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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1273859 
審判番号 不服2012-10100
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-31 
確定日 2013-04-12 
意匠に係る物品 携帯電話機 
事件の表示 意願2011- 5994「携帯電話機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成23年(2011年)3月16日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「携帯電話機」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書の記載及び願書添付の図面により表されたとおりのものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,平成22年(2010年)5月25日にアスキーメディアワークスが発行し,平成22年(2010年)5月28日に独立行政法人工業所有権情報・研修館が受け入れた,内国雑誌「週刊アスキー」第19頁所載の携帯電話機の意匠(開蓋状態は,特許庁意匠課公知資料番号第HA22005450号。閉蓋状態は,同番号第HA22005453号)であって,その形態は,同雑誌の写真版に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 本願意匠と引用意匠との対比
1.意匠に係る物品について
本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,ともに携帯電話機であって,一致する。

2.形態について
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。
(1)共通点として,
(A)閉蓋状態である【正面図】(引用意匠においては,特許庁意匠課公知資料番号第HA22005453号の写真版)において,蓋部は,表面全体がなだらかにやや膨出する隅丸縦長長方形状であって,その略中央位置には,やや小さな横長長方形状の液晶表示部が設けられ,上端中央位置には,蓋部に食い込むように本体部上端のヒンジ部が現れている点,
(B)【開蓋状態を示す正面図】(引用意匠においては,特許庁意匠課公知資料番号第HA22005450号の写真版)において,
(B-1)蓋部は,全体が隅丸縦長長方形状であって,その略中央位置に,大きな縦長長方形状の液晶表示部が,蓋部のほぼ一杯に設けられ,当該液晶表示部の上方には,水平直線状の細幅スリットの放音孔が設けられ,下方には,やや横長長方形状のボタンが横一列に配置され,蓋部の左右辺及び上辺の角部に,外方へ傾斜する斜面状の細幅指掛け部を設けた点,
(B-2)本体部は,全体が隅丸縦長長方形状であって,上方には十字状のカーソルキー,その上下左右位置には4つの機能キーが設けられ,それらの下方に略横長長方形状のダイヤルキー群を縦横格子状に規則的に配列し,本体部の左右辺及び下辺の角部に,外方へ傾斜する斜面状の細幅指掛け部を設けた点,
(B-3)ヒンジ部は,蓋部下端の左右突出部と,本体部上端の中央突出部とが嵌合し,全体が一体となって,左右両端部が略4分の1円弧状にカットされた円筒形を想起させる点,
がある。
(2)相違点として,
(a)【開蓋状態を示す正面図】において,
(a-1)液晶表示部の下方のボタンにつき,本願意匠は,やや間隔を空けて,等間隔に3つ配置しているのに対して,引用意匠は,隙間なく4つ配置している点,
(a-2)十字状のカーソルキーにつき,本願意匠は,全体が曲線を基調とした花弁状を呈しているのに対して,引用意匠は,全体が直線を基調とした太幅の角丸+(プラス)記号状を呈している点,
(a-3)十字状のカーソルキーの上下左右位置に配置された4つの機能キーにつき,本願意匠は,上列の2つの機能キーは,横長長円形状であって,下列の2つの機能キーは,略円形状であるのに対して,引用意匠は,4つの機能キーが,すべて同形同大の隅丸横長長方形状である点,
(a-4)蓋部及び本体部の外縁角部に設けられた細幅指掛け部の断面形状につき,本願意匠は,やや凹弧状であるのに対して,引用意匠は,ほぼ平坦状である点,
(b)閉蓋状態である【右側面図】及び【左側面図】において,本願意匠は,蓋部及び本体部に設けられた細幅指掛け部が一体となって断面形状を略凹弧状とする溝部を形成しているのに対して,引用意匠は,開蓋状態及び閉蓋状態の写真版から推認すると,断面形状を略V字状とする溝部を形成している点,
(c)本体部の裏面につき,背面視において,本願意匠は,上方の左右中央位置に,外周をすり鉢状の斜面状とした小円形状のカメラレンズ部,そして,上下中央よりやや上方で右辺寄りの位置に,全体が略正方形状となるように,複数の小円孔を縦横規則的に配置したスピーカー部が設けられているのに対して,引用意匠は,本体部の裏面の態様が不明である点,
がある。

第4 両意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
1.形態について
(1)共通点の評価
共通点(A)及び(B)は,両意匠の骨格をなすともいえる点ではあるが,この種の物品においては,両意匠のような態様のものは,例を挙げるまでもなく,引用意匠の公開日前より見受けられる態様であって,両意匠のみに見られる格別特徴ある態様のものとは言い難く,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,微弱なものと言うほかない。

(2)相違点の評価
これに対して,両意匠の相違点に係る形態が生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
すなわち,相違点(a-1)の,液晶表示部の下方に横一列に配置された,やや横長長方形状のボタンの数及び配置の相違,相違点(a-2)十字状のカーソルキーの形状の相違及び相違点(a-3)の,十字状のカーソルキーの上下左右位置に配置された4つの機能キーの形状の相違については,本願意匠のそれぞれの相違点に係る態様が,本願出願前より既に見受けられる態様であって,格別本願意匠のみに見られる特徴あるものとは言い難いが,引用意匠のそれぞれの態様とは,視覚的に明らかに相違するものであることから,これらの相違点は,両意匠の類否判断に少なからず影響を及ぼすものと言える。
相違点(a-4)の,蓋部及び本体部の外縁角部に設けられた細幅指掛け部の断面形状の相違については,開蓋状態においては,蓋部及び本体部の外縁角部という部分的な細部の相違というほかなく,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
しかしながら,相違点(b)の,閉蓋状態の側面視における,蓋部及び本体部に設けられた細幅指掛け部が一体となって形成された溝部の態様の相違については,本願意匠が当該溝部の断面形状を略凹弧状とした点は,当該溝部が上方の略半円弧状のヒンジ部側面となだらかな曲面で融合してシンプルな独特の美感を生じている点とあいまって,本願出願前には見られない,本願意匠のみに見られる極めて特徴的な態様のものと言えるのに対して,引用意匠が当該溝部の断面形状を略V字状とした点は,この種物品においては普通に見られる態様であり、さらに,当該溝部は,開蓋するための指掛け部分であって,開蓋のしやすさといった使用感に影響を与える部分であり,また,この種の物品は,手のひらに収まる程度の大きさであることから,その具体的構成態様についても,需要者が強く注意を払う部分と言えることから,この相違点は,前記相違点(a)と相乗して,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと言わざるを得ない。
なお,相違点(c)の,本願意匠が,本体部の裏面上方の左右中央位置に外周をすり鉢状の斜面状とした小円形状のカメラレンズ部,そして,上下中央よりやや上方位置で右辺寄りに,全体が略正方形状となるように,複数の小円孔を縦横規則的に配置したスピーカー部を設けたのに対して,引用意匠は,本体部裏面の態様が不明である点については,本願意匠のカメラレンズ部の態様及びスピーカー部の態様を個々に見れば,本願出願前にそれぞれ既に見受けられる態様であり,また,それらが設けられた位置についても,本願意匠のみに見られる特徴あるものとは言い難いことから,本願意匠の裏面は,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼす部分とは言えず,引用意匠の裏面の具体的態様が不明であっても,この相違点は,両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではない。

2.小括
そうすると,両意匠の意匠に係る物品は一致するが,両意匠の形態において相違点が共通点を凌駕し,両意匠は,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,引用意匠とは類似しないものである。

第5 むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によっては,本願を拒絶すべきものとすることができない。
また,本願について,他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-03-29 
出願番号 意願2011-5994(D2011-5994) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 和之 
特許庁審判長 川崎 芳孝
特許庁審判官 橘 崇生
遠藤 行久
登録日 2013-05-02 
登録番号 意匠登録第1471495号(D1471495) 
代理人 横山 淳一 

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