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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D7
管理番号 1288641 
審判番号 不服2013-21107
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-30 
確定日 2014-06-13 
意匠に係る物品 机 
事件の表示 意願2012- 5235「机」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本件審判の請求に係る意匠登録出願の意匠(以下,「本願意匠」という。)は,平成24年(2012年)3月8日付けの出願によるものであって,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「机」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成23年(2011年)3月14日)に記載された意匠登録第1409283号(意匠に係る物品,机)の意匠であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
本願意匠及び引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも教育施設等で使用される一人用の机に係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。

次に,両意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとし,両意匠の着座側を前面側又は手前とし,幕板を設けた側を背面側又は奥とすることとする。

まず,共通点として,
(A)全体は,平面視略隅丸長方形状の天板部と,それを左右両端部下側部分で支える右側面視略コの字状の脚部,及び,左右脚部内側上方部分間に取り付けられた幕板部とで構成されている点,
(B)脚部は,僅かに手前に傾斜した支柱部,その支柱部の前面側上端部から手前へ延伸する上アーム部,及び,支柱部の前面側下端部から手前へ延伸する下アーム部からなる点,
(b-1)支柱部は,背面視を略縦長長方形状とし,側面視を手前に傾斜した略縦長平行四辺形状とした棒状体からなり,天板下側の奥から約1/4の左右両端部に対向して2つ配設している点,
(b-2)上アーム部は,支柱部と同厚であり,上面を水平とし,下面を手前へ向けて上向き緩傾斜とし,先端部を上向き急傾斜とし,側面視において先端部に向かって窄まる略扁平四角形状に構成し,上アーム内側中央部分に鉤状のフック部を1つ配設している点,
(b-3)下アーム部は,支柱部と同厚であり,下面を水平とし,上面を手前へ向けて下向き穏傾斜とし,先端部を下向き急傾斜とし,側面視において先端部に向かって窄まる略扁平四角形状に構成し,下アーム部下面先端付近に扁平な基台部を1つ配設している点,
(C)幕板部は,左右支柱部内側面の背面側端部上方部分に,支柱部の背面側とほぼ同一面状となるように配設している点,
(D)収納部は,略長方形板体の両端部を折り曲げ,正面視略横コの字状とし,天板下側の中央部分に1つ配設している点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)支柱部の態様について,本願意匠は,支柱部前面内側角部を角面に面取りし,背面外側角部を丸面に面取りした扁平な略五角柱状の中空棒状体としているのに対して,引用意匠は,略縦長直方体状の棒状体としている点,
(イ)幕板部の態様について,本願意匠は,上端及び下端部を側面視略コの字状に折り曲げ,縦幅を支柱部の高さの約1/8とした略横長長方形状の薄板を,支柱部の上部約1/5をあけて支柱部間に配設しているのに対して,引用意匠は,模様のない略横長長方形状の薄板の約2/3の部分を,支柱部間に配設し,その上方約1/3の部分を奥方向に約45度折り曲げ,その上辺部分が天板下側背面側端部と接している点,
(ウ)フック部の態様について,本願意匠は,一本の丸棒体を正面視略L字状に折曲して形成した,棒状のフックであるのに対して,引用意匠は,先端部を円弧状とした先細りの細長板体を正面視略L字状に折曲して形成した,板状のフックである点,
(エ)収納部の態様について,本願意匠は,略長方形板体を直角に折曲し,正面視略横長長方形状に形成しているのに対して,引用意匠は,略長方形板体を鈍角に折曲し,正面視略横長倒立台形状に形成している点,
(オ)上アームの態様について,本願意匠は,上アーム下側を端面視略円弧状に形成しているのに対して,引用意匠は,上アームを端面視長方形状に形成している点,
(カ)基台部の態様について,本願意匠は,円筒形側面部に凹凸溝を形成した扁平な略円板状であるのに対して,引用意匠は,扁平な略倒立頭切円錐形状である点,
が認められる。

2.本願意匠と引用意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

まず,共通点(A)の全体の態様,共通点(B)の脚部の態様及び共通点(C)の幕板部の態様は,机の意匠の骨格的な構成態様にあたるものであり,本願意匠の出願前に既に見られる態様であるので,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であると言わざるを得ない。
そして,これらの共通点は,全体としてみても,両意匠の類似性についての判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)支柱部の態様については,着座側から見た場合,支柱部前面は目につく部位であり,また,使用時においても,足が接触する柱部前面内側部分は,特に意識する部位でもあるので,この部位に大きな面取りを施した本願意匠の支柱部の態様は,引用意匠における単なる略縦長直方体状のものとは,需要者に対し全く異なる印象を与えるものであるから,この相違点が両意匠の当該部分の類否判断に及ぼす影響は非常に大きい。
次に,相違点(イ)幕板部の態様については,天板との間に隙間を設け,支柱部間にフラットな幅の狭い板体を嵌め込んだ印象を与える本願意匠の幕板部の態様は,奥方向に約45度折り曲げられ,側面視において開口部が表れる引用意匠の特異な態様とは,別異な印象を与えるものであるから,この相違点が両意匠の当該部分の類否判断に及ぼす影響も大きい。
また,相違点(ウ)フック部の態様については,特段目立つ部位ではないものの,丸棒体のフレームで構成された本願意匠の収納部及びフック部の態様と,板体で構成された引用意匠のものとは,別異な印象を与えるものであるから,この相違点が両意匠の当該部分の類否判断に一定の影響を及ぼす。
そして,相違点(エ)収納部の態様,相違点(オ)上アームの態様,及び,(カ)基台部の態様については,通常目に付きにくい部位におけるごく僅かな程度の差であるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
さらに,これらの各相違点に係る態様が相まって生じる視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと言うことができる。

3.小括
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品について共通せず,形態においては,両意匠の間には共通点が複数存在するものの,相違点の印象が共通点の印象を大きく凌駕しており,意匠全体としては視覚的印象を異にするものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

第4 むすび

以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-05-30 
出願番号 意願2012-5235(D2012-5235) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範内藤 弘樹 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 斉藤 孝恵
江塚 尚弘
登録日 2014-06-27 
登録番号 意匠登録第1503354号(D1503354) 
代理人 南部 さと子 
代理人 永芳 太郎 

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