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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1297214 
審判番号 不服2014-11586
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-18 
確定日 2015-02-03 
意匠に係る物品 包装用缶 
事件の表示 意願2013- 17192「包装用缶」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成25年(2013年)7月29日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真によれば,意匠に係る物品を「包装用缶」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,本願意匠が類似するとして引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成14年(2002年)4月30日)に掲載された,意匠登録第1140109号(意匠に係る物品,包装用缶)の意匠であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 当審の判断

1.原査定の適否

まず,原査定における拒絶の理由と,その際に引用された意匠について検討し,原査定の適否を判断する。

(1)本願意匠と引用意匠の対比

本願意匠及び引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも包装用缶であるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

次に,両意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。

まず,共通点として,全体を略縦長円筒形状とし,胴部と上蓋部及び底蓋部で構成したものであって,胴部の表面には上方に1本,下方に2本,合計3本の水平方向の溝部を設け,この溝部によって胴部表面が4つに分割されている点,
が認められる。

他方,相違点として,

(ア)缶全体の縦横比について,本願意匠の縦横比は約2:1であるのに対して,引用意匠の縦横比は約7:4となっており,本願意匠の方が引用意匠よりも約14%ほど縦に長い形状となっている点,

(イ)溝部によって4分割される,胴部の平坦面部の構成比率について,分割される胴部の平坦面部の領域を上からa,b,c,dとした場合に,本願意匠のa:b:c:dは約6:39:3:6となるのに対して,引用意匠のa:b:c:dは約6:48:3:7となっており,引用意匠の方が領域bの割合が大きい点,

(ウ)溝部の深さについて,本願意匠の直径に対する溝部の深さは約1:60であるのに対して,引用意匠の直径に対する溝部の深さは約1:40であり,引用意匠の溝部の方が本願意匠よりも深い溝部を有する点,

(エ)上蓋部と胴部上端縁部との外周の境界付近(以下,「上部ネックイン部」という。)の態様について,本願意匠の上部ネックイン部は周方向に細幅の垂直な平坦面を有するのみであるのに対して,引用意匠の上部ネックイン部は周方向に細幅の垂直な湾曲面からいったん内側に段差を一段設け,そこから胴部へと繋がる周方向の斜面とで構成されている点,

(オ)上蓋部の態様について,本願意匠の上蓋部は,内側の周囲が環状に深くなった態様となっており,その中心部にステイオンタブが設けられているのに対して,引用意匠の上蓋部は周縁部より僅かに下がった位置に平面状に形成され,そこには何も設けられていない点,
が認められる。

(2)両意匠の形態の評価

以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。
まず,共通点の全体の態様は,包装用缶として本願意匠の出願前に数多く見られる態様であるため,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものであって,全体としてみても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
これに対し,相違点(ア)の缶全体の縦横比の違いについては,包装用缶は手に持って使用するものであり,縦方向の長さの違いが需要者にとって大きな違いを感じる部分であるため,この違いは看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。
次に,相違点(イ)の溝部によって4分割される,胴部の平坦面部の構成比率の違いについては,引用意匠の領域bの方が割合が大きいものの,その違いは僅かなものであり,また,相違点(ウ)の溝部の深さの違いについても,引用意匠の溝部の方が本願意匠のものよりも深いものの,両意匠全体で比較した場合にはその違いは僅かなものであるため,この相違点(イ)及び相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
そして,相違点(エ)の上部ネックイン部の違いについては,上部ネックイン部は包装用缶の飲み口にあたる部分であって,需要者が最も注意を払う部分の1つであることから,本願意匠とそれよりも複雑な態様になっている引用意匠とでは別異な印象を与えるものであり,相違点(イ)及び相違点(ウ)と相まって,本願意匠は全体的に大人しい印象にまとめ上げられているのに対して,上部ネックイン部と凹凸帯部とが織りなす複雑な構成にまとめ上げられている引用意匠とでは別異な印象を与えるものであるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。
そして,これらの相違点(ア)ないし相違点(エ)は,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであると言うことができる。
他方,相違点(オ)の上蓋部の態様の違いに関して,まず深さの違いについてはいずれもありふれた態様であって特徴のないものであり,次に開口のためにステイオンタブを備えることも,この種物品分野においては当然であって,そしてステイオンタブの形状についても,引用意匠の図面上に何も表されていないとしても,この種物品分野においては通常使用されているものであるから,これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。

(3)両意匠の類否判断

上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については一致するものの,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,相違点(ア)及び相違点(エ)が類否判断に及ぼす影響は大きく,また,相違点(イ)及び相違点(ウ)が類否判断に及ぼす影響は小さく,相違点(オ)が類否判断に及ぼす影響は微弱であるものの,相違点(イ),相違点(ウ)及び相違点(オ)が相違点(ア)及び相違点(エ)と相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

(4)小括

以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。


2.その他の審理

(1)審理結果

当合議体が,先行意匠調査等を行った結果をもとに,当審がさらに審理した結果,以下のとおり判断した。

(a)本願意匠は,「上端に1段,下側に2段の,計3段の同幅の面が現れる」という,本意匠の特徴点を持ち合わせていないという理由で,出願時に本意匠として願書に記載されていた,意願2012-1683(意匠登録第1479037号)の意匠(別紙第3参照)とは類似していないものと認められる。

(b)胴部の表面には上方に1本,下方に2本,合計3本の水平方向の溝部を設け,この溝部によって4つに分割して現れた面のうち,胴部の上下端に位置する領域の割合が等しい点で共通感があるという理由で,本願意匠と意願2013-17193(不服2014-11587)(別紙第4参照)の意匠とは類似するものと認められる。

(2)手続補正書

上記の審理結果を受けて,審判請求人は平成27年1月6日の手続補正書の提出によって,願書に記載した「本意匠の表示」欄を削除する補正を行った。また,審判請求人は意願2013-17193に対しても,同日に本意匠を本願に変更する補正を行った。

(3)小括

よって,本願意匠は,意匠登録を受けることができるものとなった。


第4 むすび

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。


よって,審決のとおり結審する。
別掲
審決日 2015-01-16 
出願番号 意願2013-17192(D2013-17192) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 並木 文子 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 綿貫 浩一
江塚 尚弘
登録日 2015-02-20 
登録番号 意匠登録第1519768号(D1519768) 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 

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