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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 A1
管理番号 1289628 
審判番号 不服2010-24975
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-05 
確定日 2011-06-20 
意匠に係る物品 たばこ 
事件の表示 意願2008- 2583「たばこ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2007年8月10日の域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴い,意匠法第14条第1項の規定により,3年間秘密にすることを請求して,2008年(平成20年)2月7日に意匠登録出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「たばこ」とし,その形態を願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

すなわち,本願意匠の形態は,全体を略細長円柱状とし,一方の端部にフィルター部を設け,もう一方の端部に着火側端部を設けたものであって,該着火側端部の端面縁部の具体的構成態様は,略かぎ爪状折り込み片を,該端面縁部に沿って5片形成し,それぞれの略かぎ爪先端部が重なり合うように略渦巻き状に端面に折り込んだものである。


第2 原査定における拒絶の理由
本願意匠に対して,原査定における本願意匠に対する拒絶の理由は,以下のとおりである。

この意匠登録出願の意匠は,たばこに係るものですが,この種嗜好品及び嗜好食品等の分野において本体周囲を巻く巻紙や包装用紙の端部を折り込むことは公知の手法であり,その端部の折形状を周知の「円筒の合わせ包み」の態様とすることも公然知られているところから(意匠1),この出願の意匠は,周知形状である細長円柱状の本体の周囲を巻紙で巻き,その端部を公知の手法を用いて折り込み,その態様を周知形状である「円筒の合わせ包み」としたまでにすぎませんので,未だ容易に創作できたものと認められ,意匠法第3条第2項の規定に該当します。

意匠1
特許庁発行の公開実用新案公報記載
平成 2年実用新案出願公開第046585号
第1図,第3図乃至第4図,第7図,第9図に表されたガムの意匠
(別紙第2参照)


第3 請求人の主張
この拒絶の理由に対して,請求人は,要旨,以下のとおり主張した。

意匠1の円形端面部は,直線の略半径線と円周の弧とで形成された複数の扇形状部が形成された態様であって,本願意匠のように鎌形状のフラップの折り込みにより形成されたものではなく,そして,全ての形状線が湾曲線で構成されたものではないから,本願と同様の湾曲した線で構成されたものではない。

本願意匠の鎌形状部は,基礎となる意匠1の扇形状部からは構成できない形状であり,また,本願意匠の全ての形状線が湾曲線で構成された端面の形状も,意匠1の端面の態様からは構成できない形状であり,さらに,本願意匠の全体として緩やかに旋回する渦巻きのような美感を生じさせる端面も,意匠1の全体で中心から直線が拡散するようなイメージの美感を生じさせる端面の態様からは構成できないものである。

したがって,提示された意匠1から本願意匠は容易に創作できたものではないことは明らかであり,本願意匠は当業者が公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作できたものではないので,意匠法第3条第2項の規定には該当しない。


第4 当審の判断
そこで,本願意匠の創作の容易性について検討する。

意匠1には,棒状に形成されたガム本体とその外周部を覆う包装紙からなる四つの態様のものがあり,本願意匠の意匠に係る物品はたばこである。ガムの包装は,噛食用素材を任意の形状に成形したガム本体を,包装紙を切断して破って,取り出しやすいように,そのガム本体の形状を包むのに最適な手法で包装するのに対して,たばこの巻紙は,たばこの葉に火を付けて吸煙するために,たばこの葉と一体状にして巻紙を略細長円柱状となるよう形成するためもののであるから,ガムを包装することとたばこの葉に巻紙を用いて略細長円柱状とすることは,そもそもその創作意図が異なるものであるといえる。そして,たばこの着火側端部に折り込み片を設け,端面に折り込むことは,巻紙を略細長円柱状に形成する創作行為の延長として行われるものである。そうすると,本願意匠において,たばこの着火側端部に折り込み片を設け,端面に折り込むことは,ガムを包装することと創作意図が異なる創作であるといえるから,意匠1の第1図,第3図乃至第4図,第7図,第9図にあらわされたガムの4つの態様に基づき,公然知られた手法であるということはいえない。

また,意匠1の四つの態様のもののそれぞれのガムの包装は,折り込み片の形状がそれぞれ略扇形状であるのに対して,本願意匠は,それぞれ略かぎ爪状であり,両意匠ともに折り込み片の端面縁部に接する辺の形状が円弧状である点で共通するものの,その他の具体的な態様が異なり,また,意匠1は,各折り込み片の先端が、円形状端面部の中心に揃うように配置されているのに対して,本願意匠は,各折り込み片の先端が端面部の中心で揃わず,それぞれのかぎ爪先端部が重なり合うように略渦巻き状に端面に折り込まれている点で相違するものであり,さらに,折り込み片の形状を略かぎ爪状とした本願意匠の態様は,本願出願前には見られないことから,本願意匠の折り込み片を周知のものということはできない。

以上のとおりであって,たばこの着火側端部に折り込み片を設け,端面に折り込むことが,公然知られた手法であるということはできないうえ,さらに,本願意匠の折り込み片を周知のものといえないのであるから,本願意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとはいえない。


第5.結び

したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項に該当しないので,原審の拒絶理由によって本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2011-05-27 
出願番号 意願2008-2583(D2008-2583) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (A1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 杉山 太一
太田 茂雄
登録日 2011-07-22 
登録番号 意匠登録第1421482号(D1421482) 
代理人 森田 順之 

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