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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B5
管理番号 1296098 
審判番号 不服2014-5283
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-20 
確定日 2015-01-14 
意匠に係る物品 草履 
事件の表示 意願2013- 8133「草履」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,部分意匠として意匠登録を受けようとする,平成25年(2013年)年4月11日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「草履」とし,その形態は,願書の記載及び願書添付の図面代用写真に現されたとおりのもので,「ピンク色で着色された部分を除く部分が,部分意匠として登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2008年3月21日に受け入れた「履くだけで自然に『足ゆび運動』ができる! 足ゆび運動ぞうり 楽(らく)」第2頁に所載のぞうりの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC20005316号)において,本願の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分の意匠(以下,引用意匠において本願意匠の本願部分に相当する部分を「引用相当部分」という。)であって,その部分の形態は,同ページに掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,両意匠は,いずれも足指の運動ができるようにした,「草履」であり,両意匠の意匠に係る物品は一致する。
(2)用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分と引用相当部分(以下,「両部分」という。)は,ともに草履全体のつま先寄りの略1/3の部分であるから,両部分の意匠の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。
(3)形態
両部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
なお,両部分の意匠を同じ方向から対比するため,引用意匠を本願意匠の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定・対比する。
(3-1)共通点
(A)略円弧状のつま先側にメッシュ状の中底部分(以下,「中底部分」という。)を設け,鼻緒を接続する前緒部分から踵寄りにかけて,中底部分の上に畳地の中敷き部分(以下,「中敷き部分」という。)を設け,中敷き部分の外側に中底部分がはみ出して段差状となっている(以下,中敷き部分の外側にはみ出している中底部分を「段差面部」という。)点,
(B)中底部分及び中敷き部分の外周縁をそれぞれ暗調子の布地で縁取りしている点,
(C)中敷き部分の前緒部分が設けられる位置の周囲に暗調子の糸で楕円形状のステッチ(以下,「ステッチ部」という。)を施している点,
において主に共通する。
(3-2)差異点
(ア)段差面部を平面視した態様において,本願部分は,略「フ」の字状であるのに対して,引用相当部分は,略三日月状である点,
(イ)中敷き部分の先端部の位置について,本願部分は鼻緒の前緒部分が設けられる部分が最も先端に突出しているのに対して,引用相当部分は,親指の下に来る内側寄りの部分が最も先端に突出している点,
(ウ)前緒部分周囲のステッチ部について,本願部分は,中敷きの突出している部分に設けられ,先端側の一部が中敷き部分の縁取り部分に隠れているのに対して,引用相当部分は,中敷き部分中央からはやや後退した位置に楕円形状に設けられている点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
(1)両意匠の意匠に係る物品は一致する。
(2)両部分の意匠の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。
(3)両部分の形態について
共通点全体として両部分の意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両部分の意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の意匠の類否判断を決定付けるものである。
(3-1)共通点
そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成であるが,草履に畳地を用いることは,この種の履物の分野においては,ごくありふれた態様といえるものであり,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
次に,共通点(B)については,中敷き部分の外周縁をそれぞれ暗調子の布地で縁取りした態様についても,この種の物品分野においては他にも見られるもので,両部分の意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この共通点が両部分の意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
また,共通点(C)は,ステッチ部を設けた点は共通するが,その具体的態様が異なるもので,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そうして,共通点全体として両部分の意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両部分の意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
(3-2)差異点
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,差異点(ア)については,段差面部を平面視した態様については,需要者がこの種の草履を使用する際には,足のどの位置に段差面部があるかどうかは,実際に履いたときの感触にも影響を与えるものであり,需要者の注意を強く惹く部分に係るもので,略「フ」の字状である本願部分と,略三日月状である引用相当部分とでは,需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両部分の意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)についても,中敷き部分の先端部の位置がどこになるかは,親指の位置が段差面部に達するか中敷き部分に来るかで,実際の履き心地も異なるものといえ,見る者の注意を惹く部分といえるもので,使用時に良く観察する部分であるから,差異点(ア)と相俟って需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両部分の意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
また,差異点(ウ)についても,ステッチ部は,それのみでは目立つものとはいえないが,使用時に需要者が注意を払う前緒の目印になる部位に係るものであるため,一部が縁取り部に隠れ,中敷き部分と段差面部の境界部分に設けられている本願部分と,段差面部からは後退して中敷き部分に楕円形状に設けた引用相当部分のものとは,両部分の意匠に異なる印象を与えるものであるから,その差異は,両部分の意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。
(4)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲が共通するものであるが,両部分の意匠の形態において,差異点が共通点を凌駕し,それらが両部分の意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2014-12-24 
出願番号 意願2013-8133(D2013-8133) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 並木 文子 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
斉藤 孝恵
登録日 2015-01-30 
登録番号 意匠登録第1518365号(D1518365) 
代理人 花村 太 

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