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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D4
管理番号 1298267 
審判番号 不服2014-17227
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-29 
確定日 2015-03-04 
意匠に係る物品 温風暖房機 
事件の表示 意願2013- 5024「温風暖房機」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成25年(2013年)3月7日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を,願書の記載によれば「温風暖房機」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,願書の記載によれば,「物品の表面部に表された細線は,いずれも物品の立体表面の形状を表す線である。」としたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,以下の意匠である(別紙第2参照)。
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2009年 8月 4日
受入日 特許庁意匠課受入2009年 8月 7日
掲載者 ダイニチ工業株式会社
表題 NEWS RELEASE 新製品情報
掲載ページのアドレス http://www.dainichi-net.co.jp/company/news/news-2009-06-23-fh2009.pdf
に掲載された「温風暖房機」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ21019664号)

なお,平成26年1月6日付けの拒絶理由通知書で記載された,
「表題 http://www.dainichi-net.co.jp/company/news/news-2009-06-23-fh2009.pdf」は,上記の誤りと認められる。
また,引用意匠の製品番号は,上記URLによれば,「FW-325NE」(又はそれより一回り大きい型の「FW-435NE」)であり,ダイニチ工業株式会社のインターネットサイト「取扱説明書ダウンロード」(URL:http://www.dainichi-net.co.jp/support/manual/)からダウンロード可能な「DAINICHI取扱説明書 FW-325NE FW-435NE」(この取扱説明書の抜粋は別紙第3参照。)によれば,引用意匠の奥行き方向の厚みや,平面の蓋部が表されている。

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「温風暖房機」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「温風暖房機」であるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。

2 両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。
(1)共通点
両意匠には,基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。
(A)基本的構成態様について
全体が,厚みのある略縦長直方体状の本体の底面に置台を設けて一体としたものであって,正面から見て,本体上部に横長の操作パネル部を設けて,中央やや下方にほぼ横一杯に温風吹出口を配して,本体平面右方には略矩形状の蓋部が形成されたものである。
また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。
(B)本体正面左右の面構成について
本体正面左右には,後方に傾いたテーパー面(以下「左右テーパー面」という。)が形成されており,左右テーパー面の境界によって形成される縦長の面取り線が本体正面左右寄りに,温風吹出口をまたいで垂直状に表されている。
(C)温風吹出口とその周囲の態様について
正面から見て,温風吹出口は全体が略角丸横長長方形状で開口されており,上下方向に複数の水平状仕切り板(ルーバ)が温風吹出口の開口部横幅全幅にわたって配されて,温風吹出口の内側後方左半部には燃焼確認窓が設けられている。また,温風吹出口の周囲はテーパー状に面取りされており,上下のテーパー面の幅が左右のテーパー面の幅よりも大きく表されている。
(D)操作パネル部の態様について
操作パネル部は略扁平逆台形状であって,下端が僅かに下方向に膨らんでおり,操作パネル部内部中央には略横長長方形状の表示部が配されて,その右方には2つの円形ボタン部が配されて,左方には3つの円形ボタン部が配されている。
(E)置台及び本体正面下端寄りの態様について
置台は,左右幅及び奥行き幅が本体よりもやや大きい略薄皿状に形成されており,置台に連なる本体正面下端寄りの部分には,テーパー状の傾斜面が形成されている。
(F)本体側面部の態様について
本体側面部上部に,手掛け部が形成されている。

(2)差異点
一方,両意匠には,具体的態様として,以下の差異点が認められる。
(ア)操作パネル部周囲の形状について
本願意匠では,操作パネル部の周囲がごく幅狭のテーパー面状に形成されて,本体正面の平坦面に連続しているのに対して,引用意匠では,操作パネル部の周囲に浅い凹み部がやや幅広に形成されており,その凹み部がそのまま本体平面に回り込んで表されている。
(イ)操作パネル部の形状
本願意匠の操作パネル部上端は水平であるが,引用意匠のそれは凸弧状に表されている。
(ウ)操作パネル部内部の構成態様について
(ウ-1)本願意匠の操作パネル部内部には,中央の表示部が上下に若干の余地部を残してほぼ縦一杯に表されているのに対して,引用意匠の表示部は,操作パネル部内部の中央上部に形成された略扁平逆台形状区画部の内部に表されている。
(ウ-2)本願意匠では,表示部の左右に,縦幅を表示部の縦幅と同じくする縦長ボタン部が近接して配されて,縦長ボタン部の左右に垂直分割線が表されているが,引用意匠にはそのような縦長ボタン部や垂直分割線はなく,上記略扁平逆台形状区画部内の左右と,その下方に,略横長長円形状のボタン部が複数配されている。
(ウ-3)本願意匠では,表示部左方にある3つの円形ボタン部が中央やや上に配されているのに対して,引用意匠では,それが下端寄りに配されている。
(エ)左右テーパー面及び面取り線の形状について
本願意匠の左右テーパー面の幅は引用意匠のそれに比べて大きく,本願意匠の面取り線は引用意匠のそれに比べて明瞭に表されている。また,本願意匠の面取り線は,本体上部が僅かに後方に傾斜しているので,本体上部位置の面取り線が左又は右に傾いて表されているが,引用意匠ではそのような面取り線の傾きはない。
(オ)本体平面の形状について
本願意匠の本体平面は正面視水平状に表れているが,引用意匠の本体平面は正面視僅かに凸弧状に上方に膨らんでいる。
(カ)本体正面下端寄りの形状について
本願意匠において,本体正面下端寄りのテーパー状傾斜面の上端は水平状に表れているのに対して,引用意匠では,その上端は僅かに凸弧状に下方に膨らんでいる。
(キ)温風吹出口のルーバについて
本願意匠のルーバの数は3つであり,それによって温風吹出口が上下4分割されているのに対して,引用意匠のルーバの数は4つであり,温風吹出口が上下5分割されている。
(ク)手掛け部の形状について
本願意匠の手掛け部は,側面視2重線状の矩形枠として表され,その矩形枠は側面とほぼ面一致状に形成されているが,引用意匠の手掛け部は,正面視略1/4円弧状に突出した上部と,開口した下部の2つから成るものである。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

2 温風暖房機の意匠の類否判断
温風暖房機を看者が観察するに当たっては,主として底面及び背面を除く4方向からその温風暖房機を眺めるので,看者は正面,左右側面及び平面の連続の態様,面構成を常時観察することになり,また,操作を行う際には,看者は操作パネル部の形状やその内部の構成態様についても注意を払うことになる。したがって,温風暖房機の意匠の類否判断においては,上記の項目を特に評価し,かつそれ以外の項目も併せて,各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。

3 形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A)ないし(C)で指摘した,厚みのある略縦長直方体状の本体正面上部に横長の操作パネル部を設け,中央やや下方にほぼ横一杯に温風吹出口を配した基本的構成態様や,本体正面に左右テーパー面と垂直状面取り線を形成し,温風吹出口に複数のルーバを配して,その周囲をテーパー状に面取りした態様については,温風暖房機の物品分野において,本願の出願前に既に見受けられることから,看者の注意を惹くものとはいえず,また,共通点(D)で指摘した,操作パネル部内部中央に略横長長方形状の表示部を配して,その右方に2つの円形ボタン部を配した態様や,共通点(E)及び(F)で指摘した本体正面下端寄りの傾斜面や側部の手掛け部もありふれていることから,看者の注意を惹くものとはいえない。したがって,共通点(A)ないし(F)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

4 形態の差異点の評価
一方,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(ア)は,本願意匠に見られる,操作パネル部周囲の浅い凹み部の有無についての差異であり,温風暖房機を正面方向及び平面方向から眺める看者により常に看取される差異であるから,この差異点は両意匠の美感を異にするというべきであり,差異点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点(ウ)は,操作を行う際に看者が注意を払う操作パネル部内部の構成態様についての差異であり,特に,中央の目立つ位置にある表示部が縦一杯に表されているか,略扁平逆台形状区画部の内部に表されているかの差異,及び表示部左右の縦長ボタン部や垂直分割線の有無の差異は,看者の目に付く差異であるというべきであり,また,本願意匠に見られる,縦長ボタン部の縦幅が表示部の縦幅と同じである形状特徴は,看者に対してまとまった一つの美感を呈しているというべきであるので,差異点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,差異点(エ)で指摘した,本願意匠の左右テーパー面の幅の大きさや面取り線の明瞭さは,引用意匠に比べてはっきりと視認される差異であって,温風暖房機を正面方向から眺める看者により常に看取される差異であるから,この差異点は両意匠の美感に変化を加えているというべきであり,差異点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
さらに,差異点(オ)及び(カ)で指摘した,引用意匠に見られる,凸弧状に膨らんだ本体平面形状と,本体正面下端寄りのテーパー状傾斜面の上端形状が,差異点(イ)で指摘した,引用意匠の操作パネル部上端が凸弧状に表されている点とあいまって,本願意匠と比較して引用意匠の本体正面上端と下端寄りが丸みを帯びた印象を看者に与えることとなる。したがって,差異点(イ),(オ)及び(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方,差異点(キ)で指摘した,温風吹出口のルーバの数の差異は,3本と4本の差が看者に別異の美感を与える程であるとはいい難く,また,差異点(ク)で指摘した,手掛け部の形状の差異についても,手掛け部の意匠全体に占める面積が小さいこと,及び側面とほぼ面一致状で突出のない2重線状の矩形枠である手掛け部も,上部が正面視略1/4円弧状に突出した手掛け部も本願の出願前に既に見受けられることを踏まえると,看者が特段注視する差異であるとはいい難いので,差異点(キ)及び(ク)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると,(ア)ないし(カ)の差異点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,差異点(キ)及び(ク)の影響が小さいものであるとしても,両意匠の差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。

5 小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,両意匠の形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいのに対して,差異点は総じて両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいので,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-02-02 
出願番号 意願2013-5024(D2013-5024) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 小林 裕和
綿貫 浩一
登録日 2015-03-20 
登録番号 意匠登録第1521863号(D1521863) 

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