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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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判定2013600023 | 審決 | 意匠 |
判定2013600013 | 審決 | 意匠 |
判定2012600053 | 審決 | 意匠 |
無効2013880001 | 審決 | 意匠 |
無効2012880013 | 審決 | 意匠 |
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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属さない(申立不成立) K0 |
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管理番号 | 1282295 |
判定請求番号 | 判定2013-600012 |
総通号数 | 169 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2014-01-31 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2013-04-30 |
確定日 | 2013-11-29 |
意匠に係る物品 | 焼却炉の空冷炉壁用耐火レンガ |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1424879号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「焼却炉の空冷炉壁用耐火レンガ」の意匠は,登録第1424879号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨及び理由の要点 本件判定請求人(以下,「請求人」という。)は,「イ号図面(代用写真)に示す意匠は,登録第1424879号意匠(以下,「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求める。」と申し立て,その理由として,要旨以下のとおりの主張をし,証拠方法として,甲第1号証の1ないし3,甲第2号証の1及び同2,先行周辺意匠1ないし13を記載した甲第3号証,及び甲第4号証の1ないし3を提出した。 1.判定請求の必要性 請求人は,本件登録意匠物品を使用する小型水噴霧炉やストーカ式焼却炉の設計,施行,メンテナンスを行うことを業とし,本件登録意匠の意匠権者である。 一方,判定被請求人(以下,「被請求人」という。)は,鉄鋼・金属等のプラント設備工事,治水・上下水道・ゴミ処理の建設・整備などの公共事業,建設用各種機器の開発・製造・販売を業とし,特にゴミ処理等の清掃施設に関して,平成22年度以降に急速に事業を拡大し,イ号図面に示す意匠物品を,焼却炉の入札補修工事に使用したものである。 被請求人は,「イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない」と主張している。しかしながら,請求人は,「本件登録意匠と比較すると,イ号意匠に2か所に差異が見られるが,全体として見た場合,基本的な構成態様が略同一であり,イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する」と判断している。その理由は,「被請求人が,空冷耐火レンガの取付支持具を変更せずにそのままに利用し,取付支持具の枠形状に合うように本件登録意匠と同じ略矩形形状とし,2か所(四隅切り欠き部や背面の湾曲凹部)を変更して,イ号意匠を創作したためである。」このため,判定請求を行った。 2.本件登録意匠の説明 (1)本件登録意匠の意匠に係る物品 本件登録意匠の意匠に係る物品は,日本意匠分類のK0-59「廃棄物処理機等部品及び付属品」に属する焼却炉の空冷炉壁用耐火レンガである。 (2)本件登録意匠の形態 ア 基本的な構成態様 A.矩形の厚板部を2枚重ね,正面厚板部を背面厚板部より大きく形成して,正面厚板部と背面厚板部との四辺の境界に,背面側が落ち込む段部を一定高さで形成している構成, B.四隅に当該意匠物品を焼却炉の炉壁に取り付けるための切り欠き部がそれぞれ対称形状に形成されている構成を具備している。 イ 具体的な構成態様 C.四隅の切り欠き部が,正面厚板部で略45°の傾斜が形成され,背面厚板部でエッジが僅かに面取りされている形態が見られる。 3.イ号意匠の説明 (1)イ号意匠の意匠に係る物品 イ号意匠の意匠に係る物品は,日本意匠分類のK0-59「廃棄物処理機等部品及び付属品」に属する焼却炉の空冷炉壁用耐火レンガである。 (2)イ号意匠の形態 ア 基本的な構成態様 a.矩形の厚板部を2枚重ね,正面厚板部を背面厚板部より大きく形成して,正面厚板部と背面厚板部との四辺の境界に,背面側が落ち込む段部を一定高さで形成している構成, b.四隅に当該意匠物品を取り付けるための切り欠き部がそれぞれ対称形状に形成されている構成を具備している。 イ 具体的な構成態様 c.四隅の切り欠き部が,正面厚板部で略直角の切起こし部が形成され,背面厚板部にエッジが僅かに面取りされている形態, d.背面に,僅かに凹む湾曲凹部が上下一対,幅方向に形成されている形態が見られる。 4.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明 (1)本件登録意匠とイ号意匠との共通点 本件登録意匠とイ号意匠の意匠に係る物品は,日本意匠分類のK0-59「廃棄物処理機等部品及び付属品」に属する焼却炉の空冷炉壁用耐火レンガである点。 形態につき,基本的な構成態様において, A 正面厚板部と背面厚板部を重ねて四辺中央部に,背面が縮小される段部を全周にわたって形成した点, B 四隅に当該意匠物品を取り付けるための対称形状の切り欠き部が形成されている点及び四隅切り欠き部で背面厚板部のエッジが面取りされている点。 (2)本件登録意匠とイ号意匠の差異点 形態につき,具体的な構成態様において, C 本件登録意匠の四隅の切り欠き部は,正面厚板部のエッジが略45°の傾斜面で切りかかれているのに対して,イ号意匠の該部位は,正面厚板部で略直角の切起こし部が形成されている点, D 本件登録意匠の背面は,幅方向に沿う上下一対の湾曲凹面部が形成されている点。 5.イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明 (1)本件登録意匠の特徴について 耐火物の意匠において,矩形の厚板形状は,一般によく見られる形状である。しかしながら,本件登録意匠のごとく,大きさの異なる2枚の厚板を表,裏重ね合わせたような段部を四辺中央に沿って形成した形態は,先行周辺意匠や従来の意匠には見られない特徴のある斬新な形態であると認められる。 また,本件登録意匠は,厚板状の本体に,四辺すべてに正面側から背面側に縮小される段部を具備した形態,及び四隅すべての正面厚板部に切り欠き部を形成した形態が,本件登録意匠の特徴である。 (2)本件登録意匠とイ号意匠との相違点及びその検討 ア 四隅の切り欠き部について 本件登録意匠の切り欠き部が正面厚板部を略45°で面取りした傾斜面であるのに対して,イ号意匠は,正面厚板部の隅部を90°で切起こした切り欠き部を有する点で差異がある。 これらの切り欠き部の差異は,切り欠き部のみを取り出して比較すると,明瞭に区別できるものであるが,[イ号意匠の寸法を示す参考図]に示すように,イ号意匠において,切り欠き部面積率が正面視の面積に対して,略2.4%に過ぎず,しかも切り欠き部は四隅に分散されているから,それぞれの切り欠き部の容積率は略0.3%に過ぎず,かつ四隅に分散されているので,物品を全体として見たときに,四隅の切り欠き部の視覚における割合はかなり小さなものとなり,目立ちにくい。 しかも,本件登録意匠とイ号意匠の切り欠き部の差異は,背面厚板部の四隅に角形部があるため,背面視においてほとんど視認することができず,また左,右側面視,平面視,底面視でも,ほぼ同一に表れるため視認することができない。 イ 背面形状について 本件登録意匠の背面は平坦面に形成されているが,イ号意匠の背面には,上下一対の湾曲凹部が幅方向に形成されている点で差異がある。 しかしながら,これらの「湾曲凹部」は,[イ号意匠の参考図]右図のように,側面視で直状物を背面に押し当てて初めて確認できるものであって,視覚的に極めて認識しにくく,指摘されてやっとわかる程度の態様で,ほとんど注意を惹くことがない。 ウ まとめ 以上のように,本件登録意匠とイ号意匠は,切り欠き部の具体的な構成態様において,差異が認められるが,切り欠き部のみをそれぞれ取り出して比較した場合はともかく,これら切り欠き部の差異は,物品全体に占める割合が極めて小さいもので,視覚的に目立たないものといえる。また,イ号意匠の背面に見られる「上下一対の湾曲凹部」の具体的な構成態様は,目視においてほとんど視認することが困難なものであって,意匠としての特徴とはなり得ない。 これに対して,本件登録意匠とイ号意匠に共通する基本的な構成態様,すなわち,厚板状の本体に,四辺すべてに正面側から背面側が縮小される段部を具備した形態,及び四隅すべての正面厚板部に切り欠き部を形成した形態は,先行周辺意匠には見られない斬新な形態であって,本件登録意匠とイ号意匠の差異点を十分に凌駕しており,イ号図面に示す意匠は,本件登録意匠の類似範囲に属する。 6.むすび 以上述べたように,本件登録意匠とイ号意匠は,先行周辺意匠には見られない斬新な全周にわたる段部,及び四隅に形成した切り欠き部を具備した基本的な構成態様が酷似しており,このような全体を表す形状は,四隅切り欠き部の差異及び背面の湾曲凹部の形態を十分に圧している。したがって,イ号図面(代用写真)に示す意匠は,登録第1424879号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 第2 被請求人の答弁の趣旨及び理由の要点 1.答弁の趣旨 被請求人は,「『判定請求書におけるイ号図面(代用写真)に示す意匠は,意匠登録第1424879号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない』との判定を求める。」と申し立て,その理由として要旨以下のとおりの主張をし,証拠方法として,乙第1号証ないし第11号証を提出した。 2.被請求人の主張 (1)本件登録意匠とイ号意匠との対比 ア 共通点 両意匠の基本的構成態様の共通点として, A 矩形の厚板部を2枚重ね状に表し,正面厚板部を背面厚板部より大きく形成して,正面厚板部と背面厚板部との四辺の境界に,背面側が落ち込む段部を一定の高さで形成した点, B 2枚重ね状の厚板部四隅には,当該意匠物品を焼却炉の炉壁に取り付けるための凹状部が形成されており,正面厚板側隅部から背面厚板側隅部が見える点, 両意匠の具体的態様の共通点として C 背面厚板部は,四隅のエッジが面取りされている点, がある。 イ 差異点 両意匠の基本的構成態様には差異はなく,具体的態様の差異点として a 正面厚板部四隅の凹部について,本件登録意匠の凹部は,斜めに切り落とされた切角であり,略45°の傾斜面であるが,一方,イ号意匠の正面厚板部四隅の凹部は,直角すなわち略90°に切り込まれた形状である点, b 背面厚板部の形状について,本件登録意匠の背面は,正面側と平行な面一の平面状であるが,一方,イ号意匠の背面は,側面視で上,中,下に厚みを残し(中央の厚みは,上下の各厚みよりやや薄い。),その間に緩やかな円弧状にくぼむ帯状湾曲凹部が,背面視方向に形成されて全面が凹凸の湾曲面状に表れる点, がある。 (2)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない理由の説明 ア 本件登録意匠の要部について 請求人は,本件登録意匠の特徴は,厚板状の本体に,四辺すべてに正面側から背面側に縮小される段部を具備した形態,及び四隅すべての正面厚板部に切り欠き部を形成した形態であると,主張する。 しかしながら,厚板部の本体に,四辺すべてに正面側から背面側に縮小される段部を具備した形態,すなわち,矩形の厚板部を2枚重ね,正面厚板部を背面厚板部より大きく形成して,正面厚板部と背面厚板部との四辺の境界に,背面側が落ち込む段部を一定の高さで形成しているとの基本的構成態様は,需要者,取引者が新規な創作部分として注意を惹かれるとはいえない。 なぜなら,乙第4号証(昭和60年3月8日に公告となった特公昭60-9210号公報)や乙第5号証によって,既に,厚み方向中央部に段部を有し,かつ該段部より炉外側部が炉内側部より小さい相似形であるとともに該炉内側部のコーナー部が炉外側部のコーナー部より大きく切欠いたレンガの構成が,公知となっているからである。 また,四隅すべての正面厚板部に切り欠き部を形成した形態,すなわち,四隅に当該意匠物品を焼却炉の炉壁に取り付けるための切り欠き部がそれぞれ対称形状に形成されているとの基本的構成態様は,需要者,取引者が新規な創作部分として注意を惹かれるとはいえない。 なぜなら,四隅の切角部,あるいは切り欠き部をそれぞれ対称形状とすることは,耐火レンガの分野では,極めてありふれた態様であると言わざるを得ない。 以上,本件登録意匠の公知意匠にない新規な創作部分の存否等を検討すると,焼却炉の側壁に沿って縦方向に設けられた複数の支持材に格子状に固定した支持板に配列されるために使用される空冷炉壁用耐火レンガに係る,本件登録意匠につき,需要者,取引者は,当該レンガの四隅の切角部が,正面厚板部で略45°の傾斜面を持つように形成され,背面厚板部でエッジが僅かに面取りされているとの具体的形状に専ら注意を惹かれるのであって,これこそが要部であると言える。 イ 共通点の評価 基本的構成態様における共通点Aの,矩形の厚板部を2枚重ね状に表し,正面厚板部を背面厚板部より大きく形成して,正面厚板部と背面厚板部との四辺の境界に,背面側が落ち込む段部を一定の高さで形成した点,及び共通点Bの,2枚重ね状の厚板部四隅には,当該意匠物品を焼却炉の炉壁に取り付けるための,凹状部が形成されており,正面厚板側隅部から背面厚板側隅部が見える点は,乙第4号証や乙第5号証によって,既に公知のものであるから,需要者,取引者は,当該共通点に係る本件登録意匠の基本的構成態様には注意を惹かれないので,当該基本的構成態様における共通点を高く評価することはできない。 ウ 差異点の評価 具体的態様の差異点aの,四隅の一部を切り落としている部位の具体的形状について,本件登録意匠は,切角部であって,すなわち,方形の四隅を斜めに削り落とす形となっているのに対して,イ号意匠は,直角の切り欠き部であり,具体的には,四隅の切角部について,本件登録意匠は,正面厚板部で斜めに切り落とされた切角であり,略45°の傾斜面が形成されるものであるが,一方,イ号意匠は,正面厚板部で直角すなわち90°に切り取られた部位から形成されており,美感上顕著な差異がある。 さらに,差異点bの,背面厚板部の形状に付いて,本件登録意匠の背面は,正面側と同じく面一の平面状であるが,一方,イ号意匠の背面は,側面視で上,中,下に厚みを残し(中央の厚みは,上下の各厚みよりやや薄い。),その間に緩やかな円弧状にくぼむ帯状湾曲凹部が,背面視方向に形成されて全面が凹凸の湾曲面状に表れるという形状であり,美感上顕著な差異がある。 これらの差異は,焼却炉の空冷炉壁用耐火レンガの需要者,取引者にとって,特に注意を惹く部位における美感上の差異であり,イ号意匠における背面厚板部の背面側全面に表れる新規な特徴と正面厚板部四隅の直角に切り取られた形状は,従来にない新規な特徴であることから,これらの特徴を有しない本件登録意匠と,イ号意匠は類似しない。 (3)むすび 以上の説明により,「判定請求書におけるイ号図面(代用写真)に示す意匠は,登録第1424879号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求める」との請求人の主張は失当である。 したがって,被請求人は,答弁の趣旨記載のとおりの判定を求める。 第3 当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠(登録第1424879号意匠)は,平成23年(2011年)2月4日に意匠登録出願され,平成23年(2011年)9月9日に意匠権の設定の登録がなされ,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「焼却炉の空冷炉壁用耐火レンガ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付された図面代用写真に現されたとおりのものである。(別紙第1参照) (1)本件登録意匠の形態 ア 基本的な構成態様 (A)略同厚の矩形の厚板を2枚重ね,正面厚板部を背面厚板部より僅かに大きく形成して,正面厚板部と背面厚板部との四辺の境界に,背面側が落ち込む段部を一定高さで形成している。 (B)当該意匠物品を焼却炉の炉壁に取り付けるための切り欠き部が,四隅にそれぞれ対称形状に形成されている。 イ 具体的な構成態様 (C)正面厚板部の正面の縦横比率は,略1:1.5である。 (D)正面厚板部の四隅は,略45°の傾斜面による切り欠き部が形成され,その結果,正面厚板部全幅に対する,切り欠き部を除いた正面部の上下水平辺の長さの比率は,略1:0.8であり,また,正面厚板部の全高に対する,切り欠き部を除いた正面部の左右垂直辺の長さの比率は,略1:0.7である。 (E)背面厚板部の四隅角部のエッジは,僅かに面取りされている。 2.イ号意匠 請求人は,イ号意匠の形態を特定するにあたり,判定請求書において「イ号図面」(甲第2号証の1)及び「イ号図面(代用写真)」(甲第2号証の2)を提出している。 しかしながら,請求人は,判定請求書の請求の理由において,イ号意匠の形態を特定するにあたり,「イ号図面」(甲第2号証の1)に基づいて主張していることから,当審は,イ号意匠の形態を「イ号図面」(甲第2号証の1)に基づいて認定及び判断を行うこととする。(別紙第2参照) なお,必要に応じて,「イ号図面(代用写真)」(甲第2号証の2)を参酌する。(別紙第3参照) (1)イ号意匠の意匠に係る物品 イ号意匠の意匠に係る物品は,「焼却炉の空冷炉壁用耐火レンガ」である。 (2)イ号意匠の形態 ア 基本的な構成態様 (a)略同厚の矩形の厚板を2枚重ね,正面厚板部を背面厚板部より僅かに大きく形成して,正面厚板部と背面厚板部との四辺の境界に,背面側が落ち込む段部を一定高さで形成している。 (b)四隅に当該意匠物品を取り付けるための切り欠き部がそれぞれ対称形状に形成されている。 イ 具体的な構成態様 (c)正面厚板部の正面部の縦横比率は,略1.3:1である。 (d)正面厚板部の四隅は,略直角の切起こし部が形成され,その結果,正面厚板部全幅に対する,切り欠き部を除いた正面部の上下水平辺の長さの比率は,略1:0.8であり,また,正面厚板部の全高に対する,切り欠き部を除いた正面部の左右垂直辺の長さの比率は,略1:0.9である。 (e)背面厚板部の四隅角部のエッジは,僅かに面取りされている。 (f)背面に僅かに凹む湾曲凹部が上下一対,幅方向に形成されている。 3.本件登録意匠とイ号意匠の対比 両意匠を対比すると,両意匠の意匠に係る物品は,いずれも「焼却炉の空冷炉壁用耐火レンガ」であって,一致する。 形態については,以下のとおりである。 (1)共通点 A 略同厚の正面厚板部と背面厚板部を重ねて,四辺中央部に,背面側 が縮小される段部を全周にわたって形成した点, B 四隅に当該意匠物品を取り付けるための対称形状の切り欠き部が形成されている点,及び四隅切り欠き部で背面厚板部のエッジが面取りされている点, が認められる。 (2)相違点 具体的な構成態様において, C (本物品は90°回転させて用いられることも考慮すると)正面厚板部の正面の短辺と長辺との長さの比率は,本件登録意匠は,略1:1.5であるのに対して,イ号意匠は,略1:1.3である点, D 本件登録意匠の四隅の切り欠き部は,正面厚板部のエッジが略45°の傾斜面で切り欠かれているのに対して,イ号意匠は,正面厚板部で略直角に切起こし部が形成されている点, E 本件登録意匠の背面は,全体が平坦面に形成されているのに対して,イ号意匠の背面は,幅方向に沿う上下一対の湾曲凹部が形成されている点, が認められる。 4.本件登録意匠とイ号意匠との類否判断 以上の共通点及び相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,両意匠の類否を意匠全体として総合的に検討し,判断する。 (1)両意匠の形状について ア 共通点の評価 本件登録意匠とイ号意匠の共通点A及びBについては,乙第4号証(別紙第4参照)によって,既に,略同厚の正面厚板部と背面厚板部を重ねて,厚み方向中央部に段部を有し,かつ該段部より炉外側部が炉内側部より小さい相似形であるとともに該炉内側部のコーナー部が炉外側部のコーナー部より大きく切欠いたレンガの構成が公知となっていることより,これらの態様は本件登録意匠にのみ見られる特徴とは言えず,両意匠の類否判断に与える影響は小さいといえる。 イ 相違点の評価 両意匠の相違点Cについては,本物品は90°回転させて用いられることも考慮すると,両意匠の正面厚板部の正面部の短辺と長辺との長さの比率の相違は,ごく僅かなものであり,両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。 相違点Dについては,当該意匠物品を焼却炉の炉壁に取り付けるための切り欠き部であって,看者が注目をする部位であり,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。 なお,請求人は,これらの切り欠き部の相違は,切り欠き部のみを取り出して比較すると,明瞭に区別できるものであるが,イ号意匠において,切り欠き部面積率が正面視の面積に対して,略2.4%に過ぎず,しかも切り欠き部は四隅に分散されているから,それぞれの切り欠き部の容積率は略0.3%に過ぎず,かつ四隅に分散されているので,物品を全体として見たときに,四隅の切り欠き部の視覚における割合はかなり小さなものとなり,目立ちにくい,旨主張するが,本件登録意匠の出願日前より,乙第4号証によって,既に切り欠き部が円弧状のものが公知となっていることより,本件登録意匠は,切り欠き部を略45°の傾斜面としたことに大きな特徴があるというべきであり,正面視の面積に対する切り欠き部の占める面積が小さいとしても,当該切り欠き部の態様が大きく異なるイ号意匠との相違点は,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすため,この請求人の主張を採用することはできない。 相違点Eについては,イ号意匠の,幅方向に沿う上下一対の湾曲凹部が形成されている特徴は,背面厚板部の背面側全面に表れる新規な特徴であり,面一な本件登録意匠との相違は,類否判断に大きな影響を与えるものである。 (2)小括 したがって,これらの共通点と相違点を総合して判断すれば,本件登録意匠とイ号意匠とは,意匠に係る物品は一致するが,形状については,両意匠の共通点が類否判断に与える影響は限定的であるのに対して,相違点は両意匠を別異なものと印象付けるような大きな影響を与えるものであり,両意匠は類似するとはいえない。 第4 結び 以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 よって,結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2013-11-19 |
出願番号 | 意願2011-2378(D2011-2378) |
審決分類 |
D
1
2・
1-
ZB
(K0)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 並木 文子 |
特許庁審判長 |
原田 雅美 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 江塚 尚弘 |
登録日 | 2011-09-09 |
登録番号 | 意匠登録第1424879号(D1424879) |
代理人 | 水野 みな子 |
代理人 | 山口 健司 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 特許業務法人森本国際特許事務所 |