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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D3
管理番号 1301619 
審判番号 不服2014-21217
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-20 
確定日 2015-05-19 
意匠に係る物品 天井直付け灯 
事件の表示 意願2013- 24219「天井直付け灯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成25年(2013年)10月17日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を,願書の記載によれば「天井直付け灯」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,願書の記載によれば,「参考図1,2について緑色着色部は無色透明の環状樹脂板でなるリング状発光部を表し,赤色着色部は白色透光性の円形状発光部を表しており,照光時にはこれらの発光部が照光する。」としたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,以下の意匠である(別紙第2参照)。
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1476707号
(意匠に係る物品,天井直付け灯)の意匠

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「天井直付け灯」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「天井直付け灯」であるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。

2 両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,引用意匠の図面の向きを本願意匠の図面の向きに合わせて認定する。具体的には,引用意匠の正面図を上下反転させたものを正面図として,引用意匠の底面図を上下反転させたものを平面図として,引用意匠の他の図もそれに倣って認定する。
(1)共通点
両意匠には,基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。
(A)基本的構成態様について
全体が,厚みのある本体部の下面に,透光性を有する発光部を設けて一体としたものであって,本体部と発光部の外形は,平面又は底面から見て円形であり,発光部の直径は本体部の大円錐台形状部の直径よりも大きく,発光部の下面は下方に緩やかに膨出している。
また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。
(B)本体部の態様について
(B-1)正面から見て,大きな円錐台形状部の上に小さな円錐台形状部が形成されており(以下,それぞれ「大円錐台形状部」「小円錐台形状部」という。),大円錐台形状部の高さは小円錐台形状部の高さよりも大きい。
(B-2)電気接続部及びボタン部
平面から見て,小円錐台形状部の上面に,略横長長方形状の電気接続部(シーリングプラグ)が設けられており,その右方には,略変形縦長長方形状のボタン部(「安全ロック解除ボタン」と推認される。)が設けられている。電気接続部は,小円錐台形状部の上面から僅かに上方に突出しており,電気接続部の上面には,左下と右上に略逆L字板状のプラグが突設されている。ボタン部は,正面から見て水平方向に突出している。

(2)差異点
一方,両意匠には,具体的態様として,以下の差異点が認められる。
(ア)本体部と発光部の構成について
小円錐台形状部の高さと大円錐台形状部の高さの比は,本願意匠では約1:2であるのに対して,引用意匠では,約1:5である。また,本願意匠の大円錐台形状部は下端から上端にかけての径が縮小しており,正面視側部が傾斜状に表されているが,引用意匠のその径の縮小は僅かであり,正面視側部の傾斜も僅かである。
(イ)装飾リング部の有無について
本願意匠には,無色透明で環状の装飾リング部が,本体部の下端4方向に設けられたタブ部と発光部に挟まれて固定されているのに対して,引用意匠には,そのような装飾リング部は無い。
(ウ)本体部の形状について
(ウ-1)平面から見て,本願意匠の小円錐台形状部の直径は大円錐台形状部の直径の約1/2であるのに対して,引用意匠では1/2以上であり,小円錐台形状部の占める割合が本願意匠に比べて大きい。また,本願意匠では,大円錐台形状部の上面において,小円錐台形状部を除いた周囲に,平面視略ドーナツ状の略平坦面が形成されているのに対して,引用意匠では,そのような平坦面は形成されておらず,正面から見た小円錐台形状部側部から大円錐台形状部の上端寄りにかけての稜線が,略S字状に表されている。
(ウ-2)電気接続部及びボタン部の態様
平面から見て,本願意匠の電気接続部の幅は,小円錐台形状部の直径よりもやや小さいのに対して,引用意匠ではやや大きくなっている。また,本願意匠のボタン部は,平面視内側稜線と外側稜線が共に弧状に表されており,外側寄りが肉厚に形成されて正面視略L字状に表されているが,引用意匠では,外側稜線のみが弧状に表され,厚みは一定であって略L字状には表されていない。さらに,本願意匠のボタン部は,小円錐台形状部の下端付近に設けられているのに対して,引用意匠のボタン部は,大円錐台形状部の上端付近に設けられている。
(ウ-3)フランジ部,切り欠き部及びスリット部
引用意匠の本体部下端は,フランジ状に広がった部分が形成されており(以下,この部分を「フランジ部」という。),そのフランジ部に近接して,横長の切り欠き部が8個等間隔に設けられており,また,小円錐台形状部の下端から大円錐台形状部の上端にかけて,3列の弧状スリットから成る部分(以下,この部分を「スリット部」という。)が4箇所に等間隔に設けられている。これに対して,本願意匠では,そのようなフランジ部,切り欠き部及びスリット部は無い。
(エ)発光部の形状について
正面から見て,本願意匠の発光部の上端寄りの外周には,垂直平坦面が形成されており,その垂直平坦面のやや内側から下方への膨出面が表されているが,引用意匠には,そのような垂直平坦面はなく,膨出面から左右両端にかけてアール状に連続して,両側上端が本体部下端のフランジ下面のやや内側に当接している。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

2 天井直付け灯の意匠の類否判断
天井直付け灯を看者が観察するに当たっては,主として発光部が表れる底面及び底面斜め方向からその天井直付け灯を眺めるので,看者は底面と正面の態様を特に観察することになる。また,装飾リング部は,看者が天井直付け灯を見上げたときに,その周囲の目立つ部位にあることから,看者は装飾リング部の存在や形状に対して注意を払うことになる。したがって,天井直付け灯の意匠の類否判断においては,上記の項目を特に評価し,かつそれ以外の項目も併せて,各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。

3 形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A)で指摘した,厚みのある本体部の下面に,透光性を有する発光部を設けて一体とし,発光部の直径を本体部の大円錐台形状部の直径よりも大きくして,発光部の下面を下方に緩やかに膨出させた意匠は,天井直付け灯の物品分野において,本願の出願前に既に見受けられることから(例えば,意匠登録第1476593号「屋内用照明器具」の意匠。別紙第3参照。),看者の注意を惹くものとはいえない。また,(B-2)で指摘した電気接続部の共通点についても,上記登録意匠にも見られるありふれたものであり,ボタン部の共通点も,本体部の上面の限られた部分についての共通点であるので,看者の目を特段惹くものとはいえない。したがって,共通点(A),(B-2)及び(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
一方,共通点(B-1)で指摘した,大円錐台形状部の上に小円錐台形状部が連なる本体部の態様については,他の意匠には見られない,両意匠に特有の共通点であるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。

4 形態の差異点の評価
これに対して,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(ア)で指摘した,小円錐台形状部の高さと大円錐台形状部の高さの比の差異は,約1:2と約1:5であるから看者がはっきりと認識できるものであり,大円錐台形状部の径の縮小の程度の差異も,両意匠において面積の大きい大円錐台形状部に関する差異であるから看者が気付く差異であるというべきであり,本体部正面の態様を看者が観察し得ることを踏まえると,差異点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
次に,差異点(イ)は,底面及び底面斜め方向から看取される装飾リング部の有無に関する差異であって,装飾リング部の無い引用意匠と比較して,本願意匠の無色透明で環状の装飾リング部の存在は異なる美感を呈しているというべきであるから,差異点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
さらに,差異点(ウ-1)で指摘した,本願意匠の小円錐台形状部の大円錐台形状部に対する大きさの差や,ドーナツ状の略平坦面の有無の差についても,これらの差異がはっきりと視認される差異であるから,両意匠の美感に変化を加えているというべきであり,差異点(ウ-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,差異点(エ)で指摘した,発光部の形状についての差異も,発光部の形状を看者は使用時に常に観察することから,両意匠の美感を異にしているというべきであり,差異点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方,差異点(ウ-2)の電気接続部及びボタン部の態様についての差異や,差異点(ウ-3)のフランジ部,切り欠き部及びスリット部の有無の差異は,上面側という目立たない部位に関する差異であるか,又は意匠全体に占める面積が小さいことから,看者が特段注視する差異であるとはいい難いので,差異点(ウ-2)及び(ウ-3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると,共通点(B-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの,共通点を総合すると,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいとはいえないのに対して,差異点(イ),(ウ-1)及び(エ)は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,その余の差異点の影響が一定程度に留まるか,又は小さいものであるとしても,両意匠の差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。

5 小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,両意匠の形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいのに対して,差異点は総じて両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいので,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-05-07 
出願番号 意願2013-24219(D2013-24219) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 朝康 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 小林 裕和
正田 毅
登録日 2015-06-19 
登録番号 意匠登録第1529132号(D1529132) 
代理人 大竹 正悟 

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