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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H1
管理番号 1264253 
審判番号 不服2012-7402
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-23 
確定日 2012-10-02 
意匠に係る物品 ケーブル保護具 
事件の表示 意願2011- 9809「ケーブル保護具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成23(2011)年4月27日の意匠登録出願であって,その意匠は,願書及び願書添付の図面によれば,意匠に係る物品を「ケーブル保護具」とし,その形態を願書及び願書添付の図面に記載されたとおりのものであって,「実線で示した部分が,部分意匠として登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願について,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠」という。)(別紙第1参照)。

2.原査定における拒絶の理由
本願意匠に対する原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。

この意匠登録出願に係るケーブル保護具の分野において,中央に円形の薄肉部分を設け,そこにケーブル挿通孔を形成することは,例えば意匠1乃至2のように本願出願前より極普通に見られるありふれたものであり,また,薄肉部分を表面より凹んだ位置に形成することも意匠2に見られるように本願出願前より行われているありふれた手法である。

意匠1
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第0821346号の意匠
(意匠に係る物品,電線保護具)の意匠

意匠2
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第0999117号の類似意匠登録第1号の意匠
(意匠に係る物品,絶縁ブッシング)の意匠

3.請求人の主張の要旨
「中央に円形の薄肉部分を設け,そこにケーブル挿通孔を形成することは,例えば,意匠1乃至2のように本願出願前より極普通に見られる」と判断されているが,引用意匠の意匠1の中央の挿通孔はケーブルを密接した状態で挿通させるための孔ではない。意匠に係る物品の説明に「中央部分の薄膜を破って電線を通し」と記載されているように,中央の円孔は薄膜をケーブルの挿通に支障のない程度に大きく破られるものであり,位置決めとか,密着性は前提となっていない。即ち,技術的にケーブルの密着挿通には全く寄与していない。また,引用意匠の意匠2は4枚からなる略90度の扇形の開閉板が湾曲し,そこを電線・ケーブルが挿通するものであり,本願意匠のケーブル挿通孔の概念は存在していない。
引用意匠の意匠1及び意匠2によって「中央に円形の薄肉部分を設け,そこにケーブル挿通孔を形成する」という構成が開示されていると認定される根拠がない。よって,正確に物品の構成を特定された引用文献に基づく「極普通に見られるありふれたもの」とは,全く根拠のない事由であり,かつ,引用意匠から特定されておらず不明である。
また,「薄肉部分を表面より凹んだ位置に形成することも意匠2に見られるように本願出願前より行われているありふれた手法」と認定されているが,まず,「表面より凹んだ位置」とは,何が表面であるかが不明である。絶縁ブッシングの先端には表面といわれる面が存在していない。
そして,前述したように,「薄肉部分を表面より凹んだ位置に形成」しているのは,「略90度の扇形からなる4枚の開閉板」であり,4枚の開閉板を避けて電線・ケーブルが挿入されるものであり,本願意匠の中央に円形の薄肉部分を設け,そこにケーブル挿通孔を形成し,拡径された本願意匠の円形挿通孔によって,その弾性力で密着した電線・ケーブルの挟持を行うという本願意匠の機能とは全く異にする構成部分である。
したがって,本願意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内または外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩またはこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認定される論拠が欠如しており,当然,本願意匠は,意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当するという原査定は取り消されるべきである。

4.当審の判断
本願意匠が,当業者であれば,容易に意匠の創作をすることができたものか否かについて,以下検討する。
(1)本願意匠
本願意匠は,願書の「意匠に係る物品の説明」及び「使用状態図」によれば,その使用態様が,「ケーブル配線時にケーブルの損傷を防ぐための,合成ゴム等のゴム状素材によって成型されたケーブル保護具に関するものであ」り,「配線ボックスの底壁に開口を形成しケーブルを引き出す際に,」「開口内に嵌められて,」「挿通孔を介して」「ケーブルを引き出すことがきる」もので,「弾力性を有するとともに,」「挿通孔周辺に薄肉部が形成されているので,」「挿通孔は,挿通される」「ケーブルによって拡径されるとともに,」「ケーブルの径の大小・形状を問わずその外周に密着することができる」とするものである。
そして,本願意匠は,その構成態様が,ケーブル保護具の略円環状枠体の正背両面の中央部分に形成された凹陥部の表面及び裏面によって構成される略円板状の肉厚が薄い部分(以下,「薄肉部」という。)を意匠登録を受けようとする部分としたもので,該部は,均一な厚みの平坦な円板状体の中央に小型円形状の挿通孔(以下,「挿通孔」という。)を設けたものである。
(2)本願意匠と意匠1及び意匠2に表された構成態様の関連性
(a)意匠1には,小型円形状の挿通孔を中央に設けた電線保護具が表されており,挿通孔の周辺は,外側に向かって厚みが漸次増加する態様で,外周面は中央部分が平坦面状で,本願意匠のように挿通孔周辺に薄肉部が形成されておらず,挿通孔内に薄膜が設けられている。(b)意匠2には,薄肉部を設けた絶縁ブッシングが表されており,略円環状枠体の上面寄りの位置に中央の小型円形孔の周囲が4等分され,4枚の扇型形状によって構成される略円板状体の薄肉部が形成されており,本願意匠のような均一な厚みの平坦な円板状に表されてはいない。
(3)創作容易性の判断
まず,この種のケーブル保護具の分野においては,全体を略環状体として,その中央に円形の薄肉部を設け,その中央に挿通孔を設けることは,意匠1及び意匠2に見られるように本願出願前より既に行われていることである。しかしながら,本願意匠の略環状枠体の正背両面の中央部分に形成された凹陥部の表面及び裏面によって構成され,中心部に挿通孔部を設けた,均一な厚みの平坦な円板状体であるという具体的構成態様についてみると,意匠1及び意匠2は,中央に挿通孔を有する点については共通するが,いずれも挿通孔の大きさが本願意匠の割合とは異なり,意匠1には,本願意匠のような薄肉部は認められず,挿通孔内に薄膜が設けられている点が異なり,また,本願意匠と意匠2は,薄肉部が正背両面の中央部分に形成された凹陥部の表面及び裏面によって構成された点については共通するが,本願意匠の薄肉部は,挿通孔の周囲が面一の平坦面で構成されたものであり,意匠2の薄肉部は,前記(2)(b)のとおりであって,本願意匠の薄肉部の構成態様は,先行する意匠には見当たらないし,導き出すこともできないのであるから,本願意匠に係る具体的な態様がこれらの意匠から容易に創出し得るものということはできない。
そうすると,本願意匠は,ケーブル保持具の薄肉部を意匠登録を受けようとする部分としたもので,略円環状枠体の正背両面の中央部分に形成された凹陥部の表面及び裏面によって構成される均一な厚みの平坦な円板状体の薄肉部の中心部に挿通孔を設けた態様は,本願意匠の独特の態様といえるもので,当業者であれば容易に創作することができたとはいえず,本願意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠に該当しない。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり,同法同条同項により拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2012-09-19 
出願番号 意願2011-9809(D2011-9809) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 和之 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 瓜本 忠夫
遠藤 行久
登録日 2012-10-12 
登録番号 意匠登録第1454943号(D1454943) 
代理人 特許業務法人 Vesta国際特許事務所 

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