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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D4
管理番号 1271068 
審判番号 不服2012-20470
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-18 
確定日 2013-03-19 
意匠に係る物品 扇風機 
事件の表示 意願2012- 1802「扇風機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 本願は、2012年(平成24年)1月31日の意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「扇風機」とし、その形態を願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠は、本願出願前、2003年6月27日に特許庁意匠課が受け入れた、三菱電機株式会社発行のカタログ『三菱扇風機 SLIM&COMPACT インテリアにピッタリ調和する、お気に入りの一台が、ここにある。』第2頁に記載された「扇風機」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC15019875号。以下、「引用意匠」という。)であって、その形態は、同誌の写真版に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)

両意匠を対比すると、両意匠は意匠に係る物品が一致しており、その形態においては、主として以下のとおりの共通点と相違点がある。
まず、共通点として、
(A)全体は、略円盤状ベースの、中心よりやや後方寄りに、丸パイプ状で二段伸縮式の支柱を垂直に立設し、この支柱上部に、上方に手掛け部を付設した大略短円柱状のモーター部を、回動支軸を介して取付け、モーター部前方に五枚羽根で構成する回転羽根を設け、その周囲を、二つの浅い丸籠を前後に組み合わせたガードで覆った点、
(B)ベース上面は、支柱立設位置を最も高く隆起させ、そこから周縁に向かってを次第に低くなる傾斜面とし、支柱を挟んでその左右に、平行な区画線を縁端まで設け、この区画線内の支柱手前位置に操作部を設けた点、がある。
他方、相違点として、
(あ)モーター部の態様について、
本願意匠は、モーター部が、後ろに長く突出して、モーター部の後端は支柱位置よりかなり後方に位置し、後方上部には、後端面を残して、円柱の中心付近まで達する縦長細幅凹陥部を設け、倒円柱の支柱直上位置周囲に、ガード部と間隔をあけて帯部を巻設して、この帯部上方を正面視扁平略等脚台形状に立設させて手掛け部としたのに対して、
引用意匠は、引用意匠掲載カタログにおける当該機種の側面視の形状を表す写真(別紙3参照)によれば、モーター部は、後ろへの突出が短く、モーター部の後端は、支柱からごく僅かに後ろに位置し、モーター部後端面と周側面との境界部は、角を取った丸面状であり、上方の丸みは特に大きく後端上方面もやや傾斜面をなしており、また、手掛け部は、支柱直上位置より前方にガードに接して設けられ、その形態は正面視扁平略等脚台形状で、内部を三等分する区画部を有する形態である点、
(い)前ガード中央の円形カバーについて、
本願意匠は、円形カバーの外周円より一回り小さな同心円状の溝部を設けているのに対して、
引用意匠は、溝のない平坦面である点、
(う)ベースについて、
本願意匠は、ベースの直径が、ガードの直径よりやや大きく、上面と周側面とがなす角部が切り立っていて稜線が明らかで、周側面はごく僅かに下窄まり状であり、上面には、上面外周円より一回り小さい同心円状の区画線を設けているのに対して、
引用意匠は、ベースの直径が、ガードの直径よりやや小さく、上面と周側面とがなす角部がやや丸みを帯びており、上面に外周円と同心円状の区画線はない点、
(え)操作部について、
本願意匠は、前記のベース外周円より一回り小さい同心円状区画線と、支柱手前の横線と、左右区画線の内側の左右縦線によって形成される、下辺のみを円弧とする略四角形状の区画線内を操作部としたものであり、その前方に小矩形状のタッチスイッチを数個左右非対称に配したのに対して、
引用意匠は、ベースの外周円より一回り小さい同心円弧状区画線と、支柱手前の横線と、左右区画線とで囲まれた領域を操作部としたものであり、この操作部内を横方向に明暗帯状に分割して、中央帯部内の支柱寄りに三個の小さな略横長楕円形状操作ボタンを、その手前中央に一個の大きな略横長楕円形下半中央形状操作ボタンを、左右対称に配した点、がある。

共通点と相違点を総合して、両意匠の類否を検討すると、共通点(A)は意匠全体に関するものではあるが、この種の所謂リビング用扇風機の構成としては、ごく一般的な構成であり、また、共通点(B)は、形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないから、共通点(A)及び同(B)が類否判断に及ぼす影響は、一定程度に止まるものである。
一方、相違点(あ)ないし(え)が類否判断に及ぼす影響はそれぞれ大きく、相違点全体が相まって生み出す視覚的効果は異なり、共通点を凌駕して類否判断を支配している。すなわち、この種の所謂リビング用扇風機は、前後左右全体を主に斜め上方向から観察するものであり、上記のモーター部、ガードの円形カバー部、ベース部、操作部は、いずれも看者の注意を惹く部位であると認められる部位であり、これらの部位の具体的形状の相違により、本願意匠は、全体としてエッジのきいたシンプルな形態という視覚的印象を看者に与えるのに対し、引用意匠は、全体として同じくシンプルではあるが、丸みのある穏やかな形態という視覚的印象を与えて、それぞれが生み出す美感は異なっており、相違点全体は共通点を凌駕して類否判断を支配しているから、両意匠は、意匠全体として類似すると言うことはできない。

したがって、本願意匠は、原査定の引用意匠をもって、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同条同項柱書によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審においてさらに審理した結果、本願意匠について、他に拒絶すべきものとする理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-03-04 
出願番号 意願2012-1802(D2012-1802) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内藤 弘樹 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 樫本 光司
早川 治子
登録日 2013-03-29 
登録番号 意匠登録第1468142号(D1468142) 
代理人 高橋 省吾 
代理人 稲葉 忠彦 

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