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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H2
管理番号 1296079 
審判番号 不服2014-3257
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-21 
確定日 2014-12-05 
意匠に係る物品 電源アダプター 
事件の表示 意願2013- 3402「電源アダプター」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,部分意匠として意匠登録を受けようとする,パリ条約による優先権を主張した優先日を2012年8月20日(アメリカ合衆国)とする平成25年(2013年)年2月20日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「電源アダプター」とし,その形態は,願書の記載及び願書添付の図面に記載されたとおりのもので,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁普及支援課が2010年12月16日に受け入れた,米国特許商標公報2010年11月23日10W47号に掲載された電源アダプター(登録番号US D627784S)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH22321691号)において,本願の意匠登録を受けようとする部分に相当する筐体の出力端子部を除いた周側面及び入力端子が設けられていない角丸正方形の面の部分の意匠(以下,引用意匠において本願意匠の本願実線部分に相当する部分を「引用相当部分」という。)であって,その部分の形態は,同ページに掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,両意匠は,いずれも周側面に凹状の接続部を設け,底面側を凸状の挿入接続部として機器などに差し込んで接続できるようにした,「電源アダプター」であり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
(2)用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
なお,両部分の意匠を同じ方向から対比するため,引用意匠を本願意匠の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定・対比する。
(2-1)用途及び機能
本願実線部分と引用相当部分(以下,「両部分」という。)は,ともに凹状及び凸状の接続部を設ける「電源アダプター」の筐体に係るものである点では共通するが,本願実線部分は,底面側に差し込み用の電源プラグを設け,背面に1個の端子接続部を設けるための筐体であるのに対して,引用相当部分は,底面側に機器に接続するコネクターを設け,背面に2個の端子接続部を設けるための筐体である点において,両部分の意匠の用途及び機能には差異が認められる。
(2-2)位置,大きさ及び範囲
両部分の意匠は,ともに平面を角丸正方形状とした略直方体形状の筐体である本体部(以下,「本体部」という。)の平面及び周側面と,底面の縁部までに係るものであるから,両部分の意匠の位置,大きさ及び範囲は共通する。
(3)形態
両部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
(3-1)共通点
全体を平面が角丸正方形状の略直方体形状の本体部とし,本体部の背面の平坦面に接続部を設けるものとした点,において主に共通する。
(3-2)差異点
(ア)本体部の周側面の正面視した態様において,平面側の横幅と高さの比が,本願実線部分は,約1:0.77で横長であるのに対して,引用相当部分は,約1:1.1でやや縦長である点,
(イ)本体部の周側面の形状について,本願実線部分は,上端から下端に行くにつれてごくわずかに径が大きくなっているのに対して,引用相当部分は,上端と下端の径が同じである点,
(ウ)本体部の周側面に設けられる横長長方形状の凹状接続部について,本願実線部分は,背面側の上下中央より上寄りに1個破線で表されているのに対して,引用相当部分は,背面側の上下中央に1個,それよりやや上寄りに1個,凹状接続部を上下に2個配している点,
(エ)本願実線部分は,本体部の周側面の底面寄りに水平方向に切り替え線があるのに対して,引用相当部分は,切り替え線がない点,

4.類否判断
(1)両意匠の意匠に係る物品は共通する。
(2)両部分の意匠の位置,大きさ及び範囲は共通するが,両部分の意匠の用途及び機能については,底面側に差し込み用の電源プラグを設けているか否か,周側面にいくつの端子接続部を設けるための筐体であるか否かは,需要者の関心を強く惹く大きな差異といえるもので,差異点が両部分の意匠の用途及び機能における共通点を凌駕するものといえる。
(3)両部分の形態について
共通点全体として両部分の意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両部分の意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の意匠の類否判断を決定付けるものである。
(3-1)共通点
そこで検討するに,共通点については,全体の基本構成であるが,全体を平面が角丸正方形状の略直方体形状の本体部とすることは,この種の電源アダプターの分野においては,ごくありふれた態様といえるものであり,本体部の周側面の一つの平坦面に接続部を設けるものとした態様についても,この種の物品分野においては他にも見られるもので,両部分の意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両部分の意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
そうして,共通点全体として両部分の意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両部分の意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
(3-2)差異点
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,差異点(ア)については,本体部の周側面が横長か縦長かについては,需要者がこの種の電源アダプターを使用する際には,実際に手で触る部分に係るもので,需要者の注意を惹く本体部の正面視のプロポーションに係るもので,横長の本願実線部分と,やや縦長の引用相当部分とでは,需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両部分の意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)についても,周側面の形状に係るもので,見る者の注意を惹く部分といえるもので,上端から下端に行くにつれてごくわずかに径が大きくなっている本願実線部分と上下の径が同じ引用相当部分では,使用時に手にとって観察する部分であるから,差異点(ア)と相俟って需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両部分の意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
また,差異点(ウ)についても,本願実線部分の意匠の態様は,凹状接続部が周側面の背面側のやや上寄りに1個破線で表されているものではあるが,引用相当部分は,背面側の上下中央に1個,それよりやや上寄りに1個,横長長方形状の凹状接続部を上下に2個配したものであり,凹状接続部は使用時に需要者が注意を払う部位に係るものであるため,その差異を無視することはできず,両部分の意匠に異なる印象を与えるものであり,その差異は,両部分の意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。
そして,差異点(エ)について,切り替え線の有無については,それのみでは目立つものとはいえないが,周側面の態様は,使用時に需要者が大きな関心を持つ部位に係るもので,前記した差異点(ア)及び差異点(イ)と相俟って需要者に与える印象を異ならせるものであり,両部分の意匠の類否判断にわずかではあるが影響を与えるものといえる。
(4)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の意匠の位置,大きさ及び範囲が共通するものであるが,両部分の意匠の用途及び機能,並びに,両部分の意匠の形態において,差異点が共通点を凌駕し,それらが両部分の意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-11-25 
出願番号 意願2013-3402(D2013-3402) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内藤 弘樹 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 斉藤 孝恵
江塚 尚弘
登録日 2015-01-09 
登録番号 意匠登録第1516950号(D1516950) 
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 

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