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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立成立) J7
管理番号 1275195 
判定請求番号 判定2012-600052
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2013-07-26 
種別 判定 
判定請求日 2012-12-14 
確定日 2013-06-10 
意匠に係る物品 家庭用電気マッサージ器 
事件の表示 上記当事者間の登録第1404812号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真及び判定請求書の説明により示す「家庭用電気マッサージ器」の意匠は、登録第1404812号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 請求の趣旨及び理由
本件判定請求人(以下,「請求人」という。)は,「イ号製品の意匠(以下,「イ号意匠」という。)は,登録第1404812号意匠(以下,「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属しない,との判定を求める。」と申し立て,その理由として要旨以下のとおりの主張をし,添付書類として,「イ号意匠写真」,証拠方法として,甲第1ないし第16号証を提出した。
なお,本件判定請求書の6.請求の理由(5)において,イ号意匠の説明をしている。

1.判定請求の必要性
請求人及び被請求人は,いずれも日本国内において,家庭用電気マッサージ器具を製造及び販売する事業者である。
請求人が製造販売しているのがイ号意匠であり,被請求人は,本件登録意匠の意匠権者である。
請求人は,これまで公正かつ健全な環境の市場において,他人の権利を侵害することなく競争を行うべく,常に万全の注意を払い慎重に製品化を進めてきた。イ号意匠は,そのような請求人のアイデアに基づいて生み出された意匠であるところ,請求人はかねてから被請求人より,イ号製品が本件登録意匠に類似している旨の警告を受けている。
上記経緯のもと,平成23年8月31日付で,被請求人より,請求人を相手とする判定請求がなされ,同請求は,判定2011-600039号として特許庁に係属した。
そして,特許庁は,両意匠に係る物品が同一であるとしたうえで,クッション部を備える基本的構成態様や,振動子を隠すための底面カバー,電源コネクタの配置位置等の具体的態様の一致をもって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属すると結論付けた。
しかし,一度判定がなされた後でも,新たな証拠の提出と当該証拠の評価によって,同一のイ号意匠と登録意匠の類否に関し,前回判定とは正反対の判定結果がもたらされることは当然にあり得る。
そこで,本判定請求は,前回判定とは異なる証拠に基づくアプローチにより,イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものではない旨の判定を求めるものである。

2.本件登録意匠の説明
(1)登録意匠に係る物品
登録意匠に係る物品は,「家庭用電気マッサージ器」である。また,本件登録意匠の意匠に係る物品の説明及び使用状態を示す参考斜視図並びに前回判定の甲5,甲6などによれば振動子を使用者の腰部などに当てて使用されるものであり,底面カバーを外すことができるものである。

(2)形態
ア 基本的構成態様
(A)平面視において,略正方形状の扁平な略四角錐状の形状のクッション部を具えており,同部の横幅:奥行:高さの比は,略1:1:0.5である(以下,「四角錐要件」ということがある。)。
(B)底面側の右左側面扁平な略直角台形状で薄い略くさび形状の底上げ部を具えており,同部がクッション部と一体的に接合されている(以下,「接合要件」ということがある。)。
イ 具体的構成態様
(C)クッション部の平面視形状が,四方の周縁が緩やかな凹弧状の四辺と角ばった四隅によって構成されている(以下,「凹弧状要件」ということがある。)。
(D)略四角錐状の頂点部はやや尖っている(以下,「頂点部要件」ということがある。)。
(E)角四隅から平面視頂点部に向かって直線的な稜線が表現されている(以下,「稜線要件」ということがある。)。
(F)底上げ部において底面全体を覆う,背面側の側周縁において横一直線上に固着され,反対側の正面側の底面左右両隅部において丸形状のボタンによるボタン留めされた略正方形状の底面カバーが設けられ,底面カバーのボタン留めを外すと底面の一部に振動子が突出する(以下,「底面カバー要件」ということがある。)。
(G)左側面のクッション部と底上げ部の接合部の中央に電源コネクタが形成されている(以下,「コネクタ要件という。)。

3.イ号意匠の説明
(1)イ号意匠に係る物品
イ号製品もまた本件登録意匠に係る物品と同様に「家庭用電気マッサージ器」である。底面に具えた振動子を使用者の腰部などに当てて使用されるものであり,底面カバーの開閉が可能である。

(2)形態
ア 基本的構成態様
(a)平面視において方円形状であり,側面視において略半球状であり,横幅:奥行:高さの比は,略3:3:1」である。
(b)底面ないし背面側はもちろん,全体のどの部分に「底上げ部」なる構成は備えられておらず,全体がクッション部のみから構成される。
イ 具体的構成態様
(c)平面視形状は,四方の周縁が緩やかな凸弧状の四辺と丸みを帯びた四隅とから構成されている。
(d)側面視における略半球形状は,かまぼこ状に湾曲した弧により構成されている。
(e)平面視における各四隅の対角線上に4つの短い起毛状飾り部が備えられており,同飾り部は前記対角線のやや四隅側に配置されている。なお,イ号意匠写真5においては,かかる縫合線の存在はほとんど認識できない。
(f)背面側の側周縁において横一直線上に固着され,反対側の正面側の底面左右両隅部において丸形状のボタンによるボタン留めされた略方形状の底面カバーが設けられ,底面カバーのボタン留めを外すと底面の一部に振動子が突出する。
(g)四辺のうち一辺の略中央部に電源コネクタが形成されている。

4.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
(1)両意匠の共通点
(F)の「底面カバー要件」において実質的に一致する。
(2)両意匠の相違点
(A)の「四角錐要件」
本件登録意匠が平面視において扁平な略四角錐形状であるのに対して,イ号意匠は,平面視において方円形状であり,横幅,奥行き,高さの比率もそれぞれ異なっている。
(B)の「接合要件」
本件登録意匠がクッション部と底上げ部とから構成されているのに対して,イ号意匠に底上げ部は存在しない。
(C)の「凹弧状要件」
本件登録意匠の四辺が緩やかな凹弧状であり,四隅が角張っているのに対して,イ号意匠の四辺は凸弧状であり,四隅は丸みを帯びている。
(D)の「頂点部要件」
本件登録意匠の側面視における頂点部がやや尖った形状であるのに対して,イ号意匠は側面視において緩やかに伸びた弧により構成されており「頂点部」なる概念自体存在しない。
(E)の「稜線要件」
本件登録意匠の各四隅から頂点部にかけて,それぞれ一直線に伸びた直線が現れているのに対して,イ号意匠の各四隅から側面視で最も高さの高い部分にかけては,かまぼこ状の曲線が構成されている。イ号意匠における上記表現は,曲線のやや四隅側のみにおいて短い起毛状飾り部を構成している点において,特に本件登録意匠と相違している。
(G)の「コネクタ要件」
本件登録意匠においては,「クッション部と底上げ部の接合部の中央」という特定の位置に電源コネクタがあるのに対して,イ号意匠はそもそも底上げ部を備えておらず,「接合部の中央」なる概念が存在しない。

5.イ号意匠と本件登録意匠等が非類似である理由の説明
(1)本件登録意匠の要部について
本件登録意匠の以下の構成態様(A)ないし(C),(F)及び(G)は,本件登録意匠の出願日時点において,いずれも当該物品においては公知であって,特段評価され得ない構成要素であった。
すなわち,甲第3号証には,(A)の「四角錐要件」及び(C)の「凹弧状要件」,甲第4号証には,(B)の「接合要件」及び(G)の「コネクタ要件」,甲第6号証などには,(B)の「接合要件」,(C)の「凹弧状要件」,(F)の「底面カバー要件」,及び(G)の「コネクタ要件」を充足する意匠が,それぞれ記載されている。
そうすると,本件登録意匠の要部は,(D)の「頂点部要件」及び(E)の「稜線要件」である。

(2)本件登録意匠とイ号意匠との類否の検討
ア 共通点の検討
本件登録意匠とイ号意匠とは,構成態様(F)の「底面カバー要件」において共通点を有しているが,前記各公知意匠の存在を踏まえて検討すれば,両意匠の類否判断には影響を与えない。
イ 相違点の検討
まず,本件登録意匠の要部たる構成要素(D)(E)の相違について検討する。
(ア)構成態様(A)及び(D)と同(a)及び(d)との相違
本件登録意匠の扁平な略四角錐形状は,側面視頂点部の尖った形状と相まって,看者に対し,意匠全体を通じてシャープさ,あるいはスマートさといった精悍な印象を強く与えるものであるのに対して,イ号意匠の略半球状形状は,その緩やかな弧状形状が,看者に対し,やわらかさ,あるいはおおらかさといった穏やかな印象と与えている。さらには,本件登録意匠がイ号意匠や公知意匠との関係で相対的に大きい高さ比を有する点も,尖った形状の頂点部を目立たせる意味において,本件登録意匠のシャープさを際だたせている。
かかる各事実に鑑みれば,本件登録意匠の略四角錐形状,及び側面視頂点部形状は,意匠登録にあたり,審査官が極めて特徴的な構成態様として捉えた点と考えられる。かかる事実は,請求人自身が本件登録意匠の出願に先立ち,ピラミッド形状であることが当該意匠の特徴の一つであること明示していることからも明らかである。(甲第9号証5ページ)
(イ)構成態様(E)と同(e)との相違
本件登録意匠において各四隅から平面視頂点部に向かって延びる稜線は,当該各稜線の先端にある頂点部の鋭く尖った形状を強調する効果があり,先に述べた本件登録意匠の特徴をより一層際立たせているのに対して,イ号意匠の対応位置に存する曲線のうちやや四隅側の一部は,パイピング加工が施されている。当該加工により,看者は自然と曲線のうちパイピング加工部分,すなわち四隅側の起毛状飾り部に注目することとなる。そして,低位に看者の注意を惹かせるような構成態様を採用することにより,意匠全体として,看者に対し,安定感・安心感といった印象を与えやすくなっている。
この点確かに,両意匠は,平面視頂点部と各四隅とを結ぶ線分が表現されている限りにおいては共通するものの,かかる共通点は,両意匠が全体として類似することを何ら基礎付けるものではない。なぜなら,同線分は,本件登録意匠においては頂点部の鋭く尖った形状を強調する効果を有するのに対して,イ号意匠においては,パイピング加工部分ひいては底面部に看者の注意を惹き付ける効果を有しており,両意匠において全く異なる効果を発揮するよう機能しているためである。さらにいえば,イ号意匠の曲線状には,縫合線が存するものの,同線は単にクッションカバーを縫合した際に必然的に形成されたものに過ぎず,イ号意匠全体の立体形状においては,その存在感は埋没している。

次に,本件登録意匠のその他の構成要素である(B)(E)の相違について検討する。
(ウ)構成態様(B)と同(b)との相違
本件登録意匠は,側面視で底上げ部とクッション部とが接合されている様子とはっきり確認でき,かかる様子が意匠全体に機械的な冷たい印象を与えているのに対して,イ号意匠は,全体がクッション部のみから構成されており,側面視においても丸みを帯びたクッションとして認識され,かかる様子が看者に対しソフトな印象を与えている。
(エ)構成態様(C)と同(c)との相違
本件登録意匠の平面視において四辺の緩やかな凹弧形状及び角張った四隅はいずれも,クッション全体が引き締まっているような印象を与え,やはり先に述べたようにシャープさ,スマートさを強く想起させるのに対して,イ号意匠は,同部分が緩やかな凸弧状及び丸みを帯びた四隅であり,クッション全体として安定感や温かさといった穏やかな印象を強くイメージさせる。

(3)小括
以上を前提とし,両意匠の相違点について,前記クッション形状の家庭用電気マッサージ器という物品の特性を踏まえて検討する。
そもそも,身体の疲れを癒すという当該物品の用途の性質上,多くの製品は,看者に対し「暖かさ・穏やかさ」といった印象を与える意匠を採用することが多い。これに対し,本件登録意匠は,このような従来の発想を転換して「シャープさ」といった印象を与える従来の家庭用電気マッサージ器にはなかった意匠を採り入れたものといえる。それに対して,イ号意匠にはそのような特性はなく,それゆえに,両意匠が看者に与える印象はそれぞれ全く異なっている。
以上詳細に検討してきたように,イ号意匠は,本件登録意匠の新規な特徴を含む構成態様(A)(B)(C)(D)(E)及び(G)のいずれをも充足しない。いっぽう,イ号意匠と本件登録意匠とで共通する点は,当該物品においてはありふれた構成態様に過ぎず,当該共通点が存在するからといって,イ号意匠が本件登録意匠と類似であるとは到底いえない。両意匠の特徴が異なる以上,イ号意匠を認めた一般需要者は,時と場所を異にしても,当該意匠と本件登録意匠とを誤認混同するとはおよそ考え難い。ゆえに両意匠は類似しない。

6.むすび
よって,請求の趣旨記載のとおりの判定を求める。

第2 被請求人の答弁の趣旨及び理由の要点
1.答弁の趣旨
被請求人は,「イ号製品の意匠(以下,「イ号意匠」という。)は,登録第1404812号意匠の範囲に属する,との判定を求める。」と申し立て,その理由として要旨以下のとおりの主張をし,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。

2.請求人の主張の当否
請求人は,判定請求書において,本件登録意匠とイ号意匠とが非類似であることを縷々述べているが,その理由は,要するに,「イ号意匠は,本件登録意匠の新規な特徴を含む構成態様(A)(B)(C)(D)(E)及び(G)のいずれも充足しない。」というものでる。
以下,この請求人の主張の当否について検討する。

(1)本件登録意匠の構成態様(A)について
(a)請求人は,本件登録意匠の構成態様Aを「平面視において略正方形状の扁平な略四角錐状の形状のクッション部を具えており,同部の横幅:奥行:高さの比は,略1:1:0.5である」と認定している。
(b)しかしながら,被請求人の測定によれば,本件登録意匠の前記比は,1:1:0.4である。したがって,請求人の特定は,明らかに正しくない。一方,請求人は,イ号意匠の前記比が1:1:3(当審注:0.3の誤記と認められる。)であることを自ら認めている。両者の比を比べると,高さにおいて10%の差異が認められるが,この程度の高さの差が,意匠としての美感の差異として有意なものとは到底理解できないし,一見して,両者の形状比が異なっていることを区別することも困難である。
(c)請求人は,イ号意匠として写真を提出している。しかしながら,これらの写真は,いずれも不鮮明である。特に,平面視において,ハレーションを起こしており,物品の形状等たる意匠を特定するための資料としては明らかに適格性を欠く。被請求人は,乙第2号証として,イ号意匠を撮影した写真を提出する。
イ号意匠は,コーナー部が面取りされてはいるが略正方形状の底面を具えている,さらに,イ号意匠は,底面の4つの辺からそれぞれ頂部に向かってのびる4つの斜面を含んでいる。したがって,イ号意匠も,平面視において,略正方形状の扁平な略四角錐状のクッション部を具えているのは明らかである。
(d)以上説明したように,イ号意匠は,請求人自らが特定した構成態様A,すなわち,「平面視において略正方形状の扁平な略四角錐状の形状のクッション部を具えており,同部の横幅:奥行:高さの比は,略1:1:0.5(正しくは1:1:0.4)である。」を充足しているのは明らかである。

(2)本件登録意匠の構成態様(B)について
(a)請求人は,本件登録意匠の構成態様(B)を「底面側の右左側扁平な略直角台形状で薄い略くさび形状の底上げ部を具えており,同部がクッション部と一体的に接合されている」と認定している。
(b)乙第2号証のイ号写真4及びイ号写真5から明らかなように,イ号意匠も,底面側の右左側面扁平な略直角台形状で略くさび形状の底上げ部を具えていることが伺える。薄いか否かは相対的なもので,特に看者の目にとまるものでもない。
(c)したがって,イ号意匠は,請求人自らが特定した構成態様(B),すなわち,底上げ部がクッションと一体的に接合されているという態様を充足しているのは明らかである。

(3)本件登録意匠の構成態様(C)及び(D)について
(a)請求人は,本件登録意匠の構成態様(C)を「クッション部の平面視形状が,四方の周縁が緩やか凹弧状の四辺と角ばった四隅によって構成されている」と認定している。また,請求人は,構成態様(D)については,「略四角錐状の頂点部は,やや尖っている」と認定している。
(b)イ号意匠は,クッション部の平面視形状が,四方の周縁がきわめて緩やかな凸弧状の四辺と緩やかな隅丸状の四隅によって構成されている。また,イ号意匠では,明確な頂点部分は確認できないが,中央に向かって高くなるドーム形状を具えている。これらの意味では,イ号意匠は,本件登録意匠の構成態様(C)及び(D)を明確には充足していないように思われる。しかしながら,クッション部の平面視形状や頂点部の形状については,クッション部の内部にクッション材をどの程度詰め込むかによってその形状は様々に変化することは明らかである。したがって,かかるクッション部の実情に鑑みれば,上記構成態様の差異点は,両意匠の類否判断に及ぼす影響がきわめて小さいものであると言わざるを得ない。
(c)したがって,イ号意匠が本件登録意匠と構成態様(C)及び(D)において相違する点はきわめて微弱なもので,実質的なものとは言えない。

(4)本件登録意匠の構成態様(E)について
(a)請求人は,本件登録意匠の構成態様(E)を「各四隅から平面視頂点部に向かって直線的な稜線が表現されている」と認定している。
(b)乙第2号証のイ号写真6には,各四隅から起毛状の縁飾り部が(以下,「パイピング」という。)を介して平面視頂点部に向かって直線的な稜線が表現されている。しかしながら,この種のパイピングは,クッション部においては周知の形状であり,特段,看者の目を引くものではないし,本件登録意匠との差異としては,類否を左右するまでのものとは言えない。
(c)したがって,イ号意匠が本件登録意匠と構成態様(E)において相違する点は,きわめて微弱なもので,本質的なものとは言えない。

(5)本件登録意匠の構成態様(G)について
(a)請求人は,本件登録意匠の構成態様(G)を「左側面のクッション部と底上げ部の接合部の中央に電源コネクタが形成されている」と認定している。
(b)乙第2号証のイ号写真5には,右側面のクッション部と底上げ部との接合部の中央に電源コネクタが形成されている。
(c)したがって,イ号意匠は,請求人自ら特定した構成態様(G),すなわち,クッション部と底上げ部の接合部の中央に電源コネクタが形成されているという態様を充足しているのは明らかである。

3.本件登録意匠とイ号意匠との対比
以上述べたように,イ号意匠は,本件登録意匠の構成態様(A)(B)及び(G)を明らかに充足している。したがって,この点に関する限り,請求人の主張は失当である。
また,イ号意匠は,本件登録意匠の構成態様(C)(D)及び(E)において,本件登録意匠とは完全に一致していないものかもしれないが,これらの差異は,いずれも,両意匠の類否を左右するまでの本質的なものとは言えない。

4.むすび
以上のべたように,イ号意匠は,本件登録意匠の範囲に属するものと確信する。

第3 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠(登録第1404812号意匠)は,平成22年(2010年)2月26日に意匠登録出願され,平成22年(2010年)12月3日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「家庭用電気マッサージ器」とし,その形状,模様若しくは色彩またはこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照)
すなわち,その形態は,
(A)全体は,平面視において略正方形状で,中心部が膨出し,周辺部の厚みが薄い板状体であり,上部のクッション部と,マッサージ機能を発揮する振動子が内蔵された下部のマッサージ部とから構成されている。
子細に観察すると,略正方形の4つの角部は,略直角状であって,4辺は,それぞれ内側にわずかに湾曲した凹曲線状を呈している。
(B)クッション部につき,
(B-1)平面視すると,中心から4つの角部に向かう直線状の稜線が×印状に表れ,上面の当該稜線により囲まれて形成された4カ所の略直角三角形状部分は,それぞれやや湾曲した凹面を形成している。
(B-2)正背面視及び左右側面視すると,全体の輪郭形状は,いずれも頂部から左右方向に下る傾斜直線及びそれに続く左右両角部の略1/4円弧からなり,下縁は,略水平状を呈しているが,正面視及び左右側面視における下縁を子細に観察すると,中央部が下方にやや膨出した凸曲線状を呈している。
(B-3)正面視及び左右側面視すると,下縁寄りの左右の最大幅を呈する位置には,左側面の左右略中央位置から正面を経て右側面の左右略中央位置まで,ファスナー部が水平状に1本設けられている。
そして,左側面には,左右略中央位置のファスナー部端部から短い電源コードが現出し,当該コードの先端には,略円筒形状のコネクタ部が設けられている。
(C)マッサージ部につき,
(C-1)正面視すると,カバーと一体となったマッサージ部は,上縁が下方に湾曲した凹曲線状を呈し,下縁は水平直線状で,それに続く左右両角部は略1/4円弧であって,上記(B-2)のクッション部の左右両角部の略1/4円弧と一体となって略半円弧状を呈している。
(C-2)背面視すると,1本の水平直線状の縫合線が現われ,下縁及びそれに続く左右両角部の形態は,正面視のそれとほぼ同一形状を呈している。
(C-3)右側面視すると,全体が,背面方向に向かって幅狭となる扁平な倒直角台形状を呈し,子細に観察すれば,上縁は,下方にわずかに湾曲した凹曲線状を呈して,クッション部の底面全体とほぼ隙間なく接している。そして,左側面視の形態は,右側面視のそれと左右対称形状を呈している。
(C-4)底面視すると,
(C-4-1)略正方形状の1枚の布状のカバーが,当該底面全面を覆い,子細に観察すると,当該カバーは,マッサージ部の底面の一辺と縫合され,縫合部と相対する両角部のやや内側に,短い斜めスリットがそれぞれ1か所ずつ設けられ,当該スリットから,マッサージ部底面に取り付けられた小円形状のボタンがそれぞれ1個ずつ現出している。
(C-4-2)カバーをめくると,略正方形状のマッサージ部の底面が現れ,当該底面の中心付近には,横長長円形状のやや大きな開口部が設けられ,当該開口部は,全面が薄い布で覆われ,内蔵されたマッサージ機能を発揮する振動子の4つの突起がカバーの縫合部に向かって略「ハ」の字状に現れている。
子細に観察すると,当該突起は,2つの大径の突起と,2つの小径の突起からなっている。

2.イ号意匠
イ号意匠は,本件判定請求書に添付された「イ号意匠写真1ないし7」及び同請求書に記載された「イ号意匠の説明」により示されたものである。(別紙第2参照)
なお,この点に関し,請求人は,判定請求書の請求の理由において「一度判定がなされた後でも,新たな証拠の提出と当該証拠の評価によって,同一のイ号意匠と登録意匠の類否に関し,前回の判定(判定2011-600039)とは正反対の判定結果がもたらされることは当然にあり得る。」と,本判定のイ号意匠と前回の判定のイ号意匠は,同一の意匠である旨述べているが,両意匠は,物品全体の色彩の有無や上面の縫製線の見え方などが異なるものであって,同一の意匠とは認められない。
他方,被請求人は,答弁書において,「請求人は,イ号意匠として写真を提出している。しかしながら,これらの写真は,いずれも不鮮明である。特に,平面視においては,ハレーションを起こしており,物品の形状等たる意匠を特定するための資料としては明らかに適格性を欠く。」と主張し,乙第2号証として,イ号意匠を撮影した写真を提出した。
しかしながら,請求人が提出したイ号意匠写真1ないし7に現された意匠は,当審において判定が可能な程度に十分鮮明に現されており,また,被請求人が乙第2号証として提出した写真に現された意匠を検討すれば,請求人が提出したイ号意匠写真1ないし7に現された意匠とは,物品全体の色彩のや上面の縫製線の見え方などが異なることから,被請求人の上記主張及び乙第2号証は採用することができない。

そうすると,イ号意匠の形態は,本件登録意匠の図の向きに合わせて,イ号意匠写真4を正面図,イ号意匠写真2を背面図,イ号意匠写真5を上下逆にして平面図,イ号意匠写真6を上下逆にして底面図,イ号意匠写真1を左側面図,イ号意匠写真3を右側面図,イ号意匠写真7を使用状態を示す参考斜視図とすると,
(a)全体は,平面視において略隅丸正方形状で,中心部が膨出し,周辺部の厚みが薄い板状体であり,上部のクッション部と,マッサージ機能を発揮する振動子が内蔵された下部のマッサージ部とから構成されている。
子細に観察すると,略隅丸正方形の4つの角部は,やや大きな円弧状であって,4辺は,それぞれ外側に膨出する凸曲線状を呈している。
(b)クッション部につき,
(b-1)平面視すると,4つの角部には,中心に向かうやや太い棒状の起毛状飾り部が短く現れ,子細に観察すると,中心から起毛飾り部先端に向かう直線状の稜線が×印状にかすかに表れ,上面全体は,膨出する凸湾曲面状を呈している。
(b-2)正背面視及び左右側面視すると,全体の輪郭形状は,いずれも頂部から左右方向に下るなだらかな凸曲線状を呈し,下縁は,略水平状を呈している。
(b-3)左側面視すると,左側面の下縁右端寄りの位置から短い電源コードが現出し,当該コードの先端には,略円筒形状のコネクタ部が設けられている。
子細に観察すると,当該コネクタ部の上方には,二重円の線模様が施されている。
(c)マッサージ部につき,
(c-1)正面視すると,カバーと一体となったマッサージ部は,1枚のやや厚い布状を呈している。
(c-2)背面視すると,1本の水平直線状の縫合線が現れ,そして,底面は,やや隙間を空けて奥に入り込む斜面状を呈している。
(c-3)右側面視すると,背面側がわずかに持ち上がった極めて扁平な略倒三角形状を呈している。子細に観察すれば,上縁は,下方にわずかに湾曲した凹曲線状を呈して,クッション部の底面全体とほぼ隙間なく接しているが,左側面視においては,背面側がわずかに持ち上がった極めて扁平な略倒三角形状の空間部を形成している。
(c-4)底面視すると,
(c-4-1)略隅丸正方形状の1枚の布状のカバーが,当該底面全面を覆い,子細に観察すると,マッサージ部の底面の一辺と縫合され,縫合部と相対する両角部のやや内側に,マッサージ部底面に取り付けられた小円形状のボタンがそれぞれ1個ずつ現出している。
(c-4-2)カバーをめくると,略隅丸正方形状のマッサージ部の底面が現れ,当該底面の縫合部側約2/3の範囲に略長方形状の大きな開口部が設けられ,当該開口部は,全面が薄い布で覆われ,内蔵されたマッサージ機能を発揮する振動子の4つの突起がカバーの縫合部に向かって略「ハ」の字状に現れている。
子細に観察すると,当該突起は,いずれもほぼ同径である。

3.本件登録意匠とイ号意匠の対比
両意匠を対比すると,両意匠の意匠に係る物品は,いずれも「家庭用電気マッサージ器」であって一致する。
そして,両意匠の形態については,主として以下の共通点と相違点が認められる。
(1)共通点
(あ)全体は,中心部が膨出し,周辺部の厚みが薄い板状体であり,上部のクッション部と,マッサージ機能を発揮する振動子が内蔵された下部のマッサージ部とから構成されている点,
(い)クッション部の左側面の下縁寄りに短い電源コードが現出し,当該コードの先端には,略円筒形状のコネクタ部が設けられている点,
(う)マッサージ部を底面視すると
(う-1)1枚の布状のカバーが,当該底面全面を覆い,子細に観察すると,マッサージ部の底面の一辺と縫合され,当該カバーの縫合部と相対する両角部のやや内側に,小円形状のボタンがそれぞれ1個ずつ現出している点,
(う-2)カバーをめくると,マッサージ部の底面が現れ,当該底面には,全面が薄い布で覆われた開口部が設けられ,当該開口部には,内蔵されたマッサージ機能を発揮する振動子の4つの突起が,カバーの縫合部に向かって略「ハ」の字状に現れている点,
が認められる。
(2)相違点
(ア)平面視したときの全体の形状につき,本件登録意匠は,略正方形状であるのに対して,イ号意匠は,略隅丸正方形状あり,子細に観察すると,本件登録意匠の4つの角部は略直角状で,4辺はそれぞれ内側にわずかに湾曲した凹曲面状を呈しているのに対して,イ号意匠の4つの角部はやや大きな円弧状で,4辺はそれぞれ外側に膨出する凸曲線状を呈している点,
(イ)クッション部につき,
(イ-1)平面視すると,
(イ-1-1)上面には,本件登録意匠は,中心から4つの角部に向かう直線状の稜線が×印状に表れているのに対して,イ号意匠は,4つの角部には,中心に向かうやや太い棒状の起毛状飾り部が短く現れ,子細に観察すると,中心から起毛状飾り部先端に向かう直線状の稜線が×印状にかすかに表れている点,
(イ-1-2)上面の態様につき,本件登録意匠は,×印状の稜線により囲まれて形成された4カ所の略直角三角形状部分が,それぞれやや湾曲した凹面を形成しているのに対して,イ号意匠は,全面が膨出する凸湾曲面状を呈している点,
(イ-2)正背面視及び左右側面視したときの輪郭形状が,本件登録意匠は,いずれも頂部から左右方向に下る傾斜直線及びそれに続く左右両角部の略1/4円弧からなっているのに対して,イ号意匠は,いずれも頂部から左右方向に下るなだらかな凸曲線状を呈している点,
(ウ)マッサージ部につき,
(ウ-1)正面視すると,本件登録意匠は,上縁が下方に湾曲した凹曲線状を呈し,下縁は水平直線状で,それに続く左右両角部は略1/4円弧であって,クッション部の左右両角部の略1/4円弧と一体となって略半円弧状を呈しているのに対して,イ号意匠は,1枚のやや厚い布状を呈している点,
(ウ-2)右側面視すると,本件登録意匠は,全体が,背面方向に向かって幅狭となる扁平な倒直角台形状を呈しているのに対して,イ号意匠は,背面側がわずかに持ち上がった極めて扁平な略倒三角形状を呈している点,
(ウ-3)底面視すると,
(ウ-3-1)カバーの形状が,本件登録意匠は,略正方形状であるのに対して,イ号意匠は,略隅丸正方形状である点,
(ウー3-2)カバーをめくって現れるマッサージ部の底面に設けられた開口部につき,本件登録意匠は,その形状をやや大きな横長長円形状として,底面部の中心付近に設けたのに対して,イ号意匠は,その形状を大きな略長方形状として,底面部の縫合部側約2/3の範囲に設けた点,
が認められる。

4.本件登録意匠とイ号意匠の類否判断
以上の一致点,及び共通点及び相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,両意匠の類否を意匠全体として総合的に検討し,判断する。
(1)両意匠の形態について
ア 共通点の評価
共通点(あ)の,全体は,中心部が膨出し,周辺部の厚みが薄い板状体である点については,布製のクッションという観点から見れば,極めてありふれた態様であって,本件登録意匠の特徴ある態様とはいえないし,また,全体がクッション部とマッサージ部から構成されている点については,例えば,本件登録意匠の出願前,遅くとも平成19年(2007年)2月1日には,「HoMedics SP10H Shiatsu Cushion with Heat」と記載された意匠(甲第7号証。以下,「甲7意匠」という。(別紙第3参照))に既に見られるように,本件登録意匠の特徴とはいえない。
したがって,この共通点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
共通点(い)の,クッション部の左側面の下縁寄りに現出した電源コード及びその先端にコネクタ部が設けられた点については,これらは,マッサージ部に電源を供給するための付加的なものであるし,また,その形態もありふれた態様のものであって,使用時には邪魔にならない目に付きにくい部位に設けられたものであるから,本件登録意匠の特徴とは到底いえず,この共通点も,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
共通点(う-1)の,1枚の布状のカバーが,マッサージ部の底面全面を覆っている点については,当該カバーが,マッサージ部の底面とほぼ同形同大であって,視覚的に格別目立つ態様のものとはいえないし,また,クッションとして使用しているときには,底面という目に付きにくい部位に係るものである。また,マッサージ部底面の振動子部分をカバーで覆う態様は,本件登録意匠の出願前,甲7意匠に既に見受けられていることを勘案すれば,ボタンの共通点も含め,これらが,本件登録意匠の特徴とはいえず,この共通点も,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
共通点(う-2)の,カバーをめくると,マッサージ部の底面が現れ,当該底面には,全面が薄い布で覆われた開口部が設けられ,当該開口部には,内蔵されたマッサージ機能を発揮する振動子の4つの突起が,カバーの縫合部に向かって略「ハ」の字状に現れている点については,このような態様も,本件登録意匠の出願前,甲7意匠に既に見られるところであり,本件登録意匠の特徴とはいえず,この共通点も,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
そうすると,各共通点が,いずれも本件登録意匠の特徴とはいえないことから,これらの共通点がまとまった視覚効果を考慮したとしても,共通点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものというほかない。

イ 相違点の評価
それに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
すなわち,相違点(ア)の,平面視したとき,本件登録意匠の全体形状が,略正方形状で,子細に観察すると,4つの角部は略直角状で,4辺はそれぞれ内側にわずかに湾曲した凹曲面状を呈している点は,看者にシャープな印象を与えるのに対して,イ号意匠の全体形状は,略隅丸正方形状で,子細に観察すると,4つの角部はやや大きな円弧状で,4辺はそれぞれ外側に膨出する凸曲線状を呈している点は,看者に柔らかい印象を与えるものであって,この相違点については,両意匠は,明らかに異なる美感を生じていることから,この点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点(イ-1-1)の,クッション部の上面につき,本件登録意匠は,中心から4つの角部に向かう直線状の稜線が×印状に表れている点は,このような稜線は,クッションにおいては,例を挙げるまでもなく,本件登録意匠の出願前から既に見受けられる態様であって,格別特徴あるものとはいえないが,相違点(イ-1-2)の,×印状の稜線により囲まれて形成された4カ所の略直角三角形状部分が,それぞれやや湾曲した凹面を形成している点と相まって,本件登録意匠は,あたかも,稜線の内側に骨材が×印状に組まれていて,キャンプで使用するテントを想起させ,このような態様のものは,本件登録意匠の出願前には見受けられないことから,本件登録意匠の特徴といえる。
それに対して,イ号意匠は,4つの角部には,中心に向かうやや太い棒状の起毛状飾り部が短く現れ,子細に観察すると,中心から起毛状飾り部先端に向かう直線状の稜線が×印状にかすかに表れている程度であって特徴ある態様とはいえないが,起毛状飾り部は,平面視では短く現れるものの,正背面視ないし左右側面視では,かなりの長さのものであって,この点は,イ号意匠の特徴といえる。
そうすると,この相違点については,両意匠は,明らかに異なる美感を生じていることから,この点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点(イ-2)の,クッション部の正背面視及び左右側面視したときの輪郭形状が,本件登録意匠は,いずれも頂部から左右方向に下る傾斜直線及びそれに続く左右両角部の略1/4円弧からなっている点は,相違点(ウ-1)の,マッサージ部を正面視したときの下縁の左右両角部の略1/4円弧と相まって,両者が一体となって略半円弧状を呈していることから,全体が,頂部の尖った,あたかも,やや扁平な栗のシルエットを想起させる点は,本件登録意匠の特徴といえる。
それに対して,イ号意匠は,いずれも頂部から左右方向に下るなだらかな凸曲線状を呈する点は,あたかも,饅頭のシルエットを想起させ,この相違点については,両意匠は,明らかに異なる美感を生じていることから,この点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
(ウ)のマッサージ部の各相違点は,クッションとしての使用時には,比較的目に付きにくい底部に係るものであり,また,カバーをめくって現れるマッサージ部の底面の態様の相違については,カバーを頻繁にめくることは考え難いことから,この部分も比較的目に付きにくい部分といえる。
そうすると,これらの相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に止まるものではあるが,前記の相違点と相乗して生じる意匠的効果をも勘案すれば,相違点全体が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きなものと言わざるを得ない。

(2)小括
そうすると,これらの一致点,及び共通点と相違点を総合して判断すれば,本件登録意匠とイ号意匠とは,意匠に係る物品が一致するが,形態について,共通点(あ)ないし(う)に係る態様が相乗して生じる意匠的効果を勘案したとしても,共通点が相違点を凌ぐものとは到底言えず,両意匠は,意匠全体として美感が大きく異なることから,類似するということはできない。

5.結び
以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2013-05-29 
出願番号 意願2010-4591(D2010-4591) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZA (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平田 哲也山田 繁和 
特許庁審判長 川崎 芳孝
特許庁審判官 斉藤 孝恵
樫本 光司
登録日 2010-12-03 
登録番号 意匠登録第1404812号(D1404812) 
代理人 工藤 一郎 
代理人 秋本 恵理 
代理人 恩田 俊明 
代理人 住友 慎太郎 

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