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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1313091 |
審判番号 | 不服2015-20119 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-09 |
確定日 | 2016-03-15 |
意匠に係る物品 | 包装用容器 |
事件の表示 | 意願2014- 29428「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成26年(2014年)12月26日に出願された意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付された図面によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成21年(2009年)8月10日)に記載された意匠登録第1366970号(意匠に係る物品:包装用容器)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1 意匠の認定 (1)本願意匠 1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,ヨーグルトやプリン,ゼリー等のデザート食品用の「包装用容器」である。 2)意匠の形態 ア 形態の基本的構成態様 全体を,蓋のない有底の縦長逆円錐台状とし,その上面には鍔部を形成し,底面を周側面下端部からほとんど連続するように形成した構成としたものである。 イ 形態の具体的態様 (ア)容器の高さと上面の直径の比(以下,「縦横比」という。)を,約1.3:1とし, (イ)外周面について, (イ-1)容器上端から下端までを占める同形状の略縦長長方形状面(以下,単に「縦長長方形状面」という。)を周方向に多数連続させ, (イ-2)その面数を,角張が目立つ面数である12面として, (イ-3)逆円錐台状に形成された外周面の傾斜角度を約5度とし, (ウ)内周面を,全体として12面の多面体状とし,底面からやや上方の位置に,底面側を緩やかな傾斜面として上面側を水平面とした,断面視倒扁平台形状突条部を周回するように形成し, (エ)上面に形成された鍔部の上面を縦断面視階段状とし, (オ)底面形状を緩やかな略凸弧面状とした ものである。 (2)引用意匠 1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は,「包装用容器」である。 2)意匠の形態 ア 形態の基本的構成態様 全体を,蓋のない有底の縦長逆円錐台状とし,その上面には鍔部を形成し,底面を周側面下端部よりやや上方の位置に形成した,いわゆる「上げ底」の構成としたものである。 イ 形態の具体的態様 (ア)縦横比を,約1:1とし, (イ)外周面について, (イ-1)容器上端から下端までを占める同形状の略縦長長方形状面を周方向に多数連続させ, (イ-2)その面数を,角張があまり目立たない面数である18面として, (イ-3)逆円錐台状に形成された外周面の傾斜角度を約7度とし, (ウ)内周面を,内周面下端部に,上面側を水平面とする断面視三角形状突条部を周回するように形成し,内周面上端からその突条部の上側までを,略縦長U字状面18面から成る多面状に形成して, (エ)上面に形成された鍔部の上面を面一状とし, (オ)底面形状を,外側を僅かに底面側に傾斜させた緩やかな略凸弧面状とした ものである。 2 本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の対比 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は,ともに「包装用容器」であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (2)形態 1)形態の共通点 両意匠は, (A)外周面を,容器上端から下端までを占める同形状の略縦長長方形状面を周方向に多数連続させている点 が共通する。 2)形態の相違点 一方,両意匠は, (a)基本的構成態様について,本願意匠は,全体を,蓋のない有底の縦長逆円錐台状とし,その上面には鍔部を形成し,底面を周側面下端部からほとんど連続するように形成した構成としたものであるのに対して,引用意匠は,全体を,蓋のない有底の縦長逆円錐台状とし,その上面には鍔部を形成し,底面を上げ底の構成とした点, (b)容器の縦横比について,本願意匠は約1.3:1としているのに対して,引用意匠は,約1:1としている点, (c)多面状に構成した外周面の面数について,本願意匠は角張が目立つ面数である12面としているのに対して,引用意匠は角張があまり目立たない面数である18面としている点, (d)逆円錐台状に形成された外周面の傾斜角度について,本願意匠は約5度としているのに対して,引用意匠は約7度としている点, (e)内周面の形状について,本願意匠は,全体として12面の多面体状とし,底面からやや上方の位置に,底面側を緩やかな傾斜面として上面側を水平面とした,断面視倒扁平台形状突条部を周回するように形成しているのに対して,引用意匠は,内周面下端部に,上面側を水平面とする断面視三角形状突条部を周回するように形成し,内周面上端からその突条部の上側までを,略縦長U字状面18面から成る多面状に形成している点, (f)上面に形成された鍔部上面の形状について,本願意匠は縦断面視階段状であるのに対して,引用意匠は面一状である点, (g)底面の形状について,本願意匠は緩やかな略凸弧面状としているのに対して,引用意匠は,外側を僅かに底面側に傾斜させた緩やかな略凸弧面状としている点 が相違する。 3 類否判断 両意匠の意匠に係る物品は一致しているから,以下,両意匠の形態の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響を評価し,判断する。 (1)形態の共通点の評価 共通点(A)の,外周面を,容器上端から下端までを占める縦長長方形状面を周方向に多数連続させた共通性については,周側面全面を占めている形態の共通性ではあるものの,このような態様の包装用容器は,引用意匠の出願前からよく見受けられることから,この共通点(A)のみをもって本願意匠が引用意匠と類似するものであると決定付けるには至らないものである。 (2)形態の相違点の評価 他方,相違点(a)の,基本的構成態様の相違については,両意匠の骨格を成す形態の相違であるということができ,両意匠の類否判断に与える影響は大きいものといえる。 また, 相違点(c)の,多面状に構成した外周面の面数の相違については,角張が目立つ面数である本願意匠の形態は,断面視多角形状の角張が目立たない引用意匠とは異なる視覚的印象を与えており,また,この相違する態様が周側面全面を占めているものであることから,この相違点(c)も,両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。 しかし,相違点(b)の,容器の縦横比の相違については,本願意匠の横幅に対する縦幅は約1.3:1であって,縦幅が横幅に対して極端に長いわけではないから,看者が本願意匠と縦横比を約1:1とする引用意匠とを比較して観察したときには,従来から普通に見られる食品の収納量に応じた縦幅の変更を行ったものという印象を受けるものであるから,この相違点(b)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 そして,相違点(d)の,逆円錐台状に形成された外周面の傾斜角度の相違については,本願意匠は約5度としているのに対して,引用意匠は約7度であって,その相違は極めて小さいものであり,また包装用容器の容量を増量するときには,上面と底面の径は変更せずに縦幅だけを変更することが普通に行われる手法として認識されており,そうすると外周面の角度の相違は,そうした容量変更に伴う縦幅の変更の結果として生じる相違であるから,相違点(b)と同様に,看者はこの相違を意匠的特徴の相違として捉えないため,この相違点(d)も,両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるといえる。 さらに,相違点(e)の,内周面の形状の相違については,この相違点の主たる相違は底面寄り部分の形状の相違であり,当該部分は,食品を充填したときにはまったく見えず,充填した食品を食し終える直前になって見えるようになるものであり,内周面の底面寄りの態様の相違は,両意匠を意匠全体として観察したときには,本物品の一需要者である食品メーカーが,消費者が手に持って容器内部を視認しながらデザート食品を口に運ぶとの本物品に見受けられる特殊性を考慮して内周面の形状について注意を払うとしても,両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。 そして,相違点(f)の上面に形成された鍔部上面の形状の相違については,両意匠を全体として観察したときには,注視して初めて認識できる程度の極く小さな部分の相違であるから,この相違点(f)が両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。 また,相違点(g)の,底面形状の相違については,両意匠のいずれの形態も,従来からよく見受けられる特に特徴のないものであり,また,両意匠を全体として観察したときには,底面視態様は底面側の目立ちにくい部位であり,平面視態様は食品を充填したときにはまったく見えず,充填した食品を食し終えた後になって見えるようになる部位であるから,この相違点(g)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。 (3) 総合評価 上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,また,形態の具体的態様にいくつかの共通点が認められるものの,いずれの共通点も類否判断に与える影響は小さく,それらの共通点を総合的に評価してもなお,形態の相違点,とりわけ相違点(a)及び相違点(c)があいまって看者に与える視覚的印象を凌駕していないため,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,本願意匠は引用意匠と類似しないものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 したがって,本願は登録すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-03-01 |
出願番号 | 意願2014-29428(D2014-29428) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 成田 陽一 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 久保田 大輔 |
登録日 | 2016-04-15 |
登録番号 | 意匠登録第1549863号(D1549863) |
代理人 | 村松 由布子 |
代理人 | 杉村 憲司 |