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審決分類 審判 査定不服  工業上利用 取り消して登録 E2
管理番号 1309600 
審判番号 不服2015-11709
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-22 
確定日 2016-01-05 
意匠に係る物品 立体パズル 
事件の表示 意願2014- 21468「立体パズル」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,2014年(平成26年)9月29日に出願された意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「立体パズル」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面代用写真及び図面の記載に表されたとおりとするものである(別紙参照)。


第2 原査定における拒絶の理由

原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しない,というものであって,具体的には,

「本願の意匠に係る物品は「立体パズル」であり,組立と分解とを繰り返すことを目的とした物品であるため,各構成片の形態と組んだ状態の形態の両方を図面に記載することが必要であるところ,各構成片の形態が不明であるため,意匠を特定することができません。」

としたものである。


第3 本件請求人が主張する本願意匠が登録されるべき理由

本件請求人が2015年(平成27年)6月22日に提出した審判請求書記載の,本願意匠が登録されるべき理由要旨は以下のとおり。

1 図面の提出要件と本願意匠との関係

本願意匠は,(1)「積み木や組木の物品分野に属する」ものではないため,施行規則様式第6(第3条関係)備考19によらずとも意匠が具体的であると判断できること,(2)仮に「積み木や組木の物品分野に属する」ものであったとしても,本願では図面において意匠が具体的に表されていることから,意匠法第3条第1項柱書に規定する意匠にあたり,登録を受けることができるものである。

(1)「積み木や組木の物品分野に属する」ものではないこと
意匠法施行規則様式第6(第3条関係)備考19には,「積み木のようにその構成各片の図面だけでは使用の状態を十分表現することができないものについてはその出来上がり又は収納の状態を表す斜視図を,組木のように組んだり分解したりするもので組んだ状態の図面だけでは分解した状態を十分表現することができないものについてはその構成各片の斜視図を加える。」とある。
しかし,積み木とは,同じピースによってトンネルや城などを組み上げられるものであり,組み上げた状態を特定できないからこそ,各ピースの特定を必要とするものであるから,唯一の形態を組み上げる本願物品は,積み木とはいえない。
次に,原査定の拒絶理由は「各ピースの形状が不明確」と述べるから,本願意匠が構成各片の斜視図を加えるべき「組木のように組んだり分解したりするもの」に当たるか検討する。
「組んだり分解したりするもの」の意味は,その字義から,組む状態及び分解状態が相互に継起するような物品を意味するものと解することができる。
ここで,本願意匠に係る物品は「立体パズル」であるところ,一般に,パズルとは「考え物,判じ物など,それを解くことで知的満足を覚えるように作った遊戯的問題の総称」(甲1 1988/国語大辞典(新装版)小学館),「謎解き,判じもの」(甲2 2008/広辞苑第六版 岩波書店)と定義されており,パズルという物品が一義的に組立と分解を繰り返すものを意味しない。
本願物品は,ジグソーパズルと同様に,一度組み立ててしまえば,それをインテリアの置物として利用することが想定されたパズルである。つまり,通常の使用において,再度分解することはない。
このような用途は,本願意匠が犬の立体造形を透光性の素材で複数のピースを組み合わせて唯一の形態を組み上げるものであり,組み上げた状態で光の反射・屈折の効果により特有の美感を有し,その点が需要者により市場で評価されるものである。
以上のとおり,本願物品は,分解状態のものを組んだ後,分解,組立,分解と状態が継起することを想定した物品ではないため,意匠法施行規則様式第6(第3条関係)備考19にいう「組んだり分解したりするもの」には当たらない。
したがって,本願物品は,「積み木や組木の物品分野に属する」ものではないため,構成各片の図面を要することなく意匠が具体的であると判断することができる。

(2)仮に本願物品が「積み木や組木の物品分野」であるとしても,本件意匠は具体的であること
上記備考19は,「組んだり分解したりするもの」で「分解した状態を十分表現することができないもの」については,構成各片の図面を求めている。
また,審査基準21.1.2において「意匠が具体的なものであること」についての説明がある。すなわち,「願書の記載及び願書に添付した図面等から,美的創作として出願された意匠の内容について,具体的な一の意匠として導き出すことができればよく,願書に添付した図面等についてみれば,必ずしも製品設計図面のように意匠全体について等しく高度な正確性をもって記載されていることが必要となるものではない」と説明されている。
本願についてみると,参考図で一部のピースの例を開示するとともに,各ピースの配置を参考図並びに六面図及び斜視図で把握することができる。
そして,分解した状態の個々のピースの接続面の形態が,隣接するピース相互が嵌合可能な形状になっていることは,「パズル」という物品から導かれる通常の知識及び一部のピースの例を開示した参考図から合理的に理解することができる。
したがって,本願は,図面によってなされた表現から,本願物品の分野における通常の知識並びに参考図,六面図及び斜視図から総合的に判断して分解した状態を理解することができる。
また,本願意匠に関しては,個々のピースの接続面の形態は,組立て後に外から見える部分ではないうえ,市場において選択・購入する需要者が商品を購入する際に着目する部分でもない(甲3 ビバリークリスタルパズル包装 写し,甲4 ビバリークリスタルパズルパンフレット 写し)。このため,個々のピースのうち,相互にピースを接続する面の形態は,本願物品に係る商品の購入において需要者の判断基準とならず,意匠の要旨とはならない。個々のピースの接続面の形態は,いわば内部機構にすぎない。
このように,本願意匠は,意匠の要旨とはならない部分の形態について,個々の特定を保留したとしても,意匠の要旨を認定することは可能である。そうである以上,原査定の「各ピースの形状が不明確な状態では本願意匠が具体的に表されたものとは言えず」との認定は誤りであり,本願意匠は具体的な一の意匠として導き出すことが可能である。
なお,これは,「組み立て式家具」として市場で販売される家具について,需要者は一部が隠れる棚や引き出しの内部形状において個々のパーツ形状を問題にせず,組み立てた完成品の図面からその意匠を具体的に導出できるとするのと同様である。このような物品の登録例としては,例えば,意匠登録第1338330号「段ボール組立て勉強机」がある(甲5)。
したがって,本願意匠は,参考図,六面図及び斜視図から総合的に判断して具体的に表されたものであるといえる。

2 まとめ

以上,上記1(1)及び(2)により,本願意匠は具体的なものであり,意匠法第3条第1項柱書に規定する意匠に該当するものである。
願書の記載及び願書に添付した図面等から具体的に導出できる意匠が存在するにもかかわらず,原査定の拒絶理由は,細部又は内部機構にわたって必要以上に意匠の特定を要求するものである。このような審査は,意匠法施行規則様式第6(第3条関係)備考19に反し,審査基準21.1.2からも逸脱しており,適切ではない。


第4 当審の判断

原査定は,本願意匠を,組立と分解とを繰り返すことを目的とした物品に係る意匠と認定し,それを前提として,構成各片の形態と組んだ状態の形態の両方を図面に記載することが必要であるにもかかわらず,本願にはそのような図面の記載が無いから各構成片の形態が不明であるため,意匠を特定することができない,としている。

そこで,本願意匠に係る物品が組み立てと分解とを繰り返すことを目的としたものであるか否かについて,及び本願意匠を特定するために構成各片の形態と組んだ状態の形態の両方を図面に記載することが必要であるか否かについて検討する。

1 本願意匠に係る物品が組み立てと分解とを繰り返すことを目的としたものであるか否かについて

願書の意匠に係る物品の説明の記載によれば,本願意匠に係る物品は,全ピースを示す参考図に示すピースにより構成される立体パズルであり,本物品の固定方法を示す参考図に示すように,ピースを組み合わせる途中の状態で軸を嵌装し,軸端に設けられた溝に附属のキーを差し込み回転させて軸の他端をねじ止めすることにより,組み合わせた各ピースが散けないよう固定され,組み合わせた後は鑑賞用として使用されるものである。すなわち,本願意匠は,ばらばらの構成片から構成されているが,それを組み立てても常に一つの形態の立体にしかならず,その組み立てた立体物は固定され,その後観賞用として使用されるものであるから,構造上,組み立てと分解とを使用者の任意によって繰り返すことが可能であっても,組み立てと分解とを何度も繰り返すことを主たる「目的」としたものには該当しないと判断することが相当である。

なお,本願の願書の意匠に係る物品の説明の記載は,出願当初の,
「本物品は,各ピースの例を示す参考図に示す各々のピースによって構成される立体パズルである。各ピースの配置を示す参考図において各色に彩色されているように複数のピースを組み合わせることで本物品を構成する。」
との記載から,審判請求後の平成27年11月11日に提出された手続補正書によって,
「本物品は,全ピースを示す参考図に示すピースにより構成される立体パズルである。各ピースの例を示す参考図は,ピースの具体的形態の代表例を示す。各ピースの配置を示す参考図において各色に彩色されているように,全ピースを示す参考図に示すピースを全て組み合わせることで本物品が構成される。本物品は,本物品の固定方法を示す参考図に示すように,ピースを組み合わせる途中の状態で軸を嵌装し,軸端に設けられた溝に附属のキーを差し込み回転させて軸の他端をねじ止めすることにより,組み合わせた各ピースが散けないよう固定され,組み合わせられた後は鑑賞用として使用される。」
との記載に変更されたが,この補正は出願当初の願書並びに願書に添付された図面代用写真及び図面に記載された本願意匠の要旨を変更するものではない。
すなわち,「ピースを組み合わせる途中の状態で軸を嵌装し,軸端に設けられた溝に附属のキーを差し込み回転させて軸の他端をねじ止めすることにより,組み合わせた各ピースが散けないよう固定させ」との記載は,本願意匠の使用の方法を明確にしたにすぎず,また,本願意匠のような「立体パズル」が属する物品分野の通常の知識に基づけば,本願の出願当初の願書に添付された6面図及び4方向からの斜視図,各ピースの配置を示す参考図,並びに願書の意匠に係る物品の説明中の「複数のピースを組み合わせることで本物品を構成する」との記載から,本願意匠は,多くのピースを組むことによって完成し,組み立てた後は観賞用として使用されるジグソーパズルの類いのものであるということを容易に導き出すことができる。

2 本願意匠を特定するために,構成各片の形態と組んだ状態の形態の両方を図面に記載することが必要であるか否かについて

まず,意匠法施行規則様式第6(第3条関係)備考19には,「組木のように組んだり分解したりするもので組んだ状態の図面だけでは分解した状態を十分表現することができないものについてはその構成各片の斜視図を加える。」と記載されており,これは,組木はもちろん,組木でない意匠であっても,その意匠の用途や機能を勘案すると,組木のようにその意匠を理解するためには,組み立てた状態の形態に加えて構成各片の形態を表す図が必要である意匠についても,その意匠を特定するために,組んだ状態の形態と構成各片の形態の両方を図面に記載することが必要であると解される。

そうすると,本願意匠が組木であるか否かは重要ではなく,本願意匠が,その意匠の用途及び機能を勘案すると,「その意匠を理解するためには,組み立てた状態の形態に加えて構成各片の形態を表す図が必要である意匠」に該当するか否かが重要となる。

そこで,本願意匠が,「その意匠を理解するためには,組み合った状態の形態に加えて構成各片の形態を表す図が必要である意匠」,に該当するか否かについて検討すると,本願意匠は,意匠に係る物品が「立体パズル」ではあるが,前記1のとおり,組み立てた後は主に観賞用として使用されるものであり,組み立てと分解とを繰り返すことを主たる目的としたものではないから,構成各片の具体的な形態を表す図が無くとも,構成各片によって組み立てられていることが認識できる程度に組み立てた後の形態が表されていれば,本願意匠を理解することができるものであり,「その意匠を理解するためには,組み合った状態の形態に加えて構成各片の形態を表す図が必要である意匠」にも該当しない。

したがって,本願意匠は,その意匠を特定するために,組んだ状態の形態と構成各片の形態の両方を図面に記載することが必要であるものとすることはできない。

3 小括

よって,本願意匠の意匠に係る物品は,組み立てと分解とを繰り返すことを主たる目的としたものではなく,また,その意匠を特定するために,組んだ状態の形態と構成各片の形態の両方を図面に記載することが必要でないものであるから,本願意匠は,出願当初の願書に添付された図面代用写真及び図面の記載によって具体的に表されているものである。


第5 むすび

以上のとおりであるから,本願意匠は,意匠法第3条第1項柱書に規定された工業上利用することができる意匠に該当し,意匠登録を受けることができるものであるので,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-12-15 
出願番号 意願2014-21468(D2014-21468) 
審決分類 D 1 8・ 14- WY (E2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石坂 陽子 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
久保田 大輔
登録日 2016-01-22 
登録番号 意匠登録第1544359号(D1544359) 
代理人 特許業務法人中川国際特許事務所 

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