• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D3
管理番号 1294818 
審判番号 不服2014-936
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-17 
確定日 2014-12-15 
意匠に係る物品 照明器具 
事件の表示 意願2013- 467「照明器具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成25年(2013年)1月11日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「照明器具」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとするものであり,本願意匠が類似するとして引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁意匠課が2012年(平成24年)8月31日に受け入れた,電気通信回線の種類:インターネット,掲載確認日(公知日):2012年(平成24年)8月27日,掲載者:シャープ株式会社,表題:製品概要【DL-C408V/C308V/C208V】|LEDシーリングライト:シャープ ,掲載ページのアドレス:http://www.sharp.co.jp/led_lighting/ceiling/select/08/index.html に掲載された「天井じか付け灯」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ24026602号)であって,その形態は,同インターネットに掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「照明器具」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「天井じか付け灯」であるが,双方とも天井に取り付けて使用する照明器具であるから,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,共通する。
次に,両意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある(なお,引用意匠は,天井に取り付けた状態を斜め下方から撮影したものであり,側面方向及び天井への取付け側の形態が不明であるため,請求人が平成26年(2014年)1月21日付けで提出した手続補足書に示した,本願意匠と引用意匠との比較写真(別紙第3及び別紙第4参照)を用いて,両意匠の形態の比較を行うこととする)。

まず,共通点として,

(A)全体は,LED等の電子基盤を有する,略円形板状体からなる本体(以下,「本体部」という。)に,透光性を有する材質からなる,略円盤状のカバー(以下,「カバー部」という。)を取り付けた構成である点,
(B)本体部は,その中央に略円形の貫通孔を設け,底面側にLED等の電子基盤を有し,天井との取付け面となる正面側には,本体部と天井との接する部分にスポンジ緩衝材を設けた点,
(C)カバー部は,側面視において中心部が一番厚みがあり,そこから周縁部に向けて緩やかな曲線を描くように形成した,略半碁石形状である点,

が認められる。

他方,相違点として,

(ア)本体部の正面側の態様について,本願意匠は,中央部貫通孔の周囲に略ボルト形状のスポンジ緩衝材を設け,更に,頂点が貫通孔に向いた状態で,貫通孔から等距離の位置になるように,中心角が約120度で,貫通孔の直径と同程度の長さの半径からなる略扇形をしたスポンジ緩衝材を3つ配置し,その略扇形のスポンジ緩衝材の間には,外側に向けてわずかに幅広となる略縦長台形状からなる突起部を3つずつまとめて,3方向に合計9つ放射状に設けているのに対して,引用意匠は中央部貫通孔に本体部の半径と同程度の直径からなる凸部を設け,凸部上面に収まるように,略ボルト形状のスポンジ緩衝材と3つの略扇子形状のスポンジ緩衝材が密着して配置され,本願意匠のような突起物は設けられていない点,
(イ)カバー部端部の態様について,本願意匠は表面の曲面から端部で折り返した稜線が略水平方向に延びており,横から見ると略逆フ形状となっているのに対して,引用意匠は表面の曲面から端部で折り返した稜線はいったん斜め下方向に向かい,本体部との接合部から略水平方向に延びており,横から見ると本願意匠よりも角度を拡げた略逆フ形状となっている点,
(ウ)本体部の底面側の態様について,本願意匠は,中央部貫通孔の周りに取り付けられた電源ドライバーを覆うための,略薄型円筒形状からなる中央カバーを設置し,その外側周縁部に4分割からなるLEDを取り付けた電子基板を配しているのに対して,引用意匠は,中央部貫通孔に本願意匠のものよりもかなり薄い,略薄型ドーナツ板形状からなる凸部を設け,その外側周縁部に2分割からなるLEDを取り付けた電子基板を配している点,

が認められる。

2.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。

まず,共通点(A)の全体の態様,共通点(B)の本体部の態様及び共通点(C)のカバー部の態様は,天井に取り付けるタイプの照明器具として,本願意匠の出願前に数多く見られる態様であり,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものであって,これらの共通点は,全体としてみても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
これに対し,相違点(ア)の本体部の正面側の態様の違いによって,天井に設置した際に,本願意匠と天井との間はスポンジ緩衝材の厚み分のわずかな隙間が生じるのみであり,本願意匠は天井に張り付いたような印象を持たせるのに対して,引用意匠はスポンジ緩衝材の厚みの上に,本願意匠には存在しない凸部分の厚みが加わることで,天井に設置した際にかなりの隙間が生じ,引用意匠は天井から浮き離れたような印象を持たせるものであり,スポンジ緩衝材のレイアウト及び略縦長台形状の突起部の有無等も含め,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。
そして,この相違点(ア)は,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美観を起こさせるものと言うことができる。

他方,相違点(イ)のカバー部端部の態様については,端部の折り返し部分の角度の違いであり,全体を略半碁石状としたカバー部に占める割合は小さいものであるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。また,相違点(ウ)の本体部の底面側の態様についても,通常の使用状態においてはカバー部が取り付けられた状態では見えないものであるから,こちらの相違点も両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については共通するものの,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,相違点(ア)が類否判断に及ぼす影響は大きく,また微弱ではあるものの相違点(イ)及び相違点(ウ)が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。


第4 むすび

以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,審決のとおり結審する。
別掲
審決日 2014-12-01 
出願番号 意願2013-467(D2013-467) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 朝康 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
綿貫 浩一
登録日 2014-12-26 
登録番号 意匠登録第1516436号(D1516436) 
代理人 福島 一 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ