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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 F4
管理番号 1262910 
審判番号 不服2012-14034
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-23 
確定日 2012-09-18 
意匠に係る物品 包装用箱の切断刃 
事件の表示 意願2009-23588「包装用箱の切断刃」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,2009年(平成21年)10月8日に出願されたものであり,その意匠は,願書の記載及び願書に添付した図面の記載内容によれば,意匠に係る物品を「包装用箱の切断刃」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものであり,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である」としたもの(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願意匠」という。)である(別紙第1参照)。

すなわち,本願意匠の形態は,基本的構成態様において,全体が直線状の略短冊形状であり,その長手方向上縁部に沿って鋸歯を形成し,その鋸歯の態様について,中央部に,最も大きい刃山からその左右両側の各7個の刃山にかけて順次刃の高さと刃幅を小さくなるように並べ(以下,「中央刃部分」という。),両端部は,右端部左端部それぞれ17個の刃山が端にかけて順次大きくなるように並べ(以下,「端部刃部分」という。),中央部と両端部に挟まれた中間部は,刃谷が略台形状であり,刃の根元が丸みを帯びている態様のものが並んでいる(以下,「中間刃部分」という。)ものである。

第2 原審の拒絶の理由
原審における,平成23年10月3日付けの拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には下記のとおりである。

「この意匠登録出願の意匠は,下記に示すように,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められますので,意匠法第3条第2項の規定に該当します。

この意匠登録出願の意匠は,包装用箱の切断刃に係るものですが,この種物品の分野において,部分毎に大きさや形状の異なる切断刃群を配することは,意匠1,2でも明らかなように本願出願前より公然行われているところ,この意匠登録出願の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は,出願前より広く知られた全体形状が直線状で刃谷が台形状をした鋸歯が連続している意匠(意匠3)の中の,中央部と両端部に,意匠4を,中央部には,中央エリア部分を殆どそのまま配し,両端部には,端部に向けて約8個漸次鋸歯が大きく成るように配したに過ぎません。

意匠1
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1334231号の意匠

意匠2
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1291049号の意匠

意匠3
特許庁発行の公開特許公報記載
平成 8年特許出願公開第175536号
[図1](A)に表されている金属製鋸刃の意匠

意匠4
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2008-201476
[図11]に表されている切断刃の意匠」。

なお,拒絶査定においては,下記のとおりの記載がなされていた。
「意見書を提出し,直線状の切断刃に於いて,中央部の鋸歯に変化をつけることは通常行われる程度の変更の範囲に留まるものではなく,当業者にとってありふれた手法ではない旨主張されました。
しかしながら,この種の直線状の切断刃に於いても,鋸歯に変化をつけること(例えば,特開2001-55227[図5]に表されている意匠,公開実用新案公報平3-26719号第4図乃至第9図に表されている意匠),また,本願の意匠と同様に中央部の鋸歯に変化をつけることも(例えば,特開平5-330549号[図1]乃至[図4]に表されている意匠)従来より普通に行われており,本願の意匠登録を受けようとする部分に,評価できるような創作性を見いだすことはできません。
したがって,この意匠の属する分野に於ける通常の知識を有する者が日本国内又は外国に於いて公然知られた形状に基づいて,格別の創作力を要せずに容易に創作することができたものと認められます」。

第3 当審の判断
以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,請求人の主張を踏まえて,検討し,判断する。
1.本願意匠の形態
本願意匠の形態は,「第1 本願意匠」に記載のとおりである。

2.各引用意匠の形態
(1)意匠1(別紙第2参照)
意匠1の形態は,基本的構成態様において,全体がV字状の略短冊形状であり,その長手方向上縁部に沿って大,中,小の3種類の刃を適宜並べて鋸歯を形成し,その鋸歯の態様について,約9分の1幅の中央刃部分に,大と中の刃を交互に並べ,約9分の2幅の左右両端刃部分は,大の刃のみを並べ,約9分の2幅の中間刃部分は,中と小の刃を交互に並べているものである。
(2)意匠2(別紙第3参照)
意匠2の形態は,基本的構成態様において,全体がV字状の略短冊形状であり,その長手方向上縁部に沿って鋸歯を形成し,その鋸歯の態様について,全幅の約10分の1幅の中央刃部分に刃幅が長くなる広い円弧状刃谷4か所によって3個の刃を形成し,左右両側刃部分の鋸歯は,三角刃の連続によって構成されているものである。
(3)意匠3(別紙第4参照)
意匠3の形態は,基本的構成態様において,全体が直線状の略短冊形状であり,その鋸歯の態様について,刃谷が略台形状であり,刃の根元が丸みを帯びている態様で,連続しているものである。
(4)意匠4(別紙第5参照)
意匠4の形態は,全体形状の開示はなく,この種物品分野の通常の当業者知識から類推すると,基本的構成態様において,全体がV字状の略短冊形状であるものの,その長手方向上縁部中央における鋸歯の態様が表されていると推認できるが,その鋸歯は,中央刃エリアにおいて,中央に7個の大刃を形成し,その左右両側に3個ずつ中刃を並べた構成とし,中央エリアより外の左右両側刃部分には,小刃を並べた態様としているものである。
(5)公知意匠1(請求人が提出した請求書にて定めた「公知意匠1」のこと)(別紙第6参照)
公知意匠1の形態は,基本的構成態様において,全体が直線状の略短冊形状であり,その長手方向上縁部に沿って鋸歯を形成し,その鋸歯の態様について,連続する小刃の並びに,一定の間隔で,小刃と略同じ刃幅で,約2倍の刃山高さの大刃を3つ設けた態様で,これを1つのパターンとして,このパターンを複数回繰り返した態様のものである。
(6)公知意匠2(請求人が提出した請求書にて定めた「公知意匠2」のこと)(別紙第7参照)
公知意匠2の形態は,基本的構成態様において,全体が直線状の略短冊形状であり,その長手方向上縁部に沿って鋸歯を形成し,その鋸歯の態様について,全体が連続する小刃であって,左右両端刃部分または左右両端刃部分付近において,大刃が突出して構成しているものもある,という態様である。
(7)公知意匠3(請求人が提出した請求書にて定めた「公知意匠3」のこと)(別紙第8参照)
公知意匠3の形態は,基本的構成態様において,全体が直線状の略短冊形状であり,その長手方向上縁部に沿って鋸歯を形成し,その鋸歯の態様について,長手中央局部の刃山を突出させずに刃谷を深くしたもの,刃山を突出させたもの,刃谷を少し深くしつつ刃山を突出させたもの,という態様がある,というものである。

3.本願意匠の創作の容易性について
本願意匠の形態のうちの具体的構成態様である,中央刃部分に,最も大きい刃山からその左右両側の各7個の刃山にかけて順次刃の高さと刃幅を小さくなるように並べ,両端部刃部分は,右端部刃部分左端部刃部分それぞれ17個の刃山が端にかけて順次大きくなるように並んでいる態様は,上記の意匠1ないし意匠4,及び,公知意匠1ないし公知意匠3のいずれにも表れておらず,本願意匠の特徴といって差し支えないものであって,意匠3の中央刃部分と両端部刃部分に意匠4の刃をほとんどそのまま,または漸次鋸歯が大きくなるように配したまでであり,容易に創作ができたものということはできない。

4.結び
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,原審の拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2012-09-05 
出願番号 意願2009-23588(D2009-23588) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 裕和 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 橘 崇生
下村 圭子
登録日 2012-09-28 
登録番号 意匠登録第1453930号(D1453930) 
代理人 大貫 敏史 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 内藤 和彦 

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