ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B7 |
---|---|
管理番号 | 1289637 |
審判番号 | 不服2013-25284 |
総通号数 | 176 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2014-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-12-24 |
確定日 | 2014-07-07 |
意匠に係る物品 | フェイスマスク |
事件の表示 | 意願2012- 2243「フェイスマスク」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,本意匠を意願2012?2242号とする平成24年(2012年)2月3日の関連意匠の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「フェイスマスク」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,本願意匠は,その出願前に日本国内において頒布された公開実用新案公報に記載された意匠1の形状を外形状とし,意匠2の眼の位置に実線と破線で表されているかまぼこ形状を,眼にあたる部位に穿って孔を形成し,フェイスマスクの意匠として表したに過ぎないので,容易に創作できたものと認められる,というものである。 意匠1 (別紙第2参照) 特許庁発行の公開実用新案公報記載 平成3年実用新案出願公開第024121号 考案の名称 耳栓付きアイマスク第1図における1のアイマスク本体の意匠 (当審注:原審拒絶理由通知書の「No1アイマスク本体」を平成3年(1991年)3月13日発行の公開実用新案公報の記載に合わせて表記) 意匠2 (別紙第3参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1356077号の意匠 第3 請求人の主張の要点 これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。 意匠2に表された具体的な形状は,本願意匠のそれと近似しているものの,意匠1に表された具体的な形状は,本願意匠のそれと比較すると,明らかに異なっている。 意匠1の場合,四隅の角の曲率はすべて同じだが,本願意匠の場合,下の二つの角に比べて,上の二つの角の曲率のほうが小さくなっている。その結果,重心が下がり,本願意匠は意匠1に比べて安定感のある形状となっている。中央下部に設けられた略V字状の切り込みについても,意匠1の各片が曲線であるのに対し,本願意匠の各片は直線であるという違いがあり,両意匠の形状は著しく異なっている。 意匠2に関しても,意匠2は略U字状の切り込み線と破線であるのに対し,本願意匠の中央部分は孔が設けられており,両者の形状は輪郭こそ近似しているものの,その態様は明らかに異なっており,意匠1と同様,到底同一視できない。 本願意匠は,下の二つの角に比べて上の二つの角の曲率を小さくすることにより重心を下げ,安定感のある,着用した際にあたかも目尻の下がったような雰囲気を醸し出す,隅丸形状に創作したものである。また,「下辺中央の略V字状の切り込み線を直線としたもの」という点についても,全体に丸みを帯びていて,特に両端部が大きなカーブを描いている本願意匠の全体形状との対比において,略V字の切り込み部を際立たせるために,また,鼻筋が通った感じを表現するために切り込み線を敢えて直線にしたのである。本願意匠の創作者はこのような意図をもって本願意匠を創作しており,単に公知意匠1の角丸の曲線を変更したり,曲線を直線に変更しただけでは本願意匠は創作できるものではない。 また,意匠2に表れているのは略逆U字状の切り込み線のみであり,このような形状があったからと言って,かまぼこ様形状の孔を形成することがありふれた手法であるとは到底いえない。 本願意匠は,創意工夫の結果を経て具体的に意匠として表すに至ったものであり,また,本願意匠の外形と意匠1の外形の違い,さらに,本願意匠の眼の位置の孔部分と意匠2の略U字状の切り込み線及び破線は明らかに異なり,その形状の違いは常套的な形態処理の範囲を超えており,意匠1と意匠2を単にそのまま組み合わせたとしても,本願意匠を容易に創作し得ないことは明白である。 本願意匠は,意匠1と意匠2を単に組み合わされてできた意匠ではなく,多種多様なデザイン面での選択肢から全体形状は無論,細部に渡って緻密に計算された上で創意工夫をもって創作された意匠であり,当業者が容易に創作できるような意匠では到底ありえない。 本願意匠は,十分に創作的価値を有する意匠であり,意匠法第3条第2項の規定には該当しない。 第4 当審の判断 1. 本願意匠 本願意匠に係る物品「フェイスマスク」は,化粧水や薬剤を含浸させた不織布や織布等からなり,眼の周辺を広く覆うシート状マスクであり,一定時間このシートで両眼とその周辺を覆うことによって,眼の周辺の肌に,化粧水や薬剤を浸透させることを目的とした物品であると認められる。 本願意匠の形態は, (A)全体の外形を,上辺左右が正面視円弧状でやや上窄まりの略隅丸横長長方形状とし,その下辺中央に略逆V字形状の切欠部(以下「下辺中央切欠部」という。)を設けた薄地のシートであり, (B)左右端部は,すべて曲線からなり,上下非対称で,上方隅の方が下方隅より大きな隅丸をなしており, (C)下辺中央切欠部は,左右対称な直線部を設けた略鈍角二等辺三角形状に切欠かれ,切欠部の左右直線部から本体下辺直線部にかけてと切欠部中央の頂点部は,曲線で連続しており, (D)縦方向略中央の着用時に左右両目部となる部位に,横長長方形の上辺を円弧状に膨出させた略かまぼこ形状の孔を穿ち, (E)略隅丸横長長方形の縦横比を,1:約2.37としたものである。 2. 引用意匠 原審において,本願意匠の形態について,本願出願前に公知であるとした基礎となる引用意匠は,次のとおりである。 (1)意匠1 意匠1は,拒絶理由通知において,本願意匠の外形状が公然知られた形状であるとして例示された意匠であり,その形状は, (あ)全体は,略隅丸横長長方形状の下辺中央に略逆V字形状の切欠部を設けた形状で, (い)左右端部は,中間に直線部を挟み,その上下を上下対称の隅丸の曲線部とし, (う)下辺中央切欠部は,左右対称な曲線を設けた略鈍角二等辺三角形状に切欠かれ,切欠部の左右曲線部から本体下辺直線部にかけてと切欠部中央の頂点部は,曲線で連続しており, (え)略隅丸横長長方形全体の縦横比を,1:約2.36とした形状である。 (2)意匠2 意匠2は,拒絶理由通知において,本願出願前に公然知られていた眼の位置に表されているかまぼこ形状として例示された意匠であり,当該部分は, (か)着用時に左右両目部となる部位の,横長長方形の上辺を円弧状に膨出させた略かまぼこ形状で,このかまぼこ形状は,掲載公報の図面には,下辺は点線で,上方円弧曲線及びこれに連続する左右辺が略逆U字状に実線で表されており,意匠2の掲載公報の【意匠の説明】によれば,目の実線で表した部分と目の点線で表した部分は切り込み線を表したものであり,【意匠に係る物品の説明】によれば,下側の点線に沿って折り返すことができるものであるほか,点線に沿って切り離す事によって目の部分全体を開口した状態で使用できるものである。 3. 本願意匠の創作容易性について 請求人の主張を踏まえ,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,意匠の創作容易性について,本願意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様について,それらの基礎となる構成,具体的態様などが本願出願前に公知・周知であったか,それらの構成要素を,ほとんどそのままか,あるいは,当該分野においてよく見られるところの多少の改変を加えた程度で,周知の創作手法であるところの単なる組合せ,構成要素の全部又は一部の単なる置換えなどがされたに過ぎないものであるか否かを検討する。 まず,本願意匠の(A),(B),(C)及び(E)からなる外形状と意匠1の(あ)ないし(え)からなる外形状がほとんど同一かどうかについて見てみると,本願意匠は,左右端がすべて曲線の,上下非対称でやや上窄まりの形状であるが,意匠1は,左右端の中間に直線部のある,上下対称の形状であり,また,下辺中央切欠部の具体的形状についても,本願意匠は,切り欠き部左右に直線部があるが,意匠1には直線部がなく,すべて曲線で構成されているという相違点がある。したがって,本願意匠の外形状は,意匠1の外形状ほとんどそのままのものであるとはいえない。 次に,本願意匠の外形状が,本願意匠に係る物品の属する分野においてよく見られる,多少の改変を加えた程度の形状であるか否かについて,検討する。 本願意匠に係る物品「フェイスマスク」は,願書及び添付図面の記載内容によれば,化粧水や薬剤を含浸させたシートで,一定時間このシートで両眼とその周辺を覆うことによって,眼の周辺の肌に,化粧水や薬剤を浸透させることを目的とした物品であるが,本願意匠に係る物品の属する分野の通常の知識を有する者であれば,化粧用などに限らず,眼やその周辺を一定時間覆うことを目的とするシート状の物品の形状についても,知見を有すると認められるところ,意匠1に係るアイマスクを含む,眼の周辺を一定時間覆うことを目的とするシート状物品の左右端の形状として,上下対称の形状,上下非対称の上窄まりの形状は,いずれも例示するまでもなく,本願出願前より多数見られる形状であった。また,下辺中央切欠部における本願意匠の直線部についても,意匠2の鼻の両側に相当する部位には,切り込み線として直線部が見られることから,この種物品において,左右端を上下対称のものから上下非対称の上窄まり形状とすることや,下辺中央切欠部をすべて曲線のものから一部直線部を有するものへと変更すること自体は,周知の創作手法であるといえる。 しかしながら,本願意匠の左右端において,上下非対称の上窄まりの程度をどの程度とするか,また,左右端は,曲線のみからなる上窄まりの形状とし,下辺中央切欠部は直線部を設けた形状とする,左右端と下辺中央の形状の組合せ,またそれぞれの部位の曲線と直線をどの程度の曲率,どの程度の長さとするかといった具体的な形態の創作は,様々な選択肢がある中で選択され,創作されたものであり,本願意匠の具体的形状は,本願意匠の特徴的な着想によるものというべきであって,意匠1の存在を前提として,本願意匠の(A),(B),(C)及び(E)からなる態様が,容易に導き出せるものとは言えない。 一方,本願意匠の眼の部位の形状(D)の態様については,意匠2の(か)の使用状態,使用方法に鑑みれば,当業者であれば,(か)の態様に基づけば,容易に想起しうるものであるといえる。 しかし,本願意匠の外形状について,意匠1の形状に基づき容易に創作することができるといえない以上,本願意匠の形態は,引例の意匠1及び意匠2の存在を前提として,容易に導き出せるものではなく,本願意匠は当業者であれば容易に創作することができたものである,ということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
![]() |
審決日 | 2014-06-19 |
出願番号 | 意願2012-2243(D2012-2243) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(B7)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小林 裕和、木本 直美 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 綿貫 浩一 |
登録日 | 2014-07-25 |
登録番号 | 意匠登録第1505928号(D1505928) |
代理人 | 柳生 征男 |
代理人 | 中田 和博 |
代理人 | 片山 礼介 |
代理人 | 青木 博通 |