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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1313101 |
審判番号 | 不服2015-22315 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-12-18 |
確定日 | 2016-04-15 |
意匠に係る物品 | 蓄電池用トレイ用シート材 |
事件の表示 | 意願2015-6069「蓄電池用トレイ用シート材」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,本意匠を意願2015-6068号(意匠登録第1538349号)とする関連意匠の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「蓄電池用トレイ用シート材」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであり,「本物品のうち,実線で表された部分が部分意匠として登録を受けようとする部分である。なお,「使用状態を示す参考図」では,本物品の意匠登録対象外の部分も実線で表している。本物品は,全体が平面的形態をしているので,表面図をもって意匠を表す。裏面図は,表面図と同一にあらわれるので省略する。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照) すなわち,本願実線部分は,全体がシート状であって,表面視縦長の8角形であり,その中央に縦長長方形(以下「中央長方形」という。)が実線で表わされており,その左右側方に,中央長方形の幅の略半分の幅で,中央長方形と同じ高さで,その左右外縁の辺が8角形の左右外縁の辺と一致する縦長長方形(以下「側方長方形」という。)が表されており,中央長方形の上下に,中央長方形と同じ幅で,側方長方形の幅よりも短い高さで,その上下外縁の辺が8角形の上下外縁の辺と一致する横長長方形が表されており,中央長方形の頂点から8角形の斜辺に向かう斜線が,若干側方長方形側に傾くように表されているものである。 第2 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には, 「この意匠登録出願の意匠は,シート材を折り曲げて容器形状にして,蓄電池ケースから漏れた電解液が漏出するのを防止する蓄電池用ケースを形成するための蓄電池用トレイ用シート材ですが,扁平なシート材の四隅を折り曲げてトレイを形成することは極めてありふれており,また,形成したトレイを液体がしみ出ない容器として用いることも,意匠1のように公然知られています。 本願意匠は,本願出願前より公然知られた意匠2の縦横比を単に変更して,蓄電池用トレイ用シート材として表したに過ぎないので,容易に創作できたものと認められます。」 というものである。 また,拒絶の理由で引用された意匠は,以下のとおりである。 意匠1(別紙第2参照) 特許庁発行の公開実用新案公報記載 平成3年実用新案出願公開第93479号 [第2図],[第3図]によって表された水容器用耐水板の意匠 意匠2(別紙第3参照) 特許庁発行の公開実用新案公報記載 平成6年実用新案出願公開第42635号【図4】として表された紙箱用ブランクの意匠 第3 当審の判断 意匠法第3条第2項は,「意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは,その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については,前項の規定にかかわらず,意匠登録を受けることができない。」というものであるところ,「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」は,その意匠に係る物品を実施,すなわち当該物品の製造,使用,譲渡等をする者であって,その実施に当たって通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)と解される。 そこで,本願意匠並びに意匠1及び意匠2の当業者を検討し,併せて,それらの当業者の共通性を検討する。 1.本願意匠の当業者 本願意匠の意匠に係る物品は「蓄電池用トレイ用シート材」であって,専ら蓄電池用トレイを構成するための物品であるから,当該シート材の意匠を創作するに当たっては,まず,蓄電池用トレイの意匠を創作し,シート材によって構成された際にそのトレイの意匠が表れるように,シート材の意匠が創作されることは明らかである。 したがって,「蓄電池用トレイ用シート材」の製造,使用,譲渡等をするに当たって通常の知識を有する者は,当然に,「蓄電池用トレイ」の製造,使用,譲渡等をするに当たっての通常の知識を有しているということができるから,「蓄電池用トレイ用シート材」の当業者は,「蓄電池用トレイ」の当業者と同一であるというべきである。 2.意匠1の当業者 意匠1の意匠に係る物品は「水容器用耐水板」であって,専ら「水容器」を構成するための物品であるから,その当業者は「水容器」の当業者と同一であり,「水容器」の製造,使用,譲渡等をするに当たって通常の知識を有する者というべきである。 3.意匠2の当業者 意匠2の意匠に係る物品は「紙箱用ブランク」であって,専ら「紙箱」を構成するための物品であるから,その当業者は「紙箱」の当業者と同一であり,「紙箱」の製造,使用,譲渡等をするに当たって通常の知識を有する者というべきである。 4.各意匠の当業者の共通性 本願意匠並びに意匠1及び意匠2の当業者の共通性を検討すると,本願意匠の当業者が,「蓄電池用トレイ」の製造,使用,譲渡等をするに当たって通常の知識を有する者というべきところ,「蓄電池用トレイ」は,蓄電池から電解液が漏れ出ても,電解液を拡散させない目的で使用され,蓄電池をトレイ上に載せた状態で使用し,漏れ出た電解液をトレイ内部に貯留する機能を有する物品である。 これに対して,意匠1及び意匠2の当業者が製造,使用,譲渡等をする「水容器」や「紙箱」は,「蓄電池用トレイ」と意匠の属する分野が異なり,これらの物品間に転用の商慣行も行われていないので,本願意匠並びに意匠1及び意匠2の当業者に共通性を見いだすことはできない。 5.意匠法第3条第2項の判断 以上のとおり,本願意匠並びに意匠1及び意匠2の当業者に共通性を見いだすことはできず,意匠の属する分野が異なるため,各意匠の形態について検討するまでもなく,本願意匠の属する分野における通常の知識を有する者が意匠1及び意匠2に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原査定が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであり,その拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-04-01 |
出願番号 | 意願2015-6069(D2015-6069) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(H1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石川 愛恵、木村 智加 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 江塚 尚弘 |
登録日 | 2016-04-28 |
登録番号 | 意匠登録第1551188号(D1551188) |
代理人 | 西浦 ▲嗣▼晴 |
代理人 | ▲高▼見 良貴 |
代理人 | 酒井 俊尚 |
代理人 | 出山 匡 |