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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B1
管理番号 1300590 
審判番号 不服2014-22820
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-09 
確定日 2015-04-14 
意匠に係る物品 ベスト 
事件の表示 意願2013- 24832「ベスト」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成25年(2013年)10月25日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「ベスト」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付された写真に現されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠は,特許庁が昭和56年(1981年)12月16日に公開した公開実用新案公報記載,実開昭56-170208号(考案の名称,「ショール」)の第1図乃至第3図に示されたショールの意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は「ベスト」であって,引用意匠は,「ショール」であるが,両意匠は,いずれもショールのような大判の布に腕を通す孔部を設けてベストのように装着するものであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
なお,両意匠の形態を同じ方向から対比するため,引用意匠を本願意匠の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定,対比する。

(1)共通点
(A)全体を,略布状からなる平面視大判の略円形状とし,その上下略中央の左右の縁から等距離に左右対称状に,中央に間隔をおいて配置された,腕を通すための孔部(以下,この部分を「孔部」という。)を設け,孔部に腕を通して背中側の首寄りの部分で二つに折り返して外側の丈を短めにして,ベストとして装着することができるものである点,
(B)孔部は,同形同大の縦長状で,上下が略円弧状となっている点,
において主に共通する。

(2)差異点
(ア)全体の外形状について,本願意匠は,平面視上方寄りがやや狭い略おむすび型の変形円形状であるのに対して,引用意匠は,ほぼ正円形状である点,
(イ)外縁部について,本願意匠は,細幅で暗色の縁部を設けているのに対して,引用意匠は,ニット状の幅広の縁部を外縁部に設け,さらにその外周に外縁部の幅と同程度の長さの房状のフリンジ部を放射状に設けている点,
(ウ)表面の態様について,(ウ-1)本願意匠は,全体が布製で,平面側の上方寄り約2/5の位置から下と底面側の下方寄り約2/5の位置から下を起毛部とし,装着したときに起毛部の殆どが内側になるように縫合し,起毛部とその他の部分との境界線が水平方向の縫合線として表されているのに対して,引用意匠は,中央部の材質が明確ではないが,外縁部はニット状で,縫合線を有していない点,(ウ-2)本願意匠は,全体が青色の明暗で2分した構成で,平面側の上方寄り約2/5の位置から下と底面側の下方寄り約2/5の位置から下をやや明るい青色とし,その他の部分をやや暗い青色とし,装着したときにやや明るい青色が内側になるように縫合しているのに対して,引用意匠は,色彩がなく明暗の違いも有していない点,
(エ)孔部の形状について,本願意匠は,極細幅で縦長の長円形状であるのに対して,引用意匠は,本願意匠のものより短めの縦長楕円形状である点,
(オ)孔部の位置について,本願意匠は,やや上寄りの位置に形成しているのに対して,引用意匠は,上下中央部分に形成している点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成であるが,略布状からなる平面視大判の略円形状とし,その上下略中央の左右の縁から等距離に左右対称状に,中央に間隔をおいて配置された,孔部に腕を通して背中側の首寄りの部分で二つに折り返して外側の丈を短めにして,ベストとして装着することができるものは,この種の物品分野においては両意匠以外にも多数見られるもので,ありふれた態様といえるものであって,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
次に,共通点(B)についても,同形同大の縦長状で,上下が略円弧状となっている態様が共通しているが,この点についても,他の意匠にも見られる,さほど特徴のない,ありふれた態様であり,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に及ぼす影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。

これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,差異点(ア)の外形状については,本願意匠の外形状は,平面視上方寄りがやや狭い略おむすび型の変形円形状で,特徴的なものであるのに対して,引用意匠は,特徴のないほぼ正円形状であり,両意匠は明確に区別できるものであって,外形状の差異が両意匠の類否判断に与える影響は無視することができない。
次に,差異点(イ)については,外縁部については,本願意匠の態様は,細幅で暗色の縁部で,さほど特徴的といえるものではないが,引用意匠の態様は,ニット状の幅広の縁部を外縁部に設け,さらにその外周に外縁部の幅と同程度の長さの房状のフリンジ部を放射状に設けた特徴的な態様であり,使用時に需要者の注意を強く惹く外縁部の態様が明らかに異なるものであって,需要者に与える全体の印象を異ならせるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
そして,差異点(ウ)について,差異点(ウ-1)の材質については,実際に装着する場合には,使用者にとって使い勝手を左右する点で,需要者の注意を惹く部分といえ,本願意匠は,平面側の上方寄りと底面側の下方寄りを起毛部として,その他の部分との違いを設け,装着したときに起毛部の殆どが内側になるように縫合し,起毛部とその他の部分との境界線が水平方向の縫合線として表されている特徴的な態様としており,材質の違いや縫合線を有していない引用意匠の態様とは,明らかに印象が異なるもので,差異点(イ)の外縁部の差異と相俟って,需要者に別異な印象を与えるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。また,差異点(ウ-2)の色彩や明暗についても,見た目を左右する点で,需要者の注意を惹く目立つ差異といえ,本願意匠は,全体が青色の明暗で2分した構成で,平面側の上方寄りと底面側の下方寄りをやや明るい青色として,その他の部分との明暗の違いを設け,装着したときにやや暗い青色が外側になるように縫合し,装着時に正面から内側のやや明るい青色が見えるように表されている特徴的な態様としており,色彩がなく明暗の違いも有していない引用意匠の態様とは,明らかに見た目の印象が異なるもので,それは,この種の物品分野において顕著な差異といえるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
さらに,差異点(エ)及び差異点(オ)については,孔部は,使用時に需要者が腕を通す部分であって,大きな関心を持つ部分といえるものであり,いずれもありふれた態様といえるものではあるが,極細幅で縦長の長円形状でやや上寄りの位置である本願意匠の態様は,それより短めの縦長楕円形状で上下中央部分に孔部を形成している引用意匠とは,明らかに態様が異なり,需要者に別異な印象を与えるものであり,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。

以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-03-31 
出願番号 意願2013-24832(D2013-24832) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木本 直美 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
斉藤 孝恵
登録日 2015-05-01 
登録番号 意匠登録第1525517号(D1525517) 
代理人 黒住 智彦 
代理人 森 廣三郎 
代理人 木村 厚 
代理人 森 寿夫 

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