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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 E0 |
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管理番号 | 1304026 |
審判番号 | 不服2015-2686 |
総通号数 | 189 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-02-12 |
確定日 | 2015-08-03 |
意匠に係る物品 | ペットフード |
事件の表示 | 意願2012- 31931「ペットフード」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,2012年(平成24年)6月29日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成24年(2012年)12月27日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は,「ペットフード」であり,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」ともいう。)は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものである。(別紙第1参照) すなわち,本願意匠は,具体的には,(イ)平面視で左下方縁はやや緩やかな浅めの弧を描き右上方縁はやや角張った深めの弧を描いて成る不規則な曲率によって周縁が形成された,ゆがんだ略横長楕円形の(ロ)厚い板状体としたものであって,(ハ)その全長,奥行き,厚み比率は約4:3:1.2としたものである。 第2 原査定における拒絶の理由 原査定における平成26年4月28日付けで通知した拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,本願意匠の意匠に係る物品は,「ペットフード」であり,「この意匠登録出願に係るペットフードの分野において,全体を種々の周知形状とすることは,例えば意匠1に示すように,本願出願前より極普通に見られるのでありふれた手法であるところ,この意匠登録出願の意匠は,全体を周知の略円柱状としたに過ぎないため,容易に意匠の創作をすることができたものと認められる」というものである。 意匠1(別紙第2参照) 特許庁特許情報課が2001年 9月21日に受け入れた ドイツ意匠公報 2001年 8月10日 第3439頁所載 犬用ガムの意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH13050439号) また,平成26年10月23日付けの拒絶査定においては,「『略円柱』とは,真円形のみならず,楕円形あるいは長円形等を含めた“おおむね円形”の平行な二平面と,これら二平面をつなぐ側面からなる柱体を意味しているところ,本願意匠は楕円形の平行な二平面とこれらの二平面をつなぐ側面からなる『楕円柱』であることから,広義において『略円柱』に含まれます。また,本願意匠は二平面の面積(横幅)高さを考慮すると,分厚い盤体状のものと認められ,柱状とは言い難いという点についても,高さを有するものであることから広義の柱体に含まれ」,「仮に本願意匠が『略円柱』の定義にあてはまらなかったとしても,『楕円柱』も『円柱』もいずれも,その名称をいえば,証拠を出すまでもなく思い浮かべることができることから,『周知の形状』であると言え」ると判断している。 第3 請求人の主張の要点 これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。 1 原審査定は, 意匠法3条2項の適用を誤り(争点1), 意匠法19条 で準用する特許法50条に違背し(争点2)取り消されるべきものである。2 本願意匠の創作容易性について(争点1について) (1)説示事項の認否 拒絶査定における説示事項の内, 「全体の形状を周知形状にする手法は本願出願前から既に知られて」いることの項については,認め,他の説示事項を以下のとおり争う。 (2)本願意匠は,「全体を周知の略円柱状にしたに過ぎないため,容易に創作したもの」について 説示事項にいう,『周知の略円筒形状』とは,如何なる態様をいうのか, すなわち,法律上は普通「証拠を挙げるまでもなく,社会一般に広く知られた略円筒形状」と解せられるところ,右態様は,「(ア)切口が丸い柱。(イ)[数学]長方形の一つの辺を軸としてその長方形を一回転させてできる立体」或いは「(ア)丸い柱。(イ)円柱面とその母線に交わって互いに平行な二平面との三つによって囲まれた立体」というところ,本願意匠の構成態様は,その基本的構成態様においても,i)この楕円状は大小の不規則な凸弧状の曲面により繋がれ,楕円状長手方向の両端がこれと直交する他端に比してかなり幅が広く構成されており,ii)平面から看る側面全体の立体の構成態様が,看る位置すなわち,「正面及び背面側」から看える形状と「左側面及び右側面側」から看える形状とは,幅が異なる上,その側面は相互に異なる歪みのある不規則な歪んだ楕円状の態様となるものである。 したがって,その両者の基本的構成態様において全く異なるといわざるを得ない。 そして,この差異が,当意匠分野の通常の知識を有するものであれば,「『周知の略円柱状』としたに過ぎないから容易に創作できるものである」と認定されたが,本願意匠は,「周知の略円柱状」とは到底言えない以上,創作容易とする根拠はなく,その他その変形性についての創作容易性と判断するに必要な論拠となる何らの証拠を示されていない。 そうとすると,この拒絶理由に示された認定判断は,創作容易性の解釈水準についての根拠がなく,その判断に合理性がなく妥当なものとは到底言えず,結局,本願意匠の具体的構成態様の創作物は,本願独自の変形性を具有する特徴あるもので,他に例を看ないものと言わざるを得ない。 (3)結論 したがって,本願意匠の形態と例示された形態との両者には,その周縁の構成態様において前述のとおり顕著な差異があり,本願意匠の態様はこれ以上に細述するまでもなく引用形態とは異なり,前述の通り,周知の円柱状の形態からは本願の特徴ある周縁の態様を到底構想できないのであって,説示される例示された形態に表したに過ぎないと言えず,右形態により,当業者(この種意匠の分野における通常の知識を有する者)であっても,容易に創作できたものとは言えない,というべきである。 3 争点2について (1)法律上の「周知の事実」の意義 ここで,法律上の争いにおいて,証拠となる「周知の事実」といえども,基本的には提示の必要な通常の事実と基本的に変わることない。すなわち,訴訟手続上,証拠として事実を提示する必要のある場合においても,当事者において「広く知られている事実(周知事実)」は,訴訟経済上,提示義務を負う者は,「具体的にその事実を提示するまでもなく,手続が進行される」が,相手が,その周知事実について「不知である」,或いは「これを争った場合」は,必ずその根拠となる周知事実に該当する具体的事実を証拠として提示する必要がある。 (2)本件について(上述の適用) 本件において,周知の「略円形柱」といえば,出願人の提示した論拠(辞書岩波国語辞典(第6版),広辞苑(第6版))に元づく形態をいうものと解せられる。これに対し「仮に本願意匠が『略円柱』の定義にあてはまらなかったとしても,『楕円柱』も『円柱』もいずれも,その名称をいえば,証拠を出すまでもなく思い浮かべることができることから,「周知の形状」であると言えます。」と観念的に述べるにとどまり,具体的周知形状の事実を提示し得ず,また,「広く知られた楕円柱」について等,全く拒絶理由に何ら示されていない論拠を挙げて,出願人に不利益な拒絶処分をすることは,聴聞制度に基づき,事前に処分理由を示し反論する機会を与えるべきとする基本的な制度運用上の妥当性を欠き,意19条で準用する特50条に違背し,出願人に手続上の不意打ちの不利益を与えるもので,到底了解し得るものとはいえないものである。 (3)結論 よって,拒絶査定の説示事項も,拒絶査定の論拠にはなり得ず,失当であり,本件意匠は独自の特徴を有し,且つ,創作容易な意匠に該当しないものである。 第4 当審の判断 請求人の主張を踏まえ,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠が容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。 1 意匠1 意匠1の意匠に係る物品は「犬用ガム」であり,その形態は,全体は扁平な略円板形状である。具体的には,表面に原材料による濃淡の変化,素材の微細な凹凸が認められる。 2 本願意匠の創作容易性 まず,本願意匠の(イ),(ロ)及び(ハ)からなる形態は,以下の理由により周知であるとはいえない。 いわゆる周知の円柱は,真円形の直柱体(真円柱)である周知の幾何学形状であると解され,「略円柱状」とは,円柱に還元しうる程度の概ね円柱形状の意と解するのが相当であるところ,そもそも,本願意匠の(イ)の不規則にゆがんだ略横長楕円形の形態は,平面視で左下方縁はやや緩やかに浅めの弧を描き右上方縁はやや角張った深めの弧を描いて成る不規則な曲率によって周縁が形成されたものであって,本願意匠の(イ),(ロ)及び(ハ)からなる形態は,規則的な幾何学形状には当てはまらず,例え,原審の「略円柱状」の例示が周知の「楕円柱」を含むものであったとしても不規則な曲率によって平面の周縁が形成された本願意匠を周知の「略円柱状」といい得るものではない。 次に,周知の「略円柱状」又は,「略楕円柱」をもとにありふれた手法に基づく改変を加えて本願意匠が容易に想到し得たものかについて検討すると,本願意匠の(ロ)の厚い板状体とした点は,その厚みについて,ペットフードに適した範囲内で適宜の厚みのものを選択することは,当業者であれば,容易に想到し得るとしても,(イ)の不規則にゆがんだ略横長楕円形の形態は,周知の幾何学形状である円又は,楕円から容易に導き出せたものとはいえず,また,(ハ)の全長,奥行き,厚み比率を約4:3:1.2とした本願意匠の具体的態様は,幾何学形状の楕円柱がその長軸と短軸の比率及びそれらと高さの比率によって様々な態様を取り得る中で前記の具体的比率を成すものであるから容易に導きだせたとはいえないものである。 そうすると,本願意匠の形態は,周知の「略円柱形状」,又は「略楕円柱形状」からそれをもとにして,ありふれた手法に基づき改変を加えて,容易に導き出せたものとはいえない。 したがって,本願意匠は,当業者であれば,容易に創作することができたものということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときに該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-06-26 |
出願番号 | 意願2012-31931(D2012-31931) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(E0)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 平田 哲也、八重田 季江、久保田 麻理 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 清野 貴雄 |
登録日 | 2015-08-21 |
登録番号 | 意匠登録第1533861号(D1533861) |
代理人 | 大川 晃 |
代理人 | 田邉 隆 |