について,(ア-1)本願意匠は台座を有さないものであるのに対し,引用意匠は台座を有するものであり,(ア-2)本願意匠の立胴部を載せた部位の前面は,平面視において水平線に対し約5度の角度で,左方から右方に向けて漸次前方へ突出させたものであるのに対し,引用意匠のものには,そのような突出が無い点,

(イ)立胴部の態様について,(イ-1)本願意匠は前面の側面視した傾斜角度が約74度であるのに対して,引用意匠はこれが約70度であり,(イー2)本願意匠のパネル部周囲の枠部(請求人がいうところの「模様部」)は,正面視において,略正方形状であるのに対し,引用意匠のものは,一方の脚を円弧状にした略倒直角台形状であり,(イ-3)本願意匠の当該枠部は,上辺を最突出部に合わせ,下側に余地部を残した部位に設け,かつ,枠部の右端が,立胴部右側面に僅かに回り込んだ態様としたものであるのに対し,引用意匠のものは,ミシン上端面から立胴部下端近傍までの部位に設けたものであり,(イ-4)本願意匠のプーリーは,右側面から直接突出するように設けたものであるのに対し,引用意匠のものは,プーリーの根本部に一回り広径の円形凹部を同心円状に設けたものである点,

(ウ)アーム部の態様について,(ウ-1)本願意匠においては,前面の最突出部の形状線が,正面視左端から右端まで水平に伸直しているのに対し,引用意匠においては,正面視左端から立胴部手前まで水平に伸直し,該部から下方へ湾曲して立胴部前面と左側面の角部を形成しており,(ウ-2)本願意匠は,上面の前端寄りの部分を,最突出部へ向けて左側面視略円弧状に,緩やかに湾曲させているのに対し,引用意匠は,上面の前端を,最突出部まで下方へ約70度の上向き傾斜面としており,(ウ-3)本願意匠は頭部前面右端の小区画部を,正面視略台形状の暗調子のものとし,その内方に3つの小円を配したものであるのに対し,引用意匠は,同小区画部を,略S字形状のものとし,その内方の下端部近傍に,略木の葉形状部を設けたものである点。

2.本願意匠と引用意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,当該評価を総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品が一致するところであるが,形態については,以下のとおりである。

(1)共通点の評価
共通点(A)については,形態全体にわたるものであるものの,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり,また,この種物品においては,本願出願前から極めて一般的に見受けられる態様であることから,かかる点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。
また,共通点(B)ないし(D)の各態様も,この種物品の先行意匠に照らすところ,いずれも一般的な態様ないし細部の態様であることから,両意匠の類否判断に及ぼす影響も微弱であるというほかなく,共通点全体としても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(2)相違点の評価
これに対して,相違点(ア-1),同(ア-2),同(イ-1),同(ウ-1)及び同(ウ-2)については,両意匠の基調をそれぞれに形成しているものであって,両意匠の形態全体の美感に及ぼす影響は大きく,類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
また,相違点(イ-2),同(イ-3)及び同(ウ-3)についても,物品の使用の態様を考慮すれば,いずれも前面の目につきやすい部位に係るものであり,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
そして,その他の相違点は,それのみでは両意匠の類否判断に与える影響が大きいとはいえないとしても,上記の各相違点とともに,両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものであるから,これらの相違点に係る態様が相まって生じる視覚的効果は,上記共通点のそれを凌ぎ,別異の美感を起こさせるものである。

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,形態においては,意匠全体として見た場合,需要者に別異の美感を起こさせるに至っているというべきであり,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。


第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものであるということはできないから,同条同項柱書によって,本願意匠を拒絶することはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2012-08-10 
出願番号 意願2011-1698(D2011-1698) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 生亀 照恵 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 下村 圭子
橘 崇生
登録日 2012-09-28 
登録番号 意匠登録第1453933号(D1453933) 
代理人 荒船 博司 

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