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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D4 |
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管理番号 | 1297198 |
審判番号 | 不服2014-10329 |
総通号数 | 183 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-03 |
確定日 | 2015-01-13 |
意匠に係る物品 | レンジフード用フィルタ |
事件の表示 | 意願2012- 24430「レンジフード用フィルタ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成24年(2012年)10月5日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「レンジフード用フィルタ」とし,願書の記載によれば「金属箔と不燃性の紙による2層から構成されており,使用後はそのまま廃棄することができる」ものであって,形態を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,「実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本願実線部分」という。)であり,一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界線のみを示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同法同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成4年(1992年)12月24日)に記載された意匠登録第721164号の類似第2号(意匠に係る物品「換気扇用フィルター」)の意匠(以下「引用意匠」という。)であって,引用意匠の本願実線部分に相当する部分(以下「引用相当部分」という。)について類否判断の対象としたものであり,引用意匠の形態は,同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 第3 本願意匠と引用意匠の対比 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「レンジフード用フィルタ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「換気扇用フィルター」であって,共にフィルターの用途及び機能を有するものであるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。 2 本願実線部分と引用相当部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願実線部分は,正面及び背面の内側に設けられた複数の通気孔部を除いた部分であり,引用相当部分も同様であるから,本願実線部分と引用相当部分(以下「両部分」という。)の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。 3 両部分の形態 両部分の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 (1)共通点 両部分には,基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。 (A)基本的構成態様について 両部分は,全体が,薄い略矩形板状体であり,正面から見て,左右対称の略縦長矩形状であって,その内側の外周寄りが平坦状に形成され,複数の通気孔部の周囲にも平坦面が形成されたものである。 また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。 (B)平面及び側面から見た態様について 平面及び側面から見ると,両部分は,細幅長方形状に表されている。 (C)通気孔部間の構成態様について 正面から見て,右上隅寄りに,略横長矩形状の通気孔部が縦に8個並んでおり,その中間にごく細い横長の部分(以下「極細横長部」という。)が7個形成されている。そして,その8個の通気孔部群が,縦方向に14行,横方向に12列並んでおり,それぞれの通気孔部群の間には,縦方向に細い横長の平坦面が13個,横方向に細い縦長の平坦面が11個形成されている。 (2)差異点 一方,両部分には,具体的態様として,以下の差異点が認められる。 (ア)外周縁形状について 本願実線部分では,正面水平断面及び正面垂直断面において,外周縁形状が略コ字状であって,金属箔を施した紙が折り曲げられて形成されているのに対して,引用相当部分の外周縁形状は略L字状である。 (イ)極細横長部の形状について 本願実線部分の極細横長部の断面形状は垂直状であるのに対して,引用相当部分のそれは,斜め状である。 (ウ)正面下端寄り中央部の態様について 引用相当部分の正面下端寄り中央部には,細い円柱状の突起部が設けられているのに対して,本願実線部分には,そのような突起部はない。 第4 類否判断 1 意匠に係る物品 前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 2 両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 前記認定したとおり,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。 3 形態の共通点の評価 両部分の形態の共通点(A)及び(B)については,「レンジフード用フィルタ」の物品分野において,本願の出願前にも見受けられる態様であるので,看者の注意を特に惹くものではない。そして,共通点(C)についても,略横長矩形状の通気孔部を縦横に並べて配した意匠はありふれているので,看者の注意を強く惹くものではない。したがって,両部分の形態の共通点が両部分の類否判断に決定的な影響を及ぼすということはできない。 4 形態の差異点の評価 一方,両部分の形態の差異点については,以下のとおり,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 まず,差異点(ア)については,本願意匠が廃棄可能なものであって,使用者がレンジフードから本願意匠を外したり,取り付けたりするときには,本願実線部分の外周縁形状に対して注意を払うことになり,略コ字状の外周縁を有さない引用相当部分と比べて,形状が明らかに異なっていることから,差異点(ア)が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 次に,差異点(イ)については,極細横長部の占める面積が小さいとはいえ,両部分の断面形状の差異は顕著であり,看者はこの差異に注目するというべきであるから,両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 そして,差異点(ウ)についても,その差異は正面方向及び側面方向からはっきりと看取されるものであって,両部分の視覚的印象に変化を与えているというべきであるから,両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 そうすると,(ア)ないし(ウ)の差異点は,いずれも両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものであるということができる。 5 小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であり,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲も共通するが,両部分の形態においては,共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,差異点が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きいものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2014-12-24 |
出願番号 | 意願2012-24430(D2012-24430) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 兼安 あい、上島 靖範 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
綿貫 浩一 小林 裕和 |
登録日 | 2015-02-13 |
登録番号 | 意匠登録第1519433号(D1519433) |
代理人 | 特許業務法人 英知国際特許事務所 |