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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 D5
管理番号 1291574 
審判番号 不服2013-25281
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-24 
確定日 2014-08-13 
意匠に係る物品 浴槽 
事件の表示 意願2013- 1478「浴槽」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成25年(2013年)1月28日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「浴槽」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠は意匠法第9条第1項に規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとしたもので,引用された意匠は,平成24年(2012年)6月22日に出願され,その後平成25年(2013年)4月19日に設定登録された,意願2012-14863号(意匠登録第1469860号)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,意匠に係る物品を「浴槽」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとするものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
本願意匠及び引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも浴槽であるから,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。

次に,両意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。

まず,共通点として,
(A)全体は,平面視で略横長楕円形状をなす凹状の浴槽部と,その開口部より周囲に延設された,平面視で略横長長方形状をなすフランジ部からなる構成とし,
(B)浴槽部は,平らな底部と側面内壁部との境界部分を丸面状とし,長手方向中央部正面寄りの位置に円形の排水口を設け,フランジ部につながる上端寄りの部分をラッパ状にやや広げた形状としている点,
(C)フランジ部は,正面側縁部を直角に折曲して垂れ縁とし,残りの三方を内側に段差を持つ垂直な縁部で枠状に囲んだ形状としている点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)浴槽部の側面内壁部の態様について,本願意匠は,底部から開口部に向かって平面視略隅丸長方形状から略長円形状に滑らかに変化するような側面内壁部とし,その傾斜がほぼ垂直から外にわずかに傾斜する境界部分の正面側及び背面側の内壁部に,水平な細幅の段差部からなるアームレスト部を形成しているのに対して,引用意匠は,底部のベンチ部を除いた部分から開口部に向かって平面視略長円形状のまま滑らかに拡がるような側面内壁部とし,正面側内壁部中央部を底部から中間寄りの高さまで平面視円弧状に突出させ,その高さ部分に円弧状切り欠き部で二分割された水平な細幅の段差部からなるアームレスト部を形成し,これに対向する背面側内壁部に,水平な幅広の段差部からなるベンチ部を形成している点,
(イ)底部に施された凸状模様の態様について,本願意匠は,平面視円形状の凸状模様を,周辺部及び排水口部分を除いた部分のほぼ全面に水玉模様状に配設しているのに対して,引用意匠は,平面視縦長長円形状の凸状模様3つを長手方向に一列に揃えて並べたものを,一列ごと互い違いに19列配設している点,
が認められる。

2.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価する。

まず,共通点(A)の全体の態様,共通点(B)の浴槽部の態様,及び,共通点(C)のフランジ部の態様は,フランジ部に縁部を形成した浴槽の形態を概括的にとらえた場合の共通点にすぎず,また,本願意匠の出願前に既に見られる態様であるので,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまる。
そして,これらの共通点が相まった効果を検討しても,両意匠の類似性についての判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)浴槽部の側面内壁部の態様については,開口部の形状は平面視略長円形状で共通するとしても,両意匠の浴槽内壁部全体の曲面形状,開口部の傾斜の程度及び底部の形状がそれぞれ大きく異なっている上に,引用意匠には本願意匠にはないベンチ部が形成され,両意匠に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きい。
次に,相違点(イ)底部に施された凸状模様の態様については,該部位は目に付く部位に施されたものものであって,円形の水玉模様が底部全面にまんべんなく施されたとの印象を与える本願意匠の態様は,互い違いに組み合わされた縦長長円形状の凸条模様からなる縦列が底部中央部分の横長長方形エリアに施された引用意匠のものとは,別異な印象を与えるものであるから,この相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も一定程度ある。
そして,これらの相違点が相まって生じる視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであると言うことができる。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については一致するものの,形態においては,共通点の両意匠の類否判断に及ぼす影響が一定程度にとどまるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響はそれぞれ大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

第4 むすび

以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-07-31 
出願番号 意願2013-1478(D2013-1478) 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (D5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
斉藤 孝恵
登録日 2014-09-19 
登録番号 意匠登録第1509555号(D1509555) 
代理人 志賀 正武 
代理人 高橋 詔男 
代理人 高柴 忠夫 

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