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審決分類 |
審判 査定不服 意9条先願 取り消して登録 L3 審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L3 |
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管理番号 | 1280018 |
審判番号 | 不服2013-2716 |
総通号数 | 167 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2013-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-01-24 |
確定日 | 2013-09-20 |
意匠に係る物品 | 手摺用笠木の被覆材 |
事件の表示 | 意願2010- 11170「手摺用笠木の被覆材」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本件審判の請求に係る意匠登録出願は,本意匠を意願2010-010580号(意匠登録第1477593号)とする平成22年(2010年)4月16日付けの関連意匠の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「手摺用笠木の被覆材」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成20年(2008年)3月31日)に記載された意匠登録第1326113号(意匠に係る物品,建物用手すりの笠木材)の意匠であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 3.当審の判断 [A]原査定の適否 まず,原査定における拒絶の理由と,その際に引用された意匠について検討し,原査定の適否を判断する。 (1)本願意匠と引用意匠の対比 本願意匠及び引用意匠は,いずれも手摺の笠木に用いる被覆材に係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。 次に,本願意匠と引用意匠の形態を対比する(以下,対比のため,引用意匠の図面について図の表示と図中の向きを本願意匠の図面に合わせることとし,引用意匠の「平面図」を90°回転させ,引用意匠の「右側面図」を「正面図」とする。)と,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 まず,共通点として,(A)全体は,下端部に開口部をもつ略円形状の断面形状で,長手方向に連続する長尺材からなり,下端開口部左右近傍内側に,手摺用芯材と嵌合させる係止部を立設したものであって,(B)断面視略円形状の内側上端部に,手摺用芯材と接する突条部を配設した点,が認められる。 一方,相違点として,(ア)下端開口部先端部に一体的に形成された突片部の態様が,本願意匠は,笠木被覆材と同じ肉厚とし,その先端部を円弧状に形成しているのに対して,引用意匠は,笠木被覆材の約1/2の肉厚とし,その先端部に平坦面を有する隅丸矩形状に形成している点,(イ)下端開口部左右近傍内側に立設した係止部の態様が,本願意匠は,断面視を先が尖った略牙状としているのに対して,引用意匠は,断面視を上辺を平坦とした略倒立台形状としている点,(ウ)笠木被覆材内側上端部に形成した突条部の態様が,本願意匠は,断面視略矩形状の突条部を3条形成しているのに対して,引用意匠は,断面視略直角三角形状の突条部を左右対称の配置態様で2つ形成している点,(エ)笠木被覆材内側左右端部の態様が,本願意匠は,断面視略三角形状の凹溝部を各端部に4条形成しているのに対して,引用意匠には,そのような溝部を形成していない点,が認められる。 (2)本願意匠と引用意匠の類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 まず,両意匠は,いずれも手摺の笠木に用いる被覆材に係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。 次に,共通点(A)及び共通点(B)における,下端部に開口部をもつ断面視略円形状の長尺材内側に,係止部及び突条部を形成した態様は,引用意匠のほかにも多数見受けられ,手摺の笠木に用いる被覆材の構成態様としてありふれたものであって,本願意匠と引用意匠のみがもつ共通点とは言えず,両意匠の類似性についての判断に与える影響は軽微なものにとどまるものである。 これに対して,相違点(ア)については,本願意匠は,断面視略円形状長尺材の下端開口部先端部を略円弧状に形成し,その開口部近傍左右内側に係止部を立設させたとの視覚的印象を与える点が,断面視略円形状長尺材の下端開口部先端から係止部を立設し,その下端開口部に隅丸矩形状の薄い突片部を設けたといった視覚的印象を与える引用意匠とは大きく異なる点であり,両意匠に別異の印象を与えるものであって,相違点(ア)は,両意匠の類似性についての判断に大きな影響を及ぼすものである。また,相違点(イ)ないし(エ)も,被覆材内部の形状ではあるが,上記相違点とともに両意匠の類似性の判断に一定の影響を及ぼすものと言える。そして,これらの各相違点に係る態様が相まって生じる視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと言うことができる。 したがって,両意匠は,意匠に係る物品については共通するものであるが ,形態においては,両意匠の間には,その基本的な形状を含めて複数の共通点が存在するものの,相違点の印象が共通点の印象を凌駕しており,意匠全体としては視覚的印象を異にするものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 [B]その他の審理及び手続 当合議体が,先行意匠調査等を行った結果を基に,当審が更に審理した結果を受けて,以下の手続がなされている。 当合議体より請求人に対し,「本願意匠は,笠木被覆材内側左右端部の形状を除き,他の形状が共通する意願2010-010580号(不服2013-002715号)の意匠とは,共通感があるため,本願意匠と意願2010-010580号の意匠とは類似すると認められる」旨を伝え,審判請求人は,平成25年8月13日付け手続補正書の提出によって,願書に「本意匠の表示」欄を追加し,意願2010-010580号を本願の本意匠とする補正を行っている。 したがって,本願は,意願2010-010580号を本意匠とする関連意匠の出願として意匠登録を受けることができるものとなった。 4.結び 以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2013-08-30 |
出願番号 | 意願2010-11170(D2010-11170) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L3)
D 1 8・ 4- WY (L3) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 渡邊 久美 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 中田 博康 |
登録日 | 2013-10-18 |
登録番号 | 意匠登録第1484480号(D1484480) |