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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K7 |
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管理番号 | 1288624 |
審判番号 | 不服2012-12729 |
総通号数 | 175 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2014-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-07-04 |
確定日 | 2013-01-15 |
意匠に係る物品 | 板材圧延機の成形ロール |
事件の表示 | 意願2011- 4854「板材圧延機の成形ロール」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする、2011年(平成23年)3月3日の出願であって、その意匠は、願書及び願書添付図面の記載によれば、意匠に係る物品を板材圧延機の成形ロールとし、その形態を願書及び願書添付図面に記載のとおりとしたものであって、実線で表した部分を部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とするものである(以下、本願について意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願意匠」という。)。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当する(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)とするものであって、拒絶の理由に引用した意匠は、本願出願前、日本国特許庁発行の実用新案公報(公開日:1964年(昭和39年)4月21日)実用新案出願公告昭39-10342号(考案の名称「製管装置」。以下、「引用文献」という。)に記載されたローラの本願意匠に相当する部分の意匠であって、その形態は、引用文献の第二図及び関連する記載(図面の簡単な説明)に記号1及び3として図示されたとおりのものである。なお、原審拒絶理由通知書においては、当該意匠を「第二図及び関連する記載に表された記号1、2のローラの意匠」として摘示しているが、この記載中の引用記号番号は、「記号1、3」の誤記であると認められる。この点につき、請求人代理人も、審判請求の理由として「記号3のロール」を前提に述べているところであるため、当審においては、上記のとおり取り扱うこととする。(以下、本願意匠に相当する部分の意匠を「引用意匠」という。)(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は板材圧延機の成形ロールであり、引用意匠の意匠に係る物品は、引用文献の記載によれば、製管ローラーであることが認められる。両者は、具体的表記は異なるものの、いずれも金属薄板を圧延成形するために用いられるロールであることがその記載から明らかであるから、両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (2)意匠登録を受けようとする部分の用途、機能及び位置、大きさ、範囲 本願意匠と引用意匠は、オス型ロールとメス型ロールによって構成される一対の成形ロールに係り、いずれも、当該ロール間に鋼材等の板材を挿通し圧延成形するための中央回転成形面に関するものであるから、両意匠の当該部分の用途、機能及び位置、大きさ、範囲は、いずれも共通する。 (3)形態 本願意匠と引用意匠の形態を対比すると、両意匠の形態には、以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下、対比のため、引用意匠を現す図を時計回りに90度回転させ、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、引用意匠にもあてはめることとする。) まず、共通点として、(A)全体は、共に略倒円柱形状のオス型ロールとメス型ロール一対を、中間に一定間隔をおいて上下に直列してなる回転成形ロールの、相互に対向するロール外周、左右幅中央部分の成形面であり(以下、「中央成形面」という。)、(B)上方ロールの中央成形面は、偏平倒円筒形状を呈する左右の外周面に対して断面が略半楕円形状となる凹陥部を、ロール外周の全周にわたって形成した略半楕円形状溝からなる成形面とし、(C)下方ロールの中央成形面は、左右の外周面に対して断面が略半楕円形状となる突出部を、上方ロールの凹陥部と対向するように、ロール外周の全周にわたって形成した略半楕円形状凸条からなる成形面とした点が、主として認められる。 一方、相違点として、(ア)略半楕円形状溝の深さ、及び、これと対向する略半楕円形状凸条の高さについて、本願意匠は、最も浅い(低い)ところと最も深い(高い)ところの比を約1対2とし、ロールの回転角度で180度ごとに高低が切り替わるように、中央成形面の深さ及び高さを周方向に漸次変化させているのに対して、引用意匠は、中央成形面の深さ及び高さを、全周にわたって一定としている点(引用文献の第二図には引用意匠の形状が一図で表されているのみであるが、同第一図に表された製管装置全体の側面形状及び成形ロールの一般的性格を参酌すると、成形面形状についてその他特段の記述がない引用意匠は、成形面の深さや高さに変化がない単純な回転体形状であることが推認される。)、及び、(イ)正面視の縦横比について、本願意匠の中央成形面は、両意匠の同部左右幅を基準とすると、ロール直径が引用意匠の約3倍となる細幅縦長の態様としている点が、主として認められる。 2.本願意匠と引用意匠の類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価、総合して、両意匠の意匠全体としての類否を判断する。 両意匠は、意匠に係る物品が共通し、意匠登録を受けようとする部分の用途、機能及び位置、大きさ、範囲も共通する。形態の類否に係る評価については、以下のとおりである。 (1)共通点の評価 両意匠の共通点(A)ないし(C)は、引用意匠をはじめ、鋼材等の板材を圧延成型するロールの基本的な形状としてごく一般的に見られるありふれたものであるから、これらの共通点をもって直ちに両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいということはできず、それら全共通点を総合しても、両意匠全体の類否判断を決定付けるまでには至らない。 (2)相違点の評価 一方、両意匠の具体的形態に係る相違点について、相違点(ア)は、通常の成形ロールは、引用意匠のように成形面の深さや高さを一定として連続回転させるのが一般的であるのに対して、本願意匠が、ロールの回転角度で180度ごとに高低が切り替わるように、略半楕円形状の中央成形面の深さ及び高さを周方向に漸次変化させている点は、この種物品の先行意匠に照らして本願意匠に特有の特徴といえるものであり、本願意匠を大きく特徴付けるものとなっている。また、当該部分が鋼材等の板材を圧延成形するための成形面としての用途及び機能を有していることに鑑みると、当該部分の形態は、これらロールにより成形される型材の形状を決するものでもあるため、需要者の注意を特に強く惹く部分といえ、その形態の相違が両意匠の類否判断に与える影響は非常に大きいといえる。そして、相違点(イ)は、相違点(ア)と相まって、両意匠の違いを視覚的に更に強めるものとなっている。 (3)小括 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、意匠登録を受けようとする部分とこれに相当する部分の用途、機能及び位置、大きさ、範囲も共通する。形態においても、共通点は存するものの、具体的形態に係る相違点が相まって生じる視覚効果は共通点のそれを凌駕し、両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼして、看者に両意匠を意匠全体として別異の意匠と印象付けているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同条同項柱書により、本願意匠について拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2012-12-27 |
出願番号 | 意願2011-4854(D2011-4854) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(K7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 並木 文子 |
特許庁審判長 |
遠藤 行久 |
特許庁審判官 |
早川 治子 伊藤 宏幸 |
登録日 | 2013-03-01 |
登録番号 | 意匠登録第1465601号(D1465601) |
代理人 | 高野 弘晋 |
代理人 | 岸田 正行 |
代理人 | 高木 康志 |
代理人 | 水野 勝文 |