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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200922780 審決 意匠

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審決分類 審判 補正却下不服   取り消さない B5
管理番号 1281362 
審判番号 補正2012-500003
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2012-11-15 
確定日 2013-08-01 
意匠に係る物品 履物 
事件の表示 意願2011-21738「履物」において、平成24年5月18日付けでした手続の補正に対してされた却下の決定に対する不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯
(1)意匠登録出願
本願は,2011年3月24日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成23年(2011年)9月22日付けの意匠登録出願である。その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「履物」とし,【意匠の説明】の欄には,「各図の表面部全面に表された濃淡は,いずれも立体表面の形状を特定するためのものである。図中にある『Crocs(TM)』のマークおよびクロコダイルのロゴは意匠の模様を構成するものではない。履物の特有の着色も意匠の色彩を構成するものではない。履物の底の接地面模様は意匠の模様を構成するものではない。フットベッドおよび底の材質の模様も意匠の模様を構成するものではない。内表面の模様も意匠の模様を構成するものではない。第2実施例の履物は,第1実施例の履物から縫い紐を取った状態を示すものである。」と記載され,願書に添付した図面代用写真には,白黒写真による6面図及び斜視図並びにカラー写真による第2実施例の6面図及び斜視図が現されていた。(別紙第1参照)
(2)拒絶の理由の通知
原審は,本願について,(ア)「この意匠登録出願の意匠は,願書及び添付図面の記載によると,第1実施例および第2実施例との二つの意匠に係るものと認められます。」(イ)「この意匠登録出願の願書の意匠に係る物品の欄によると『履物』と記載されていますが,願書の記載及び添付図面等を総合して判断すると,経済産業省令で定められている物品の区分である『サンダル』,あるいは『短靴』と認められるにもかかわらず,願書の意匠に係る物品の欄の記載内容は,同省令で定める物品の区分よりも上位概念のものです。」として,意匠法第7条に規定する要件を満たしていない旨と,(ウ)「この意匠登録出願の願書の【意匠の説明】の記載は,ロゴマークの有無,色彩の有無,各部の模様及びそれらの組み合わせを不特定としたものであり,願書添付図面と一致せず,一の意匠を特定することができませんので,未だ具体的でないものと認められます。」として,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しない旨の,以上3点について記した拒絶の理由を平成24年1月10日付けで通知した。
(3)1回目の補正
これに対して出願人(本件審判請求人に同じ。以下,「請求人」という。)は,平成24年4月11日付けで手続補正書を提出し,願書の【意匠に係る物品】の欄の記載を「短靴」と変更し,願書に【部分意匠】の欄を追加し,【意匠の説明】の欄の記載を「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。各図中に表された細線はいずれも立体表面の形状を表す線であり,意匠の模様を構成するものではない。」と変更し,写真を全図削除し,図面を全図追加する補正をした。
(4)1回目の補正に対する却下の決定
これに対して審査官は,「上記手続補正書により,願書に部分意匠の項目を追加し,意匠の説明を部分意匠としてのものに変更されました。また,添付図面も濃淡を有する白黒およびカラー写真であったものを,破線および実線からなる線図に変更し,甲皮わきに付されていた模様入りボタン部,靴底の溝模様についても形状を変更する補正をされました。
しかし,当該補正は,この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面から総合的に判断しても導き出すことができず,また,本願意匠の要旨の認定に大きく影響を及ぼす部分であることから,上記手続補正書による補正は,出願当初の願書に添付した願書および図面の要旨を変更するものと認められます。」との理由により,意匠法第17条の2第1項の規定に基づき,平成24年4月12日付けで,この平成24年4月11日付け手続補正書によりした補正を却下すべきものと決定し,その後,当該却下の決定は確定した。
(5)2回目の補正
請求人は,平成24年5月18日付けで新たに手続補正書を提出し,手続補正1として,願書の【意匠に係る物品】の欄の記載を「短靴」と変更し,手続補正2として,願書に【部分意匠】の欄を追加し,手続補正3として,【意匠の説明】の欄の記載を「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。各図中に表された細線はいずれも立体表面の形状を表す線であり,意匠の模様を構成するものではない。」と変更し,手続補正4として,【提出物件の目録】の欄の記載を「図面」と変更し,手続補正5として,図面代用写真を全図削除し,手続補正6として,図面を全図追加する補正をした。(別紙第2参照)
(6)2回目の補正に対する却下の決定
これに対し,審査官は,「上記手続補正書により,願書に部分意匠の項目を追加し,意匠の説明を部分意匠としてのものに変更されました。また,添付図面も出願当初は濃淡を有する白黒写真およびカラー写真であったものを,濃淡及び色彩のない,破線と実線の描き分けのある線図に変更し,甲皮わきに付されていたワニの模様入りボタンを無模様に変更する補正をされました。
しかし,当該補正は,この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面から総合的に判断しても導き出すことができず,また,本願意匠の要旨の認定に大きく影響を及ぼす部分であることから,上記手続補正書による補正は,出願当初の願書に添付した願書および図面の要旨を変更するものと認められます。」との理由により,意匠法第17条の2第1項の規定に基づき,平成24年8月28日付けで,この平成24年5月18日付けの手続補正書によりした補正を却下すべきものと決定した。
(7)本件審判の請求
請求人は,平成24年5月18日付けの手続補正書によりした2回目の補正(以下,この補正を「本件補正」という。)に対する平成24年8月28日付けの却下の決定を不服として,本件審判を請求した。

2.当審の判断
本件補正,すなわち,本件補正でした,手続補正1ないし6の補正が,本願の願書の記載及び願書に添付した図面代用写真の要旨(以下,「本願意匠の要旨」という。)を変更するものであるか否かについて,以下検討する。
なお,手続補正4については,意匠法第6条第2項の規定により意匠法施行規則様式第2備考31に基づき記載した願書の【提出物件の目録】の欄の【物件名】の欄の記載内容を変更するものであり,この記載は,意匠法第9条の2括弧書により,意匠法第17条の2第1項の規定にいう「願書の記載」からは除外されている記載事項であるから,当審における本願意匠の要旨を変更するか否かの判断の対象とはしない。

(1)出願時の願書及び図面代用写真から導き出される本願意匠の要旨
まず,本件補正の適法性について検討を行う前提として,本願出願時(本件補正前)の願書の記載及び願書に添付した図面代用写真から導き出される本願意匠の要旨,すなわち,請求人が本願において意匠登録を受けようとする意匠の要旨を認定する。
(a)本願に含まれる意匠
出願時の願書の【意匠に係る物品】の欄には,「履物」と記載されており,願書に添付した図面代用写真には,それぞれ6面図及び斜視図により現された,白黒の明暗の調子が施された意匠(以下,「意匠1」という。),並びに,模様及び色彩が施された意匠(以下,「意匠2」という。)という,具体的形態が異なる2つの意匠が現されていたものと認められる。
ここで,意匠2については,図の表示が,【第2実施例の正面図】等,意匠法施行規則第4条第2項に規定する同法同規則様式第7の備考4において準用する,同法同規則様式第6備考8に掲げられた図の表示に沿ったものではないものの,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真を総合して判断すれば,意匠2についても,本願において意匠登録を受けようとしたものであると認められる。
そうすると,本願は,意匠に係る物品を「履物」とする2つの意匠を出願時に包含していたものと認められる。
(b)形態
出願時の願書の【意匠の説明】の欄には,個別の形態要素について意匠を構成するものではない旨の記載があるため,図面代用写真の内容及びこれらの記載を踏まえ,意匠1及び意匠2の形態について,検討する。
(i)意匠1
(ア)形状及び模様
願書の【意匠の説明】の欄には,「各図の表面部全面に表された濃淡は,いずれも立体表面の形状を特定するためのものである。図中にある『Crocs(TM)』のマークおよびクロコダイルのロゴは意匠の模様を構成するものではない。」,「履物の底の接地面模様は意匠の模様を構成するものではない。フットベッドおよび底の材質の模様も意匠の模様を構成するものではない。内表面の模様も意匠の模様を構成するものではない。」との記載がある。
この記載の文言の趣旨を,図面代用写真の内容と総合して判断するに,意匠1においては,当該「履物」の全体形状のうち,「『Crocs(TM)』のマークおよびクロコダイルのロゴ」及び「底の接地面」に係る表面模様が一体的に結合した部分以外の部分について意匠登録を受けようとする,請求人の意思表示がなされていたものと解することができる。
なお,「フットベッドおよび底の材質の模様」及び「内表面の模様」については,図面代用写真からは特定の模様を視認することができないため,これらの点については考慮の対象としない。
(イ)色彩,明暗の調子
願書の【意匠の説明】の欄には,「各図の表面部全面に表された濃淡は,いずれも立体表面の形状を特定するためのものである。」及び「履物の特有の着色も意匠の色彩を構成するものではない。」の記載がある。
この記載の文言の趣旨を,図面代用写真の内容と総合して判断するに,前者の記載は,各図の表面部全面に表された濃淡は,いずれも立体表面の形状を特定するための陰を表すものであって,本願において意匠登録を受けようとする意匠の構成要素ではないとしたものであり,後者の記載については,意匠法及び同法施行規則所定の形式には準じていないものの,白黒写真により現された意匠1の表面の,甲皮部及びストラップ部に見られる暗調子と,周側面の縫い紐及びストラップ係止部に見られる明調子の明度差については,本願において意匠登録を受けようとする意匠の構成要素として含めないようにしようとする,請求人の意思表示がなされていたものと解することができる。
(ii)意匠2
意匠2は,カラー写真による6面図及び斜視図によって現されており,願書の【意匠の説明】の欄には,上記意匠1で検討した記載に加え,「第2実施例の履物は,第1実施例の履物から縫い紐を取った状態を示すものである。」との記載がある。
この記載の文言の趣旨を,図面代用写真の内容と総合して判断するに,意匠2については,上記認定した意匠1から周側面の縫い紐を除いた意匠について意匠登録を受けようとする,請求人の意思表示がなされていたものと解することができる。

(2)本件補正による補正の当否
(a)手続補正1
当該補正は,願書の【意匠に係る物品】の欄の記載を「履物」から「短靴」に変更したものである。
意匠法施行規則別表第1の物品の区分の欄によれば,「履物」は,同表の下欄に掲げる物品の区分には示されておらず,また,同表を概観すれば,より上位の包括的な概念に基づく物品の区分を表すものと認められるため,「履物」は,同表の下欄に掲げる物品の区分と同程度の区分とは言えない。
しかし,その他の願書の記載及び願書に添付した図面代用写真の内容を総合して判断すれば,履丈の短い具体的形態を有する意匠1の意匠に係る物品は,同表の下欄に掲げられた物品の区分である「短靴」に属するものと認められる。
したがって,この補正は,本願意匠の要旨を変更するものではない。
(b)手続補正2及び手続補正3
当該各補正は,願書に【部分意匠】の欄を追加し,【意匠の説明】の欄において,意匠登録を受けようとする部分を特定する方法を追加したものであって,本願を物品の部分について意匠登録を受けようとする,いわゆる部分意匠の出願の形式とするものである。
そこで,本願出願時の願書の記載及び願書に添付した図面代用写真の内容を総合して判断するに,出願時の願書には,意匠法施行規則様式第2備考8に規定する【部分意匠】の欄は設けられておらず,図面代用写真には,同法同規則様式第7備考4で準用する,同法同規則様式第6備考11に則した,意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との塗り分け等もなされていない。
しかしながら,前述のとおり,出願時の願書の記載及び願書に添付した図面代用写真を総合して判断すれば,本願は,意匠1については,出願時から「『Crocs(TM)』のマークおよびクロコダイルのロゴ」及び「底の接地面」に係る表面模様が一体的に結合した部分以外の部分について意匠登録を受けようとする出願であったと認められる。また,意匠2についても,同様に,物品の部分について意匠登録を受けようとする出願であったと認められる。
したがって,これらの補正は,出願時から物品の部分について意匠登録を受けようとしていたものを,適法な部分意匠の出願形式に改めたまでものであるから,本願意匠の要旨を変更するものではない。
(c)手続補正5及び手続補正6
まず,本願が出願時に意匠1及び意匠2の2つの意匠を包含し,意匠法第7条の規定を満たしていなかったものを,当該各補正により,意匠2を削除し,意匠1のみについて意匠登録を受けようとした点について検討する。
本来,このような場合は,意匠法第10条の2第1項に規定する,分割の手続を取ることで適法な出願とすることができるが,当該手続を取らずとも,補正により意匠2を削除することで,結果として,意匠1のみについて意匠登録を受けようとする意匠法第7条の規定に合致した出願としたまでであるから,これらの各補正は,本願意匠の要旨を変更するものとは言えない。
次に,意匠1について,出願時の願書に添付した図面代用写真を,手続補正6により全て線図に変更し,物品の部分について,意匠登録を受けようとする部分とその他の部分とを実線と破線とで描き分けた点について検討する。
(ア) 甲皮部及びストラップ部に見られる暗調子と,周側面の縫い紐及びストラップ係止部に見られる明調子との明度差について
手続補正6により,願書に添付した図面代用写真を,全て線図に変更したことで,本願出願時の図面代用写真に現わされていた甲皮部及びストラップ部に見られる暗調子と,周側面の縫い紐及びストラップ係止部に見られる明調子の明度差が図面上に表されなくなっているが,前述のとおり,意匠1については,出願時から,甲皮部及びストラップ部に見られる暗調子と,周側面の縫い紐及びストラップ係止部に見られる明調子との明度差を,意匠の構成要素として含めないものとして意匠登録を受けようとしていたものであるから,これを適法な記載に改めるこの補正は,本願意匠の要旨を変更するものとは言えない。
(イ) 立体表面の形状を特定するための陰について
手続補正6により,願書に添付した図面代用写真を全て線図に変更した際に,各図中に細線による陰を描いた点については,本願出願時の図面代用写真において,濃淡で表していた立体表面の形状を特定するための陰を細線に置き換えただけであり,具体的な形状に変更は認められないことから,この点についても,本願意匠の要旨を変更するものとは言えない。
(ウ) 意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の具体的態様について
前記(2)(b)で述べたとおり,本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする出願であり,その意匠登録を受けようとする部分は,全体から「Crocs(TM)」のマーク,クロコダイルのロゴ及び底の接地面に係る部分を除いた部分であると認められる。
そうすると,当該意匠登録を受けようとする部分以外の部分を破線により表した点については,適法な部分意匠の図面表現に改めたまでのものであるから,本願意匠の要旨を変更するものとは言えない。
しかしながら,甲皮部表面の態様について,本願出願時の図面代用写真に現された意匠には,ヒールストラップを接続した履き口のベルト状部分を除く甲皮部表面の大部分に細かい梨地状の凹凸が施され,平滑なベルト状部分との対比が明確となっていたのに対して,手続補正6によって追加された図面には,この梨地状の凹凸が全く表されていない。
この点について,本願出願時の願書の【意匠の説明】の欄には,甲皮部表面の梨地状の凹凸を本願意匠の構成要素から除外しようとする旨の意思表示に係る記載は一切なされていない。
本願意匠の甲皮部は,表面積が大きく,外方から明確に視認できる,需要者の注意を強く惹く重要な部位であって,意匠の認定に大きな影響を及ぼす部分であるから,手続補正6によって,甲皮部表面に梨地状の凹凸が表されていない図面を追加した補正は,この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて判断しても,本願出願時の願書の記載及び添付された図面代用写真から当然に導き出すことができない,同一の範囲を超えるものであるから,この補正は,本願意匠の要旨を変更するものと言わざるを得ない。

(3)小括
以上によれば,平成24年5月18日付けの手続補正書でなされた本件補正において,手続補正1ないし3,及び手続補正5による補正については,本願意匠の要旨を変更するものではないが,手続補正6による補正は,本願意匠の要旨を変更するものである。

3.むすび
したがって,一の意匠についてした願書の記載及び願書に添付した図面又は図面代用写真に係る同時になされた補正は,これを一体として取り扱うべきものであるから,その一部に本願意匠の要旨を変更する補正を含む本件補正について意匠法第17条の2第1項の規定に基づき却下すべきものとした審査官の決定は妥当なものである。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2013-03-01 
結審通知日 2013-03-04 
審決日 2013-03-22 
出願番号 意願2011-21738(D2011-21738) 
審決分類 D 1 7・ 7- Z (B5)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神谷 由紀 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 川崎 芳孝
伊藤 宏幸
登録日 2013-10-25 
登録番号 意匠登録第1484918号(D1484918) 
代理人 森下 夏樹 
代理人 山本 秀策 

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