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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H6 |
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管理番号 | 1290589 |
審判番号 | 不服2013-21313 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-11-01 |
確定日 | 2014-08-14 |
意匠に係る物品 | 車載用無線通信機 |
事件の表示 | 意願2012-16753「車載用無線通信機」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,平成24年(2012年)7月13日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「車載用無線通信機」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由および引用意匠 原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁が平成14年(2002年)2月12日に発行した意匠公報掲載の意匠登録第1133737号「車載用無線通信機」の意匠であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 3.両意匠の対比 両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「車載用無線通信機」で,引用意匠は,「無線用通信機」であるが,両意匠は,いずれも自動車などに搭載される無線通信機であり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。 なお,両意匠を同じ方向から対比するため,引用意匠を本願意匠の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定・対比する。 (1)共通点 (A)全体を偏平な略直方体形状とし,正面パネルに厚みを設け,その前面を平面視緩やかな凸円弧状に膨出したものとし,正面パネルの右側に正面視略長方形状の大きな凹状部を下側に開口して設け,通話用のマイクロフォン接続用の略逆凸字状の端子部(以下,「端子部」という。)をその正面内側に配した点, (B)正面視左側に大型円柱状の回転つまみ(以下,「回転つまみ」という。)を設け,回転つまみに接する上下の正面パネルを平底面視略弧状に切り欠き,さらに,回転つまみの上方の正面パネルの左側上辺に,斜めに略横長匙面形状の凹状面を形成している点, (C)正面パネルの正面視略中央やや右寄りに横長長方形状の表示部を設け,正面パネルの上下の高さとほぼ同じ大きさとした点, (D)正面パネルの正面視左端に小型の電源スイッチ(以下,「電源スイッチ」という。)を配し,回転つまみの右側及び端子部の左側に小型の操作スイッチ(以下,「操作スイッチ」という。)を上下に2個ずつ,計4個配している点, において主に共通する。 (2)差異点 (ア)全体の構成と縦:横:奥行きの長さ比について,本願意匠は,側面や背面が平坦面で,長さ比が約1:4.9:5.2であるのに対して,引用意匠は,側面にスリットがあり,背面に放熱フィンがあり,長さ比が約1:4.8:5.9である点, (イ)側面視の正面パネル前端部側上下辺の態様について,本願意匠は,上下辺が正面前端部付近まで水平状であるのに対して,引用意匠は,上下辺が円弧状に立ち上がっている点, (ウ)回転つまみに接する,正面パネルの上下の切り欠きの平底面視の形状について,本願意匠は,切り欠きが略放物線状で深く,引用意匠は,半円弧状で浅めである点, (エ)回転つまみの下方の左側下辺の斜めの凹状面の形状について,本願意匠は,凹状面が円弧帯状でやや右側寄りに設けられているのに対して,引用意匠は,下辺側の凹状面が上辺側と同様に,略横長匙面形状に形成されている点, (オ)表示部と操作スイッチの態様について,本願意匠は,横長長方形状の角張った表示部の外側の左右に正面視縦長長方形状の操作スイッチを配し,表示部の左側の操作スイッチは側面視が倒凸円弧状に膨出した態様であるのに対して,引用意匠は,隅丸横長長方形状の表示部の内側の左右に正面視横長楕円形状の厚みの薄い操作スイッチを配している点, (カ)左端の電源スイッチの形状について,本願意匠は,円形状であるのに対して,引用意匠は,横長長円形状である点, (キ)回転つまみの正面部について,本願意匠は,凹状面であるのに対して,引用意匠は,凸弧状面である点, において主な差異が認められる。 4.類否判断 そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成であるが,全体を偏平な略直方体形状とし,正面パネルに厚みを設け,その前面を平面視緩やかな凸円弧状に膨出したものとし,正面パネルの右側に正面視略長方形状の大きな凹状部を下側に開口して設け,端子部をその正面内側に配した態様は,この種の物品分野においては他にも見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。 また,共通点(B)については,正面視左側に回転つまみを設け,回転つまみに接する上下の正面パネルを平底面視略弧状に切り欠き,さらに,回転つまみの上方の正面パネルの左側上辺に,斜めに略横長匙面形状の凹状面を形成している態様について共通しているが,さほど特徴のないもので,両意匠のみに共通する態様とはいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。 そして,共通点(C)については,正面パネルの正面視略中央やや右寄りに横長長方形状の表示部を設け,正面パネルの上下の高さとほぼ同じ大きさとした態様は,この種の無線通信機の分野においては,多数見られるありふれた態様といえるもので,両意匠のみに共通する態様とはいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものに過ぎないものである。 さらに,共通点(D)についても,正面パネルの正面視左端に小型の電源スイッチを配すことは,この種の無線通信機の分野においては,ごく普通に見られるありふれた態様といえるもので,特徴とはいえず,また,回転つまみの右側及び端子部の左側に小型の操作スイッチを上下に2個ずつ,計4個配している点についても,両意匠のみに認められる格別の態様とはいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものに過ぎないものである。 そうして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。 すなわち,差異点(ア)については,背面の放熱フィンや側面のスリットの有無は付加的なものではあるが,需要者が無線機を自動車に装着したり,取り外したりする場合には,目にするもので,全体のプロポーションについても,需要者の注意を惹く全体の外形状に係るもので,放熱フィンやスリットがない奥行きのない本願意匠と,放熱フィンやスリットがあり奥行きのある引用意匠とでは,明らかに需要者に与える全体の印象を異ならせるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 次に,差異点(イ)についても,側面視の正面パネル前端部側上下辺の態様は,見えにくい部分に係る差異ではあるが,取り付け後にも確認しうる全体の外形状に係るもので,需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。 そして,差異点(ウ)及び(エ)についても,回転つまみに接する,正面パネルの上下の切り欠きの平底面視の形状及び斜めの凹状面の形状について,回転つまみ周辺の態様は,使用時に需要者が大きな関心を持つ部位に係るもので,本願意匠の正面パネルに表れる上下の切り欠きが略放物線状で深く,下辺の斜めの凹状面が円弧帯状でやや右側寄りである態様は,他の無線機には見られない特徴的なものであり,需要者に引用意匠とは別異な印象を与えるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 また,差異点(オ)についても,表示部と操作スイッチについての態様については,表示部の外側の左右に配した本願意匠の態様は,この種の無線機の分野において,他にはあまり見られない態様であり,使用時に需要者が注意を払う部位に係るものであるため,両意匠に異なる印象を与えるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 さらに,差異点(カ)及び(キ)についても,電源スイッチの形状や回転つまみの正面部の態様における差異は,使用時に需要者が手を触れて操作し,注意を払う部位における差異であることから,その差異は,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2014-07-29 |
出願番号 | 意願2012-16753(D2012-16753) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 江塚 尚弘、内藤 弘樹 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
斉藤 孝恵 綿貫 浩一 |
登録日 | 2014-08-29 |
登録番号 | 意匠登録第1507897号(D1507897) |
代理人 | 三好 秀和 |