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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C5
管理番号 1306407 
審判番号 不服2015-5198
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-18 
確定日 2015-08-21 
意匠に係る物品 タンブラー 
事件の表示 意願2014- 6368「タンブラー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成26年(2014年)3月26日に意匠登録出願されたものであり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「タンブラー」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(本願の出願前発行の刊行物に掲載された意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願の出願前に特許庁発行の意匠公報に掲載された意匠登録第1426375号の意匠(以下,「引用意匠」という。)であり,その形態は,同公報に掲載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第3 当審の判断
以下,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)を対比することにより,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行い,本願意匠が,引用意匠に類似するか否かについて判断する。

1.両意匠の共通点及び相違点の認定
(1)両意匠の共通点の認定
意匠に係る物品は,両意匠ともに飲用食器の「タンブラー」であるから一致する。
形態については,主に,以下の(A)ないし(D)の点が共通する。
(A)全体が,全体の高さと口部の径の比率を約2対1,口部の径と底部の径の比率を5対4とする,縦長で下方が窄まった有底略円筒形状とし,
(B)外周面の略下半分の部分は上方へ向けて側面視凹弧状に反って広がっており,
(C)外周面の上半分の部分は側面視凸弧状に緩やかに膨らんでおり,
(D)内周面の口部寄りは上方に向かって外側に傾斜する小さな段差部を経て,上端部寄りを薄く形成している。

(2)両意匠の相違点の認定
形態について,主に,以下の(ア)ないし(オ)の点が相違する。
(ア)外周面の,下半分の部分の側面視凹弧状から上半分の部分の側面視凸弧状に反転する具体的な態様について,本願意匠は,底部から全高の約5分の3上がった位置において明確に反転し(弧状の流れを断ち切るように面が切りかわり),その境界(稜線)が水平な直線として表れ,その直線の直下から周側面が側面視凹弧状にえぐられるように表れているのに対して,引用意匠は,上下方向ほぼ中間の位置において両弧状がその流れのまま滑らかに反転しており,底部から口部にかけて側面視緩やかなS字状を描くように表れている。
(イ)外周面の口部寄りについて,本願意匠は,側面視凸弧状の流れに従い上方内向きに表れているのに対して,引用意匠は,側面視垂直な直線状に表れている。
(ウ)底部について,本願意匠は,凹部に嵌合された部材が,底面視円形状に表れているのに対して,引用意匠は,浅い凹部が底面視円形状に表れている。
(エ)内周面(口部寄りを除く)について,正面図中央縦断面図によれば,本願意匠は,下半部を側面視内向き凸弧状に窄め,上半部を側面視内向き凹弧状の膨らみがあるものとしているのに対して,引用意匠は,内面底部から全高の約5分の1上がった位置までを側面視垂直な直線状とし,その上方を緩やかな側面視内向き凹弧状の膨らみがあるものとしている。
(オ)内面底部中央に,本願意匠は,扁平ドーム状に盛り上がった凸部が形成されているのに対して,引用意匠は,そのような凸部が形成されていない。

2.両意匠の共通点及び相違点の評価
(1)両意匠の共通点の評価
共通点(A)ないし(C)からなる態様は,意匠全体を大まかに捉えたものであり,当該物品分野において,目新しいものではないことから,両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいとは言えない。
共通点(D)は,使用状態において目に着きやすい部分に係るものではあるが,両意匠にのみ見られる特徴ではなく,意匠を全体として見た場合,部分的な共通点に止まるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

(2)両意匠の相違点の評価
相違点(ア)は,外周面の広い範囲に及ぶものであって,目に着きやすく,両意匠における基本的な構成態様の相違と言っても過言ではないことから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点(イ)は,外周面の口部寄りに係る相違であって,両意匠の側面視凸弧状が緩やかであり,引用意匠の外周面上端に表れる垂直な直線部の長さが短いことから,意匠を全体として見た場合,その相違はさほど目立たず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
相違点(ウ)は,使用状態において通常目に触れにくい底部に係るものであって,部分的な相違に止まるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
相違点(エ)は,内周面の相違に係るものであり,平面方向からしか観察することができないことからすると,視覚的には,正面図中央縦断面図に表されている程に明確に認識できるものではないから,軽微な相違に止まり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
相違点(オ)は,内面底部における凸部の有無に係るものであるが,平面方向から視覚的に確認できるとしても,外観として表れにくい部分における相違であり,本願意匠の凸部の物品全体に対して占める割合も小さいものであるから,部分的な相違に止まり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

そうすると,両意匠の相違点は,特に相違点(ア)の与える印象に加えて,その余の相違点(イ)ないし(オ)が相俟って,両意匠に視覚的に異なる印象を与えるものと言える。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については,共通するものの,その形態において,共通点は概括的なものであって,両意匠の類否判断を決するものとはならず,一方,相違点が相俟って生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕するものであって,両意匠に異なる美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するものではない。

第4 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-07-31 
出願番号 意願2014-6368(D2014-6368) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内藤 弘樹 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 正田 毅
江塚 尚弘
登録日 2015-10-02 
登録番号 意匠登録第1536699号(D1536699) 
代理人 永田 元昭 

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