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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L6 |
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管理番号 | 1306412 |
審判番号 | 不服2015-9562 |
総通号数 | 191 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-22 |
確定日 | 2015-09-28 |
意匠に係る物品 | 出隅部材 |
事件の表示 | 意願2014- 14758「出隅部材」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成26年(2014年)7月4日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば意匠に係る物品を「出隅部材」とし,形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)を,願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたもので,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本願部分」という。)である。」としたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由として引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁が平成18年(2006年)4月13日に発行した公開特許公報(特許出願公開番号:特開2006-97322号)の【図1】第1図に表された出隅部材の意匠(発明の名称「出隅部材及び出隅構造」。以下「引用意匠」という。)であり(別紙第2参照),本願部分と対比される対象は,引用意匠における本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)である。 第3 本願意匠と引用意匠の対比 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は出隅部材であって,直交するサイディングの間に配置し使用されるものであり,一方,引用意匠の意匠に係る物品も出隅部材であり,公開特許公報(特許出願公開番号:特開2006-97322号)【図2】第2図に示されるとおり直交する外装材の間に配置し使用されるものである。 2 本願部分と引用部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分は,建築物のサイディングの間に配置して使用される出隅部材における,正面視上端部及び右端部における折れ曲がり部を除く部分であり,その折れ曲がり部によって,本願部分はサイディングと一定の間隔を空けて配されるという機能を有し,また,正面視左下方向の二つの略ブロック状部のうち外側の略ブロック状部が段状に構成されたサイディングの端部内側と嵌合し,二つの略ブロック状部が共にサイディングに当接する機能を有している。そして,設置時においては,サイディングの間の奥に外側の略ブロック状部の一部が表れるように配される。 一方において,引用部分も同様に外装材の間に配置して使用される出隅部材であるものの,上記公報【図1】第1図(b)における左端部及び下端部には本願意匠の破線部分に相当する折れ曲がり部はなく,そのため引用部分は外装材と密着する機能を有し,また,同(b)における右上方向の二つの略ブロック部のうち,サイディングに当接するのは内側の略ブロック状部のみであって,設置時においては,外装材の間に外側の略ブロック状部の大部分が表れるように配される。そして,二つの略ブロック状部が連なる中間の凹み部(上記公報【図1】第1図の17及び18。)がシーリング材を充填する機能を有している。 3 本願部分と引用部分の形態 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 なお,両部分の各部の名称については,平成27年5月22日の審判請求書第3頁の「本願参考図面A」及び同第5頁の「引用参考図面C」(別紙第3参照)で示された名称を用いて認定する。 また,本願部分の各図の向きに合わせて,引用部分を認定する。 (1)共通点 両部分の形態には,以下の共通点が認められる。 (A)全体が略L字状で上方向及び右方向に対称状(対称軸は右斜め45度)に延伸し,前後方向に連続するものであり,正面視左下方向に二つの略ブロック状部が連なって表されており(以下,外側の略ブロック状部を「外側ブロック部」,内側の略ブロック状部を「内側ブロック部」という。),正面視上方向及び右方向には直線状の長片部が形成されている点。 (B)正面から見て,内側ブロック部は略正方形状であり,外側ブロック部の上辺と内側ブロック部の左辺が連結し,外側ブロック部の右辺と内側ブロック部の下辺が連結するように表されて,それぞれの連結部分が内側への凹み部として形成されている点。 (2)差異点 一方,両部分の形態には,以下の差異点が認められる。 (a)各部の構成比について 正面から見て,本願部分の二つの略ブロック状部を合わせた幅と長片部の幅の比は約4:5であるのに対して,引用部分の当該部の比は約7:6である。また,引用部分の外側ブロック部の幅(上記「引用参考図面C」のb片部)と凹み部の幅(同図面のd片部)の比は約3:1であるのに対し,本願部分の当該部の比は約1.1:1である点。 (b)正面から見て,本願部分の外側ブロック部は,左下が45度に傾斜して略五角形状を呈しているのに対して,引用部分の外側ブロック部は,左下が傾斜しておらず,直角に表されて略正方形状を呈している点。 第4 類否判断 1 意匠に係る物品 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)は,共に直交するサイディングあるいは外装材の間に配置し,出隅部材として使用される略L字状の長尺物であることから,両意匠の意匠に係る物品は同一である。 2 両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 両部分共に建築物のサイディングあるいは外装材の間に配置して使用される出隅部材であるものの,それぞれの使用状態の参考図等における両部分の機能の観点から見ると,本願部分には,サイディングと固定面部との間に一定の間隔を空けて配され,二つの略ブロック状部は共に段状に構成されたサイディングに当接するという機能を有するのに対して,引用部分における長片部は外装材と密着し,中間の凹み部がシーリング材を充填するという機能を有する点で相違する。したがって,両部分は,用途並びに位置,大きさ及び範囲について共通するが,機能については一部に差異が認められる。 3 出隅部材の物品分野における意匠の類否判断 サイディングあるいは外装材の連結部に配される出隅部材を看者が観察する場合には,出隅部材周囲のサイディング等との関係について看者は注意を払うこととなるので,単純に出隅部材の形態のみを対比するのではなく,出隅部材が実際にどのように使用されるのかを考慮して出隅部材の形態を評価し,また,出隅部材各部の機能を踏まえて形態を評価する。したがって,出隅部材の物品分野の意匠の類否判断においては,これらの項目を特に評価し,かつ,それ以外の項目も併せて,各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。 4 形態の共通点の評価 両部分の共通点(A)及び(B)で指摘した,全体が略L字状で,直線状長片部の間に二つの略ブロック状部が連なり,その連結部分が内側への凹み部として形成された態様は,出隅部材の物品分野の意匠において,本願の出願前に普通に見受けられる(例えば,特許庁意匠課公知資料番号第HC01024946号。別紙第4参照。)ことから,共通点(A)及び(B)が両部分の類否判断に与える影響は小さい。 5 形態の差異点の評価 両部分の差異点(a)として示した二つの略ブロック状部を合わせた幅と長片部の幅の比については,本願部分では前者の割合が後者よりも小さく,引用部分では逆に後者の割合が前者よりも小さいので,両部分を比較した際に看者に異なる印象を与えることとなり,また,外側ブロック部の幅と凹み部の幅の比についても,本願部分の凹み部が外側ブロック部とほぼ同幅といえるのに対して,引用部分の凹み部は外側ブロック部の約1/3であるから,看者に別異の印象を与えることとなるので,差異点(a)が両部分の類否判断に与える影響は大きい。 次に,両部分の差異点(b)として示した傾斜の有無の差異は,両部分を斜視方向から見たときの傾斜面の有無として認識されるものであり,本願部分の傾斜面は,実際の使用に際し,上述したサイディング間に表れる外側ブロック部の一部に相当するため,看者はその傾斜面に対して特に注意を払うというべきであり,看者の目を強く惹く部分であることから,差異点(b)が両部分の類否判断に与える影響は大きい。 そうすると,上記(a)及び(b)の差異点は,いずれも両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,両部分の形態の差異点を総合すると,両部分を別異のものと印象付けることとなる。 6 小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であり,両部分の用途並びに位置,大きさ及び範囲が同一であるものの,両部分の機能は異なっており,また,両部分の形態においても,共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響が小さいのに対して,差異点を総合すると,両部分の類否判断に及ぼす影響が大きく,両部分を別異のものと印象付けるので,差異点が共通点を凌駕して両部分全体として需要者に異なる美感を起こさせることから,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-09-11 |
出願番号 | 意願2014-14758(D2014-14758) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 恭子 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 正田 毅 |
登録日 | 2015-10-09 |
登録番号 | 意匠登録第1537279号(D1537279) |
代理人 | 大上 寛 |