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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J6 |
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管理番号 | 1313096 |
審判番号 | 不服2015-17350 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-09-24 |
確定日 | 2016-03-28 |
意匠に係る物品 | 呼吸器用送風機 |
事件の表示 | 意願2014- 17718「呼吸器用送風機」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,2014年3月14日の米国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成26年(2014年)8月14日に出願された部分意匠として意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「呼吸器用送風機」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照) 第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由の要旨は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2012年 8月17日に受け入れた,Manufacturing CHEMIST 7号の第17頁に所載された「防護マスク用フィルター」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HB24004846号)であって,引用意匠及び引用意匠の本願部分に相当する部分(以下,「引用部分」という。)のの形態は,同雑誌の写真版に現されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1 意匠の認定 (1)本願意匠 1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,電動ファンによりフィルターでろ過した空気を,チューブを通してヘッドギア内に送り込む「呼吸器用送風機」である。 2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分は,フィルターカバー部の正面上方に位置する横長の窓部の,表側稜線部分(以下,「外縁部」という。)と奥側稜線部分(以下,「内縁部」という。)によって囲まれた部分(以下,「窓部内面」という。)であり,本物品内部に組み付けられたフィルターの装着有無を確認できる窓部を形成するための部分である。 3)本願部分の形態 ア 形態の基本的構成態様 全体として正面視略横長長方形状としたものである。 イ 形態の具体的態様 (ア)窓部の外縁部によって囲まれる手前側の開口域(以下,「手前側開口域」という。)の下辺部の左右両端側部分を,それぞれ左右両端部に向けて上方に傾斜させ, (イ)窓部内面を,外縁部から内縁部に向かって窄ませるように傾斜して幅広に形成し,内縁部によって囲まれる奥側の開口域(以下,「奥側開口域」という。)の下辺部の左右両端部分を,それぞれ左右両端部に向けて上方に傾斜させ,手前側開口域と大小関係をなす略相似形状とし, (ウ)前方に平面視凸弧状に湾曲したフィルターカバーの形状に伴って,右側面視態様を正面側から背面側方向に抉れたような略「フ」字状に形成したものである。 (2)引用意匠 1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は,「呼吸器用送風機」である。(当審注:原査定においては「防護マスク用フィルター」と認定しているが,引用意匠が属する物品分野における通常の知識に基づいて判断すると,引用意匠の意匠に係る物品は,「呼吸器用送風機」であると認められる。) 2)引用部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 引用部分は,フィルターカバー部の正面上方に位置する横長の窓部の外縁部と内縁部によって囲まれた窓部内面部分であり,本物品内部に組み付けられたフィルターの装着有無を確認できる窓部を形成するための部分である。 3)引用部分の形態 ア 形態の基本的構成態様 全体として正面視略横長長方形状としたものである。 イ 形態の具体的態様 (ア)窓部の外縁部によって囲まれる手前側開口域の下辺部の左右両端側部分を,それぞれ左右両端部に向けて上方に傾斜させ, (イ)窓部に透明板を嵌着させ, (ウ)また,窓部内面及び奥側開口域の態様については明確に現されていないが,呼吸器用送風機が属する物品分野における通常の知識をもって引用部分を観察すると,窓部内面はフィルターカバーの厚み分の水平面を形成し,奥側開口域は手前側開口域と同一の大きさ及び形状としているものと推認でき, (エ)フィルターカバー表面の陰影から,フィルターカバーが前方に平面視凸弧状に湾曲していると認識できることから,右側面視態様を正面側から背面側方向に抉れたような略「フ」字状に形成しているものと推認できるものである。 2 本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の対比 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は,ともに「呼吸器用送風機」であり,一致する。 (2)本願部分と引用部分(以下,「両部分」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 両部分は,ともにフィルターカバー部の正面上方に位置する横長の窓部の外縁部と内縁部によって囲まれた窓部内面部分であり,本物品内部に組み付けられたフィルターの装着有無を確認できる窓部を形成するための部分であるから,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。 (3)形態の共通点 両部分は, (A)全体として正面視略横長長方形状とした基本的構成態様, (B)窓部の外縁部によって囲まれる手前側開口域の下辺部の左右両端側部分を,それぞれ左右両端部に向けて上方に傾斜させた点 (C)右側面視態様を正面側から背面側方向に抉れたような略「フ」字状に形成している点 が主に共通する。 (3)形態の相違点 両部分は, (a)窓部内面の態様について,本願部分は,外縁部から内縁部に向かって窄ませるように傾斜して幅広に形成し,奥側開口域の下辺部の左右両端部分を,それぞれ左右両端部に向けて上方に傾斜させ,手前側開口域と大小関係をなす略相似形状としているのに対して,引用部分は,フィルターカバーの厚み分の水平面を形成し,奥側開口域を手前側開口域と同一の大きさ及び形状としている点, (b)窓部の透明板の有無について,本願部分には透明板が嵌着されておらず,本物品の内外を遮断するものが何もないのに対して,引用部分は,本物品の内外を遮断する透明板を嵌着している点 が相違する。 3 類否判断 両意匠の意匠に係る物品,両部分の用途及び機能,並びに両部分の位置,大きさ及び範囲は共通しているから,以下,両部分の形態の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響を評価する。 (1)共通点の評価 まず,共通点(A)の,基本的構成態様の共通性については,基本的構成態様は両部分の骨格を成すものであり,全体として正面視略横長長方形状とした呼吸器用送風機の窓部の態様は引用部分の公開前には見られないものではあるものの,正面視横長長方形状という形状は,とりたてて特徴的な形状ではないから,この共通性のみをもって本願部分が引用部分に類似すると決定付けるには至らないものである。 そして,共通点(B)の,手前側開口域の下辺部の左右両端側部分をそれぞれ左右両端部に向けて上方に傾斜させた形状が共通している点については,横長の表示窓部の形状として左右端部を徐々に狭めて切れ長に形成することは,両意匠が属する物品分野に限らずとりたてて特徴的なことではなく,また,その傾斜角度も小さいものであるから,この共通点(B)が両意匠部分の類否判断に与える影響は小さいものである。 また,共通点(C)の,右側面視態様を正面側から背面側方向に抉れたような略「フ」字状に形成している点については,いずれも前方に凸弧状に湾曲したフィルターカバーに略横長長方形状の孔を設けた結果の態様であり,看者の注意を惹起する態様とはいえないことから,この共通点(C)が両部分の類否判断に与える影響も小さいものである。 (2)相違点の評価 他方,相違点(a)の,窓部内面の態様の相違については,外縁部から内縁部に向かって窄ませるように傾斜して幅広に形成し,奥側開口域の下辺部の左右両端部分を,それぞれ左右両端部に向けて上方に傾斜させ,手前側開口域と大小関係をなす略相似形状としている本願部分の態様,とりわけ,正面から見たときに,窓部の上下面の縦幅と左右面の横幅が大きく異なって見える態様は,表示窓部の内面の態様として非常に特徴的であり,本願部分固有の特徴的な態様ということができるから,この相違点(a)は両部分の類否判断に極めて大きな影響を与えるものである。 しかし,相違点(b)の,窓部の透明板の有無の相違については,透明板が嵌着されていない本願部分と,透明板を嵌着している引用部分とでは,立体としての形状的相違は明らかではあるが,呼吸器用送風機が属する物品分野に限らず,表示窓部に透明板を設けることも設けないことも,例を示すまでもなく一般的に行われており,また,引用部分は透明板を透過して,本願部分と同様に窓部内部のフィルターを鮮明に視認できることから,この相違点(b)が両部分の類否判断に与える影響は小さいものである。 (3)小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品,両部分の用途及び機能,並びに両部分の位置,大きさ及び範囲が一致し,また,基本的構成態様やいくつかの具体的形態が共通しているものの,基本的構成態様の共通性はそれのみでは両部分が類似すると決定付けるには至らないものであり,その他の形態の共通点はいずれも類否判断に与える影響が小さいものであるのに対して,形態の相違点(a)が類否判断に与える影響は大きく,形態の共通点があいまって看者に与える視覚的効果を考慮しても,形態の相違点のそれを凌駕していないため,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,本願部分は引用部分に類似せず,本願意匠は引用意匠と類似しない。 第4 むすび 以上のとおりであるから,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができない意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 したがって,本願は登録すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-03-11 |
出願番号 | 意願2014-17718(D2014-17718) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 市村 節子 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 久保田 大輔 |
登録日 | 2016-04-28 |
登録番号 | 意匠登録第1550983号(D1550983) |
代理人 | 黒川 朋也 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 池田 正人 |
代理人 | 野間 悠 |
代理人 | 城戸 博兒 |