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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D3
管理番号 1297223 
審判番号 不服2014-16006
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-12 
確定日 2015-02-17 
意匠に係る物品 天井じか付け灯 
事件の表示 意願2013- 22653「天井じか付け灯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,意願2013-22652を本意匠とする平成25年(2013年)9月27日の関連意匠の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を,願書の記載によれば「天井じか付け灯」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,願書の記載によれば,「カバーには,装飾リングが取り付けられている。この装飾リングは,B-B線部分拡大断面図に示すように,フランジ状の部品と,これに取り付けられた細い金属光沢色のリング状の部品とによって構成されている。」としたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,以下の意匠である(別紙第2参照)。
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2012年10月19日に
受け入れた「Design Lighting 2012-2013
RESIDENCE SUITE」第30頁所載
天井じか付け灯の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC24019387号)

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「天井じか付け灯」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「天井じか付け灯」であるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。

2 両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,引用意匠の図面の向きを本願意匠の図面の向きに合わせて認定する。
(1)共通点
両意匠には,基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。
(A)基本的構成態様について
全体が,基台部と透光性を有するグローブ部から成る略円盤形状であって,グローブ部の外形は,正面から見て円形である。
また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。
(B)グローブ部の正面の形状について
グローブ部の正面が,前方に膨らむ緩やかな凸球面状である。
(C)装飾リング部の構成態様について
正面から見て,グローブ部の外側に円環状の装飾リング部が設けられ,その装飾リング部の外周付近が前方にやや盛り上がって,その盛り上がり部が正面視ごく細い円環状に表されている。盛り上がり部は略金属光沢色調であり,盛り上がり部を除く装飾リング部は透明である。

(2)差異点
一方,両意匠には,具体的態様として,以下の差異点が認められる。
(ア)装飾リング部について
(ア-1)盛り上がり部を除く形状について
本願意匠の盛り上がり部を除く装飾リング部の形状は,断面視略クランク状であり,前方側に屈曲した部分が断面視約45°に傾いたグローブ部側面の中間に当接している。これに対して,引用意匠では,盛り上がり部を除く装飾リング部がグローブ部の後方にどのように連続しているか不明である。
(ア-2)盛り上がり部の形状について
本願意匠の盛り上がり部は,断面視略倒コ字状であって,そのコ字状の上辺と下辺に相当する箇所の厚みが,装飾リング部の前方と後方に向けての盛り上がりを形成している。これに対して,引用意匠の盛り上がり部は断面が略下向きの略三角形状であり,その略三角形状突出部が装飾リング部の前方に向けての盛り上がりを形成している。
(ア-3)盛り上がり部が占める比率について
正面から見て,盛り上がり部を除く部分と盛り上がり部の幅の比率は約5:1であるが,引用意匠のその比率は約2:1である。
(ア-4)正面から見た形状について
正面から見て,本願意匠の装飾リング部はグローブ部の直径の約1/15の幅を持つが,引用意匠の装飾リング部では約1/24である。
(ア-5)背面から見た形状について
背面から見て,本願意匠の装飾リング部は,外周付近に上記の後方に向けての盛り上がり部がごく細い円環状線として表されているが,引用意匠では,その盛り上がり部の有無を含めて,背面の具体的形状は不明である。
(イ)グローブ部の側面について
本願意匠のグローブ部の側面は,上端付近を除いて大部分が装飾リング部で覆われており,上端付近の形状は後方にいくにつれて約45°の傾きで傾斜しているが,引用意匠のグローブ部の側面の具体的形状は不明である。
(ウ)基台部の形状について
本願意匠の基台部は,平面から見て,グローブ部の直径よりも横幅の小さい突出部がグローブ部の上方に表れて,その突出部の上側に,さらに横幅の小さい突出部がある。また,背面から見て,基台部の中央には取り付け部材が略縦長矩形状に形成されている。これに対して,引用意匠の基台部の形状は不明である。
(エ)グローブ部の構成について
本願意匠のグローブ部の直径と高さ(厚さ)の比率は約6.5対1であるが,引用意匠のその比率は不明である。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

2 天井じか付け灯の意匠の類否判断
天井じか付け灯を看者が観察するに当たっては,主として正面及び正面斜め方向からその天井じか付け灯を眺めるので,看者は正面と側面の態様を特に観察することになる。また,装飾リング部は,看者が天井じか付け灯を見上げたときに,その周囲の目立つ部位にあることから,看者は装飾リング部の形状に対しても注意を払うことになる。したがって,天井じか付け灯の意匠の類否判断においては,上記の項目を特に評価し,かつそれ以外の項目も併せて,各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。

3 形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A)及び(B)で指摘した,基台部とグローブ部が一体となった略円盤形状である基本的構成態様,及び凸球面状であるグローブ部の態様については,天井じか付け灯の物品分野において,本願の出願前に既に見受けられることから,看者の注意を惹くものとはいえない。また,共通点(C)で指摘した,グローブ部外側の円環状装飾リング部や,その装飾リング部の外周付近が前方にやや盛り上がって略金属光沢色調に表され,盛り上がり部を除く装飾リング部が透明である意匠も,天井じか付け灯の物品分野においては本願の出願前に既に見られる(例えば,特許庁意匠課公知資料番号第HC20025952号。別紙第3参照。)ので看者が特に注目するものとはいい難い。したがって,共通点(A)ないし(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

4 形態の差異点の評価
一方,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(ア-1)及び(イ)で指摘した,本願意匠のグローブ部の側面が約45°に傾いている形状と,本願意匠の装飾リング部が断面視略クランク状であって前方側に屈曲した部分がそのグローブ部側面の中間に当接している形状は,装飾リング部後方やグローブ部側面の形状が不明な引用意匠に比して,看者に異なる印象を与えるものであり,側面から見ても本願意匠の装飾リング部の形状が長さの異なる2つの細い縦長矩形の重なりとしてはっきりと認識できるものであること,及びグローブ部側面や装飾リング部が天井じか付け灯の目立つ部位にあることを考慮すると,差異点(ア-1)及び(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点(ア-2)は,正面及び正面斜め方向から看取される装飾リング部外周付近の盛り上がり部の形状に関する差異であって,断面が略下向きの略三角形状である引用意匠の盛り上がり部の形状と比較して,本願意匠の盛り上がりは断面視略倒コ字状であるから,そのコ字状下辺は平坦であり,看者に異なる美感を呈しているというべきであるから,差異点(ア-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,差異点(ア-3)で指摘した,盛り上がり部を除く部分と盛り上がり部の幅の比率が約5:1であるか約2:1であるかの差異は,はっきりと視認される差異であって,天井じか付け灯を正面方向から眺める看者により常に看取される差異であるから,この差異は両意匠の美感に変化を加えているというべきであり,差異点(ア-3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方,差異点(ア-4)で指摘した,装飾リング部の幅のグローブ部の直径に占める比の差異については,天井じか付け灯の物品分野においては,装飾リング部の幅について様々な長さを持つものが見受けられるので,看者がその比の差異に特に注視するとはいい難く,また,差異点(エ)で指摘したグローブ部の直径と高さの比率の差異についても同様であるから,差異点(ア-4)及び(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また,差異点(ア-5)及び(ウ)で指摘した,背面から見た装飾リング部及び基台部の形状の差異については,背面側という目立たない部位に関する差異であって,本願意匠の装飾リング部背面に見られる円環状線がごく細いものであること,及び本願意匠の基台部中央の取り付け部材もありふれたものであることを踏まえると,看者が特段注視する差異であるとはいい難いので,差異点(ア-5)及び(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると,差異点(ア-1)ないし(ア-3)及び(イ)は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,差異点(ア-4)及び(ア-5)並びに(ウ)及び(エ)の影響が小さいものであるとしても,両意匠の差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。

5 小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,両意匠の形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいのに対して,差異点は総じて両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいので,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-02-04 
出願番号 意願2013-22653(D2013-22653) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 朝康 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 小林 裕和
綿貫 浩一
登録日 2015-02-27 
登録番号 意匠登録第1520615号(D1520615) 
代理人 吉田 稔 
代理人 田中 達也 
代理人 臼井 尚 
代理人 鈴木 泰光 

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