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審判番号(事件番号) データベース 権利
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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 B7
管理番号 1283201 
審判番号 不服2013-9066
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-17 
確定日 2013-12-19 
意匠に係る物品 化粧用パックシート 
事件の表示 意願2012- 15530「化粧用パックシート」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成24年(2012年)6月29日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「化粧用パックシート」とし,その形態は,願書及び願書添付の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由
本願に対する原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。

この意匠登録出願の意匠は,化粧用パックシートに係るものであるが,この種物品の分野に於いては,顔全体ばかりでなく,顔上半分或いは顔下半分の化粧用パックシートも普通に見受けられる(例えば,意匠1,意匠2,意匠3)ところ,この出願の意匠は,日本国内において広く知られた顔全体を被覆する化粧用パックシート(上記意匠1)の鼻下で上記意匠2に見られるような略弧状に分割して顔上半分の化粧用パックシートに変更したに過ぎないので,容易に創作できたものと認められる。

意匠1 (別紙第2参照)
特許庁が平成18年(2006年)9月8日に発行した意匠公報記載
意匠登録第1284246号の意匠
意匠2 (別紙第3参照)
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2011年 7月 5日
受入日 特許庁意匠課受入2011年 7月 8日
掲載者 株式会社セシール 表題 タイトルなし
掲載ページのアドレス http://www.cecile.co.jp/images/cm/512/l/512YD- 215_1.jpg に掲載された「パック用シート」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ23008969号)

意匠3 (別紙第4参照)
特許庁が平成13年(2001年)7月23日に発行した意匠公報記載
意匠登録第1116427号の意匠

3.請求人の主張の要旨
(1)意匠1について
意匠の創作は個々の創作要素がまとまって一つの全体意匠が誕生することから,顔上半部の化粧用パックシートである本願意匠と顔全体を覆う化粧用フェイスマスクである意匠1とは明らかに需要者,取引者に外観上大きく相違した印象を与え,訴える美感は異質である。
(2)拒絶査定における意匠法第3条第2項の認定について
本願意匠と意匠1に係る上半部分の形態を比較するに, 前述の全体観察から,本願意匠と意匠1に係る上半部分の形態については,主として以下の共通点と差異点が認められる。
共通点としては,
A)両目部分に孔が開口している点,
B)鼻部分に凹形状の切り込みを形成している点,にあり,
一方,差異点としては,
1)本願意匠は全体的に扁平な半円形を形成しているのに対して,意匠1に係る上半部分は全体的に略真円形の半円形を形成している点,
2)本願意匠の両目部分は上辺と下辺が外側に向かって緩やかな凸状弧を形成した米粒形状の孔が開口しているのに対し,意匠1に係る上半部分の両目部分は上辺が左右平行に直線を形成した逆扇状の孔が開口している点,
3)本願意匠は顔の左右両側のこめかみ部分から上部位置に略半円の耳状突起部を左右非対称に設けているのに対し,意匠1に係る上半部分は顔の左右両側の頭部分に略半円の耳状突起部を設けている点,
4)本願意匠の底辺は鼻梁を頂点に左右側面縁に緩やかに上に向かって弧状を形成してなるのに対し,意匠1に係る上半部分の底辺は特定される状態にない点,にある。
そこで,上記の共通点と差異点について総合的に検討するに,両目部分に孔が開口している共通点並びに鼻部分に凹形状の切り込みを形成している共通点は,いわゆる顔に用いる「化粧用パックシート」「化粧用フェイスマスク」における物品の機能上の類型的な態様であって,特徴とはなり得ず,この共通点をもって本願意匠と意匠1に係る上半部分の類否を直ちに決することができないものである。
一方,差異点のうち,
1)の点において,本願意匠は全体的に扁平な半円形を形成しているのに対して,意匠1に係る上半部分は全体的に略真円形の半円形を形成していることから,基本的な顔の上半部の形状が異なる態様(本願意匠の左右側面の弧状と上部辺の弧状は略真円形の半円形を形成せず,意匠1の左右側面の弧状と上部辺の弧状は略真円形の半円形を形成する)
2)の点において,本願意匠の両目部分は上辺と下辺が外側に向かって緩やかな凸状弧を形成した米粒形状の孔が開口しているのに対し,意匠1に係る上半部分の両目部分は上辺が左右平行に直線を形成した逆扇状の孔が開口していることから,両目部分の基本的な形状が異なる態様
3)の点において,本願意匠は顔の左右両側のこめかみ部分から上部位置に略半円の耳状突起部を左右非対称に設けているのに対し,意匠1に係る上半部分は顔の左右両側の頭部分に略半円の耳状突起部を設けていることから,耳状突起部の印象が異なる態様
4)の点において,本願意匠の底辺は鼻梁を頂点に左右側面縁に緩やかに上に向かって弧状を形成してなるのに対し,意匠1に係る上半部分の底辺は特定される状態にないことから,全体的な印象が異なる態様
が本願意匠と意匠1に係る上半部分の特徴をなすところであり,これらの差異点は視覚的に顕著であることから,本願意匠と意匠1に係る上半部分は別異の印象を与えるものであり,またこれらの差異点は全体として共通点を圧倒するところとなり,本願意匠と意匠1に係る上半部分とは外観上大きく相違した印象を需要者,取引者に与えるものである。
よって,拒絶査定の理由において「この意匠の基本構成は,先の拒絶理由通知書に記載の意匠1の鼻下までの意匠に酷似しており」と判断されているが,上記のように,本願意匠と意匠1に係る上半部分は需要者,取引者に訴える美感は異質であり,本願意匠は意匠1から容易に創作できたものとは認められず,本願意匠は意匠法第3条第2項の規定に該当しないものである。
次に,拒絶査定は『本願意匠は,その下辺形状を鼻下から両側の斜め上方の外郭形状に向けて略弧状としたものであって,その下辺形状も先に示した意匠2にみられるとおり公知であり,変更にあたり特段の工夫をしたと言える程のものではありません。』と認定している。
確かに,化粧用パックシートには顔全体の他,顔上半分,顔下半分のものがあるものの,上記のように,本願意匠の意匠法第3条第2項の規定の適用に際し,顔全体を覆う化粧用フェイスマスクである意匠1(甲第1号証)の鼻下までの上半部のみの形状を取り出し,更に本願意匠とは類似しない顔上半部のフェイスマスクである意匠2の下辺のみの形状を取り出して公知であるとして,全体として変更にあたり特段の工夫をしたと言える程のものではないと認定することは,全体形状の独自的な創作性を否定するものであって,妥当性を欠くものである。
なんとなれば,本願意匠の下辺形状が上記意匠2にみられるような略弧状に分割して顔上半分の化粧用パックシートに変更したに過ぎないと判断されたが,顔上半分の下辺形状は,例えば意匠3(甲第2号証)や意匠登録第1237800号(甲第3号証),意匠登録第1180616号(甲第4号証),意匠登録第995341号(甲第5号証)にも表れているように,直線や波打ち線や角度を設けた二直線にしたり,更に鼻部分の下端や途中から左右底辺を設けることにより,顔上半分の化粧用パックシートは外観上大きく相違した印象を需要者,取引者に与えるものである。
すると,本願意匠と意匠1に係る上半部分とは外観上大きく相違した印象を需要者,取引者に与えるものであることから,まずこの点のみにおいても,本願意匠は意匠1から容易に創作できたものとは認められないものであり,且つ顔上半分の化粧用パックシートの底辺も直線や波打ち線や角度を設けた二直線にしたり,更に鼻部分の下端や途中から左右底辺を設けることにより(甲第2号証乃至甲第5号証),顔上半分の化粧用パックシートは外観上大きく相違した印象を需要者,取引者に与えるものである。
従って,本願意匠は全体として当業者にとっての格別の創作性があり,本願意匠の意匠法第3条第2項の規定の適用に際し,顔全体を覆う化粧用フェイスマスクである意匠1(甲第1号証)の鼻下までの上半部のみの形状を取り出し,更に本願意匠とは類似しない顔上半部のフェイスマスクである意匠2の下辺のみの形状を取り出して公知であるとして,全体として変更にあたり特段の工夫をしたと言える程のものではないと判断した拒絶査定は,全体形状の独自的な創作性を否定するものであって,妥当性を欠くものであることから,本願意匠は意匠法第3条第2項の規定に該当しないものである。
(3)むすび
畢竟,以上の如く,本願意匠は意匠1に類似しないことから,当業者が日本国内に於いて公然知られた形状に基づいて容易に意匠の創作ができたものとは言えず,また,本願意匠と意匠1に係る上半部分は需要者,取引者に訴える美感は異質であり,本願意匠は意匠1から容易に創作できたものとは認められず,更に本願意匠は全体として当業者にとっての格別の創作性があり,本願意匠の意匠法第3条第2項の規定の適用に際し,顔全体を覆う化粧用フェイスマスクである意匠1(甲第1号証)の鼻下までの上半部のみの形状を取り出し,更に本願意匠とは類似しない顔上半部のフェイスマスクである意匠2の下辺のみの形状を取り出して公知であるとして,全体として変更にあたり特段の工夫をしたと言える程のものではないと判断した拒絶査定は,全体形状の独自的な創作性を否定するものであって,妥当性を欠くものである。
よって,本願意匠は当業者が日本国内又は外国に於いて公然知られた形状に基づいて格別の創作力を要せずに,容易に意匠の創作ができたものとは認められず,本願意匠は全体として当業者にとっての格別の創作性があることから,本願意匠は意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり,本願意匠の登録性は十二分に存するものである。

4.当審の判断
本願意匠が,当業者であれば,容易にその意匠の創作をすることができたものか否かについて,以下検討する。
(1)本願意匠
本願意匠は,意匠に係る物品を「化粧用パックシート」とし,その形態は,顔の上半分用の略半円形状の薄いシートであって,外縁の左右に小型半円形状のつまみ用の耳部(以下,「耳部」という。)を突出し,左右の目の位置に略台形状の大きな孔部を設け,鼻の左右に斜め上方に切り込み線を有し,鼻の左右の下端を隅丸状とし,鼻の下端中央を尖らせたものである。
(2)原査定の拒絶の理由の引用意匠
1)原査定の拒絶の理由に引用した意匠1は,顔の全体用の化粧用フェイスマスクであり,全体が略円形状の薄いシートであって,外縁上方の左右に小型半円形状のつまみ用の耳部を設け,左右の目の位置に略台形状の大きな孔部を設け,下方の口の位置にも扁平な略アーモンド形状の横長の孔部を設け,鼻の下辺と下方左右及び鼻下部中央,口の下から顎への中央下部,頬の下に切り込み線を有するものである。
2)意匠2は,顔の上半分と下半分のパック用シートであり,そのうち顔の上半分用の略半円形状の薄いシートは,左右の目の位置に略楕円形状の大きな孔部を設け,外縁上方のこめかみ辺りに斜め下方に切り込み線を有し,鼻の左右に斜め上方に切り込み線を有し,鼻の左右の下辺を斜め直線状とし,鼻の下端を円弧状としたものである。
3)意匠3は,顔の上半分用のフェイスマスクであり,全体が略半円形状の薄いシートであって,外縁の下方の左右に小型半円形状のつまみ用の耳部を設け,左右の目の位置に略楕円形状の切り離せる切り込み線を有し,外縁上方の中央と左右から中央部に向かう切り込み線を有し,鼻の左右に斜め上方に切り込み線を有し,鼻の左右の下辺を水平状とし,さらにその左右の辺を斜め上方に立ち上げ,鼻の下端を水平状としたものである。
(3)創作容易性の判断
まず,この種の化粧用パックシートの分野においては,顔の上半分用のシートの全体を略半円形状の薄いシートとすることは意匠2及び意匠3に見られるように,本願出願前より既に行われていることである。また,小型半円形状のつまみ用の耳部を外縁の左右に設けることも,意匠1及び意匠3に見られるように,本願出願前より既に行われていることである。そして,左右の目の位置に略台形状の大きな孔部を設けることも意匠1に見られるように,本願出願前より既に公然知られた態様である。
しかしながら,全体を略半円形状の薄いシートとすることは意匠2及び意匠3に見られるとおりであるが,鼻及びその左右の下辺の態様が意匠2も意匠3もどちらも本願意匠とは異なり,意匠1を上半分だけとして意匠2や意匠3の下辺の態様と組み合わせても本願意匠の態様を導き出すことはできない。また,耳部の態様についてみると,本願意匠の外縁の左右の耳部の位置は鼻の下端中央から略45°の位置に左側の耳部を右側よりやや高い位置に設けた態様で,意匠1は,左側の耳部を右側よりやや高い位置に設けた点は共通しているが,耳部が小さく,本願意匠より外縁の中央寄りの位置に耳部が設けられている点で異なり,意匠3は,耳部が小さく,左右対称状で,本願意匠より外縁の下方寄りの位置に設けられている点でどちらも耳部の態様が異なるものである。さらに,本願意匠と意匠1は,左右の目の位置に略台形状の大きな孔部を設けた点については共通するが,上辺が凸円弧状である本願意匠の目の形状と,上辺が水平な直線状である意匠1とは目の形状が異なるものであり,また,本願意匠の外縁形状は,意匠1ないし3のいずれとも異なり,本願意匠の具体的な各部の態様は,先行する意匠には見当たらないし,導き出すこともできないのであるから,本願意匠に係る具体的な態様がこれらの意匠から容易に創出し得るものということはできない。
そうすると,本願意匠は,顔の上半分用の略半円形状の薄いシートであって,外縁の左右に小型半円形状のつまみ用の耳部を突出し,左側の耳部を右側よりやや高い位置に設け,左右の目の位置に略台形状の大きな孔部を設け,その上辺を凸円弧状とし,鼻の左右に斜め上方に切り込み線を有し,鼻の左右の下端を隅丸状とし,鼻の下端中央を尖らせたものであり,特に外縁形状は,本願意匠の独特の態様といえるもので,当業者であれば容易に創作することができたとはいえない。
よって,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠ということはできない。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり,原査定の拒絶の理由によっては,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-12-09 
出願番号 意願2012-15530(D2012-15530) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (B7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 裕和 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
中田 博康
登録日 2014-01-24 
登録番号 意匠登録第1491074号(D1491074) 
代理人 柿本 邦夫 

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