ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 意9条先願 取り消して登録 H7 |
---|---|
管理番号 | 1311907 |
審判番号 | 不服2015-17715 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-09-29 |
確定日 | 2016-03-15 |
意匠に係る物品 | マルチメディア端末機 |
事件の表示 | 意願2014- 25796「マルチメディア端末機」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,中華人民共和国への2014年5月20日の出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成26年(2014年)11月19日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品が「マルチメディア端末機」であり,その形態は,願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照) 2.原審における拒絶の理由及び引用意匠 原審における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第9条第1項に規定する意匠に該当するとしたものであって,アメリカ合衆国への2010年8月16日の出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成23年(2011年)2月16日の意匠登録出願であって,特許庁が平成26年(2014年)10月20日に発行した意匠公報掲載の意匠登録第1509413号(意願2011-003215号)の「携帯情報端末」の意匠(以下,「引用意匠」という。)であり,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 3.両意匠の対比 まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「マルチメディア端末機」であり,引用意匠は,「携帯情報端末」であるが,両意匠は,いずれもカメラ機能等を有する携帯用の情報端末機であり,意匠に係る物品は,共通する。 両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。 (1)共通点 (A)全体を,偏平な略直方体状の筐体とし,正面視を隅丸縦長長方形状とする正面パネルとその周囲に細幅の縁部を設け,正面側に表示画面(以下,「表示画面」という。)を設けたもので,周側面を大きなカーブで背面側に回り込む側面視及び平底面視凸弧状としたものである点, (B)上面部において,平面視右寄りに小型横長トラック形状の操作部を設けている点, (C)左側面部において,小型縦長トラック形状の操作部を上寄りに設けている点, (D)背面側に小型円形状のカメラとカメラより小型の発光部を設けた点, (E)底面部中央に略横長長方形状の端子接続孔部を設けた点, において主に共通する。 (2)差異点 (ア)本願意匠は,周側面の正面側寄りに本体の厚みの約1/2程度の幅の帯状枠部(以下,「帯状枠部」という。)を有しているのに対して,引用意匠は,帯状枠部を有していない点, (イ)正面側の表示画面の態様について,本願意匠は,縦長長方形状の大型の表示画面を,上下に略等幅の余地部をおいて設けているのに対して,引用意匠は,表示画面の大きさが不明である点, (ウ)正面パネル下方の態様について,本願意匠は,その左右中央位置に小型円形の輪郭形状部分(以下,「小型円形輪郭部」という。)を設けているのに対して,引用意匠は,円形状でごく浅い凹球面状のボタンを設けている点, (エ)本願意匠は,帯状枠部の左右側面の上方寄りの位置と底面部の左右寄りの位置に正面側から背面側に向かった筋状の模様部を有しているのに対して,引用意匠は,そのような模様部を有していない点, (オ)カメラと発光部について,本願意匠は,背面パネルの上方の左右中央にカメラを上側にして小型長円形状の発光部を垂直方向に配しているのに対して,引用意匠は,背面パネルの上方の左寄りにカメラを左側にして水平方向に小型円形状の発光部を配している点, (カ)左側面部の小型縦長トラック形状の操作部において,操作ボタンを,本願意匠は,1個設けているのに対して,引用意匠は,上下に2個設けている点, (キ)正面パネル上方の態様について,本願意匠は,小型横長トラック形状のスピーカー部を余地部の上辺寄りの左右中央に配し,その右側に小型円形部2個を並列させているのに対して,引用意匠は,何も表れていない点,に主な差異が認められる。 4.類否判断 (1)共通点 そこで検討するに,共通点(A)については,全体を,偏平な略直方体状の筐体とし,正面視を隅丸縦長長方形状とする正面パネルとその周囲に細幅の縁部を設け,正面側に表示画面を設けたもので,周側面を大きなカーブで背面側に回り込む側面視及び平底面視凸弧状とした態様は,両意匠に共通する全体の基本構成であるが,この種の物品分野においては正面視を隅丸縦長長方形状とする正面パネルを設け,正面側に表示画面を設け,周側面を背面側に回り込む側面視及び平底面視凸弧状に形成した態様は,両意匠の他にも既に見られるもので,その凸弧状が大きなカーブである点が両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。 次に,共通点(B)及び共通点(C)についても,上面部において,平面視右寄りに小型横長トラック形状の操作部を設けている態様や,左側面視上寄りに小型縦長トラック形状操作部を設けた態様が共通しているが,細部に係る態様で目立つものとはいえない態様であるうえ,この種の物品分野における他の端末機の意匠にも見られる,さほど特徴のない態様といえるものであり,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 また,共通点(D)及び共通点(E)についても,背面側に小型円形状のカメラ及び小型の発光部を設けた態様や,底面部中央に略横長状の端子接続孔部を設けた態様が共通しているが,この種の物品分野においては,普通に見られるありふれた態様であって,特徴のないものといえ,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,これらの共通点が両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 (2)差異点 これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。 すなわち,まず,差異点(ア)の帯状枠部の有無について,本願意匠の帯状枠部は正面パネルの全周を覆っており,全体の印象に影響を与えるもので,帯状枠部を有する本願意匠と,帯状枠部を有さない引用意匠とでは,明らかに視覚的印象が異なり,その差異は,両意匠の類否判断に大きく影響を与えるものといえる。 次に,差異点(イ)の正面側の表示画面の態様について,縦長長方形状の大型の表示画面を,上下に略等幅の余地部をおいて設けている本願意匠と同様の態様のものは,この種の情報端末機の分野においては,本願の出願前より既に見受けられる態様であって,さほど特徴があるものとはいえないが,表示画面の大きさが不明である引用意匠とでは,両意匠を正面から見た場合の印象が異なり,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。 また,差異点(ウ)の正面パネル下方の態様について,円形部分が小型円形輪郭部であるかボタンであるかの違いは,部分的なものではあるが,正面パネルの表面がほとんど平坦で他にあまり造形が見られないことから,需要者の注意を強く惹く部分の違いといえるものであって,小型円形輪郭部である本願意匠と,ごく浅い凹球面状のボタンである引用意匠とでは,需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 また,差異点(エ)の帯状枠部の筋状の模様部の有無についても,細部に係るものではあるが,筋状の模様部を有する本願意匠と,そのような模様部を有していない引用意匠とでは,差異点(ア)の帯状枠部の有無と相俟って,視覚的印象が異なり,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。 そして,差異点(オ)のカメラと発光部について,垂直方向と水平方向のいずれの配置も,本願の出願前から見られる,ありふれた態様といえるものではあるが,背面パネルの上方の左右中央にカメラを上側にして小型長円形状の発光部を垂直方向に配している本願意匠と,背面パネルの上方の左寄りにカメラを左側にして水平方向に小型円形状の発光部を配している引用意匠とでは,需要者に与える印象が異なり,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。 また,(カ)各操作部の態様において,差異点(カ-1)の上面部の操作部の形状についても,差異点(カ-2)の左側面部の操作部の個数と形状についても,同様の位置に操作部を設けている中での形状の細部の相違といえるものではあるが,操作ボタンの個数が異なることによって,両意匠の印象が異なるもので,その差異は無視することができず,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。 さらに,差異点(キ)の正面パネル上方の態様について,小型横長トラック形状のスピーカー部を余地部の上辺寄りの左右中央に配し,その右側に小型円形部2個を並列させている本願意匠の態様は,当該部位に何も表されていない引用意匠の態様とは,その印象が異なり,需要者に別異な印象を与えるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。 (3)小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第9条第1項の規定に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2016-03-01 |
出願番号 | 意願2014-25796(D2014-25796) |
審決分類 |
D
1
8・
4-
WY
(H7)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 智加 |
特許庁審判長 |
本多 誠一 |
特許庁審判官 |
斉藤 孝恵 久保田 大輔 |
登録日 | 2016-04-01 |
登録番号 | 意匠登録第1548954号(D1548954) |
代理人 | 八田国際特許業務法人 |