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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) C4
管理番号 1305043 
判定請求番号 判定2014-600052
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2015-10-30 
種別 判定 
判定請求日 2014-11-04 
確定日 2015-09-18 
意匠に係る物品 移動式足踏シャワー 
事件の表示 上記当事者間の登録第1137287号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の図面及びその説明により示された「移動式足踏シャワー」の意匠は,登録第1137287号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 判定請求人の請求趣旨及び請求理由

1 請求趣旨
本件判定請求人(以下,「請求人」という。)は,後述の「イ号図面並びにその説明書に示す意匠(当審注:以下,「イ号意匠」という。)は,登録第1137287号の意匠(以下,「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求める。」と申立て,その理由として,要旨以下「2 請求理由」のとおりの主張をし,証拠方法として次の添付物件を提出した。

【添付物件】
(a)意匠登録原簿
(b)甲号証拠
(c)先行周辺(甲第証)第1号ないし第38号
(d)参考資料1ないし3,6,7,18,20,24,25,27,28,31
(e)イ号図面並びに説明書(当審注:「イ号図面並びに説明書」という名称の添付物件は認められないものの,「タカギアウトドアポンプ正面」,「アウトドアポンプ右側面」,「アウトドアポンプ左側面」との表示を備えた3枚の写真,及び表示のない写真1枚を貼付した書類,及びそれらの写真に現された製品の説明書と推認できる書類が各1ずつ添付されていることから,前者をイ号図面とし,後者を説明書として取り扱うこととする。なお,イ号図面に現された製品の意匠と,説明書に表された意匠は同一の形態ではないが,イ号意匠の形態は,イ号図面によって表されており,説明書はイ号意匠の用途,機能,使用方法について説明するためのものであって,説明書に表された意匠の形態は,イ号意匠の形態ではないと認められる。)
(f)オファーレター
(g)「株式会社タカギ」履歴事項全部証明書

2 請求理由
(1)本件登録意匠の手続の経緯
出願日 平成13年5月8日
登録日 平成14年2月8日
意匠登録第1137287号

(2)イ号意匠の説明
被請求人は平成9年6月から現在まで別紙被請求人製造品目録記載のビーチポンプ装置を業として製造し又は販売し又は販売の申出をしている(甲6-8)(当審注:「被請求人製造品目録」及び「甲6-8」に該当する資料は別添されていない。一方,別添された「先行周辺甲号証第38号」は,タカギ社製アウトドアポンプが2011年4月22日時点でインターネット上で販売されていたことを示しているものと推認できる)。被請求人製品の構造はつぎのようなものである。「ビーチポンプ」という名称の製品である(当審注:「イ号図面並びに説明書」の記載によれば,「アウトドアポンプA122」という名称であると認められる。)。ビーチ以外でも使用可能である。またその「給水用ポリエチレンタンク」は写真を参酌すると上部に取っ手を有していてその内部に水が満たされた状態でも十分に持ち運び可能な20リットル容量のものであることから,被請求人も本件考案と同じく構成要件すべて充足することが明らかである。


第2 被請求人の答弁

当合議体より,被請求人に判定請求書を送付し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,被請求人からの応答はなかった。


第3 当審の判断

1 意匠の認定
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は,平成13年(2001年)5月8日に意匠登録出願(意願2001-17047号)され,平成14年(2002年)2月8日に登録の設定(意匠登録第1137287号)がされたものであって,意匠に係る物品,及びその形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付された図面のとおりとしたものであり(別紙第1参照),具体的には以下のとおりのものと認められる。

ア 意匠に係る物品,並びに用途及び機能
本件登録意匠の意匠に係る物品は,「移動式足踏シャワー」であって,使用者が任意の場所でシャワーを使用可能とするものであり,給水用タンク(以下,「タンク部」という。)に足踏ポンプ(以下,「ポンプ部」という。)にて空気を送り,タンク部内の水を押し上げて放水させるシャワー機能を有するものである。

イ 基本的構成態様
タンク部上面の両端部付近に各1本ずつのホースを合計2本接続し,一方のホースの先端にシャワーヘッド部,他方のホースの先端にポンプ部を設けたものである。

ウ 形態の具体的態様
(ア)タンク部は,正面から見た縦:横:奥行きが約5:6:2となる略直方体状箱体とし,タンク部右側面上側を当該箱体上面より上方まで伸びる傾斜面とし,当該傾斜面上端から左側面側にむかって正面視クランク状の段差を設け,タンク部上面の右側面側が上方に正面視略直角台形状に隆起して形成した(以下,「タンク隆起部」という。)ものであり,このタンク隆起部の上面と面一となるようにタンク隆起部から左側面側方向に水平に延伸させ,そこから下方に鈍角に屈折させてタンク部上面に接続される略棒状体把手部を設けている。
(イ)ポンプ部は,平面視略隅丸縦長矩形状の5つの谷部から成る蛇腹状筒体の上面及び下面に平面視略隅丸縦長矩形状の板体を設けたものであり,上面側板体の上面の背面側部分にタンク部から伸びるホースが接続され,当該ホースが接続された部分に隣接して空気吸入口が設けられ,当該空気吸入口には略逆J字状の管体を配設している。
(ウ)シャワーヘッド部は,ホースとの接続部分から先端側に向かって正面視拡幅する略偏平しずく状肉厚板体状とし,その正面先端側に肉厚円板状の散水部を設けたものである。
(エ)シャワーヘッド部を先端に有するホースとタンク部の接続部分を,タンク部の平面視縦幅の約1/4の長さを直径とする下面開口の略円筒状蓋体としている。
(オ)ポンプ部を先端に有するホースとタンク部の接続部分を,タンク部の平面視縦幅の約3/8の長さを直径とする下面開口の略円筒状蓋体としている。

(2)イ号意匠
イ号意匠の意匠に係る物品,及びその形態は,請求人が判定請求書に添付した「イ号図面並びに説明書」の記載及び写真に現されたとおりのものであり(別紙第2参照),具体的には以下のとおりのものと認められる。

ア 意匠に係る物品,並びに用途及び機能
イ号意匠は,使用者の任意の場所でシャワーを使用可能とするものであり,タンク部上面に設置されたポンプ(以下,「ポンプ部」という。)によって,ポンプ部からタンク部内に伸びた給水ホースを通してタンク部内の水をくみ上げて,一定時間放水させるシャワー機能を有するものであって,意匠に係る物品は,「移動式シャワー」であると認められる。

以下,イ号意匠の形態について,本件登録意匠の向きに合わせて,シャワーヘッド部が設けられた側を左側として認定する(すなわち,「タカギアウトドアポンプ正面」の写真に現された前面側を背面として,上面側を180°反転した平面として,「アウトドアポンプ右側面」の写真に現された側を左側面として,「アウトドアポンプ左側面」の写真に現された側を右側面として認定する)。

イ 基本的構成態様
タンク部上面の一方の端部付近にポンプ部,もう一方の端部付近に注水口カバーを設け,ポンプ部に1本のホースを接続し,そのホースの先端にシャワーヘッド部を設けたものである。

ウ 形態の具体的態様
(ア)タンク部は,正面視横幅が同縦幅よりやや長く,側面視横幅は同縦幅よりやや短くし,タンク部上面の平面視右端付近をタンク部上面よりも低い位置にある右側面上端部まで緩やかな傾斜面とした略直方体状箱体とし,タンク部上面には,平面視縦方向中央に,平面視左端側約2/3を平面視縦幅の約1/2の幅で陥没させ,平面視右端側約1/3をその陥没させた幅より長い直径の略円形状に陥没させた溝部(以下,「タンク溝部」という。)を形成し,タンク溝部の中央に箱体の上面と略同じ高さとなる倒コ字状の棒状体から成る把手部を配設している。
(イ)ポンプ部は,タンク溝部の幅と略同じ長さの直径の略円筒体とし,その周面下端側をやや拡径し,上面には円筒体の直径の約1/2の直径の縦長円柱状の押しキャップが突出するように設けられており,当該円筒体の下側に,下方に向かってしぼませたような形態の部位(以下,「ポンプ接続部」という。)が設けられ,その側面方向にシャワーヘッド部を先端に有するホースとの接続口,及びその水平方向直角となる位置にエアー抜きボタンが配設されている。
(ウ)シャワーヘッド部は,散水板側を正面として見たとすると,握り部を略紡錘状とし,その先端側に握り部の横幅より長い直径の正面視円形状ヘッド部を形成し,側面視形態を電話の受話器のような変形コ字状としている。
(エ)シャワーヘッド部を先端に有するホースが接続されたポンプ接続部とタンク部の接続部分を,タンク部の平面視縦幅の約1/4の長さを直径とする下面開口の略円筒状蓋体としている。
(オ)注水口カバーを,タンク部の平面視縦幅の約1/2の長さを直径とする下面開口の略円板状蓋体としている。

2 本件登録意匠とイ号意匠(以下,「両意匠」という。)との対比
(1)共通点
本件登録意匠の意匠に係る物品は,「移動式足踏シャワー」であり,イ号意匠の意匠に係る物品は「移動式シャワー」であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
また,両意匠は,ともに使用者が任意の場所でシャワーを使用可能とするものであって,ポンプによってタンク部内の水を押し出して,又はくみ上げて放水させるシャワー機能を備えており,用途及び機能が共通する。

(2)相違点
両意匠の相違点を以下に列挙する。
(A)本件登録意匠の基本的構成態様は,タンク部上面の平面視両端部付近に各1本ずつのホースを合計2本接続し,左端側のホースの先端にシャワーヘッド部,右端側のホースの先端にポンプ部を設けたものであるのに対し,イ号意匠の基本的構成態様は,タンク部上面の平面視左端付近にポンプ部,右端付近に注水口カバーを設け,ポンプ部に1本のホースを接続し,そのホースの先端にシャワーヘッド部を設けたものである点が相違する。
(B)本件登録意匠は,タンク部は,正面から見た縦:横:奥行きが約5:6:2となる略直方体状箱体とし,タンク部右側面上側を当該箱体上面より上方まで伸びる傾斜面とし,当該傾斜面上端から左側面側にむかって正面視クランク状の段差を設け,タンク部上面の右側面側が上方に正面視略直角台形状に隆起して形成したものであり,このタンク隆起部の上面と面一となるようにタンク隆起部から左側面側方向に水平に延伸させ,そこから下方に鈍角に屈折させてタンク部上面に接続される略棒状体把手部を設けているのに対し,イ号意匠は,タンク部は,正面視横幅が同縦幅よりやや長く,側面視横幅は同縦幅よりやや短くし,タンク部上面の平面視右端付近をタンク部上面よりも低い位置にある右側面上端部まで緩やかな傾斜面とした略直方体状箱体とし,タンク部上面には,平面視縦方向中央に,平面視左端側約2/3を平面視縦幅の約1/2の幅で陥没させ,平面視右端側約1/3をその陥没させた幅より長い直径の略円形状に陥没させた溝部(以下,「タンク溝部」という。)を形成し,タンク溝部の中央に箱体の上面と略同じ高さとなる倒コ字状の棒状体から成る把手部を配設している点が相違する。
(C)本件登録意匠は,ポンプ部は,平面視略隅丸縦長矩形状の6段から成る蛇腹状筒体の上面及び下面に平面視略隅丸縦長矩形状の板体を設けたものであり,上面側板体の上面の背面側部分にタンク部から伸びるホースが接続され,当該ホースが接続された部分に隣接して空気吸入口が設けられ,当該空気吸入口には略逆J字状の管体を配設しているのに対し,イ号意匠は,ポンプ部は,タンク溝部の幅と略同じ長さの直径の略円筒体とし,その周面下端側をやや拡径し,上面には円筒体の直径の約1/2の直径の縦長円柱状の押しキャップが突出するように設けられており,当該円筒体の下側に,下方に向かってしぼませたような形態の部位(以下,「ポンプ接続部」という。)が設けられ,その側面方向にシャワーヘッド部を先端に有するホースとの接続口,及びその水平方向直角となる位置にエアー抜きボタンが配設されている点が相違する。
(D)本件登録意匠は,シャワーヘッド部は,ホースとの接続部分から先端側に向かって正面視拡幅する略偏平しずく状肉厚板体状とし,その正面先端側に肉厚円板状の散水部を設けたものであるのに対し,イ号意匠のシャワーヘッド部は,散水板側を正面として見たとすると,握り部を略紡錘状とし,その先端側に握り部の横幅より長い直径の正面視円形状ヘッド部を形成し,側面視形態を電話の受話器のような変形コ字状としている点が相違する。
(E)本件登録意匠は,シャワーヘッド部を先端に有するホースとタンク部の接続部分(すなわち,平面視左端側の接続部分)を,タンク部の平面視縦幅の約1/4の長さを直径とする下面開口の略円筒状蓋体としているのに対し,イ号意匠は,シャワーヘッド部を先端に有するホースが接続されたポンプ接続部とタンク部の接続部分(すなわち,平面視左端側の接続部分)を,タンク部の平面視縦幅の約1/4の長さを直径とする下面開口の略円筒状蓋体としている点が相違する。
(F)本件登録意匠は,ポンプ部を先端に有するホースとタンク部の接続部分(すなわち,平面視右端側の接続部分)を,タンク部の平面視縦幅の約3/8の長さを直径とする下面開口の略円筒状蓋体としているのに対し,イ号意匠は,注水口カバーを,タンク部の平面視縦幅の約1/2の長さを直径とする下面開口の略円板状蓋体としている点が相違する。

3 類否判断
両意匠の意匠に係る物品,並びに物品の用途及び機能は共通しているから,以下,両意匠の形態の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響を評価する。

(1)共通点の評価
両意匠は,形態の具体的態様について共通点が見いだすことができず,両意匠の形態の共通点を評価することはできない。

(2)相違点の評価
両意匠の形態は,基本的構成態様及び各部の具体的態様のいずれも相違しており,相違点(A)ないし相違点(F)は,看者に全く別異の印象を与えるものであって,両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいものである。

(3)小括
以上のとおり,両意匠は意匠に係る物品,並びに用途及び機能が共通するものの,その形態については,共通点を見いだすことができず,基本的構成態様及び各部の具体的態様のいずれも相違し,看者に全く別異の印象を与えているものであるから,両意匠は類似しないというほかない。


第4 むすび

以上のとおりであるから,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2015-08-28 
出願番号 意願2001-17047(D2001-17047) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (C4)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 斉藤 孝恵外山 雅暁 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 久保田 大輔
江塚 尚弘
登録日 2002-02-08 
登録番号 意匠登録第1137287号(D1137287) 

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