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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1296080 
審判番号 不服2014-10469
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-04 
確定日 2014-12-09 
意匠に係る物品 自動車用タイヤ 
事件の表示 意願2013- 13333「自動車用タイヤ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成25年(2013年)6月13日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,本願意匠が類似するとして引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,特許庁特許情報課が2004年1月22日に受け入れた,2003年12月30日発行の米国特許商標公報(DVD-ROM番号:USP2003W52)に記載の,特許番号:US D484,456S「自動車用タイヤ(二点鎖線部を含むタイヤ全体)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH16500159号)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
本願意匠及び引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,ともに自動車用タイヤであるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

次に,両意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお,対比のため,引用意匠の「FIG.1」を「斜視図」とし,引用意匠の「FIG.2」を「正面図」とし,引用意匠の「FIG.3」を「左側面図」とし,その他は,これらに準じて表されているものとする。

まず,共通点として,
(A)全体は,略短円筒形状とし,ショルダー部から正面視凸状に突出して形成したトレッド部を,複数のストレートグルーブ(周方向に施した直線状の溝)により分割し,トレッド部表面にリブ型のトレッドパターンを形成したものであって,
(B)トレッドパターンを構成するリブは,トレッド部左右端部に,表面がフラットなリブ(以下,「ソリッドリブ部」という。)を配し,その中間部に,フラットな表面に小さな縦サイピングを施したリブ(以下,「サイプ付きリブ部」という。)を複数条形成している点,
(C)サイプ付きリブ部は,表面中央部分に,縦長線分の上端部分を左上がりに傾斜し下端部分を右下がりに傾斜してなる略逆S字状の縦サイピング(以下,「略S字状サイプ」という。)を,周方向に沿って縦一列に等間隔に多数形成し,その表面両側辺部分に,短い横サイピング(以下,「水平短サイプ」という。)を水平方向に多数形成している点,
(D)ソリッドリブ部は,その表面内側辺部分に,水平短サイプを多数形成している点,
(E)ソリッドリブ部とサイプ付きリブ部の間は,断面視略凹状のストレートグルーブで区切り,そのストレートグルーブ底辺部内側寄りの部分に,上端外側角部を傾斜面とし上面部に横サイピングを施した断面視略凸状の列部を,周方向に1条形成している点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)サイプ付きリブ部の数について,本願意匠は,ソリッドリブ部の約4/5の横幅としたサイプ付きリブ部を2列設けているのに対して,引用意匠は,ソリッドリブ部の約3/5の横幅のサイプ付きリブ部を3列設けている点,
(イ)サイプ付きリブ部間のストレートグルーブの態様について,本願意匠は,ソリッドリブ部とサイプ付きリブ部間の断面視略凹状のストレートグルーブと同じ形態のものを1条形成し,その底面部分に上端部を略台形状に形成した断面視略凸状の列部を周方向に1条形成しているのに対して,引用意匠は,各リブ部間に,ソリッドリブ部とサイプ付きリブ部の間の断面視略凹状のストレートグルーブより幅が狭い断面視略V字状のストレートグルーブを周方向に2条形成している点,
(ウ)略S字状サイプの配置態様について,本願意匠は,左側サイプ付きリブ部の略S字状サイプと右側のものとを略半ピッチずらして配置しているのに対して,引用意匠は,左側サイプ付きリブ部の略S字状サイプと中央のものと右側のものとを略1/4ピッチずつ下にずらして配置している点,
(エ)トレッド部両側面部の態様について,本願意匠は,トレッド部両側面部をやや内側に傾斜させ,断面視における上方角部を鋭角に形成しているのに対して,引用意匠は,両側面部をやや外側に傾斜させ,断面視における上方角部を鈍角に形成し,両側面部上端寄りの部分に,断面視略丸底フラスコ状に切り込んだ溝部を1条形成している点,
が認められる。

2.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。

まず,共通点(A)の全体の態様は,トラック・バス用タイヤの意匠の骨格的な構成態様にあたるものであり,また,共通点(B)及び共通点(E)の各部の態様は,自動車用タイヤの物品分野において,本願意匠の出願前に既に見られるもの(参考意匠1:日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成24年(2012年)3月26日)に掲載された,意匠登録第1436825号(意匠に係る物品,自動車用タイヤ)の意匠,別紙第3参照)でもあるので,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であると言わざるを得ない。
また,共通点(C)及び共通点(D)の態様も,略S字状サイプ及び水平短サイプは目立たない微細なものにすぎず,また,各サイプ自体の形態も既に見られるもの(略S字状サイプについては,参考意匠2:日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成23年(2011年)2月7日)に掲載された,意匠登録第1406987号(意匠に係る物品,自動車用タイヤ)の意匠における右側から2列目ブロックに施されたサイピングの形態,別紙第4参照。水平短サイプについては,参考意匠1,別紙第3参照)であるので,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響も微弱なものである。
そして,これらの共通点は,全体としてみても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)サイプ付きリブ部の数,及び,相違点(イ)サイプ付きリブ部間のストレートグルーブの態様については,一組のソリッドリブ部及びサイプ付きリブ部を,中央の断面視略凸状の列部を挟んで左右対称に2組配置したとの印象を与える本願意匠の態様と,左右ソリッドリブ部間に,サイプ付きリブ部を3列配置したとの印象を与える引用意匠のものとは,看者に別異な印象を与えるものであるから,これら相違点(ア)及び相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
また,相違点(ウ)略S字状サイプの配置態様については,略S字状サイプ自体は目立たないものではあるが,左右サイプを略半ピッチずらして配置している本願意匠の態様と,3つのサイプを左から右に向かって僅かに下にずらして配置している引用意匠のものとは,別異な印象を与えるものであり,この相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度ある。
そして,これらの相違点(ア)ないし(ウ)によって生じる視覚的効果はいずれも大きく,それらが相まって生じる視覚的効果は,両意匠の類否判断を左右するものであると言える。
他方,相違点(エ)トレッド部両側面部の態様については,タイヤ全体から見た場合,特段目立つ部位ではない上に,その相違も僅かな程度のものであるから,この相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については,一致するものの,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響はそれぞれ大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

第4 むすび

以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-11-25 
出願番号 意願2013-13333(D2013-13333) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 玉虫 伸聡加藤 真珠 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
斉藤 孝恵
登録日 2015-01-16 
登録番号 意匠登録第1517603号(D1517603) 
代理人 村松 由布子 
代理人 杉村 憲司 

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