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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1297203 |
審判番号 | 不服2014-11793 |
総通号数 | 183 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-20 |
確定日 | 2015-01-23 |
意匠に係る物品 | 包装用容器 |
事件の表示 | 意願2013- 13827「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,2012年12月20日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張に伴う,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成25年(2013年)6月19日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであり,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,本願意匠に類似するとして引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成23年(2011年)7月19日)に掲載された,意匠登録第1418816号(意匠に係る物品,包装用容器)の意匠(以下,本願実線部分に相当する引用意匠の当該部分を「引用相当部分」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品について 本願意匠及び引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,ともに包装用容器であるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。 (2)本願実線部分と引用相当部分(以下,「両意匠部分」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 まず,両意匠部分の用途及び機能について,本願意匠の審判請求人及び引用意匠の意匠権者は同人であり,主に洗剤や化粧品等を製造販売する企業であることから,両意匠はいずれも洗剤等を入れ販売等に使用される包装用容器と考えられるため,両意匠部分の用途及び機能は一致する。 次に,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲について,両意匠部分は包装用容器のキャップ部の一部を除いた部分であるため,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は一致する。 (3)両意匠部分の形態について まず,両意匠部分の共通点として, 全体は,キャップ部と本体部からなり,上方に向いた3枚の略花弁状に形成したキャップ部と,本体部略中央がくびれた略円筒形状からなる本体部で構成している点, が認められる。 他方,相違点として, (ア)キャップ部の構成について,本願実線部分のキャップ部はその上方を略花弁状に形成した上部キャップと,破線部分を含む略円錐台形状からなる下部キャップとで構成された,上下2層構造になっており,下部キャップに設けられた略半円状の破線部分とその真裏のヒンジ状の破線部分とによって,本願実線部分のキャップ部は上部キャップがヒンジを中心に可動する態様であるのに対して,引用相当部分のキャップ部にはそのような可動部が存在せず,略花弁状に形成するキャップ上部と略円錐台形状からなるキャップ下部とが一体としてキャップ部を形成している点, (イ)キャップ部と本体部との構成比率について,本願実線部分におけるキャップ部と本体部との構成比率は約1:3となっているのに対して,引用相当部分におけるキャップ部と本体部との構成比率は約1:3.7となっている点, (ウ)本体部のくびれ具合について,本願実線部分の本体部略中央の一番くびれた箇所の直径と上下端部の一番幅が広い箇所の直径との比率は約1:1.32となっているのに対して,引用相当部分における同様の比率は約1:1.22となっている点, (エ)本体部の上部及び下部の態様について,本願実線部分の本体部上部及び下部には周方向に細幅の垂直な平坦面が存在しているのに対して,引用相当部分の本体部上部及び下部にはそのような平坦面が存在していない点, が認められる。 2.両意匠部分の形態の評価 以上の共通点及び相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。 まず,共通点である全体の態様は,本願意匠の出願前に数多く見られる態様であり,この共通点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものであって,これらの共通点は,全体としてみても,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 これに対し,相違点(ア)のキャップ部の構成の違いは,包装用容器の使用時に最も注意を払う部分に関する違いであって,一般的にはキャップ部を周方向に回転させ,ひねることで本体部から脱着させるところ,本願実線部分のキャップ部はさらにヒンジ部を中心に上方に開閉可能としており,ひねることなく簡便に中身を取り出すことができるものであり,開閉に関する構成の違いは看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。 次に,相違点(イ)のキャップ部と本体部との構成比率及び相違点(ウ)の本体部のくびれ具合の違いについても,比率的には僅かな違いであっても,本願実線部分は縦方向に凝縮した印象となり,その本体部はくびれの強い曲線的なシルエットであるのに対して,引用相当部分は縦に長い印象となり,その本体部は僅かにくびれた直線的なシルエットであることから,やはり看者に別異な印象を与えるものであり,この相違点(イ)及び相違点(ウ)も両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。 さらに,相違点(エ)の本体部の上部及び下部の態様の違いも僅かな違いであるものの,目に付く部位にあることから看者に別異な印象を与えるものであって,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度ある。 3.類否判断 上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲も一致している。 また,両意匠部分の形態については,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,相違点(ア)ないし(ウ)が類否判断に及ぼす影響は大きく,また微弱ではあるものの相違点(エ)が他の相違点と相まって生じる視覚的効果も一定程度あるから,これら相違点の類否判断に及ぼす影響は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから需要者に別異の美感を起こさせており,両意匠部分は類似しないものと認められる。 第4 むすび 以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,審決のとおり結審する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-01-09 |
出願番号 | 意願2013-13827(D2013-13827) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 並木 文子 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
綿貫 浩一 江塚 尚弘 |
登録日 | 2015-02-27 |
登録番号 | 意匠登録第1520341号(D1520341) |
代理人 | 副田 圭介 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |