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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1291580 
審判番号 不服2014-556
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-10 
確定日 2014-08-22 
意匠に係る物品 包装用容器 
事件の表示 意願2012- 29753「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成24年(2012年)12月5日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照)


第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁総合情報館が平成10年(1998年)1月19日に受け入れた,大韓民国特許庁発行の大韓民国意匠公報,1997年11月4日,1597巻,第82頁所載の「包装用容器」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH12000869号)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 当審の判断

引用意匠は,大韓民国意匠公報に掲載された図面のうち,斜視図のみを示したものである。請求人は審判請求と同時に,斜視図を基に,正面図,左側面図,平面図及び底面図を推定した,本願意匠と引用意匠の比較参考図:資料1(以下,「資料1」という。)(別紙第3参照)を提出し,引用意匠の特定を試みた上で,それらと本願意匠との対比を行っているが,引用意匠の実際の6面図は,当該大韓民国意匠公報に掲載されているものであるから,その写し(以下,「公報の写し」という。)(別紙第4参照)を用いて本願意匠との対比を行うこととする。同公報の写しには図面とともにハングルで,左上から順に「正面図」(背面図 同一),平面図,底面図,左側面図(右側面図 同一),斜視図が表されている。

1.本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の対比

(1)意匠に係る物品について
本願意匠の意匠に係る物品は「包装用容器」であり,一方,引用意匠の意匠に係る物品は,公報の写しに記載のハングル(INIDコード:54)を和訳すると「化粧品容器」となるが,本願意匠の出願人は化粧品の会社であって,【使用状態を表す参考斜視図】の表面に施された記載からも本願意匠は化粧品を充填し,販売するための化粧品の「包装用容器」といえるため,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。

(2)両意匠の形態について
両意匠の形態を認定すると共に,両意匠を対比すると,その形態には,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。

(2-1)本願意匠の形態
本願意匠は蓋と容器本体とで構成し,(ア)蓋は略扁平円筒形で上面が僅かに膨らみ,下部周縁に蓋外周よりも僅かに拡がった環状部を設け,その環状部の高さは蓋の高さ方向の約1/7となっている。(イ)容器本体は首部及び本体部から成り,蓋と接する首部は,蓋の横幅より僅かに幅広で,上端縁部が僅かに丸みを帯びた略薄型円筒形状となっており,本体部は,正面視において上部が緩やかな弧状の稜線を保ちつつ,左右横方向に僅かに張り出した構成の肩部を有する略逆台形状をなし,平面視において上記稜線が作る外周形状が略レモン形状となっており,また正面視略逆台形状の内部には,略上向き弧状稜線を持つ段差部とその両端から側面側へ回り込むような略上向き弧状の稜線を設け,この稜線と略逆台形上辺の左右端部とで上記肩部を構成した,略円筒形状をしている。(ウ)蓋と容器本体とを組み合わせた状態において,その高さ方向の比率は約1:2となっている。

(2-2)引用意匠の形態
引用意匠も蓋と容器本体とで構成し,(あ)蓋は略扁平饅頭形で上面及び側面にかけて丸みを帯びている。(い)容器本体は正面視において,肩部,本体部及び脚部から成り,蓋と接する肩部は,正面視において蓋の下辺周辺部の位置から外側へ略末広がり形状となっており,本体部は,肩部と接する上側稜線が,正面視においては上向きに,側面視においては下向きに緩やかな弧を描くように構成し,脚部と接する下側稜線はほぼ水平状をなし,正面視においては周囲表面が僅かに弧状で下窄まりな略円筒形状となっており,平面視において上側稜線が作る外周形状が略楕円形状となっており,本体部下側稜線に接する脚部は,側面視において本体部から接地面に向けてさじ面状にえぐるように形成されている。(う)蓋と容器本体とを組み合わせた状態において,その高さ方向の比率は約2:3となっている。

(2-3)両意匠の共通点
両意匠は,蓋及び容器本体で構成し,蓋よりも容器本体のほうが正面視における高さ及び横幅を大きく形成している点において共通している。

(2-4)両意匠の相違点
それに対して,次の具体的構成態様において,両意匠は相違している。

(a)蓋の態様について,本願意匠の蓋は,略扁平円筒形で上面が僅かに膨らみ,下部周縁に蓋外周よりも僅かに拡がった環状部を設け,その環状部の高さは蓋の高さ方向の約1/7となっているのに対して,引用意匠の蓋は,直線的な箇所がなく,略扁平饅頭形で上面及び側面にかけて丸みを帯びている点。

(b)容器本体の態様について,(b-1)本願意匠は,正面視において上部が緩やかな弧状の稜線を保ちつつ,左右横方向に僅かに張り出した構成の肩部を有する略逆台形状をなし,その側面部正面側及び背面側には,略上向き弧状稜線を持つ段差部とその両端から側面側へ回り込むような略上向き弧状の稜線を設け,この稜線と略逆台形上辺の左右端部とで上記肩部を構成した,略円筒形状をしているのに対して,(b-2)引用意匠は,正面視において蓋の下辺周辺部の位置から外側へ略末広がり形状となる肩部を有し,正面視においては上向きに,側面視においては下向きに緩やかな弧を描くように肩部と接する上側稜線と,ほぼ水平状をなす下側稜線とで挟まれた,正面視において周囲表面が僅かに弧状で下窄まりな略円筒形状をしている点。

(c)容器本体の首部の態様について,本願意匠には蓋の横幅より僅かに幅広で,左右上端縁部が僅かに丸みを帯びた略薄型円筒形状からなる,蓋と接する首部が存在するのに対して,引用意匠には首部自体が存在せず,蓋と容器本体との間に隙間がある点。

(d)容器本体の脚部の態様について,本願意匠には脚部が存在しないが,引用意匠には,容器本体から接地面に向けてさじ面状にえぐるように形成された脚部が,本体部下側稜線に接するように存在している点。

(e)平面視形状について,本願意匠は肩部を構成する稜線が作る外周形状が略レモン形状となっているのに対して,引用意匠は上側稜線が作る外周形状が略楕円形状となっている点。

(f)蓋と容器本体とを組み合わせた際の高さ方向の比率について,本願意匠は,約1:2となっているのに対して,引用意匠は約2:3となっている点。

2.類否判断

以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
まず,共通点については,両意匠が蓋及び容器本体で構成し,蓋よりも容器本体のほうが高さ及び横幅を大きく形成していることは,この種物品分野としては従来から普通に存在し,両意匠のみが共通する特徴的な構成とは言えず,両意匠の類否判断には全く影響を及ぼすものではない。
これに対して,相違点によって生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。すなわち,相違点(a)の蓋の態様及び相違点(b)の容器本体の態様は,使用時に需要者が実際に触れ,注意を払うところであり,この種物品において,このような相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものであり,相違点(c)の首部の態様,相違点(d)の脚部の態様,相違点(e)の平面視形状及び相違点(f)の蓋と容器本体とを組み合わせた際の高さ方向の比率の違いについても,僅かな違いではあるが上記相違点(a)及び相違点(b)とともに需要者に別異な印象を与えるものであり,その結果は両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠の形態において,相違点が共通点を凌駕し,需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないと認められる。


第4 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当すると言うことはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-08-11 
出願番号 意願2012-29753(D2012-29753) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木本 直美 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 綿貫 浩一
江塚 尚弘
登録日 2014-09-12 
登録番号 意匠登録第1508803号(D1508803) 
代理人 京村 順二 
代理人 稲岡 耕作 
代理人 川崎 実夫 
代理人 中村 友美 

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