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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C3
管理番号 1288625 
審判番号 不服2013-15271
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-07 
確定日 2014-05-07 
意匠に係る物品 靴磨き具 
事件の表示 意願2012- 20478「靴磨き具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成24年(2012年)8月27日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,本願の願書の記載によれば,意匠に係る物品を「靴磨き具」とし,形態を,願書及び願書添付図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁発行の公開実用新案公報「実用新案出願公開昭和61年第6359号(考案の名称「洗剤含侵布袋(審決注:「洗剤含浸布袋」の誤記と認められる。以下同じ。)」。以下「引用文献」という。)」の第1図及び第2図に記載された「洗剤含浸布袋」の意匠(以下「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)
なお,原審の拒絶の理由に記載された「ぞうきんの意匠」は,「洗剤含浸布袋の意匠」の誤りである。

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「靴磨き具」であり,願書の記載によれば,「ワックスが薄く塗布された不織布を,ワックスが塗布された面が外側になるように重ね合わせて袋状に圧着し,使用状態を示す参考斜視図に示すように,指または手を入れて使用する」ものである。一方,引用意匠の意匠に係る物品は「洗剤含浸布袋」であり,引用文献の説明によれば,「不織布,布等に洗剤(4)を含浸させた下布(1)の上にナイロン(2)を重ね接合し,不織布,布等の上布(3)の下にナイロン(2)′を重ね接合し,それぞれを重貼し袋状に縫製したもの」である。本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)は,共に袋状であること,両面と片面という違いはあるもののワックスや洗剤が塗布又は含浸されていることから,両意匠の意匠に係る物品の用途及び機能は類似するということができる。したがって,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

2 形態
両意匠の形態には,主として,以下の共通点と差異点が認められる。(以下,対比のため,本願意匠の図面の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)
(1)共通点
基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。
(A)基本的構成態様について
全体が,平面視略正方形状の薄い袋体であって,袋体は平面側の布(以下「上布」という。)と底面側の布(以下「下布」という。)から成り,袋体の開口部が下方に設けられたものである。
また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。
(B)上布と下布の構成態様について
上布と下布は,平面から見て,上端部,左端部,及び右端部が接合されて,接合部分が細幅状に表れている。また,上布の縦幅が下布の縦幅よりも短く,平面から見て上布の下方に下布の一部が表れている。
(2)差異点
一方,具体的態様として,以下の差異点が認められる。
(ア)接合部分の態様について
本願意匠では,接合部分が圧着されており,圧着されていない非接合部分との境界に小さい段差が形成され,平面及び底面から見て,その段差が形状線として表れている。これに対して,引用意匠では,接合部分が糸で縫製されており,平面及び底面から見て,接合部分と非接合部分との境界に,その糸が破線状に表れている。
(イ)接合部分の幅について
本願意匠の接合部分の意匠全体に占める面積は,引用意匠のそれよりも大きく,平面視上端部の接合部分の縦幅が袋体の縦幅に占める比は,本願意匠が引用意匠の2倍以上であり,平面視左端部及び右端部の接合部分の上端寄りの横幅が袋体の横幅に占める比も,本願意匠が引用意匠の2倍以上である。
また,平面視左端部及び右端部の接合部分の横幅について,本願意匠では,袋体上端寄りから下端寄りにかけて,漸次幅広に変化し,下端寄りの横幅が上端寄りの横幅の約1.6倍になっている。これに対して,引用意匠では,そのような変化はなく,左端部及び右端部の接合部分の横幅は一定である。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
前記のとおり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

2 形態の共通点の評価
両意匠の形態の共通点(A)及び(B)は,両意匠の形状を概括的に捉えた場合の共通点であり,両意匠が共通としている意匠に係る物品においては,他の意匠にも見られる形状(例えば,参考意匠,「実用新案出願公開昭和63年第79858号」の第1図に記載された「ほこり取り具」の意匠。別紙第3参照。)でもあるので,この共通点が両意匠の類否判断に決定的な影響を及ぼすということはできない。

3 形態の差異点の評価
一方,両意匠の差異点については,以下のとおり,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
先ず,差異点(ア)の接合部分の態様についての差異は,両意匠において一見して気がつく差異であって,段差が形状線として表れる本願意匠の接合部分と非接合部分の境界と,糸が破線状に表れる引用意匠のその境界は,形態として明らかに異なるものであり,看者の視覚的注意を強く惹くものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点(イ)のうち,接合部分の幅の袋体の幅に占める比の差異については,袋体の周囲という目に付きやすい部位に関する差異であり,接合部分の縦幅又は横幅が袋体の縦幅又は横幅に占める比が,本願意匠と引用意匠とでは2倍以上も異なっているので,その差異は,両意匠の視覚的印象に変化を与える差異であるというべきであり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,平面視左端部及び右端部の接合部分についての差異は,漸次幅広に変化して下端寄りの横幅が上端寄りの横幅の約1.6倍になる本願意匠の形状が特異なものであって,本願意匠の引用意匠に対する差異として,看者が特に着目するものであるから,この差異が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そうすると,(ア)及び(イ)の差異点は,どちらも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,両意匠の差異点は共通点を凌ぐものであるということができる。

4 小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-04-22 
出願番号 意願2012-20478(D2012-20478) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 杉山 太一 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 橘 崇生
小林 裕和
登録日 2014-06-13 
登録番号 意匠登録第1502265号(D1502265) 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 

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