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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1300593 
審判番号 不服2014-19882
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-02 
確定日 2015-04-22 
意匠に係る物品 携帯情報端末 
事件の表示 意願2013- 10634「携帯情報端末」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2013年2月22日の大韓民国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成25年(2013年)5月15日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「携帯情報端末」とし,物品に表示される,物品の操作の用に供される画像の部分について意匠登録を受けようとするものであって,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするもので,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由と引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当する(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)としたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,平成24年(2012年)11月5日に特許庁発行の意匠公報記載,意匠登録第1454540号(意匠に係る物品,携帯情報端末)の意匠(正面図の表示画面内の画面明るさ状態表示部)である。(以下引用意匠の本願意匠部分に相当する部分を「引用意匠部分」という。)(別紙第2参照)

第3 本願意匠と引用意匠の対比
本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)を対比すると,両意匠は,意匠に係る物品が,共に「携帯情報端末」で,一致する。

本願意匠部分と引用意匠部分(以下,「両意匠部分」という。)の用途・機能については,
本願意匠部分が,ディスプレイの輝度を調整する機能を発揮できる状態にするための操作に用いられる画像であり,スライダーを指又はスタイラスペンで動かすことによって操作を行うものであり,
引用意匠部分は,情報端末の動作環境を表示する動作環境表示ウィンドウ内の画面明るさ状態表示の画像であり,タッチパネル式の表示部(内の画面明るさ状態表示部のスライダー)をタッチして操作するものであり,両意匠部分の用途・機能は,共通する。

両意匠部分の位置・大きさ及び範囲については,
本願意匠部分は,ハンディ型の携帯情報端末の縦長長方形画面上方に位置する,その横幅を縦長長方形画面の横幅全幅とした縦横比が約1:7程度の横長細帯状区画領域であり,
引用意匠部分は,タブレット型の携帯情報端末の横長長方形画面の右端の縦中央部やや下方に,動作環境表示ウィンドウの一部として位置する,その横幅を横長長方形画面の横幅の約3分の1程度とした,縦横比が約1:6程度の横長細帯状区画領域であり,
両意匠部分の位置及び範囲は相違するが,大きさについては,両意匠の意匠全体の大きさ(ハンディ型の携帯情報端末とタブレット型の携帯情報端末)の違いを考慮すると,両意匠部分の大きさは概ね同程度である。

両意匠部分の形態については,主として以下のとおりの共通点及び相違点がある。

まず,共通点として,
(A)横長細帯状区画に,この区画が画面の輝度(明るさ)を調整する部位であることを示す光源を摸した小円形状の表示部(以下「光源模様表示部」という。),輝度調整をするための円形状のスライダー(図面において破線で表された意匠登録を受けようとする部分以外の部分)の付いた,設定輝度がどの程度であるかを視覚的に表示する細棒状のスライドバー,正方形状のチェックボックスと「Auto」の文字(正方形状及び文字共に,図面において破線で表された意匠登録を受けようとする部分以外の部分である。)を配置しており,光源模様表示部は横長細帯状区画の左端寄りに,スライドバーは中央やや左寄りに,チェックボックスと文字を右端寄りに,それぞれ横長細帯状区画の上下中央位置に,中揃えで相互に間隔をおいて横一直線状に並べている点,
(B)光源模様表示部は,小円形状の外周に8本の短線を放射状に等間隔に配置し,小円形状の内側を明調子部と暗調子部に左右に分割している点,
(C)スライドバーは,円形状のスライダー(意匠登録を受けようとする部分ではない部分)によって分かれる左右の区画の明暗調子を異なる調子としていて,スライダーを左右に動かすことにより,スライダー位置の左側の明暗調子部の長さが変化するもので,スライドバーの長さは横長細帯状区画の長さの半分より長く,太さは光源模様表示部の小円形状の直径の3分の1程度のごく細幅のものとしている点,
がある。

一方,相違点として,
(あ)光源模様表示部の小円形内の明暗の具体的態様について,
本願意匠は,左右の明暗の幅が,スライダーの左右の動きに連動して,スライドバーの明暗の幅の変化(比率)と同様に変化するのに対して,
引用意匠は,明暗の幅は,左右に二等分された(幅の変化があるものとは認められない)態様である点,
(い)スライドバーの具体的態様について,
本願意匠は,明暗調子については,光源模様表示部の明暗調子と同じ側を同じ調子,すなわち,明調子の横長細帯状区画内にあって,どちらも左側を暗調子(厳密には中間調子)部,右側を明調子部として,その長さを,バーの太さの40倍強程度の,横長細帯状区画の長さの10分の6弱としているのに対して,
引用意匠は,明暗調子については,光源模様表示部の明暗調子とは異なる中間調子であり,かつスライダーの左右では左側を右側よりも僅かに暗い調子として,その長さを,バーの太さの30倍弱程度の,横長細帯状区画の長さの10分の5強としている点,
がある。

第4 当審の判断
これらの共通点と相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を,意匠全体として比較し,判断する。

両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分の用途及び機能も共通しており,また,部分意匠としての大きさについても,概ね同程度のものである。
一方,部分意匠としての位置及び範囲は前述のとおり異なっているが,両意匠部分の位置及び範囲は,どちらもこの種物品においてごくありふれた位置であり,範囲であるから,それらの相違が類否判断に及ぼす影響はほとんどないと言える。

両意匠の形態については,以下のとおりである。
共通点(A)の光源模様表示部を横長細帯状区画の左端寄りに,スライドバーを中央やや左寄りに,それぞれ横長細帯状区画の縦中央位置に中揃えで相互に間隔をおいて横一直線状に並べた点は,全体の基本構成に関する共通点であるが,この構成自体は,この種物品の動作環境の設定操作画像の配置態様として例示するまでもなくごく普通の構成であるから,共通点(A)が類否判断に及ぼす影響を大きいと言うことはできない。
共通点(B)の,光源模様表示部は小円形状の外周に8本の短線を放射状に等間隔に配置した態様は,視覚的に捉えやすく,看者にも共通の印象を与えるものであるが,この光源を想起させる図形自体は,画面の明るさ輝度を調整する部位であることを端的に示す図形として,本願出願前から広く用いられているごくありふれたものである。そして,その小円形状の内側を,明調子部と暗調子部に左右に分割した点については,後述する相違点(あ)の本願意匠の該部は変化するものであり,一方引用意匠は,明暗に二等分された図のみが表されていて,この明暗の態様は変化するとは認められないものである点を除いた共通点であり,両意匠部分が,共に小円形状の内側を,明調子部と暗(又は中間)調子部に左右に分割したものであることは,本願意匠の具体的な態様の一部(本願意匠の変化態様の一過程の態様)が共通しているとは言えても,変化を伴う,伴わないという大きな相違の中にあっては,極めて微細なものにすぎないから,共通点(B)が類否判断に及ぼす影響は小さいと言わざるを得ない。
共通点(C)の,スライドバーのスライダー位置の左右区画を明暗の異なる調子として表し,スライダーを左右に動かすことによって,その左右の明暗調子部の長さが相対的に変化する態様は,この種物品の動作環境の設定操作画像として,ごくありふれたもので,その長さと太さも,ごく細いすっきりした形状として共通の印象を与えるものの,この種物品の動作環境設定画像において採用されることの多い,ごくありふれたスライドバーの形状のうちの1つにすぎないから,共通点(C)が類否判断に及ぼす影響を大きいと言うことはできない。そして,共通点(A)ないし(C)が相俟った効果を勘案しても,共通点全体として,類否判断を支配していると言うことはできない。

一方,光源模様表示部の明暗の態様についての相違点(あ)は,両意匠の類否判断において,大きな影響を及ぼしている。
すなわち,相違点(あ)の光源模様表示部は,横長細帯状区画全体に占める面積は小さいものの,横長細帯状区画内に配置されているのが光源模様表示部とスライドバーの2つしかないうちの,片方の構成要素であり,しかもそれが前述の共通点(B)の評価のとおり,変化の伴わないものであればともかく,変化を伴うものであることから,看者の注意を惹く部位となっている。
そして,その看者の注意を惹く部位における具体的態様におけるこの相違点(あ)は,両意匠部分がともにありふれた図形である,光源を摸した態様として,小円形状の外周に8本の短線を放射状に等間隔に配置した形状という点では共通していても,8本の放射線はいずれも短く目立たないものである一方,光源模様の中心の大部分を占める小円形状の内側の明暗調子について,本願意匠部分は,スライダーを左右に移動させることによるスライドバーの明暗調子の変化と連動させた点に特徴のあるものであって,この具体的な変化の態様は,新規な創作として看者の注意を惹くものと言えるから,相違点(あ)は両意匠部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものと言うべきである。
スライドバーの具体的態様についての相違点(い)は,類否判断に及ぼす影響が大きいとは言えないが,一定程度の影響は及ぼすと言える。
すなわち,両意匠のスライドバーは,その太さと長さの比率及び横長細帯状区画に占める割合等が相違しているとしても,いずれも,横長細帯状区画の中程やや左に位置し,この区画の半分以上の長さを占めており,また,スライダーの左右における明暗調子についても,その相違は,明暗の程度の差という程度にすぎず,この相違は,ごく細くすっきりした形状のスライドバーで,スライダーの左右でその明暗調子を変えた態様であるという両意匠の共通する態様が生み出す印象の中に埋没してしまうから,相違点(い)が類否判断に及ぼす影響を大きいと言うことはできないが,相違点(あ)の連動して明暗調子が変化することと相俟って,類否判断にある程度の影響を及ぼすものとなっていると言える。
そして,相違点全体が生み出す視覚的効果は,それが看者の視覚を捉えやすい新たな動的変化に関するものであるだけに,共通点全体が生む従来から見られる視覚的効果を超えて,看者が,本願意匠を看るときには,光源模様とスライドバーの動きがシンクロしたことによって視線を彷徨わせることとなりながらも同時に遊び心を感じ,引用意匠を看るときには,光源模様は輝度調整であることを示す単なるマークとして認識するのみで短時間で視線から外れて,スライドバーの表示部に視線を集中することとなり,機能重視の印象を受けることとなって,看者が両意匠から受ける印象は大きく異なるから,相違点は全体として両意匠部分の類否判断を支配していると言える。

以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分の用途及び機能も共通し,その大きさも概ね同程度ではあり,両意匠部分の意匠全体に占める位置及び範囲については相違するものの,その位置及び範囲はどちらもこの種物品においてごくありふれたものであるから,それらが類否判断に及ぼす影響はほとんどない。
しかしながら,両意匠部分の形態における相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点全体が生む視覚的効果を凌駕して類否判断を支配しているから,結局,意匠全体として見た場合には,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2015-04-06 
出願番号 意願2013-10634(D2013-10634) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 智加 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 江塚 尚弘
清野 貴雄
登録日 2015-05-29 
登録番号 意匠登録第1527512号(D1527512) 
代理人 志賀 正武 
代理人 渡邊 隆 

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