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審決分類 |
審判 判定 属さない(申立成立) K2 |
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管理番号 | 1288642 |
判定請求番号 | 判定2013-600033 |
総通号数 | 175 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2014-07-25 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2013-10-01 |
確定日 | 2014-05-26 |
意匠に係る物品 | 釣具収納ケース |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1385347号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号物件(見本)及びその説明書に示す「釣具収納ケース」の意匠は,登録第1385347号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1 判定請求人の請求の理由 1.判定請求の必要性 本件判定請求人(山田化学株式会社,以下「請求人」という。)は,平成25年6月頃から本件判定請求に係る商品名「TOUGH CASE」(品番W210,浅型)なる釣具収納ケース(甲第2号証,イ号物件。別紙第2参照)を製造,販売している。 本件判定被請求人(明邦化学工業株式会社,以下「被請求人」という。)は,本件判定請求に係る登録意匠「釣具収納ケース」(甲第1号証,以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照)の意匠権者であり,平成25年6月21日付けの通知書において,請求人に対し,イ号意匠は本件登録意匠に類似するため,今後の請求人の対応によっては,然るべき法的措置を講じる所存である旨警告した。 これに対し,請求人は,平成25年7月19日,イ号意匠が本件登録意匠に類似しないと反論する旨の回答書を返送した。しかしながら,被請求人は,請求人の意見には承服できないとの考えを示しているため,請求人は,特許庁に対し判定を求める。 2.本件登録意匠の手続の経緯 出願 平成21年4月27日(意願2009-9689号) 登録 平成22年3月19日(意匠登録第1385347号) 3.本件登録意匠の説明 本件登録意匠は,意匠に係る物品を「釣具収納ケース」とし,願書に添付された図面の実線で表された部分(以下「本件実線部分」という。)について,部分意匠の登録を受けている。本件実線部分は,釣具収納ケースの内部から水を排出するための水切り部(本件登録意匠の願書では「水切穴」)であり,その形態の要旨は次のとおりである。(甲第1号証参照) なお,本件登録意匠及びイ号意匠の説明において,釣具収納ケースの蓋側を上側,収納部側を下側,止具,及びヒンジのある側をそれぞれ手前側,及び奥側とし,手前側から見た左右を右側,及び左側とする。また,左右方向を横方向,手前側から奥側へ向かう方向を縦方向とする。 (1)基本的な構成態様 横方向に延びる底面が略長方形状の一対の溝とその間の畔部とからなり,溝の底部には貫通孔を有する。 (2)具体的な構成態様 本件実線部分は,収納部左の側壁の外面に設けられた平面視略台形の持ち手状部分の縦方向の略中央に位置する。持ち手状部分は,平面視台形状の枠部と,枠部と収納部側壁の空間を上側から蓋をするように設けられる上板部とを有している。本件実線部分の溝は,この上板部を横断して上板部の厚みよりやや深く設けられており,こうすることで,溝の奥側(収納部側壁側)の枠部の無い部分に,溝と同じ幅の矩形の貫通孔が形成されている。 溝は,出口側の約3分の1が蓋の周縁の外側に突出し,収納部の側壁側の3分の1が,蓋の周縁の内側に位置している。蓋を開けた状態で視認される溝の横方向の長さ(以下「溝の長さ」)と溝の幅との比は,18対7であり,溝の平面視形状は,溝の幅より溝の長さの長い横長の長方形状をなしている。また,溝の幅と溝の深さとの比は,7対6であり,溝の出口形状は,溝の幅と溝の深さが略等しい正方形状をなしている。溝の奥側(収納部の側壁側)の底部には,持ち手状部分の上板を貫通する矩形の貫通孔が設けられている。溝の側面は,略長方形状を有する。畔部の幅と溝の深さ(畔部の高さ)の比は,略10対6であり,畔部の端面は,略矩形のブロック状に見える。蓋を閉じた状態では,平面視で溝の約3分の1が蓋の外側へ突出し,外に出た溝の部分が平面視で溝の幅方向が溝の長さ方向よりやや長い略正方形に見える。本件登録意匠の願書に添付された[α・β斜視図]に表されるように,斜め上方からの斜視により,貫通孔を通じて貫通孔内部の空間を視認することができる。 4.イ号意匠の説明 イ号意匠は,本件登録意匠の実線部分に対応する一対の水切り用の溝とその間の畔部からなる本件実線部分に対応する部分(以下「イ号対応部分」という。)を有している。 その形態の要旨は次のとおりである。 (1)基本的な構成態様 イ号対応部分は,収納部左側壁の外面に設けられた鍔部を横断する底面が略長方形状の溝に収納部側壁の外面を上方へ立ち上がる溝が連続する略L字状の一対の溝と,その間の畔部とからなる。 (2)具体的な構成態様 イ号対応部分は,鍔部を横断する溝が,溝の長さと溝の幅の比が3対6であり,平面視で縦長の長方形状をなしている。また,溝の幅と溝の深さの比が6対1であり,溝の出口部は,溝の幅に対して深さが極めて浅い略スリット状に見える。また,溝の出口部は扁平の略倒台形状をなしている。溝の底面は,貫通孔を有さない。イ号対応部分は,蓋を閉じた状態では,溝はほとんど蓋に覆われてしまい,平面視では溝を視認することができない。畔部の幅と高さ(溝の深さ)の比は,11対1であり,畔部の端面は,略台形の薄板状に見える。蓋を開けた状態では,畔部は背もたれのある長椅子状に見える。 5.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明 (1)両意匠の共通点 (A)両意匠の意匠に係る物品は,主に釣用の小物を収納する「釣具収納ケース」で一致している。 (B)本件実線部分,及びイ号対応部分ともにケース内に入り込んだ水を排出するための水切り用の溝であり,用途及び機能が一致している。 (C)基本的な構成態様において,両部分の溝の底面は略長方形状である。 (2)両意匠の差異点 基本的な構成態様において (a)本件実線部分は,直線状の溝であり,底部に貫通孔を有するのに対し,イ号対応部分では,L字型の溝であり,底部に貫通孔を有さない。 具体的な構成態様において, (b)本件実線部分は,持ち手状部分の上板上面に位置し,略3分の1が蓋の周壁の外側に突出している。これに対し,イ号対応部分では持ち手状部分がなく,イ号対応部分は,鍔部,及び収納部の側壁外面に位置し,略全体が蓋の周壁に覆われており,平面視では視認できない位置にある。 (c)本件実線部分では,溝の幅と溝の深さの比が7対6であり,溝の出口形状は略正方形状をなす。これに対し,イ号意匠では,溝の幅と溝の深さの比が6対1であり,溝の出口部は,細長い倒台形状のスリット状に見える。 (d)本件実線部分では,畔部の幅と溝の深さの比は,10対6であり,畔部は,側面視で概ね矩形のブロック状に見える。これに対し,イ号対応部分では,畔部の幅と高さの比は,11対1であり,畔部の端面は,扁平台形の薄板状に見える。 (e)本件実線部分では,溝の平面視形状は,横長の長方形であるのに対し,イ号対応部分では,縦長の長方形である。 (f)本件実線部分は,溝の側面が,略長方形状を有するのに対し,イ号意匠では,溝の側面が,細いL字形状である。 (g)本件実線部分では,畔部は谷に架け渡した橋のような形状に見えるのに対し,イ号対応部分では,畔部は,背もたれのある長椅子のような形状に見える。 6.イ号意匠が本件実線部分,及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明 (1)本件実線部分に関する先行周辺意匠 参考資料1 意匠登録第1086608号公報 参考資料2 特開2000-302176号公報 (2)本件登録意匠の要部 本件実線部分の基本的構成態様である直線状の一対の溝と畔部とからなる点け,参考資料1及び参考資料2に示すように,本件登録意匠の出願前から公知の形態である。従って,本件登録意匠の要部は,他に例のない独特の形態である溝の底の貫通孔にある。 ここで,参考資料1及び参考資料2は食品の包装用容器であるが,本件登録意匠に係る物品同様,水切り溝を有する矩形の樹脂製容器であり,両者とも一般需要者がよく目にするものであることから,本件登録意匠の看者にとって参考資料1及び参考資料2は,ありふれた意匠である。 (3)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察 以下,本件登録意匠とイ号意匠との共通点及び差異点を比較検討する。 (ア)意匠に係る物品,及び両部分の用途・機能について 共通点(A),(B)に示すように,両意匠の意匠に係る物品,及び両部分の用途,機能同一である。 (イ)両部分の位置・大きさ・範囲について 参考資料1及び参考資料2に見られるように,両部分の大きさ,及び範囲は,ありふれたものである。 しかしながら,差異点(b)に示すように,本件実線部分が持ち手状部分に位置し,3分の1が蓋の外へ突出しているのに対し,イ号対応部分か鍔部及び側壁外面に位置し,蓋に略覆われてしまうため,両部分は位置が異なる。 この,両部分の位置について考察すると,本件実線部分のような貫通孔は,本件登録意匠の持ち手状部分のように断面が水平な上板と垂直な枠部からなる倒L字形を有する部分でないと設けられないため,本件実線部分が持ち手状部分に位置することと本件実線部分の形状とは大きく関係している。これに対し,イ号対応部分は断面が水平な直線状の鍔部に設けられている。従って,本件実線部分とイ号対応部分とは,位置が大きく異なると言える。 従って,両部分は,位置,大きさ,範囲が異なるため,両意匠は,形態の類否を検討するまでもなく,非類似である。 (ウ)両部分の形態について 共通点(C)は,本件登録意匠の出願前から公知の形態であり,両意匠にのみ共通する特徴ではないため,両意匠の類否判断に与える影響は希薄である。 一方,差異点(a)は,両部分の基本的態様に係り,本件実線部分の溝の底部に貫通孔を有する形態や,イ号対応部分のL字型の溝は,ともに他にあまり例のない独特な形態である。そして,本件実線部分の貫通孔は,蓋を閉じた状態でも,開けた状態でも視認することができ,イ号対応部分の溝のL字形状も蓋を開ければ容易に視認できることから,差異点(a)は,両意匠の類否判断に非常に大きな影響を与えるものである。 また,差異点(c),(d)において,イ号対応部分の一対の溝の出口や畔の端面の扁平台形状を繰り返す形状は,参考資料1に示すように公知の形態であるのに対し,本件実線部分の略正方形の凹凸が繰り返す形状は独特であり,当該部分が蓋を開けても閉じても見える部分であることから,差異点(c),(d)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいと言える。 また,差異点(e)は,差異点(c)と相侯って,本件実線部分の溝が,細くて深い溝という印象を与えるのに対し,イ号対応部分の溝は,太くて浅い溝という全く異なった印象を与える。そして,差異点(e)は,蓋を開けさえすれば目に付く部分についての差異であることから,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 差異点(f)及び(g)は,両意匠に全く異なる印象を与えるだけでなく,双方ともに他にあまりみられない独特の形状であり,蓋を開ければ視認できるもので目に付きやすい部位についてのものであることから,類否判断に大きな影響を与えるものである。 以上,両部分の形態の共通点及び差異点を考え合わせると,差異点が両意匠の美感に与える影響は,共通点が両意匠の美感に与える影響をはるかに凌ぐことが明白である。 (エ)小括 以上,両意匠は,意匠に係る物品が同一で,両部分の用途,機能が同一であるものの,両部分の位置,大きさ,範囲が異なり,両意匠の形態が異なるため,非類似である。 7.むすび 従って,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないので,請求の趣旨通りの判定を求める。 8.証拠方法 (1)甲第1号証 本件登録意匠(意匠登録第1385347号)公報 (2)甲第2号証 イ号物件 第2 被請求人の答弁 特許庁より,被請求人に判定請求書を送付し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,被請求人からの応答はなかった。 第3 当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は,平成21年(2009年)4月27日に意匠登録出願(意願2009-9689号)され,平成22年(2010年)3月19日に登録の設定(意匠登録第1385347号)がされたものであって,願書及び願書に添付された図面の記載によれば,意匠に係る物品を「釣具収納ケース」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,図面記載中の「実線で表した部分(容器本体に設けた水切穴の一部)が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本件において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本件実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 具体的には,本件実線部分は,蓋部及び収納部を2箇所のヒンジ部で開閉可能に結合し,蓋部外周部の垂直面部分と収納部外周部の垂直面上方部分とが隙間をあけて重なる態様とした略扁平直方体状の釣具収納ケースの収納部左側面上方部分に,平面視が蓋部外周部の垂直面部分から突出した略台形状で,かつ,断面視が倒立L字状となるよう板体を配設し,その上部に,この板体の厚みより深く切り欠いた左側面視凹状の8つの切り欠き部を形成した態様の把手部における,把手部上部中央部分に形成された把手部上面部及びその両脇の凹溝部の部分であって,把手部を切り欠いたことにより凹溝部の収納部左側面側に表れる平面視矩形状の貫通孔部を除いた部分である。 2.イ号意匠 本件判定請求の対象であるイ号意匠は,判定請求書と同時に提出された甲第2号証のイ号物件により示されたものであって,意匠に係る物品は「釣具収納ケース」であると認められ,その形態を,イ号物件の見本により現されたとおりとしたものである。(別紙第2参照。添付の写真版は当審にて作成。) なお,イ号意匠の本件実線部分に相当する部分を以下,「イ号対応部分」という。 具体的には,イ号対応部分は,蓋部及び収納部を2箇所のヒンジ部で開閉可能に結合し,蓋部外周部の垂直面部分と収納部外周部の垂直面上方部分とが接して重なる態様とした略扁平直方体状の釣具収納ケースの収納部左側面上方部分に,蓋部外周部の垂直面部分の厚みと同じ突出幅の板体を配設し,この板体と収納部左側面上部に,断面視略L字状の6つの切り欠き凹溝部を形成した態様の鍔部における,鍔部上面中央部分に形成された鍔部上面部及びその両脇の凹溝部の部分である。 3.本件登録意匠とイ号意匠との対比 (1)意匠に係る物品 本件登録意匠とイ号意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,ともに,釣用の小物を収納するための「釣具収納ケース」と認められるものであるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。 (2)本件実線部分とイ号対応部分の対比 1)本件実線部分とイ号対応部分の用途及び機能 本件実線部分とイ号対応部分(以下,「両意匠の当該部分」という。)は,いずれも釣具収納ケース内から水を切るために設けられた溝の部分であるから,両意匠の当該部分の用途及び機能は共通する。 2)両意匠の当該部分の位置,大きさ及び範囲 本件実線部分は,蓋部外周部から突出した大きさの,平面視略台形状で,断面視倒立L字状の把手部に形成された,把手部を構成する板体の厚みより深く切り欠いた左側面視凹状の8つの切り欠き部における,把手部中央部の上面部分及びその両脇の凹溝部の部分のうち,把手部を切り欠いたことにより凹溝部に表れる平面視矩形状の貫通孔部を除いた部分であり,一方,イ号対応部分は,蓋部外周部垂直面部分の板体の厚みと同じ突出幅である鍔部に形成された,鍔部中央部の上面部分及びその両脇の凹溝部の部分であるから,両意匠の当該部分の位置,大きさ及び範囲は相違する。 3)両意匠の当該部分の形態 両意匠の当該部分の形態を対比すると,主として以下の共通点及び相違点が認められる。 なお,対比のため,イ号意匠についても本願意匠の図面に合わせることとし,イ号意匠の蓋側から見た図を「平面図」,収納部側から見た図を「底面図」,留め具のある側から見た図を「正面図」,イ号対応部分のある側から見た図を「左側面図」とし,その他の図も,これらに準じて表されているものとする。 まず,共通点として,両意匠の当該部分は,収納部左側面上方部分に水平に配設され,蓋部外周部の垂直面底面部分と接する,上部に凹状の切り欠き部を複数形成した板体の,板体上面中央部分における上面部及びその両脇の凹溝部の部分である点が認められる。 他方,相違点として, (ア)板体上面中央部分の上面部及びその両脇の凹溝部と蓋部外周部との配置態様について,本件実線部分は,平面視において板体上面中央部分の上面部及びその両脇の凹溝部の先端側の約1/3部分が,蓋部外周部より外側に突出して表れているのに対し,イ号対応部分は,板体上面中央部分の上面部及びその両脇の凹溝部の先端部と蓋部外周部の位置が一致し,蓋部外周部の外側に突出部が表れていない点, (イ)凹溝部の側面視の構成態様について,本件実線部分は,凹溝部の縦横比を約1:1.2としているのに対し,イ号対応部分は,凹溝部の縦横比を約1:5としている点, (ウ)蓋を開いた状態での上面部及びその両脇の凹溝部の平面視の構成態様について,本件実線部分は,上面部と凹溝部の横幅の比を約1.2:1とし,凹溝部の収納部左側面側に,奥行の約2/3の長さの矩形状貫通孔部を形成しているのに対し,イ号対応部分は,上面部と凹溝部の横幅の比を約2:1とし,凹溝部に貫通孔がない点, が認められる。 (3)両意匠の当該部分の類否判断 両意匠の当該部分の形態における共通点は,両意匠の釣具収納ケースにおける収納部左側面上方部分に配設された蓋部外周部の垂直面底面部分と接する部分の態様を概括的に捉えたに過ぎないものであるから,この共通性のみをもって両意匠の当該部分の類否判断を決定することはできない。 これに対し,相違点(ア)板体上面中央部分の上面部及びその両脇の凹溝部と蓋部外周部との配置態様については,断面視が倒立L字状の板体を蓋部外周部から突出させて,その鉤状部分に手をかけることができる把手部を形成した本件実線部分と,断面視板状の板体を蓋部外周部と一致する位置まで突出させて,鍔部を形成したイ号対応部分とは,異なる印象を与えるものであるから,相違点(ア)が両意匠の当該部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 次に,相違点(イ)凹溝部の側面視の構成態様については,縦より横がやや長い略長方形状に切り欠いて凹溝部とした本件実線部分と,縦より横が5倍の長さの扁平な横長矩形状に切り欠いて凹溝部としたイ号対応部分とは,全く異なる印象を与えるものであるから,相違点(イ)が両意匠の当該部分の類否判断に及ぼす影響も大きい。 また,相違点(ウ)蓋を開いた状態での上面部及びその両脇の凹溝部の平面視の構成態様については,横幅がほぼ同じ上面部と凹溝部とを隣り合って形成している本件実線部分と,凹溝部の間にその約2倍の横幅をもつ上面部を形成しているイ号対応部分とは,全く異なる印象を与えるものであり,本件実線部分のみに形成された貫通孔部は,蓋を開いた状態では,凹溝部水平面の約2/3を占める程の目立つものである上に,蓋を閉じた状態であっても目に付くものであるから,貫通孔のないイ号対応部分とは,印象も大きく異なるものであって,この相違点(ウ)が両意匠の当該部分の類否判断に及ぼす影響は非常に大きい。 さらに,意匠全体として見た場合,これらの各相違点に係る態様が相まって生じる視覚的効果が,両意匠の当該部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 したがって,これらの各相違点を総合してとらえると,各相違点に係る態様が相まって生じる視覚的効果は,上記共通点を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものである。 (4)両意匠の類否判断 上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品については一致し,両意匠の当該部分の用途及び機能については共通するが,両意匠の当該部分の位置,大きさ及び範囲については相違し,両意匠の当該部分の形態については,相違点が類否判断に及ぼす影響が,共通点のそれを上回っており,全体として別異の印象を与えるものであって,類似しないものであるから,本願意匠とイ号意匠とは類似しないものと認められる。 第4 結び 以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 よって,結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2014-05-16 |
出願番号 | 意願2009-9689(D2009-9689) |
審決分類 |
D
1
2・
113-
ZA
(K2)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 中田 博康 |
登録日 | 2010-03-19 |
登録番号 | 意匠登録第1385347号(D1385347) |
代理人 | 杉本 勝徳 |
代理人 | 岡田 充浩 |
代理人 | 辻 忠行 |