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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1289636 
審判番号 不服2013-17835
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-17 
確定日 2014-07-07 
意匠に係る物品 蓄電池 
事件の表示 意願2012- 13285「蓄電池」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成24年(2012年)年6月5日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「蓄電池」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁意匠課が平成24年(2012年)6月8日に受け入れた,電気通信回線の種類 インターネット,掲載確認日(公知日)2012年6月4日,掲載者 W.W. Grainger,Inc.の「Adobe Scene7 Zoom」
(掲載ページのアドレス http://productimages.grainger.com/s7viewers/dhtml/genericZoomMobile.html?serverUrl=http://productimages.grainger.com/is/image/&style=Grainger%2FCSS%2FbasicZoomMobile%2Ecss&contentRoot=http://productim)に掲載された「バッテリー」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ24009498号)であって,その形態は,同ページに掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「蓄電池」で,引用意匠は,「バッテリー」であるが,両意匠は,いずれもカメラなどに用いられる充電可能な蓄電池であり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
なお,両意匠を同じ方向から対比するため,引用意匠を本願意匠の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定・対比する。

(1)共通点
(A)全体を左右両端が円弧状の偏平な略直方体形状とし,その片側の端面に接続用の端子部を設け(以下,「端子部」という。),正面視において左右の下辺寄りの両端部を略扇形状に切り欠き,凹状部を設けた点(以下,この部分を「切り欠き部」という。),
(B)正面視の外形状を横長長円形状とし,正面の端子部に略隅丸長方形状の端子を配している点,
において主に共通する。

(2)差異点
(ア)全体の縦:横:奥行きの長さ比について,本願意匠は,約1:3.4:4.8であるのに対して,引用意匠は,約1:5.7:6.3である点,
(イ)端子部について,本願意匠は,切り欠き部の上方寄りの右側寄りに,左から縦長長方形,横長長方形,縦長長方形,横長長方形と4つの端子を配しているのに対して,引用意匠は,切り欠き部の左側寄りに,上下ほぼ一杯に縦長長方形の3つの端子を配している点,
(ウ)各端子の窓部の形状について,本願意匠は,開口部の四辺に正面からも視認できる傾斜面を有し,正面視右端の端子の右上角部のアールが大きいのに対して,引用意匠は,開口部の傾斜がさほど目立たず,窓部の形状はいずれも同じである点,
(エ)切り欠き部の大きさについて,本願意匠は,右側の切り欠き部の横幅がやや大きく左右が非対称であるのに対して,引用意匠は,左右の切り欠き部が同形同大で左右対称である点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成であるが,全体を左右両端が円弧状の偏平な略直方体形状とし,その片側の端面に端子部を設け,左右の下辺寄りの両端部を略扇形状に切り欠いた態様は,この種の物品分野においては数多く見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
また,共通点(B)は,正面視の外形状を横長長円形状とし,正面の端子部に略隅丸長方形状の端子を配している態様について共通しているが,さほど特徴のないもので,両意匠のみに共通する態様とはいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。

これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,差異点(ア)については,使用時に需要者が実際に装着したり,取り外したりする場合に,蓄電池を手にするもので,需要者の注意を強く惹く全体の外形状に係るもので,横幅が狭く高さがある本願意匠と,横幅が広く低い,偏平な引用意匠とでは,明らかに需要者に与える全体の印象を異ならせるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)についても,端子部の態様は,使用時に需要者が大きな関心を持つ部位に係るもので,本願意匠の上方寄りの右側寄りに偏った態様は,他の蓄電池には見られない特徴的なものであり,個数だけでなく,その配置や大きさ,形状まで異なるものであるから,端子部の態様は,需要者に別異な印象を与えるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
また,差異点(ウ)についても,各端子の窓部の形状は,細部に係るものではあるが,使用時に需要者が注意を払う部位に係るもので,上記差異点(イ)と相俟って,両意匠に異なる印象を与えるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。
さらに,差異点(エ)についても,切り欠き部の大きさの違いによる形状の差異は,使用時に需要者が注意を払う外形状に影響を与える部位における差異であることから,その差異は,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。

以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-06-20 
出願番号 意願2012-13285(D2012-13285) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 江塚 尚弘内藤 弘樹 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 綿貫 浩一
斉藤 孝恵
登録日 2014-08-01 
登録番号 意匠登録第1506130号(D1506130) 
代理人 折居 章 
代理人 金子 彩子 
代理人 中村 哲平 
代理人 金山 慎太郎 
代理人 大森 純一 
代理人 吉田 望 

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