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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B1 |
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管理番号 | 1314361 |
審判番号 | 不服2015-15346 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-08-18 |
確定日 | 2016-04-05 |
意匠に係る物品 | 使い捨ておむつ |
事件の表示 | 意願2014- 11265「使い捨ておむつ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成26年(2014年)5月27日に出願された,部分意匠として意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「使い捨ておむつ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものであって,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である」としたものである(以下,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照) 第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由の要旨は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,日本国特許庁が平成24年(2012年)11月26日に発行した意匠公報所載の意匠登録第1456213号(意匠に係る物品:おむつ)の意匠であり,引用意匠及び引用意匠の本願部分に対応する部分(以下,「引用部分」という。)の形態は,同公報に掲載されたとおりとしたものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1 意匠の認定 (1)本願意匠 1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「使い捨ておむつ」である。 2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分は,足回り部分に接触する,おむつの股下部両脇のレッグギャザーの側面である自由端部分(以下,単に「自由端部」という。)であって,排泄物等が着用者の肌を伝って外部に漏れるのを防止するためのものである。 3)本願部分の形態 本願部分は,基本的構成態様を,レッグギャザーの自由端部を正面視上端から下端まで正面視略直線状としたものとし,具体的形態を,正面視上端から下端まで複数の山形状及び谷形状が連続する波状に切り欠いたものとし,側面視波状に形成したものである。 (2)引用意匠 引用意匠の認定においては,本願意匠の図面の向きにあわせて,正面図を90度左に回転させた向きで記載する。 1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は,「おむつ」である。 2)引用部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 引用部分は,おむつの股下部両脇のレッグギャザーの側面である自由端部分であって,排泄物等が着用者の肌を伝って外部に漏れるのを防止するためのものである。 3)引用部分の形態 引用部分は,基本的構成態様を,レッグギャザーの自由端部を正面視上端から下端まで正面視略直線状とし,具体的形態を,正面視上端から下端まで波状に切り欠かずに略直線状とし,側面視波状に形成したものである。 なお,引用部分は,その正面図において正面視波状に表れているが,おむつの形態の意匠登録出願の願書に添付する図面への表し方として,レッグギャザーの自由端部の形状が実際には正面視略直線状であったとしても,当該部分が収縮することによって上下に波打って側面視波状に表れる場合には,当該部分がギャザー状であることを分かりやすくするために図面上は正面視においても波状に表す手法を用いることが,古くからよく行われていたことに鑑みると,側面視波状に表れている引用部分は,図面上正面視波状に表されているとしても実際に正面視波状の形状であるとは直ちに認定することはできず,むしろおむつが属する物品分野における上記の一般的な作図方法に照らしてみれば,当該部分は正面視直線状であると推認することができる。 ところで,請求人は,引用部分の形態について,「蛇腹状の形状からなり,複数の『く』の字状の山型と谷型が交互に横に連なったように連続した『起伏』の形状からなる意匠であり,やや角張った固い印象を生じさせる特徴を有するものである。」と認定し,本願部分との相違について主張している。 しかし,本願の願書に添付された図面において「実線で表された部分」は,前記1の(1)の2)のとおり,おむつの股下部両脇レッグギャザーの「側面」部分であるから,その部分に相当する引用部分も,おむつの股下部両脇レッグギャザーの「側面」部分である。よって,レッグギャザーの正面側及び背面側の表面の形態についての上記認定は,引用部分の範囲に含まれない部分の形態の認定であると認められる。 2 本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「使い捨ておむつ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「おむつ」であるが,ともに排泄物を捕捉するために下半身に着用するものであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (2)本願部分と引用部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分と引用部分(以下,「両意匠部分」という。)は,ともに,おむつの股下部両脇のレッグギャザーの側面である自由端部分であって,排泄物等が着用者の肌を伝って外部に漏れるのを防止するためのものであるから,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。 (3)形態の共通点 両意匠部分は, (A)レッグギャザーの自由端部を,正面視上端から下端までが正面視略直線状とした基本的構成態様, (B)レッグギャザーの自由端部を,側面視波状に形成している点, が共通する。 (4)形態の相違点 両意匠部分は, (a)本願部分は,レッグギャザーの自由端部を,正面視上端から下端まで複数の山形状及び谷形状が連続する波状に切り欠いているのに対して,引用部分は,同部分を略直線状に形成している点, が相違する。 3 類否判断 両意匠の意匠に係る物品,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通しているから,以下,両意匠部分の形態の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響を評価する。 (1)形態の共通点の評価 まず,共通点(A)の,正面視上端から下端までが正面視略直線状とした基本的構成態様の共通性については,同様の態様が,例を挙げるまでもなく一般的に見られるものであり,正面視略直線状とした両意匠部分の形態は,看者の目を惹くほどの特徴的な形態ではないから,この共通点(A)が両意匠部分の類否判断に与える影響は微弱である。 また,共通点(B)の,レッグギャザーの自由端部を側面視波状に形成している点については,レッグギャザーはそもそもおむつの素材である布や紙を収縮させたものであり,おむつのレッグギャザーの自由端部は側面視波状またはヒダ状となるのが一般的であって,この形態はとりたてて特徴的な形態ではないから,共通点(B)も,両意匠の類否判断において高く評価すべきものではない。 (2)形態の相違点の評価 しかし,相違点(a)の,レッグギャザーの自由端部の具体的形態の相違については,本願部分のように,レッグギャザーの自由端部を,正面視上端から下端まで複数の山形状及び谷形状が連続する波状に切り欠いている形態は,本願出願前には見られない新規なものであり,また,両意匠が使用されている状態,すなわち両意匠部分が側面視大きく湾曲した状態を検討してみると,正面視波状に切り欠いた本願部分は,全体を湾曲することで山形状及び谷形状の撓みが大きくなり,波状の態様が更に目立つものとなり,その態様は,収縮によってはじめて波状のように見える,正面視略直線状の引用部分の態様と比較すると,より柔らかな印象を与えているものであるから,この相違点(a)が両意匠部分全体の形態の相違であることも考慮すると,この相違点は(a)は看者に別異の印象を与えているものであり,両意匠部分の類否判断に大きな影響を与えているものである。 (3)小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,また,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲も共通しているが,形態の共通点については,いずれも類否判断に与える影響が小さいものであるのに対して,相違点(a)が類否判断に与える影響は大きいものであり,形態の各共通点があいまって看者に与える視覚的効果を考慮しても,形態の相違点のそれを凌駕していないため,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,本願部分は引用部分とは類似せず,本願意匠は引用意匠と類似しない。 第4 むすび 以上のとおりであるから,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に規定された意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 したがって,本願は登録すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-03-23 |
出願番号 | 意願2014-11265(D2014-11265) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(B1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木本 直美 |
特許庁審判長 |
本多 誠一 |
特許庁審判官 |
斉藤 孝恵 久保田 大輔 |
登録日 | 2016-05-13 |
登録番号 | 意匠登録第1551699号(D1551699) |
代理人 | 一色国際特許業務法人 |